艦これMAX   作:ラッドローチ2

6 / 46
今回は割かし難産でした。
口調だけでキャラ付けするのが難しい……。


06 未知との遭遇

 

 

「オーライオーライ、よしそこで下ろしてくれ」

 

 

 妖精が操作するクレーンを誘導し、工作機材をドックへ設置していくアクセル。

 

 絶海に浮かぶ孤島にあるとある港湾施設。

 

 かつて深海棲艦と機怪郡に占拠されていた場所は。

 

 

「コレで少しは整備がやり易くなるかね」

 

 

 良い仕事をした、と額の汗をぬぐう良い笑顔の妖精をねぎらいながらドックの中をアクセルは見回す。

 

 港湾施設で生き残っていた設備を共食い整備し、利便性を高めるべく一つのドックに集約できた事に青年は満足そうに頷き。

 

 

「…ほんじゃ、手始めにスクラップ使って何か作るとするか」

 

 

 倉庫整理中に幾つも見つけた砲身が折れ曲がった砲塔や、施設を整備してる間に襲い掛かってきたモンスターを蹴散らして得たスクラップ。

 

 それらで何を作ろうか、などと脳内で簡単な設計図を引いていく。

 

 

「ん?そうだな、一回試しに 艦娘がもてそうなCユニット作ってみるか」

 

 

 肩に乗った応急修理女神の提案に面白そうだ、などと呟きながら同意するアクセル。

 

 資材については、海から襲ってきたホバー戦車解体して得た部品があるから心配無用である。

 

 

「しかしそうなると、ヘッドセット型にすると良いかねぇ」

 

 

 言うや否やワラワラと準備を始め、電子部品や制御ユニットの残骸を担いで持ってきた妖精達を眺めて呟く。

 

 お尋ね者から部品をもぎ取りCユニットを確保した事は何度かあったアクセルであったが、艦娘用のCユニットを拵えるなど初めての経験。

 

 しかし、その事実に対して青年は憂鬱な気持ちなど欠片もなく。

 

 むしろ、この世界に来て得た技術と自らの技術を融合させてモノを作るという作業に高揚感を感じていた。

 

 

 

 

 

 そして、青年が問題点に気付いたの丸一日経った後の事。

 

 

「……そもそも、武装試験する艦娘がいねぇな」

 

 

 アクセルの言葉に……あ、そう言えば。などとウッカリ顔をする応急修理女神。

 

 彼らが根本的な問題点に気付いたのは、一つの試作品を仕上げてからだった。

 

 

「コレどーすんべ……」

 

 

 作業台の上に鎮座する、バイザー型のソレを見て腕を組むアクセル。

 

 考えながら、とりあえず妖精達に成果物を入れておく倉庫への移動を頼み。

 

 そして……。

 

 

「……艦娘製造用らしい、ドックの大掃除するか」

 

 

 一つの決意と共に、面倒くさそうにため息を吐いた。

 

 艦娘を運用し、前線支援として建造されたこの施設にも艦娘用ドックは存在した。

 

 しかしソレは必要最低限な規模だったようで精々一人ずつしか作れそうに無い規模な上。

 

 深海棲艦の温床になっていたそこは、食い散らかされた資源の残骸や瓦礫が散乱する廃墟一歩手前な有様になっていた。

 

 

「しゃーねぇべ、やるか」

 

 

 妖精達に声をかけ、大掃除の準備をするアクセル達であった。

 

 

 最初こそ和気藹々と掃除を続けていたが。

 

 やがて口数が少なくなり、黙々とアクセルと妖精達は手を動かす事となり。

 

 

「ん? 来客が来た?」

 

 

 ラバウルの提督が率いる艦隊が港湾施設にやってきたのは、まさにそんな時であった。

 

 伝達に来た妖精の話だと、前にやってきた初春と一緒に提督と呼ばれる人間の数人の艦娘が来たらしい。

 

 

「よし、じゃあ作業続けておいてくれ。俺達はちょっと話してくる」

 

 

 作業を続ける妖精達に頼み、ブーイングを華麗にスルーしつつ肩に乗せた応急修理女神と共に逃げるようにドックから出るアクセル。

 

 ある意味で、渡りに船な来客であった。

 

 

 

 

 

 

「わりぃわりぃ、ちょっと大掃除しててな……」

 

 

 妖精に案内され、来客が待っている部屋の扉を開けるアクセル。

 

 中には白い軍服を着用し帽子を被った青年を筆頭に、前に来た初春。

 

 そして初見となる、艦娘が他に5人室内で待っていた。

 

 

「こちらこそ急な来訪申し訳ない、僕は兵藤良介だ。よろしく」

 

「ああ、俺はアクセルだ。よろしく頼む」

 

 

 アクセルと同じくらいの背丈の青年が名乗りを上げて右手を差し出し。

 

 アクセルも自己紹介しながらその差し出された手を握り返し、友好の意を示す。

 

 その際、良介がアクセルの手の平のゴツさに戦慄をしたのは些細な事である。

 

 

「僕の仲間も紹介するよ。愛宕に長門、金剛に赤城、川内だ」

 

 

 順繰りに紹介し、紹介された艦娘が軽く頭を下げて挨拶をし。

 

 次々と名乗る艦娘に、美人しかいねぇのか艦娘は。などとしょうもない思考がアクセルの脳裏をよぎる。

 

 

「……早速で申し訳ないんだけど、ともあれ今回僕たちが来た目は……君に、アクセルさんに頼みたい事があるんだ」

 

「頼みたい事? なんだよ」

 

 

 良介に付き従ってきた、実力を知っている初春以外の艦娘も結構な実力を持っている事を気配でかんじつつ。

 

 目の前の青年の言葉の続きを待つアクセル。

 

 

「君の持つ技術力と経験で、僕たちに協力してもらいたいんだ」

 

 

 真正面からアクセルの瞳を見詰め、良介は助力を請う。

 

 その真剣さにアクセルは居心地が悪そうに頬をかき、他の艦娘へ視線を向けてみれば。

 

 他の娘達も同様な視線をアクセルへ向けていた。

 

 

「……まぁ、そっちの初春には命救ってもらってるし吝かじゃねぇけども。具体的には?」

 

「機怪群の残骸を優先して君へ渡す、ソレで新たな艤装を開発してもらいたいんだ」

 

 

 もちろん、必要な物があれば報酬として渡す。とも良介は付け加える。

 

 

「ふーむ……ほんじゃ、ちょいと付いて来てくれ。お前さん達が来るまでに作っておいた装備がある」

 

「……そんなに時間が経っていなかったはずなんだけど、もう幾つもあるのかい?」

 

「まぁな」

 

 

 どのくらいの対価を、つけてくれるんかね。などと考えつつ。

 

 少しずつであるが補修が進んでいる港湾施設の中を進む。

 

 無論、その間に会話が無いこともなく。

 

 

「アクセルさんは、機怪群にどのくらい詳しいんだい?」

 

「ん? そうだなぁ……砲弾ぶち込めば死ぬ事を知ってる程度だな」

 

「……鬼鮫や軽巡竜を、艦娘がいないのに倒したのかい?」

 

「ああ、Uシャークは船の上で戦車に乗ってぶっ飛ばしたし。軍艦ザウルスは酸性雨の中戦車でぶっ飛ばしたな」

 

「……そうかい」

 

 

 そんな他愛無い会話を交わしながら目的の場所へ進む。

 

 想定の斜め上な回答に、良介が頭痛を感じたのはきっと気のせいである。

 

 

「ところでさっきから気になってたんだが、機怪群ってなんだ?」

 

「ああ、深海棲艦とも明らかに違うから新たに分類として名付けたんだよ」

 

 

 機械の怪奇的な群、そのまんまだろ? と良介は言葉を続け。

 

 大体合ってるからピッタリだな、とアクセルは笑って答える。

 

 そして、目的のブツがある倉庫へと到着し重厚な扉を開く。

 

 その中には……。

 

 

「……気のせいかも知れないけど、あのたくさん置いてあるミサイルが剥き出しになってる艤装は?」

 

「ああ、スーパーハープーンって言うんだ。一発きりだけど結構な火力があるぜ」

 

 

 結構な量、まとめておかれているソレを恐る恐る指差し良介が問いかければ。

 

 何の気なしにアクセルは答え、絶句する。

 

 

「ちなみにお前さんだと、アレにどのくらいの対価をつける?」

 

「……実際に威力を試さないとなんともいえないのが正直なところだけど、誘導性は?」

 

「当然、抜かりはねぇ。迎撃される可能性はあるけどな」

 

 

 アクセルの問いかけに深呼吸して良介は答え。

 

 期待していた機能が搭載されている事に即決し、大体の対価をアクセルへ告げる。

 

 その内容にアクセルは肩に乗る応急修理女神に確認し、結果は……。

 

 

「そんなにいらねぇよ、群生してるミサイルバショウで量産できる代物だしな」

 

 

 それに基地に戻らねぇと補給できねぇ半分欠陥品だしな、などと告げた。

 

 

 

 それから、様々な成果物に対して質疑応答し。

 

 そういえば、と作ったは良いけど扱いに困ってたアレの存在をアクセルは思い出す。

 

 

「なぁ、お前さんらの誰か試作品試してみる気ねぇ?」

 

「試作品? どんなの?

 

 

 アクセルの言葉に艦娘達がざわつく中、いち早く川内が食いつく。

 

 

「戦闘支援するCユニットを艦娘仕様に妖精と一緒になって作ったのは良いんだけどな……コレばっかりはどーも試験できんくてな」

 

「Cユニット?」

 

 

 なんだそれは、などと首を傾げつつ妖精達が持ってきたバイザー型の何かを、妖精の指示のもと装備してみる川内。

 

 

「不思議だね、眼鏡でも何もないのに提督や君が良く見える」

 

「そういうモノだからな、右側にあるボタン押してみてくれ」

 

「これ? ポチっとな」

 

 

 興味津々に、指示された箇所にあるボタンを川内が押してみれば。

 

 視界が真っ白になり、若干薄暗かった倉庫の中身が細部まで見える状態となる。

 

 

「……なにコレ」

 

「暗視機能だ、妖精と一緒に残骸こねくりまわして作ってたら偶然出来た」

 

「暗視機能、という事は夜戦で大活躍?」

 

「まぁ、出来るかどうかはわかんねぇけど」

 

 

 呆然と呟く川内、そしてアクセルの言葉に理解が追いつき。

 

 歓喜のあまり、川内の口元が吊り上がっていく。

 

 そして。

 

 

「いやったぁー! コレなら、夜戦エースに返り咲きできるー!」

 

「……なぁ良介よぅ、お前んとこの娘さん変わってるな」

 

「……川内だけを見て判断するのは、他の娘が可哀想だから止めてあげて」

 

 

 ひゃっほーーい!とバイザー式Cユニットを装備したまま、歓喜のあまり飛び跳ねる川内。

 

 そんな少女を眺めながら、男二人はぼそぼそと喋るのみであった。

 

 




嘘装備図鑑No.2
レアリティ:☆☆☆ホロ
名称:試作型Cユニット
装備適正:全ての艦種
能力:装備している艦娘の「夜戦命中率増」「同夜戦カットイン率増」「敵艦隊夜戦カットイン率減」
入手条件:遠征『孤島のメカニックと接触せよ!1』成功報酬

嘘装備図鑑No.3
レアリティ:☆コモン
名称:スーパーハープーン
装備適正:潜水艦、駆逐艦、軽巡洋艦を除く全ての艦種
能力:火力+15、命中+3.但し最初の戦闘の開幕航空攻撃と同じタイミングにおける一発きり。
 一度使用した後は装備していない状態と変わらなくなる。
入手条件:遠征『孤島のメカニックと接触せよ!1』成功報酬、もしくはタケノコ型機怪残骸一定個数と交換。

というわけで川内さん、暗視装置と運命の出会い。
試作品なので命中補正も航空機補正もないけども、オマケの暗視装置にめろめろな模様。
スーパーハープーンは…アレです。
ゲーム的には超使いづらい事この上ないネタウェポン、開幕ボスがあるマップとかあればきっと大活躍します。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。