艦これMAX   作:ラッドローチ2

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方向性は決まってるけども、文章がしっくりこなくて何度も書き直すことに…。
今回は、兵藤さん視点での話+αな内容です。

もしかすると、後日書き直すかもしれません。


32 アクセルという男

 

 

 機怪群と深海棲艦に頭を痛める世界に、次元の壁をぶち抜いてアクセルがやってきてからそれなりに時は流れ。

 

 当初は貧相な補給基地でしか無かった港湾施設も、気が付けばそれなりの設備を擁する施設へとビフォーアフターを遂げており。

 

 下手をすると実験動物扱い待ったなしであったアクセルも、気が付けば海軍の中でそれなりの立ち位置となっていた。

 

 そんな、アクセルという男について当初の評価はバラバラであったが今は割と安定した一つの評価が出ている。

 

 ソレは、「口も態度も悪いが義理堅く、人情に厚い技術バカ」である。

 

 

 そして、そんな男は今。

 

 白い海軍の制服に身を包み、普段のラフな格好とは程遠い状態でとても立派な式典に呼ばれていた。

 

「なぁ伊達さんよぅ」

 

「どうした、アクセル殿」

 

 

 ひそひそと、隣に座る伊達元帥に声をかけるアクセル。

 

 その額には静かに青筋が浮かんでいた。

 

 

「なんで、ただ飯食わせてくれるって話がこうなってんだよ……!」

 

「そう言うな、これも必要な話でな……」

 

 

 檀上に立つ大本営のお偉いさんの話を右から左に聞き流しながら、アクセルは静かに詰問を続ける。

 

 この男、伊達からの誘いでただ飯が食えるとホイホイやってきたのだが……。

 

 見事なまでに、策略というなの大人の事情に絡め取られていた。

 

 

「だからって、なんで俺が提督になるって話になってんだよ……!!」

 

 

 器用にも、静かに魂の叫びを上げて頭を抱えるアクセル。

 

 つまり、そういう事でった。

 

 

 

 なお、そのころいつもの港湾施設では。

 

 

「む? アクセルはどこだ?」

 

「いらっしゃい武蔵さん、アクセルさんはラバウルの方へ行ってますけど」

 

「そうか……コレをまた直してもらおうと思ったのだがな」

 

「……今度は、どうやって壊したんですか?」

 

「腕が立つ、という孤島のとある男と腕合わせをしてな……その時に壊した」

 

 

 また愛用の艤装をぶっ壊した武蔵が、修理依頼品を持ち込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 つつがなく、アクセルさんの提督への任命式が終わり。

 

 めでたい席と言う事で立食パーティーが開始されたんだけども……。

 

 

「あんのロリコン野郎……今度はアイツの愛車の足回りをキャタピラに変えてやる……!」

 

「まぁ、落ち着きなってアクセルさん」

 

 

 今日の主役は、僕の前でこれでもかってくらい料理かっくらってます。

 

 まー、だまし討ちみたいなモノだったしアクセルさんの怒りもわかるけども。

 

 

「しょうがないさ、本来は艦娘を運用するには提督にならないといけない規則もあるし」

 

「そりゃそうかもしれんがよー、方法ってもんがあるだろうがよー」

 

 

 バリバリと骨ごとチキンを齧りながら愚痴るアクセルさん、割とどころじゃないくらいチンピラオーラ全開だね!

 

 けども、僕は知っている。今回の件は伊達元帥が愛車にナマリタケ生やされた報復も兼ねているという事実を。

 

 

「しかし良介、お前愛宕のそばにいなくていいのか?」

 

「その愛宕に送り出されたのさ、恩人のめでたい席だから出席しなさいって」

 

 

 チキンを文字通り骨まで食い尽くしたアクセルさんが、そんなことを聞いてきたので特に隠すことでもないし素直に答える。

 

 しかし、今度はサンドイッチを掴んで頬張るとか……どんだけ健啖なんだろ、この人。

 

「すでに尻に敷かれてるんだな」

 

「ずっと前からそうだよ、それに尻に敷かれるのも悪くないよ?」

 

 

 僕の言葉に、そんなもんかい。とアクセルは肩を竦める。

 

 なんせ、僕がまだ子供だったころから見てきてるからね……愛宕。

 

 ぶっちゃけ、彼女がいない生活なんて考えられないし。

 

 

「そういえばアクセルさん、地味に気になってた事があるんだけど」

 

「あ? なんだよ」

 

 

 ワインボトルに手を伸ばしかけてたアクセルさんに、ずっと疑問に感じていたことをぶつける。

 

 ソレは、緑色の髪にオレンジ色の前髪が地毛であるかどうか。なんて事ではなく。

 

 

「アクセルさんて、年齢いくつぐらいなのさ?」

 

「あー……グラップラーぶちのめす旅に出たのが16か17だったから、今18ぐらいじゃねぇかなぁ」

 

 

 僕の質問に、周囲の時が凍ったのを実感した。

 

 あ、助平少将が咽てる。

 

 ……あ、このピザは呉の名物提督の新作かな?おいしいなぁ。

 

 

「で、それがなんだってんだよ?」

 

「え、ええとだね。こっちだとお酒は20歳になってから……なんだよ」

 

「マジで? まぁいいか」

 

「良くないよ?!」

 

 

 胡乱げな瞳でワインボトルを持ったまま僕を見てくるアクセルさんに、現実へ返り慌てて止める僕。

 

 

「かてぇ事言うなよー、向こうにいた頃はガンガン飲んでたんだからよー」

 

「ちなみに、どんな酒飲んでたのさ」

 

「こっちでいう工業用アルコールとドラッグ詰め合わせな酒があってな、イチコロって言うんだが……」

 

「論外にもホドがあるよ!?」

 

 

 思った以上にヤバイのを飲んでたアクセルさんに戦慄しつつ、どうやって止めるべきか頭をフル回転させる。

 

 そして……。

 

 

「まぁ、うん。そんなお酒飲んでたんなら大丈夫だね、ワイン程度なら」

 

「そこで諦めんなよ!?」

 

 

 説得をあきらめた僕に、助平少将が全力で突っ込みを入れてきた。

 

 人間、できることと出来ない事があると思うんだ。僕。

 

 

「お? 超うめぇなコレ」

 

「言ってる間に空けて飲んでるんじゃねぇよ!? 少しは待てよ今突っ込み考えてんだからこっちは」

 

「知るかよ」

 

 

 ワインボトルの栓を開け、ラッパのみするアクセルさんを全力で突っ込んで止める助平少将。

 

 この人、ボケしか場にいないときはツッコミに回れる人だったんだね。

 

 

「しかしほんとうめぇなコレ、昔のワインやら何やら漁っては飲んだもんだが……美味い飯と酒が飲めるってだけでもこの世界に来た甲斐あったわ」

 

「……なぁアクセルさんよぉ、お前さん結構な腕利きだろ? それでも食い物ってのはろくなの手に入れられなかったのか?」

 

「難しかったなぁ、稼ぎは片っ端から装備調達と戦車の改造に使ってたし」

 

 

 しみじみと語るアクセルさんの言葉に、今まで彼が背負ってきた苦労を垣間見る。

 

 そして、ある意味で年相応な笑顔で無邪気に彼は笑った。

 

 そんなアクセルさんの言葉に、突っ込みを止めた助平少将が問いかけてみれば。

 

 アクセルさんは、遠い目をしてスーパーレアメタルの調達が超しんどかったと呟きながらぼやく。

 

 

「そうかい……ついでにかわいこちゃんも多いし、提督にもなったことだしこっちに骨を埋めてみたらどうだ? 向こうに帰るアテもないんだろ?」

 

「……それも、そうだな。夕張達ほったらかしにしてくのもマズイしな」

 

 

 助平少将の言葉に、何か考えながらも頷くアクセルさん。

 

 

「アクセルさん、夕張達の気持ちに気付いてたんだ」

 

「そりゃお前気付くわ。ただ、向こうに帰るって考えるとなー」

 

 

 ワインボトルを一本空にし、二本目を手にしながらアクセルさんは呟く。

 

 恩人ともいえる彼が、この世界に骨を埋める考えを持ち始めた事に僕は喜びを感じていた。

 

 戦いが終わると言う事は無くても、それなりに穏やかな時間が今のように過ぎて行けば平和に過ごせるかもしれない。

 

 

 

 僕はそう考えていた。

 

 けれども、今この時僕たちは気付いていなかった。

 

 新たな激戦が、すぐそこまで迫ってきている事を。

 

 

 

 

 

 

 

 北方海域にあるとある泊地。

 

 その場所は、提督達の間で『北方AL泊地』と呼ばれていた。

 

 

「やぁ小さなレディ、考え直してくれたかな?」

 

「カエレ!」

 

 

 今、その泊地で……。

 

 戦艦や重巡に雷巡、空母に守られるような形で港にいる白い少女に……顔が露出した全身タイツにマントを纏っている、怪しすぎる男が声をかけていた。

 

 

「オネエチャンヲオイテ、カエレ! コノヘンタイマント!」

 

「やれやれ、君のお姉さん。港湾棲姫さんは自らの意思でこっちにいるのだがね」

 

 

 今にも噛み付かんとばかりに、白い少女は男へ罵声を浴びせる。

 

 しかし、男は聞き分けのない幼子を相手にしているかのように肩を竦め。

 

 

「君も艦娘どもを圧倒的な力で薙ぎ倒したいだろう? 私達に与すれば簡単だぞ?」

 

「オマエノチカラナンテイラナイ! カエレ!!」

 

 

 男の言葉も、少女は聞く耳を持たないとばかりに叫ぶと追い払うようにその小さな手であっちに行けとばかりに態度を示す。

 

 そんな少女の態度に男は嘆息し……。

 

 

「ならば仕方ないか、『港湾棲姫』……いや。 『陸上戦艦棲姫』、彼女たちを殺せ」

 

 

 男は、へらへらとした薄ら笑いを消して無表情に誰かに通信で指示を送る。

 

 その男の変貌に、白い少女は背筋に何か冷たいものが走るのを感じ。

 

 幼い風貌ながらに少女は自らが持つ感が鳴らす警鐘に導かれるようにしゃがむ。

 

 そして、次の瞬間。

 

 白い少女を守ろうと前に出た一人の戦艦に、遠方から被弾した何かが着弾し……。

 

 戦艦を木端微塵に爆散させるほどの爆風に白い少女は地面を転がる。

 

 

「ふむ? 外したか……まぁ良い」

 

 

 爆風の範囲内にいたにも関わらず、男はマントをはためかせるのみでその場に悠然と佇み。

 

 一撃の成果としては悪くない相手の惨状を見、その口元に嗜虐的な笑みを浮かべる。

 

 男の名前はカリョストロ、かつて鉄と荒野と瓦礫の世界にて人間狩りを行う悪魔の組織……グラップラーの中でも、四天王の一人として恐れられていた男であった。

 

 

 

 そして、白い少女……北方棲姫は見てしまう。

 

 男が佇む遙か向こうに、島影かと錯覚してしまうかのような巨大な何かが浮かんでいる光景を。

 

 

 




そんなわけで、実は夕張達の気持ちに気付いてたアクセル。そしてほっぽちゃんに迫る変態の影と危機、そんな話でした。
なお、港湾棲姫とほっぽちゃんが姉妹関係かどうかは割と個人的解釈というなの趣味です。だが私は謝らない。

港湾ちゃんの新しい力のヒント  つ「メタルサーガのティアマット」

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