艦これMAX   作:ラッドローチ2

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北方ちゃん達に新たに迫る危機、そこに現れるヒーロー!
一体、何ドラムカンなんだ……!

そんな話です。
勢いでかっとばしてるので、要注意です。


34 紅獅子、(物理的に)海上に立つ

 

 

 

 多大なる犠牲を出しながらも、偶然と幸運が重なりなんとか北方AL海域からの離脱に成功した北方棲姫達。

 

 そんな彼女たちの状況は、お世辞にも良いとは言えない状況にあった。

 

 砲撃の余波で転がされ破片を身に幾度も身に受けた北方棲姫の身も無事とは言い難く、彼女を抱えてここまで来たフラグシップ軽母ヌ級も甲羅のような装甲のあちこちから煙を噴いており。

 

 時に血路を切り開き、殿を務めてきたフラグシップ重巡リ級に至っては片腕の艤装が機能を停止し、ブラ状の胸部装甲もズタボロで……その身のあちこちに弾痕が刻まれていた。

 

 

「ダイジョウブ?」

 

 

 そんな、一番の功労者とも言えるリ級の状況に……少し頭が冷えた北方棲姫が気遣い。

 

 気遣われたリ級は、周囲への警戒を続けながら北方棲姫へ顔を向け、安心させようとしているのか歪であるが不器用な笑みを浮かべる。

 

 しかし、依然として状況が落ち着いたといえる状態でもなく……。

 

 3人は、当てのない逃避を続ける事となる。

 

 そして、離脱してから数時間が経ち太陽が水平線に没しかけた、その時。

 

 何かが飛来する音が、彼女たちの耳朶を打つ。

 

 

「ッ!!」

 

 

 音に反応して真っ先にリ級が動き、生き残っている対空砲を稼働させて手りゅう弾のようなソレらを次々と撃ち落としていくも。

 

 本調子な状況ならともかく、損傷によって著しく機能が低下した彼女では全て撃墜することも叶わず……。

 

 次々と迎撃しそびれた物体、手りゅう弾が北方棲姫ら3人に降り注ぐ。

 

 本来、深海棲艦らである彼女らを傷つけるには明らかに威力不足であるはずのソレは、北方棲姫を咄嗟に庇ったヌ級と迎撃しきれなかったリ級の装甲を傷つけ、体に傷跡を残していく。

 

 

「アゥゥッ!?」

 

 

 ヌ級に庇われている北方棲姫にダメージが行く事こそ無かったが、彼女を庇ったヌ級が受けた衝撃は……腕の中にいる北方棲姫にも存分に伝わり。

 

 その衝撃が、北方棲姫は自らを庇っているヌ級がどれだけの損害を受けたかを思い知らされる。

 

 そして……。

 

 

「ウキーッキッキッキ! 死にたいバカ、見つけたぁ!」

 

 

 ひどく耳障りで、甲高い猿の鳴き声のような声と共にヌ級に庇われている北方棲姫の体を更なる衝撃が襲う。

 

 庇われたままの北方棲姫が見たもの、ソレは4本の腕を持つ猿のような異形が手に持っていた武装で残ったもう片方の艤装の穴だらけにされて戦闘不能に陥ったリ級と。

 

 今も、猿の異形が投げつけてくる手りゅう弾から自らを庇う事で次々と致命傷を負わされていくヌ級の姿であった。

 

 

「モウ、イイカラッ!ダイジョウブダカラ!」

 

 

 ここまで自らを庇って運んできてくれたヌ級が傷つけられていっている、という事実を受け入れがたい北方棲姫は喚くようにヌ級に自らを放すよう懇願する。

 

 しかし、ヌ級は……それでも腕を解くことはなく、ただ愛おしそうに北方棲姫の頭を撫でるのみで……。

 

 

「ッ───!!」

 

「キキ? お前、死にたいバカか?」

 

 

 もはや自沈を待つのみ、と言った様相のリ級が……瞳に宿る金色のオーラを揺らめかせて声なき声で咆哮を上げながら敵へと飛び掛かろうとするも。

 

 今にも飛び掛かられようとしている異形の猿、かつて居た地で『スカンクス』と呼ばれ悪名高い存在であったソレは動じる事なく。

 

 ただ小ばかにしたような哄笑を上げ……飛び掛かろうとしたリ級の全身を手に持った武装で全身に弾痕を刻み、一歩手前に着水したリ級の背中を容赦なく踏み付ける。

 

 

「死にたいバカ、死んだらバーカ! ウキーキッキッキッキ!!」

 

 

 不合理な、理性的とは言い難い言葉を叫びながらスカンクスはリ級を足蹴にしたまま北方棲姫を庇うヌ級へ照準を向け。

 

 その引き金を、ためらいなく引き絞る。

 

 

「ッ!!」

 

 

 北方棲姫を庇い続けるヌ級の意識が一瞬途切れ、それでも尚手の中にいる北方棲姫を守ろうと抱きしめ続ける。

 

 既に、腕の中にいる北方棲姫のヌ級とリ級を案じる泣き叫ぶ声はヌ級の耳には届いておらず……。

 

 ただ、腕の中にいる北方棲姫が助かる事だけを願い続ける。

 

 その、人型とは言い難い異形の深海棲艦でありながら子供を守ろうとする母親のような姿に、スカンクスは躊躇いを感じるどころか……嗜虐的かつ歪な笑みを口元に浮かべて。

 

 ヌ級が腕の中に庇う北方棲姫ごと葬り去ろうと、銃を仕舞い4本の腕で手りゅう弾を用意し……。

 

 

「スカンクス、ハリケェーーーン!!」

 

 

 スカンクスの代名詞とも言える、理不尽なまでに途切れることのない手りゅう弾の雨をヌ級らへと降り注がせ

 

 ソレらは、ヌ級らに一つも当たる事なく……どこからともなく放たれた閃光によって空中で爆裂四散した。

 

 

「キキッ!?」

 

 

 想定外の出来事に目を見開くスカンクス、そして。

 

 立て続けに、深海棲艦仕様の航空機がスカンクスめがけて雨あられと襲い掛かる。

 

 

「キーー!?」

 

 

 想定外の事象に目を見開き、ケダモノじみた叫びを上げながらスカンクスは回避してのけ。

 

 異常を察したのか、踏み付けていたリ級と虫の息のヌ級らを放置してその場から逃げ出す。

 

 

「……逃がしたか。おい、大丈夫か?」

 

 

 ヌ級に庇われ、目をぎゅっと瞑っていた北方棲姫に声がかけられ。

 

 その逞しい男の声に、少女は恐る恐るその目を開けば……。

 

 そこには、燃える炎のような赤い髪と両目の上下に走っている紅いラインが印象的な男が自らに手を差し伸べて、立っていた。

 

 

「……ダレ?」

 

「俺か?俺は……ドラムカンとでも呼んでくれ」

 

 

 一見人間に見えなくもないが自分達深海棲艦と似たような空気を持つ男に、北方棲姫はきょとん、とした表情を浮かべて問いかけ。

 

 問いかけられた男の方はと言えば、どこかシニカルな笑みを浮かべると損傷で意識を失っているヌ級を軽々と担ぎ上げる。

 

 

「ッ!ヌキューニナニスルノ!?」

 

「変な事をする気はない、安心しろ」

 

 

 ヌ級を担ぎ上げたドラムカンに、恩人であるヌ級に何かされるのではないかと不安を感じた北方棲姫はドラムカンに縋り付き。

 

 そんな少女の様子に、ドラムカンは不器用に少女の頭をクシャクシャ撫でると……。

 

 

「中間、こいつは載せれるか?」

 

「……ダイジョウブ」

 

 

 ドラムカンが呼びかけた先を北方棲姫が見てみれば、そこには不思議な形状の小型船があり……。

 

 その上には……。

 

 

「チューカン……イキテタノ?」

 

「……勝手ニ、殺サナイデ」

 

 

 小型船のような何かに鎮座し、艤装を展開している中間棲姫の姿に。彼女がとっくに死んだと思っていた北方棲姫は本日何度目かもわからない驚愕を覚え。

 

 ドラムカンから虫の息のヌ級を受け取りながら、中間棲姫は北方棲姫の問いに憮然とした物言いで返し。

 

 その間にもドラムカンはと言えば、オイルとも血ともつかない液体で海面を染め上げている轟沈寸前のリ級を拾い上げに行っており……。

 

「……ナンデウイテルノ!?」

 

 

 紅い髪の男が、海上に立ってリ級をサルベージしている事実に驚愕の叫びを上げた。

 

 そういえば、ヌ級を担ぎ上げた時もアイツ海の上に立ってた!と思い出す北方棲姫。

 

 そんな目の前にいる理不尽について中間棲姫に北方棲姫は、疑問をぶつけるも……。

 

 

「些細ナ事ヨ」

 

 

 少女の素朴かつ重要な疑問は一刀両断であった。

 

 中間棲姫の艤装を修復する際にでた余剰品と人型深海棲艦の脚部艤装が、奇跡的なのかはたまた運命の悪戯か……ドラムカンと相性が良かったというだけなのだが、そのあたりの説明を中間棲姫が面倒臭がったとも言える。

 

 そんな目の前の納得いかない光景に少女が難しい顔をしている間にも、ドラムカンは軽々とリ級を担ぎ上げて中間棲姫が乗っている船に乗せた、その時。

 

 

「キケケケケ! 死にたいバカ、死んだらタダのバカ!死ねぇ!」

 

 

 けたたましい、耳障りな叫びと共に砲弾がドラムカン達へと襲い掛かり。

 

 その声に、先ほどの攻撃恐怖を刻まれた北方棲姫は、無意識に目を閉じてうずくまろうとして中間棲姫に抱き上げられ。

 

 

「ふんっ」

 

 

 ドラムカンに至っては、背中に担いでいた大型の電磁砲……電磁イレイザーを一瞬で構えるや否や。

 

 音速で迫りくる砲弾を、電磁光線で薙ぎ払うように叩き落した。

 

 

「ウキ!?」

 

 

 面白くないのはスカンクスである、確実に殺すために……わざわざ待機させていた巨大水上戦車、ダイダロスまで持ち出したというのに。

 

 目の前に立つ紅い髪の男、そして船の上に悠然と座る女は怯える表情を何一つ見せていないのだから。

 

 そして、紅い髪の男……ドラムカンはゆっくりと口を開き、告げる。

 

 

「貴様が何者かは知った事ではないが、覚悟はできているんだろうな?」

 

 

 目の前の、戦車に跨る異形の猿……スカンクスへの宣戦布告を。

 

 




【唐突なMM用語辞典】
スカンクス……メタルマックス2、およびリメイク版の2Rにおけるグラップラー四天王の一人であり四天王最弱。
 SFC版の2からはそれなりに強化されてるはずだが、序盤に戦うボスという位置づけのせいかそんなに強化されておらず、初見殺し要素もない。軟弱者め。
 余談であるが、グラップラー四天王と言っておきながら……こいつら四天王仲間が撃破されても驚くほどに話題に出さない。
 ゲーム的事情と言ったらそれまでだが、あまりにも仲が悪すぎるというか無関心すぎるだろお前ら。

電磁イレイザー……メタルマックス3が初出の、終盤で手に入る強力な人間用兵器。
 シリーズによって範囲が若干異なるが、3では攻撃範囲が可変なため敵全体も射程に収める事が可能な超兵器。
 しかも貫通なので、ビーム耐性が無い雑魚は開幕1ターン目で即死するケースすらある。
 また、人間で砲弾やミサイルの迎撃が可能となる「人間パトリオット」の適応大将でもあったりするが……。
 どうも取り出す際に時間がかかるのか、取り出したのは良いものの迎撃が間に合わないという笑える展開が多々起きる。


はい、と言うわけで予測してた方もいますがドラムカン参戦です。
彼はバイオモンスター的遺伝子組み込まれた、ある意味生物兵器が理性もって歩いてる存在なので……。
割と深海棲艦艤装と相性が良く、海上戦闘に適応できたという裏話があります。

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