艦これMAX   作:ラッドローチ2

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提督これくしょんな番外編、第二話です。
前回出せなかった提督、および追加で来ていた提督をメインで出させて頂きました。
ちょっと、ラスト付近に少しショッキングかもしれない描写ありますのでご注意ください。

「俺の提督はこんなんじゃねぇYO!」という突っ込みあるかもしれませんが、あらかじめご了承いただけると幸いです(露骨な責任逃れ


EX02 提督らの戦い

 

 北の果てにある幌筵泊地。

 

 そこに所属する提督、松谷凶羅中佐の執務室にて……。

 

 

「威力偵察ぅ? どういうことだよ提督」

 

「うむ、実はですね~」

 

 

 長身痩躯な提督から持ちかけられた言葉に、秘書艦かつ彼の艦隊で最も長い付き合な軽巡天龍が不機嫌気味に素っ頓狂な声を上げる。

 

 若干不機嫌気味なのは、とても大事な話があり二人きりで話がしたいという事で……。

 

 逸る気持ちをこらえ、気分を高揚させてやってきてみればこの話だったからである。

 

 そんな彼女の気持ちを知ってか知らずか、松谷は言葉を続ける。

 

 

「北方棲姫が居座っている海域の付近に、他海域から機怪群が流入してきているという情報が入りましてですねー」

 

「あー、そういえば遠征に出ていたチビどもも言ってたなぁ」

 

「はい~、なので。僕が一番信頼している天龍に任せようと思いまして~」

 

 

 松谷の言葉に、資源の回収や輸送船団の護衛として遠征にしょっちゅう出ている駆逐艦敷波の言葉を天龍は思い出し。

 

 天竜の言葉に松谷は首肯を返し、眼光だけが鋭いぼんやりとした笑みを浮かべる。

 

 実は、地味に駆逐艦たちに怖がられている松谷のこの表情だが……付き合いが長く彼に対して特別な感情を抱いている天龍にとっては何てことはなく。

 

 

「しょ、しょうがねぇなぁ!この天龍様に任せな!」

 

「うん、頼りにしてますよ~」

 

 

 松谷の言葉に頬を赤らめ、その豊満な胸をドンと叩いて力強く天龍は宣言し。

 

 いつもながら頼もしい秘書艦の言葉に、松谷は満足そうに笑みを深める。

 

 

「な、なぁ提督……この任務が終わったら、さ……」

 

「? どうしましたか~?」

 

 

 そして、先ほどまでの勢いを急速に萎ませた天龍は顔を真っ赤にしてうつむき、両手の指をもぞもぞとさせ。

 

 胸の内の想いを……。

 

「お、オレとケッ……な、なんでもない!」

 

 

 告げようとしてヘタレ、逃げるように執務室から退出した。

 

 そんな秘書艦の様子に、松谷は不思議そうに首を捻るのみであった。

 

 

 

 

 

 

 

 北の果てにある泊地にて、ほのかに甘いラブコメ的雰囲気が流れていた頃。

 

 呉鎮守府……のごく近所にある『ピッツァ呉』では、ある意味修羅場が巻き起こっていた。

 

 

「こいつは1番テーブル、そいつは4番テーブルだ! 戦艦と空母達が腹空かして待ってるぞ!」

 

「は、はい!」

 

 

 提督の制服をコック風に改造した、少将の階級章をぶら下げた男…上春実明が手際よく焼きあがったピッツァをどんどん皿へ載せていき。

 

 衣装をウェイトレス風に改装した神通がソレを受け取るや否や、一人では到底運びきれなさそうな量のピッツァを指定されたテーブルへ運んでいき……。

 

 

「て、提督! 第三陣が即座に壊滅しました!!」

 

「なにぃ!? 敵の戦力は化け物かぁ!」

 

 

 神通がお皿をテーブルに置いた瞬間、一瞬でそれらが消えた。

 

 

「やはり、呉に来たならコレを食べないとな。姉よ」

 

「そうね武蔵、けども……あなた私の分も今もぎ取っていかなかったかしら?」

 

「気のせいだ、姉よ」

 

 

 艤装を解除した二人の大和型戦艦が座っているテーブル。

 

 優雅に食事を続ける二人であったが、会話の内容と食事量は優雅ではなかった。

 

 

「テロ貝のピッツァ……これは気分が高揚します」

 

「ナマコパスタも上々よ、加賀」

 

 

 4番テーブルでは、兵藤艦隊所属の赤城と加賀が嵐がごとき速度で届いた料理を仲良く分けて平らげており。

 

 新メニューを食べに来ていた、一般市民達は艦娘の健啖っぷりに一様に驚きの表情を浮かべ。

 

 彼女たちが所属している艦隊のエンゲル係数を想い、提督らに若干の同情の念を向ける。

 

 

「提督……あの方たち、物凄いですね……」

 

「ふぇぇ……あんなに食べたら、おなかはちきれちゃいそうです」

 

「そうだねぇ、あ。艦娘専用って項目にナマリタケパスタってある……どうやって作るんだろうね、コレ?」

 

「さぁ……?」

 

 

 別のテーブルにかけている吹雪は……メニューを手に持ったまま、嵐のように次々と運ばれる料理を消費していく戦艦と空母を見詰め。

 

 同じテーブルに座っている、吹雪と同じ艦隊に所属している軽巡名取りもまた吹雪と同じように、自分達では考えられない食事っぷりを続ける戦艦と空母に唖然とし。

 

 いつもお世話になっているお礼に、と二人の艦娘を連れてきた囲炉裏城 定岡少佐はマイペースに目に留まったメニューに首を傾げていた。

 

 

「で、でも本当にごちそうになっても良いんですか? 提督……」

 

「気にしないでどんどん食べてよ、二人ともロクに指揮もできない僕を支えてくれてるからね。そのお礼だよ」

 

 

 ここまで来てなお、引っ込み思案な名取は囲炉裏城を上目遣い気味に見詰め。

 

 そんな少女の様子に、囲炉裏城は気にしないでいいよ。と穏やかに笑って好きなものを頼めと、口にした。

 

 

 

 

 そんな中、修羅場が続く厨房の勝手口が開き。

 

 パスタを茹で、料理を作るマッスィーンと化してきた上春艦隊所属の摩耶が据わった目のままそちらを見てみれば。

 

 

「うぃーっす上春少将、追加の機怪群食材お持ちしましたぜ」

 

「おお、良いところに来てくれたな! さぁ手伝え、上官命令だ!!」

 

「藪から棒に横暴だなオイィ!?」

 

 

 機怪群の食材化の功労者であり、大入り満員という名の修羅場の原因がそこに居た。

 

 そんな男を上春は即座に戦力として、男……御影 望中佐が断る前に職権の乱用で無理やり徴用。

 

 

「従業員入口から入り直して着替えた後にお前は厨房入ってくれ! 秘書艦はいるか?」

 

「龍驤と隼鷹連れてきた」

 

「あ、アホォ!?ウチらまで巻き込む気かいな?!」

 

「アタシ、鎮守府かえってナマリタケで一杯やりたいんだけど……」

 

 

 そのまま御影を厨房に立たせる、なんて事はせずきっちりと上春は着替えの指示をし。

 

 御影に追加戦力の確認を実施、自分だけが修羅場に巻き込まれたくなかった御影は即座に一緒に来ていた龍驤と隼鷹を戦力として申告。

 

 二人の苦情を聞く間もなく、なし崩し的に協力させた。

 

 

 

 

 

 

 あちらこちらで賑やかに、そして穏やかな平和な時間が流れていた。

 

 しかし……。

 

 

「輸送艦の護衛として遠征に出ていた艦隊が、輸送艦隊ごと壊滅か……」

 

「ええ、残骸は軒並み焼き払われており。艦娘ももはや元の形も……」

 

「……彼女たちの冥福を、祈ろう」

 

 

 横須賀鎮守府の、一室。

 

 その場で、影貫は……一人の老人に写真と資料を手渡し、たった二人の会議を行っていた。

 

 

「この燃え方は焼夷弾とは違うな、むしろ強力な火炎放射器によるものだろう」

 

「しかし、海上で火炎放射器を使うとは少々考えにくいのですが……」

 

「儂もそう思う、じゃが……この燃え方は見覚えがあるからの。アレよりも更に酷いから一般的な火炎放射器とは次元が違うものを使ったのかもしれぬ」

 

 

 まるで、遺伝子の欠片まで燃やし尽くされたかのような輸送船の乗務員の写真を、眉を顰めながら老人は見詰め。

 

 

「今回、護衛として同行していた艦娘の編成は?」

 

「……かなりの錬度を持つ、重巡を中心とした軽巡と駆逐艦を構成された6隻でした」

 

「……通常は十分すぎるんじゃがのぅ」

 

 

 艦娘、そして罪なき輸送船の乗務員を虐殺した何者かへの怒りを燃やしながら老人……樋口 潤三中将は嘆息し。

 

 

「影貫坊、この件は儂が主導で動かさせてもらうぞ」

 

「よろしいのですか?」

 

 

 階級が下であるにも関わらず坊呼ばわりされるも、特に気にすることなくむしろ老人を気遣う様子を見せる影貫。

 

 その言葉に、カカカと樋口は哄笑を上げ……。

 

 

「のう、影貫坊。この写真で気付かんか?」

 

「……この写真に、何か?」

 

 

 普段の好々爺とした表情を消し、獰猛な笑みを浮かべたまま樋口が指示した写真。

 

 

 それは、輸送船の残骸に残った人型の黒い消し炭で。残っている金属部品から辛うじて艦娘だった、と判断できる写真だった。

 

 

「これをやらかした輩はの、艦娘を輸送船に縫い付けた上で焼き殺しておる」

 

「っ!!」

 

 

 樋口の言葉に、ようやく影貫は気付く。

 

 その消し炭の右腕部分は高く掲げたようになっており、その左右に何かが突き刺さっていた痕がある事を。

 

 

「……どこのどいつかも解らぬが、コイツは楽しんでいるんじゃよ。殺しを」

 

 

 皺まみれの拳を血管が浮かぶほどに握りしめ、絞り出すように樋口は言葉を紡ぎ。

 

 その瞳に、確かな怒りを燃やして言葉を続ける。

 

 

「これをやらかしたヤツには思い知らせてやらねばならん。自分が何をやったかをな」

 

 

 海軍の生き字引とも言える男、樋口中将。

 

 よほどの粗相をされ馬鹿にされても怒る事がない、仏とも呼ばれていた男であり。

 

 彼を知る人物からは、決して怒らせてはならない男と評されていた。

 

 




かちゅーしゃさん、ヨシー王さん、笑う男さん、勇脚さん、レイトレインさん。
アイデア使わせて頂きました!勇脚さんの提督の嫁(というより孫?)は、ちょっと会話内容的に出しにくかったので見送りました、ごめんなさい!

アクセルが関わっていない、しかし重要な局面で彼ら提督は日夜戦い未来のために頑張ってます。

追記
報告としてあがってきた犠牲者は、天龍ちゃんとは別の子となります。
感想を見て、「あ、やべ」と思ったので急遽あとがきにて追記させて頂きました。

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