そして、今更でありますが作者の軍事知識はとても中途半端なので、突っ込みどころ満載かもしれない!
照明が煌々と照らす大本営の広い会議室。
「グラップラー四天王、言葉だけを聞くと古い漫画本の悪役みたいな代物だがな……」
「実際に被害が出ている上に、報告が上がっている以上認めるしかありますまい」
忌々しげに呟いたのは、海軍の制服を着こみ元帥の階級章をぶら下げた老人。
その老人の言葉に反応したのは、陸軍の制服に身を包んだ元帥の老人で……。
今、この場には海軍に限らず日本という国の軍事に携わる重要人物が勢揃いし。
その上で、皆苦虫を噛み潰したようなしかめツラを浮かべていた。
「樋口の爺様からの報告書だからな、疑う気など欠片もないよ」
「まぁ、それについては陸軍も海軍の言葉に同意であります」
彼らが手に持った資料、ソレに記されていた内容……ソレは。
港湾施設にて、樋口中将がアクセルから聞き取った内容が事細かに記されていた。
更に……。
「この輩共が、北方AL海域に勢揃い。それも巨大な戦艦まで用意しているとはな」
「核の一つも撃ち込んでやりたくなりますな。不可能ですけども」
「……海軍としては陸軍の提案に反対である」
「冗談ですとも」
幌筵泊地の松谷艦隊所属の、天龍達が持ち帰ってきた情報に更に頭を抱える上層部。
過去からの流れで核兵器を持っていない関係でないものねだりな話であるが……。
深海棲艦が出た当初に、米軍が核を撃ち込んだ結果……更なる深海棲艦の氾濫が過去に起きたこの世界において、核という兵器は選択肢に挙がる事がありえなかったりもする。
それからも、陸軍と海軍というわだかまりが多少なりとも残っている陣営間での会議は遅々とはしているものの進む。そして。
日を跨いですぐの夜明け、全提督へ作戦の……【第二次AL作戦】が発令された。
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そして、その作戦は新人提督であるアクセルにも発令されており……。
「よろしく頼むぜ、伊達さん」
「うむ、頼りにさせてもらうぞ。アクセル殿」
何回か同乗した事もある、ラバウル所属の戦艦に艦隊と共に乗り込んだアクセルは。
ついいつものノリで右手を伊達へ差し出し、そんなアクセルの態度を気にする事なく伊達は同様に右手を差し出して固い握手を結ぶ。
余談であるが、アクセルもまたいつものラフすぎる恰好ではなく……。
卸したての提督の制服に身を包んだ状態である。
そんな豪快に似合っていない服装のアクセルを、初春が指差して笑った挙句アクセルに指を逆方向に曲げられた愉快な珍事もあったりするが、今は関係ない話であった。
「そういえば良介とスケベがいねぇけど、あいつらは留守番か?」
「ああ、前回似たような作戦の時に逆に攻め込まれた事があってな」
「なるほどねぇ、まぁ。良介には願ったり叶ったりだな」
見知った顔をチラホラと見るも、その中でも特に親交がある両名が見当たらない事にアクセルは伊達へ問い。
アクセルの言葉に、伊達は言葉を濁しつつ答える。
そんな談笑する二人に、一人の提督が近付き……。
「伊達元帥、少し彼に話を聞きたいのですが……よろしいでしょうか?」
「ん? ああ、君か……」
目元にクマを浮かべ、どこか淀んだ空気を纏った青年に伊達はどこか痛ましそうな表情を浮かべつつ頷く。
そして、青年は佇まいを正すと。
「初めまして、だね。私は松野恭二。階級は大佐だ」
「アクセルだ、よろしく頼みますぜ」
淀んだ空気を浮かべたまま、笑みを浮かべて松野と名乗った青年は右手を差し出し。
気心知れた相手ならともかく、初対面である松野にアクセルなりの礼儀でその右手を掴み握手する。
「報告書は読ませてもらった、テッドブロイラーとやらだが……どうすれば殺せる?」
「……直球だな」
危うい光を目に宿し、まっすぐに問いかけてくる青年にアクセルは内心でため息を吐き。
荒野と瓦礫の世界で最も付き合いが長く、背中を預けていられた戦友と同じ光を目に宿す青年からの問いに答える。
「炎上対策をした上で後はひたすら殴り合いしかねぇな。 艦娘に通用するかはわからねぇが、一撃で絶命させてくる注射器ぶち込んでくる事あるからソレにも要注意だな」
「そうか、情報感謝する」
自分たちが勝利を収めたあの戦いを思い返しながら、松野の問いに答えるアクセル。
そして、松野は待機している自らの艦隊へ指示を出してくる。と言い残しアクセルへ例を述べてその場から立ち去り……。
「……すまんなアクセル殿、彼もな……」
「……これで3人目だぜ、同じ目をした提督に相談を持ちかけられたのは」
婚約とも言える約束を交わしていた艦娘を、無残に焼き殺された松野の背中を見送りながら伊達は、やるせなさそうに軍帽を深く被り。
この船に乗ってから、似たような相談を持ちかけられたアクセルは重い重いため息を吐いた。
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ところ変わって、艦娘らが待機している食堂では……。
「姉様! アナタが私の姉様なのですね!」
「あ、あの山城……?」
「違うわ! この方は私の姉様よ!」
「何言ってるのかしら、この姉様は私にこそ相応しいわ」
アクセル艦隊所属の扶桑が、3人の山城に囲まれて取り合いされていた。
「……提督に指輪贈られてる山城が、何か言ってるわ」
「……さり気なく指輪見せてくる姿勢が、嫉ましいわ……」
「こ、これは、え、ええっと…………不幸、だわ……」
そんな、堂々と名乗りを上げた3人目の指輪をつけた山城に一人目と二人目の山城の言葉の砲撃が集中。
予想外の攻撃は3人目の山城に直撃、回避性能に難がある山城は轟沈という名の戦線離脱を余儀なくされた。
「アレ、ほっといて良いんかのう……しかし、折られると思ったのじゃ」
「さすがに、あの中に割って入るのは大変なのよねぇ。ソレに関しては初春の自業自得じゃないかなぁ」
アクセルを指さし大笑いしたせいで、逆方向に曲げられた指をプラプラさせながら兵藤艦隊の初春が山城に囲まれる扶桑を生暖かく見守り。
問いかけられた夕張はというと、様々な艦隊からわらわらと集まってきた山城達の剣幕に……為す術なし、とばかりに肩を竦めつつ初春の言葉に苦笑いを浮かべる。。
さりげなく夕張の隣に雪風も座っているが、こちらは目をキラキラさせてひたすらパフェを頬張る任務を続行している為会話に参加する余裕はあんまりなかったりする。
そんな雪風の様子に夕張は微笑みを浮かべつつ……。
英気を養う為、という名目で大盤振る舞いされたパフェを夕張も一口食べつつ多種多様な艦娘が、色々と話し込んでいる食堂内を見回して……。
「結構、練度がバラバラね。見る感じ」
「しょうがないわ、少しでも主力を奥へ送るために色んな艦隊が招集されたんだし」
「あ、瑞鳳……ソレ、本当に気に入ってるのね」
聞きなれた兵藤艦隊の瑞鳳の声に振り向く夕張。
その先に居た瑞鳳の肩には、アクセルに頼み込んで譲ってもらったと思われるビームハチドリが止まっていた。
「そりゃそうよ! ほら見て見て!99艦爆の足も良いんだけど……この子の足もすっごい可愛いの!」
「ごめん瑞鳳、私艦載機はよくわからない」
目をキラキラさせ、手乗りビームハチドリと化したソレを瑞鳳は夕張へ見せるも。
その魅力がいまいち理解できない夕張は、やんわりと回答を拒否する。なお艦載機を載せれたとしても魅力を理解できなかったのは言うまでもない。
「あのー、そう言えば初春さんと瑞鳳さん。今更なんですけども……」
「? どうしたのじゃ、雪風」
「確か、兵藤提督ってラバウルで待機でしたよね?」
「うむ、銃後の守りに就いておるの」
ひとしきりパフェを堪能した雪風が、ふと初春と瑞鳳の存在に気付き。頭にハテナを浮かべながら問いかける。
そんな雪風に初春は頷いて見せ、その返答に雪風の頭上に浮かぶハテナは更に増え。
「そう言えばそうよね。なんで二人ともここにいるの?」
「ふむ……まぁ平たく言うとアレじゃよ。我らの提督殿なりのアクセル殿への誠意なのじゃ」
「提督、最後の最後まで不参加になる事を気にしてたからねー」
「あー……なるほど」
雪風の疑問に、今更ながらに二人がいる事に疑問を感じた夕張もまた首を傾げて尋ね。
夕張の言葉に……初春は愛用の扇を広げたり閉じたりしながら、素直に答える。
捕捉するような瑞鳳の苦笑いに、夕張はやっと合点がいったという表情を浮かべ……。
「頼りにさせてもらうわよ? 二人とも」
「うむ、妾に任せるがよい。火力以外はの!」
「そこは大船に乗ったつもり、くらい言おうよー」
夕張は拳を軽く握り、初春とトンと打ち合わせ。
不敵に笑みを浮かべた初春もまた力強く宣言、そんな初春の発言内容に瑞鳳は困ったような笑みを浮かべつつ、パフェの最後の一口を頬張るのであった。
【定期コーナーと化してきたメタルマックス用語辞典】
ビームハチドリ……初出:メタルマックス2
最弱の雑魚的で、戦車に乗らずにパチンコを装備した主人公ですら倒せる敵。
ドラク◎でいうとスライムみたいな存在であるが、まがいなりにもビームをぶっ放せるので迎撃専用艦載機としては使えない事もなさそう。
と言うわけで36話お送りしました。
ドラムカンさん達は一旦孤島に戻り、きっちり準備をしてから港湾ちゃん救出する予定なのでまだドンパチには入ってなかったりします。
そしてここからは私信なのですが…。
某アルカディア様で昔書いてた、メタルマックスSSがあるのですけども。リメイクしてこっちで出そうか地味に迷ってます。
今見返すと割と手直ししたい箇所が多いので、こちらと両立がしんどそうではありますけども。
もし、興味がございましたら【荒れ果てた世界に転生(う)まれたけど、私は元気です】で検索して頂くと出てきますのでどうぞー。