それと、とある艦娘が再登場します。地味に強キャラです。
『青葉ネットワーク』と称される物がある。
ネットワークと言っても、電脳で全ての重巡洋艦青葉がつながっているとかそういう代物ではなく、互いの鎮守府事情や面白事件などを青葉達が自発的にやり取りしている情報網である。
たとえば、先の愛宕懐妊事件の煽りを受けて艦娘達に慕われていた提督が追い掛け回されたとか、ある日どこかの提督の理性がとうとう決壊したとか……。
大よそが他愛無い情報のやり取りであるが、地味に重要情報がやりとりされる事もあったりする愉快な代物だったりする。
そんな青葉ネットワークで、今密かに盛り上がっている情報が一つある。
ソレは、各鎮守府の艦娘に支給されたアクセル印の新型艤装の性能についての情報である。
何せ必要とされる素材が素材なため、すべてを試すことが困難であり。
その結果、先に入手した他の鎮守府の様子から次はどれを手に入れるか、という方向性を決めるちょっとした情報源になったりしている有様であった。
そして、その情報等から一つ特ダネを仕入れるべく動き出した一人の青葉が居た。
・
・
・
・
・
波間の向こうに、目的地の港湾施設がある孤島が見えてきました。
ぶっちゃけ何なんですかねこの付近の難易度の高さ、力量が低くないはずの加古さんが中破に追い込まれるとかありえないんですけど。
「どうです蒼龍さん、新型のUFOの使い勝手」
「んー? 良い感じよ、直線の動きは天山とかに劣るけど小回りすごい効くから撃墜されにくいしね」
青葉を庇って中破しちゃった加古に肩を貸しつつ。妖精が乗ったUFOを逐次帰還させる蒼龍さんに聞いてみる。
いいなぁ、とは思うんですけども。それ以上に欲しい艤装がたくさんあるから困るんですよね、新型艤装って。
「そういえば龍田さん、次は何を受け取るんでしたっけ?」
「えぇっとぉ、20.5cm単装緋牡丹砲とスモールパッケージよぉ」
「お、緋牡丹とやらはどこの鎮守府も手に入れてないヤツですね。特ダネゲットです!」
「うふふ、青葉ちゃんったらも~」
他の鎮守府の子が誰も手に入れてない艤装の名前に、ついつい高鳴る気持ちを隠せない青葉です。
だってしょうがないじゃないですか、青葉ネットワーク最優秀賞には間宮羊羹引換券が贈呈されるんですもん。。
「うー、だりぃー。眠いー」
「ほらほら、もう着くから」
「ぅー」
そして、青葉を庇って被弾した加古に肩を貸しつつ進むのです。
中破ですし航行には影響はないんですけど、やっぱり庇ってもらった負い目もありますし。
「そういえば……あのゴーヤ、元気にやってるかしら」
「あのゴーヤって言うと、曙さんが前いた艦隊の伊58の事です?」
「そうよ、まぁ言うほど親しかったわけじゃないんだけどね」
だんだんと大きくなってくる島影に、隣を並走している曙さんが呟いたのを聞き逃さず聞いてみれば。
曙、という艦娘特有のツンケンした物言いをしつつもどこか柔らかな口調で教えてくれます。
やっぱアレですね、この人は。
「見事なツンデレですね、心配で心配でしょうがないって顔してます」
「ばっ!? な、何言ってんのよアンタの目節穴?!」
思わずニヤける顔を隠せずに、つい言っちゃいました。
そして曙さんはみるみる内に顔を真っ赤にして言い返してきます、見事にツンデレです。
青葉……実は見ちゃったんですよね、うちの艦隊の錬度が低い駆逐艦の娘達の訓練で自ら憎まれ役買って教官役やってた曙さん。
この人、地味に青葉達の艦隊の中でトップクラスなんですよねぇ……あのブラック鎮守府で生き延びてきただけはあります。
「あーもう! 蒼龍に龍田もこのアホに何か言ってよね!」
「いやー、青葉には何言っても無駄じゃないかなー」
「うふふ、曙さん可愛いわぁ」
「もーーー!」
蒼龍さんと龍田さんの言葉に、器用に水上で地団駄を踏む曙さん。
そんな彼女の可愛い姿を、見逃すことなくきっちりシャッターを切るのが青葉の仕事です。
「ちょ、ちょっとアンタ何撮ってんのよ!?」
「いやほら、可愛い可愛い曙さんの姿を我が艦隊だけじゃなく他の艦隊に知らしめる資料として撮るべきかなと」
「こ、こんのクソ青葉ぁぁぁぁぁ!!」
あ、マズイ。いじり過ぎた。
ちょ、ちょっと待って下さいごめんなさいほら青葉今加古に肩貸してるんで……。
え? ピンポイントで青葉だけぶちのめすくらいワケない? どんだけ錬度高いんですかーー?!
・
・
・
・
・
手際よく傷跡が残らない程度に曙さんにシバかれつつ、ようやく港湾施設に到着です。
そんな青葉達を、顔なじみになってきたヲ級さんが出迎えてくれました。
「……ヲ疲レ、負傷者ハアッチノドックデ傷ヲ癒スト良イ」
「ねむいぃ、死ぬぅー……」
そして、加古に気付くと妖精さん達に指示を出してくれると同時に、どこからともなく集まってきた妖精さん達がタイミングよく倒れ込んできた加古をキャッチ。
何人かムギュっと声を残して潰されつつ、もぞもぞと加古をドックまで運んでいきます。
「青葉ハ大丈夫カ?」
「あ、ご心配なく。見た目ほど重傷じゃないので」
「ソウカ」
頭にでっかいたんこぶを拵えた青葉を心配そうにヲ級さんが気遣ってくれますが、まぁ青葉の自業自得な部分もありますし、そこまでお手数かけるのも悪いですしね。
しかし、ヲ級さんて……こう、見れば見るほど……。
「? ドウシタ?」
きょとん、とした様子で青葉へ問いかけるヲ級さん。
アクセルさんの傘下に下ったヲ級さんの服装は、当然ですが青葉たちが良く見る空母ヲ級の恰好ではありません。
お臍がチラ見えし、ミニスカ状態の袴からは透き通るような白い肌のムチっとした太ももがのぞいているのが丸見え、そんな巫女服状態です。
なんでも、親交が深い瑞鳳さんから衣装をもらってそれを改造したそうですが……。
「相変わらず、反則的な恰好ですね」
「?」
思わずジト目になる青葉の言葉に、きょとんと首を傾げるヲ級さん。
その仕草で光を反射する銀色の髪が揺れ、どこか神秘的ながら幼い印象を与えてきます。
この人、体型の割にどこか幼くて無防備なんですよねー。
実はあちこちの提督が彼女を狙ってるのですけど、彼女つたないながらにアクセルさん一筋なもんだから全く好意に気付いてません、どこの鈍感系ヒロインですかアナタ。
「青葉じゃないー、ヤッホー」
「あ、どうも夕張さん」
訝しがるヲ級さんの胸についた、二つの巨大な砲塔を眺める青葉に声をかけてきたのは夕張さん。
アクセルさん独自の改装が施された彼女も、本人が気づいてないレベルで微妙に艤装に変化が見られます。艤装に搭載されてる砲塔が微妙に形状変化してたり。
けども、胸のサイズは据え置きです。見てて安心します。
「……ねぇ、なんかものすごく失礼な事考えてない」
「そんなことないですよ」
おっと危ない危ない、夕張さんに警戒されちゃいました。
「それにしても、ここで油売ってて大丈夫なの?」
「艤装の受け取りは蒼龍さんと龍田さんがしてますので、青葉はこの機会に取材もしちゃおうかなって」
「なるほどね」
合点がいった、とばかりに腰に手をやり頷く夕張さん。
ついでだから青葉ネットワークで話題に上がってた件、聞いちゃいますか。
「そういえば夕張さん、一つよろしいですか?」
「何?」
「アクセルさん争奪戦って今どんな状況ですか?」
「ぶっふぅ!?」
青葉の質問に、淑女らしからぬ反応を見せる夕張さん。
アレ、もしかしてこの反応。
「な、なななな、何の事かしら?」
「語るに落ちてますよ夕張さん」
むしろ、なんでバレてないと思ったか。
浮島棲姫戦の後、武装マイクロバスの上でなんか良い雰囲気だったって八岐提督艦隊所属の霧島さんも証言してましたし。
「……と、特に進展はない。かなぁ」
「その反応だと、何かアプローチはしてるんです?」
盛り上がってきましたよ!
「アクセルさんを朝起こしたり、女神さんの手伝いをしてアクセルさんの好物作ったりしてるわ」
「良いですね、実に乙女ですね」
初々しい夕張さんのアプローチに、頬がニヤつくのを感じながらどんどん聞いちゃいます。
「添い寝とかはしないんですか?」
「……ちょ、ちょっとソレは恥ずかしいかな……」
少し突っ込んだ質問してみるも、顔を真っ赤にしてうつむき夕張さんモジモジしだしちゃいました。
乙女ですねぇ、奥手ですねぇ。
なんだか、相対的に青葉がゲスく感じるのはきっと気のせいです。
「夕張さんは、アクセルさんのどこが好きなんですか?」
「そうねぇ……うん、好きな所は全部! かな」
青葉の質問に、顔を真っ赤にしながらもはにかんで答えてくれる夕張さん。
眩しい、眩しいよ!?
「全部、ですか……」
「うん、全部!」
にへー、と頬に両手をあてモジモジしながら。茫然と口にした青葉の言葉にきっぱりと返す夕張さん。
なんでしょう、こう。青葉が聞き始めた事なんだけども。
なんだか、物凄く壁とかドラム缶殴りたい。
その後結局、夕張さんからアクセルさんがいかに素晴らしいか1時間くらい語られる事になりました。
特集記事? 書けませんよ、9割が惚気でできた記事なんて。
嘘装備図鑑No.14
レアリティ:☆☆☆ホロ
名称:20.5cm単装緋牡丹砲
種別:中口径主砲
射程:中
装備適正:軽巡、重巡、戦艦、航戦
能力:火力+8、対空+1、命中+2。
装備艦娘が敵に攻撃した際のエフェクトが変化し、花弁が散るような火花のエフェクトが発生する。
入手条件:水上機怪戦車残骸A(多め)と交換で入手可能。
そんなワケで、青葉さんが色々と聞いてくれた回でした。
ヲっちゃんのビジュアル補填と、夕張さんテコ入れ回とも言う。