艦これMAX   作:ラッドローチ2

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とうとうアクセルさんが手持ちの艦娘を獲得する回。
しかし実は、提督でもなんでもない彼が所持してよいものなのか。
でも大丈夫、たぶんきっと兵藤さんがなんとかしてくれる!  胃痛と頭痛と引き換えに。


07 コレは、やっちまったかもしれんね(妖精魂の述懐)

 

 

 

 幾つかのお土産を渡しつつ、会談にやってきた提督と艦娘らを見送ったアクセル。

 

 有効活用してくれるとメカニック冥利に尽きるがねぇ、などと呟きつつのん気に背伸びをし。

 

 妖精達に任せっぱなしにしてきた、ドックの大掃除にのそのそと戻っていく。

 

 その足取りが、提督らを出迎える時に比べ若干遅かったのは。

 

 青年の肩に座っていた応急修理女神だけが知っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 しかし当然、遅く戻っただけで終わっているという都合の良い事もなく。

 

 結局アクセルは、妖精らと共に夜遅くまでドックを片す羽目となり……。

 

 

「でぇーいやっと終わった……」

 

 

 さっぱりとしたドックの床に、どっかと座り込みそのまま倒れこむアクセル。

 

 一緒にちょこまかと頑張っていた応急修理女神は、すでに作業代の上に布団を敷いて爆睡している。

 

 

「…あ? 折角だから一人建造してみても良いか?」

 

 

 疲労困憊しながらも、目がギラついてる建造妖精らがぴょんぴょんと飛び跳ねてアクセルへ直訴する。

 

 アクセルは気付いていなかったが、建造が本業の彼女らは飢えていた。自らのアイデンティティに。

 

 そんな必死な思いを汲み取ったのか、それとも判断するのも面倒くさいと思ったのか。

 

 

「ああいいよ、適当にやりたいようにやってくれ。俺は寝る」

 

 

 手をひらひら振り、大きく欠伸をした後……倒れこんだまま瞳を閉じて。

 

 そのまま、アクセルは大きないびきをかきはじめる。

 

 残された建造妖精らは、互いに顔を見合わせ……駆逐艦らが見たら卒倒するような顔でケタケタ笑い出すと。

 

 有体に言って、狂気しか感じないテンションで港湾施設内の資源と開発用資材を掻き集め始め……

 

 

 

 ヒャァ、ALL999だ!我慢できねぇ!   とか

 

 ここは無理やり大型建造ですぞ!       とか

 

 いっそ親方も溶鉱炉に入れてみねぇ?     とか、アクセル指差して言い出したり

 

 誰かこのバカを溶鉱炉に放り込めぇ!     とかとか

 

 

 

 ブレーキが消し飛んだ妖精らがやりたい放題好き放題、トンテンカンテンとドックに賑やかな音を響かせ始め。

 

 そんな音の中、彼らを止めれるアクセルと応急修理女神はごろりと寝返り一つ。

 

 

 

 親方が分解したヤツの残骸混ぜてみようぜ!  とか

 

 いいねいいね! ついでに試作品の残骸もな! とか

 

 乗るしかない、このビッグウェーブに!    とか

 

 親方の装備の残骸も入れようぜ!!      とか

 

 

 

 アクセルと応急修理女神が安眠妨害されつつ熟睡を続ける中。

 

 朝日が水平線を照らす頃まで続いたソレは。

 

 なんかもう、色々とえらい事になっていた。

  

 

 

 

 

 

 

「……んぁ?」

 

 

 鼻ちょうちんが割れ、寝ぼけ眼をこすりながらかけられていたタオルケットをのけてアクセルが上半身を起こすと。

 

 ドックの中には、妖精達が崩れ落ちたかのような姿勢で雑魚寝をしていた。

 

 

「こいつら、何時までやってたんだよ……」

 

 

 硬い床で寝たせいか、体のあちこちから鈍い音を立てて立ち上がり。

 

 未だ夢の中にいる応急修理女神を肩に乗せたその時、気配を感じてそちらを振り向いてみると。

 

 

「あら、起きたんですね。おはようございます」

 

 

 そこには、セーラー服と呼ばれる衣服を纏いつつ臍を出し。緑色のリボンで髪を止めポニーテールの少女がいた。

 

 

「ああ、おはようさん……お前さんは?」

 

「兵装実験軽巡洋、夕張です。よろしくお願いします!」

 

 

 寝ぼけ眼のまま、問いかけるアクセルに嫌な顔をせず。見事な敬礼をしながら名乗りを上げる夕張。

 

 気のせいか、キラキラとした目でアクセルを見つめてくる夕張に心当たりのないアクセルは首をかしげ。

 

 

「なぁお前さん、なんでそんなに嬉しそうなのよ」

 

「何を言ってるのですか! あんなに革新的な艤装を幾つも作り上げた上に、ステキな装備を使いこなしてきた御仁が!」

 

 

 夕張の言葉に要領をえず、更に首を傾げるアクセル。そして彼の視界にふと入った光景に。

 

 つい先日まであったはずの、臨終した武装の残骸が影も形も存在していない事に気付く。

 

 

「夕張、だっけ? 俺が最後に立ち寄った町の名前は?」

 

「メルトタウンですね!」

 

「即答かよ」

 

 

 夕張の返答に、今まで他者に与えてきた頭痛を感じるアクセル。

 

 理屈とかは一旦横に置き、確かに目の前にいる艦娘はアクセルが辿ってきた戦いの一部を知っている事を確信したのだ。

 

 

「ああ、嬉しいなぁ楽しみだなぁ。いったいどんな装備載せれるんだろう」

 

 

 目をキラキラさせたまま、うっとりと呟き自分の世界に入る夕張を前に。

 

 艦娘には、変わり者しか居ないという確信も得るアクセルであった。

 

 

 

 ラバウルのとある艦隊所属の、昨夜の夜戦で期待以上の大暴れが出来た川内が大きなクシャミをしたのは。

 

 きっと些細な事である。

 

 

 

 

 

 

「第一回、武装試験大会ー」

 

「わーーーい!」

 

 

 やる気のないアクセルの宣言に、夕張が大はしゃぎで歓声をあげ。

 

 同調するように、最近とみにマッド技術者になってきた妖精達も大はしゃぎする。

 

 

 今現在、場所は港湾施設の桟橋。

 

 その場所の海上にて、夕張は新作武装を大量に搭載しつつ安定して浮かんでいた。

 

 

「……え? スーパーハープーンは軽巡は積めなかったはず? 俺が知るかよ……」

 

 

 アクセルの肩に座る、未だ眠たそうな応急修理女神がそんな事をアクセルに問いかけるも。

 

 知る由もないアクセルは、頭を抱えてうめく。

 

 

 なんせ、昨日川内が積もうとしてやっぱり無理だったはずのスーパーハープーンを。

 

 きっちり4つ、積めるだけガン積みしていたのだ。夕張と思しき艦娘は。

 

 

「装備スロットも出来立てのはずなのに多い、ねぇ……」

 

 

 理解できない、とばかりにうめく応急修理女神の小さな頭を慰めるように。人差し指でぺふぺふと叩くアクセル。

 

 彼らが話してる間も夕張は順調に巡航試験を進めており。

 

 何かを水平線の向こうに発見したのか、進行を止め。

 

 

「アクセルさんアクセルさん! 深海棲艦が遠くから来てます!」

 

「オーケイオーケイ、そんなでかい声出さなくても聞こえてるぜ」

 

 

 声が届きにくい距離にいる夕張から、桟橋にいるアクセルに通信機を通して報告してくる。

 

 試験を開始してからどころか、開始する前からテンションの高い夕張に苦笑いを浮かべつつアクセルは答え。

 

 

「ためし撃ちしてもいいですか!?」

 

 

 物騒な事を言い出した。

 

 

「……あー、数は?」

 

「種類は判断つかないけど、2隻来てます!」

 

「…………あー、ほんじゃ2発ずつお見舞いしてやれ」

 

「待ってましたぁ!」

 

 

 熟考の後に出したアクセルの回答に、とてつもなく嬉しそうな叫びと共に。

 

 洋上に見える夕張の艤装から4本の大型対艦ミサイルが射出され水平線の向こうへと消え……。

 

 

「着弾を確認、轟沈させました!」

 

「オーライお疲れさん、バランス崩さないように帰ってこいよ」

 

 

 着弾まで固唾を呑んで見守っていた夕張。

 

 そして、着弾と共に目標の撃沈を確認できたのか大喜びではしゃぎ洋上で飛び跳ねる。

 

 そんな行動だけは年相応の少女らしい夕張りの行動に、ほほえましい何かを感じながらアクセルは帰投を命じた。

 

 




嘘艦娘図鑑No.1
レアリティ:☆☆☆Sホロ
艦種:軽巡洋艦
名前:夕張 MM
装備適正:戦艦以外の艦種用装備搭載可能。但し航空機スロットはなし。
『解説』
湯水みたいにつぎ込まれた資源と開発用資材、そしてアクセルが愛用していた武装の残骸が奇跡的な融合を果たす事で生まれた夕張。
通常の夕張の知識と性格に加え、アクセルが装備を携行していた時期の知識も持っているため中々にエキセントリックな性格となっている。


というわけで、メロンちゃんらしき何か爆誕です。
彼女はきっとこれからも、アクセルと共に世の艦娘と提督に胃痛と頭痛をプレゼントしてくれるでしょう。


夕張ファンの皆さん、ほんとごめんなさい。

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