なるべく不自然ないように書きたいと思いますが……。
また、鎮守府側では正体不明なメタルマックスモンスター共を『機怪群』と呼称してます。
そのあたりの詳細は、次話で出したいと思います。
そして、鎮守府サイドの話を書いたら主人公の出番が少なくなった。
けれども存在感も影も薄くない、不思議!
ラバウルにある鎮守府の中の一室。
その場にて、少将の階級章を下げた青年と豊満な体を青い軍服で包み艤装を外した艦娘が話し合っていた。
艦隊に所属している初春が持ち帰ってきた、四連装16mm対空機銃を前にして。
「……ええと、愛宕。もう一回報告をお願いしてもいいかな?」
海軍帽子を外してこめかみを揉みほぐし、青年がもう一度秘書艦である愛宕へ頼み。
頼まれた愛宕もまた、困ったような笑みを浮かべて再度口を開く。
「初春ちゃん達、第二艦隊の子達が深海棲艦と機怪群の拠点と思しき港湾施設を発見。現地協力者と共に鎮圧し犠牲者もなく、鎮圧に成功しました」
「うん、続けて」
もう一度最初から報告してくれる、強い絆を結んだ女性であり秘書艦である愛宕の言葉に青年は頷く。
まだ、言うほど問題点がある内容ではない。現地協力者というのはおかしくはない、無いと言ったら無いのだ。
「現地協力者は異世界から来たと思しき人間の青年男性で、空母ヲ級を素手で戦闘不能に追い込める人物だそうです」
「……うん、続けて」
持病もなく風邪も引いてないのに、襲ってくる頭痛に額に青年は額に手を当てる。
「また、フラグシップヲ級の航空攻撃や機怪群の攻撃を受けても戦闘を続行し。集中砲火を受けてようやく戦闘不能に陥ったとも報告されてます」
「……その人は、二次大戦で大暴れした人型兵器としか思えない英霊の化身か何かなのかな」
愛宕の報告に、思わずそんな疑問が青年の口を突いて出るのもまたやむなしだろう。
「提督?」
「ああ、うん大丈夫。続けて……」
心配そうに覗き込んでくる愛宕に青年は先を促す。
大丈夫じゃないが、艦隊の命を預かる以上聞く必要がる。と自らに言い聞かせて奮い立たせて。
「その後その人物は手持ちの薬剤で致命傷を癒し、機怪群の残骸から艤装を作り上げた。との事です」
「…………うん、聞けば聞くほど男性型の艦娘とか等身大の妖精さんとしか思えないね」
また、機怪群の名前についても知っているようです、と報告書から顔を上げ提督への報告を終える愛宕。
その荒唐無稽な内容に、提督と呼ばれた青年は……心身に重い疲労を感じながら椅子へと座る。
「その場合、艦息になるのかしら?」
「どうだろう、報告からみえる荒々しさからすると艦雄って言うのもしっくりきそうだ」
口元に指をあてて素朴な疑問を口にする愛宕に、提督は乾いた笑いを浮かべながら相槌を打ち。
報告を受けた自分はどうすべきか、と考える。
「……愛宕、他の提督や鎮守府。大本営の機怪群についての解析はどのくらい進んでるんだっけ?」
「ええとぉ……無理に鹵獲しようとすると自爆する事、私達や深海棲艦とも違うテクノロジーで作られてる事。くらいねぇ」
気を取り直し、机に両肘をついて指を組み。現在の自分達が知っている情報について確認し。
殆ど解っていない現状を、改めて理解する。
「…………」
心配そうに愛宕が自らを見つめてくる中、青年提督は考えに耽る。
事の始まりは、他所の艦隊に所属している潜水艦娘達がオリョール海域で消息を絶つ事から始まった。
当初は、あまりのブラックさに逃げたんじゃないか。などと言われていたのだが、暫くして命からがら帰ってきた伊58の証言に提督達は恐怖を覚えた。
彼自身もその場にいたから、今でも克明に思い出せる。
「皆、みんな死んだでち……鮫の化け物に、食われて……!」
入渠の指示を無視して、巨大な歯にかまれ……砲撃を受けた痛々しい傷跡のまま。
泣きながら、絶叫した58の姿と声を。
「……最初に見つかった鬼鮫は、横浜鎮守府から応援にきた元帥の艦隊に完膚なきまでに叩き潰されたんだよね」
「ええ、そしてそれからですね……機怪群の報告が増え始めたのは」
その時の報告では、被害覚悟で長門が鬼鮫の突進を受け止め。潜られる前に一斉射撃で敵を轟沈させた、とも青年は聞いていた。
そして残骸は回収され徹底的に研究を進められたが、理解できない。という事と艦娘の火力ならば轟沈出来うるというくらいしか解らなかった事も。
他の艦隊が命をかけて集めた情報を基に、今はなんとか青年の艦隊は犠牲者を出さずに来てこれているが。
ソレが今後も続く保証はなく……。
とてつもなく、これ以上ないくらいに怪しく胡散臭い人物であるが今は藁にも縋りたいのが青年の正直な気持ちであった。
「……愛宕」
「ええ、お会いになるんですね?」
立ち上がり、決意を秘めて秘書艦を青年は見詰め。
愛宕は青年のその顔に頷き。
「大本営にも報告書を提出しておきますね……きゃっ」
そういい残し準備のために退出しようとし、背中から抱きしめられて声をあげる愛宕。
そして、自らを抱きしめる青年の腕が震えていることに気付き……柔らかな微笑を浮かべてそっと青年の腕に自らの手を添える。
「もう、何時まで経っても甘えんぼなのですね……『良介さん』」
特別なときにしか口にしない、青年の名前を口にする愛宕。
そして……そっと青年の腕をやさしく解き、向き直って抱き合う。
「大丈夫ですよ、私も……そして艦隊の皆も、絶対轟沈なんかしませんから」
まだ少年と呼べる年齢の頃に着任し、共に並び歩いてきた目の前の青年に優しく愛宕は囁く。
気が付けば青年に背丈を追い越された事に、そしてその頃から変わらない甘えんぼなところにフフッと笑んで。
「……愛宕、ありがとう」
「ふふふ、どう致しまして」
じゃあ、大本営への報告書作って出発しましょう。と微笑む愛する女性の言葉に。
青年は提督として、決意を秘めて頷く。
渦中の人物に、何としてでも協力を仰ぐために。
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一方その頃、渦中の人物であるチンピラメカニックはと言うと。
「お? ミサイルバショウ群生してやがる、こりゃスーパーハープーン量産できそうだな」
水芭蕉に似た名前を持ちながら、どう見ても水棲のタケノコにしか見えない機怪群をマイクロバスに乗ったまませっせこ乱獲していた。
「あの初春って娘の様子だと、兵器が必要っぽいからな」
なんで? と首をかしげて問いかけてくる応急修理女神に、笑いながら答えるアクセル。
タダであげるの? とも聞いてくる様子に頬を掻き。
「さすがにタダってワケにゃいかねぇが、まぁ食料やらクルマの修理資材やらと交換でいいんじゃねぇかな」
などと呑気に話しながら、手を止めることなくせっせとタケノコ狩りに勤しむ。
とある鎮守府の提督が心配している事が、割と杞憂なほどに義理人情に厚い不良メカニックは協力する気マンマンであった。
『唐突なメタルマックス用語解説』
スーパーハープーン:冗談みたいな破壊力と、一発きりという冗談みたいな男らしさを持つ対艦ミサイル。
なお、メタルマックス世界だとミサイルランチャーもナパームランチャーもUFO爆撃兵器も…。
全部ひっくるめて、特殊兵器という分類で戦車に搭載可能。
コレもう戦車じゃねぇな、という突っ込みはナシで。
そんなわけで鎮守府サイドの話でした。
今回出てきた提督さんは、アクセルとかなり長い付き合いになる人物です。
ついでに胃痛と頭痛とも長い付き合いになります、しょうがないね!