艦これMAX   作:ラッドローチ2

31 / 46
と言うわけで、活動報告にて募集していた提督ネタのSSが仕上がったので投稿いたします。
今回出せなかった提督諸兄に関しても、後日出す予定のネタで出したいと思います。

「俺の提督はこんなんじゃねぇYO!」という突っ込みあるかもしれませんが、あらかじめご了承いただけると幸いです(露骨な責任逃れ

なお、今回アクセル達は出ませんがドラムカンは出ます。


EX01 秋の私営SS祭り! 提督らに走った激震

 

 

 

 本州どころか北海道から遠く北に離れた地である島。

 

 そこにも、艦娘を運用する人類の基地……幌筵泊地は存在した。

 

 

 薪ストーブすらも力不足な部屋の中、くたびれた印象の中年が任務に関する書類を黙々と記入し……喉を潤そうと湯呑を傾けて中身がない事に気付くと。

 

 

「望月くん、暖かいお茶入れて」

 

「ゑー、やだ。めんどいから司令官入れてよー」

 

「君、秘書艦じゃなかったけ?」

 

 

 言われながらも中年は手際よくお茶とついでにみかんを用意し、自分の分と合わせて働かない秘書艦の前に置き、望月の対面に座る形で炬燵に潜り込む。

 

 

「司令官、働かなくていいのー?」

 

「急ぎの書類は片付けたからね、休憩も大事だよ」

 

「いいけどさー、タバコは外で吸ってよねー」

 

「外、寒いから出たくないんだけどなぁ」

 

 

 のたのたと望月が炬燵から両手をだし、のそのそとみかんを剥き始め。

 

 提督である後藤はのんびりとお茶を啜り始める。

 

 ゆったりとした時間が流れる執務室、そして。

 

 

「相変わらずのサボりですか、後藤大佐」

 

「なんだよ藪から棒に、影貫くん」

 

「あ、そういえば来客あるんだった。ごめんねー司令官」

 

 

 そんなまったり空間に、張り詰めた空気を纏わせる白髪の和装の男が侵入。

 

 怠惰中年と怠惰駆逐艦が醸成していた、まったり空間は儚い終わりを遂げた。

 

 

「しかしなんでまたこんな北の僻地に? 件の元帥殿と中将殿の問題の後始末で忙しいじゃなかったっけ?」

 

「一段落ついた、ってのもありますがソレ以上の問題が起きましてね。敬愛していた元上官に相談したく思いまして」

 

「ふーん」

 

 

 跳梁跋扈する深海棲艦らに対抗できる艦娘。

 

 そんな彼女たちを率いる能力を持つ提督が大量に徴用され、今現在も戦っているこの世界であるが……。

 

 能力と人格がイコールで釣り合わず、見目麗しい艦娘に無理やり事に及ぶ輩もまた少なくはなかった。

 

 

「横須賀に戻ってきて頂けませんか? 後藤さん」

 

「ヤダよ、私は僻地で適当やってる方が性に合ってる」

 

「この最前線を僻地と言い切ったあげく、損耗率が0なのはアナタくらいですよ……」

 

 

 ゆるい言葉のキャッチボールを続けながら、やる気のない目で後藤は目の前の和装の男を眺め。

 

 若輩でありながら、問題のある艦隊……俗にブラックと言われる連中を摘発、解体という重責を背負わされている男に若干同情を含んだ視線を送る。

 

 

「で、問題になりそうな事って何さ?」

 

「ええ、実はですね……」

 

 

 長くなった前置きに影貫は咳払いし、重要機密と判が押された書類を後藤へ差し出し。

 

 後藤は、こんな状況でありながらぼへーっと炬燵を満喫している秘書艦に苦笑を含んだ視線を送りつつ、書類を開き。

 

 そのやる気のない半目を大きく見開く。

 

 

「これは、また……」

 

「目出度い話では、あるんですけどね」

 

「んー、なになにー?」

 

 

 書類に記されていた内容に、さすがの後藤も言葉をなくし。

 

 本来おめでたい内容であるその話から、色々と面倒事が起きると判断してしまった影貫は己の性に嘆息し。

 

 空気を読む気が全くない望月はのそのそと炬燵から這い出ると、後藤が読んでいる書類を一緒に横から見始める。

 

 

 

 書類には……。

 

 ラバウルの兵藤艦隊に所属している、重巡洋艦愛宕が懐妊したと記されていた。

 

 その内容に後藤は大きく溜息を吐き、ごそごそと煙草を取り出して火をつけて煙を一息。

 

 隣の望月から抗議の視線を受けつつ、スルーして影貫へと話し始める。

 

 

「んー、大々的に発表してしまって良いんじゃない?」

 

「……そして、良心的な提督らにブロックしてもらうと」

 

「やだなー、私がそんな人の良心につけ込むような事考えるわけないじゃん」

 

 

 秒ごとに強くなる望月の抗議の視線にとうとう根負けし、タバコの火を消しつつ悪い笑みを浮かべて後藤は影貫に提案し。

 

 その内容に影貫は後藤の真意を読み取って口にし、後藤は胡散臭い笑みを浮かべてはぐらかす。

 

 そして。

 

 

「みんなで幸せになろうよ」

 

 

 かつて大本営直下で問題のある提督を摘発してきた挙句左遷された元『大将』の大佐は。

 

 とても悪い笑みを浮かべて、自分の後任として頑張っている後輩へ語りかけた。

 

 

 

 

 そして、悪いおっさんの意見を影貫大将は細部を詰めつつ採用し……。

 

 全提督に、兵藤艦隊所属の愛宕が懐妊した。という速報が報じられた。

 

 

 

 

 

 その速報は、物凄い勢いで提督と艦娘の間を駆け抜けていき。

 

 あちこちの鎮守府にて、ちょっとした騒動が巻き起こる原因となった。

 

 

「てめぇこの野郎幸せになりやがれ!!」

 

「あいたたたた?!助平さんなんで僕に関節技……ぎにゃーーー!?」

 

 

 兵藤が、同じ鎮守府に所属しているある意味名物提督な助平少将にパロスペシャルなる関節技をキめられたりもしたが、こちらについてはあまり大勢に影響はなかった。

 

 

 

 

 

 

「ヘーイ!提督提督トゥェェェーーーイトーーーク!!」

 

「いきなり何なんでスかね、金剛」

 

 

 とある艦隊の執務室。

 

 日本人離れした美貌の偉丈夫……八岐 黒狼が、やる気なさそうに書類を進めていたところに。

 

 かつてあった、浮島棲鬼戦で大活躍した武勲艦であり秘書艦である飛び込んできた金剛に面倒くさそうな視線を向ける。

 

 

「いいからコレを見てほしいデース!」

 

「なんなんだよ……」

 

 

 ずずい、と突きつけられた紙を黒狼は受け取り。そのやる気のない瞳で内容へ目を通す。

 

 その内容は、ラバウルで多大なる戦果をだし駆け上がるように昇進している兵藤大将の愛宕が懐妊したという。

 

 とてもとてもおめでたい内容であった。

 

 

「あの時救出された愛宕か、とてもめでたい話だな……何かお祝い送っておくか」

 

「紙オムツとかが良いそうデース!」

 

「なんで知ってんスかね」

 

 

 ヒュゥ、と口笛を無意識に吹きながら贈答品を思案し。

 

 金剛がすかさず進言してきた内容に、思わず半眼で金剛を眺め。そこで彼は気づく。

 

 

「なぁ金剛さん、なんでバニースーツなんでスかね?」

 

「やっと気づいてくれマシタか!」

 

 

 目の前にいる金剛は、いつもの改造巫女服のような衣装ではなく。

 

 なにゆえか、バニースーツを着ていた。

 

 

「提督のベッドの下にある雑誌を参考にしマシタ!」

 

「おい、おい、なんでソレ知ってる」

 

 

 そして、ようやく黒狼は気付く。

 

 執務机を挟んだ向かい側にいる金剛の目が、捕食者の目をしている事に。

 

 

 八岐黒狼、階級は中佐と未だ若輩の身であるが……。

 

 早期に艦隊に編入された金剛4姉妹に、大和を資源をやりくりし運用するほどに有能かつ将来有望な若き提督であった。

 

 そしてその美貌から、彼を慕う艦娘もまた多く。

 

 

「もう金剛さん、抜け駆けはナシって言ったじゃない!」

 

「金剛お姉様、酷いです……」

 

「Oh、大和に榛名。ソーリーねー!」

 

 

 そんなわけで、開いたままの執務室の扉の向こうから2人ほど増援がやってきても致し方ないのである。

 

 なお、追加増援の二人もまたバニーであった。

 

 

「…………え、ええと。どういう状況なんだ? コレ」

 

「フフフー、私達も提督のベイビーが欲しいんデース!」

 

 

 震える声で問う黒狼、直球ドストレートな回答をする金剛。

 

 思わず黒狼が大和と榛名に視線を向ければ、大和もまた妖艶な笑みを浮かべ……榛名は真っ赤な顔をしてうつむくもその言葉を否定しなかった。

 

 

 緊迫した空気が満ちる執務室。

 

 そして。

 

 

「あ、提督が逃げたデース!」

 

 

 黒狼は、椅子を蹴倒すようにして立ち上がると全力で窓へ向かって駆け出し。

 

 両手を顔の前でクロスさせながら窓から外へ脱出した。

 

 

 

 

 

 

 ところ変わって、また別の鎮守府では。

 

 

「ううう、愛宕ちゃん良かったよぉ……」

 

「お菊ちゃん、どうしたの?」

 

「どうやら、兵藤さんのところの愛宕さんが懐妊したという報せで感情が振り切ったようです」

 

 

 グラマーな体を軍服で包んだ女性が、報せが書かれた書類を手に持ったまま歓喜の涙を流していた。

 

 そんな女性の様子を心配そうに帯刀した伊勢は眺め、秘書艦である不知火はいつものことです。と割とドライに回答する。

 

 

「こうしちゃいられない! すぐに紙オムツと粉ミルクとお着替え送ってあげないと!」

 

「すでに手配済みです」

 

「さすが不知火ちゃん!」

 

 

 ずび、と鼻を啜り涙を止めた女性……菊岡育枝は、戦闘時のようにキリっとした顔に切り替えると。

 

 秘書艦である不知火へ子育て必需品の手配を指示し、すでに手配をしていた敏腕秘書艦に感激して不知火を抱きしめる。

 

 育枝の豊満な胸に顔を挟まれ、持たざる者である不知火は若干内心ギリギリするが鋼の精神でこらえた。

 

 

『やれやれ、お菊ちゃんは相変わらずだねぇ。まるで子供みたいだ』

 

 

 そんな女性の様子に、愉快そうな低い男の声がかけられる。

 

 しかし、部屋の中には声の主と思しき存在はおらず。しかし誰もその事を不審がる様子もまた見せず。

 

 

「もー……狭間村さん、子供扱いしないでください!」

 

『カッカッカ、我から見たらまだまだ尻に殻のついたヒヨッコよ』

 

 

 むー、と育枝が抗議の視線を送る先。それは伊勢……ではなく。

 

 伊勢が腰に帯びている刀で、その視線と言葉に答えるように刀は金具をカチャカチャならしながら答える。

 

 

「サマちゃん、あんまりお菊ちゃんいじらないであげてよ」

 

『む、すまんすまん』

 

 

 元は人間であったが、紆余曲折色々あった末に刀に宿った人外提督な狭間村であるが。

 

 気心知れた人物や艦娘にとっては、生き字引ともいえる先輩提督であった。

 

 一つ問題があるならば。

 

 

『で、お菊ちゃんはお相手のアテはあるんかのう?』

 

「残念ながらありません」

 

「なんで不知火ちゃんが答えるの!?」

 

 

 気心しれた人物を弄る悪癖があるところであった。

 

 

「もー……ごめんねお菊ちゃん、ちょっと黙らせておくから」

 

『な、こら伊勢!やめ……!』

 

 

 そんな狭間村に帯刀している伊勢はため息一つ吐き。

 

 普段から持ち歩いてる針金で狭間村の金具をぐるぐる巻いて固定。

 

 割と酷い光景であるが、ある意味で日常風景であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、鎮守府から遠くはなれたとある小島。

 

 その場所では……。

 

 

「スマン、助かる……」

 

「なーに良いって事よ、互いに利益がある話だからな」

 

 

 団子鼻の、左腕を義手にした一人の男が真紅の髪を持つ男と何やら取引をしていた。

 

 

「だが良いのか? あの娘はお前らにとって敵だったはずだが……」

 

「かつてはかつてだ、戦いに怯えるお嬢さんを引き回すほど俺は鬼畜じゃないつもりなんでね」

 

 

 義手の男と、真紅の髪を持つ男が取引していたもの。

 

 義手の男は真紅の髪へ一般的な食料品や生活用品を渡し。

 

 真紅の髪の男は、義手の男へ機怪群の効率的な採取技術と……優れた戦闘力を持つ男自身が狩り集めた、機怪群の素材であった。

 

 そして、男二人が話している中。

 

 

「中間棲姫さんの今日の分の治療、終わりました」

 

 

 無表情な男、と思われる提督を伴って工作艦明石が義手の男に合流。

 

 伴われてきた軍服を着た男は、ぽへーっとしていた。

 

 

「どうよドッペル、姫さんの治療の様子は」

 

『結構無理してたっぽいから、まだまだかかるよー』

 

 

 義手の男の問いかけに、ドッペルと呼ばれた提督は……ホワイトボードに瞬時に文字を書いて掲げて応答。

 

 そんな珍妙な応答方法に義手の男は、そうかいとだけ返すと……。

 

 

「そういえばドラムカン、中々にホットなニュースがあるぜ」

 

「? なんだ、海蛇」

 

 

 思い出した、とばかりに愉快そうな笑みを浮かべて海蛇と呼ばれた男が口を開く。

 

 その顔に何か嫌な予感を感じつつ、ドラムカンと呼ばれた真紅の髪を持つ男は問い返すと。

 

 

「理屈はまだ不明だが、艦娘が妊娠したってニュースが飛び交っててな……案外中間棲姫さんもデキるかもしんねぇぞ」

 

 

 葉巻をくわえる海蛇の言葉に、ドラムカンの顔が引き攣る。

 

 そして。

 

 

「……なぁ海蛇、謎のゴム風船も頼めるか?」

 

「オイオイ、もう手を出しちまってたか?」

 

「いや、まだだが……何時俺の理性がぶっ壊れるかわからねぇ……」

 

 

 追加で生活用品を発注、その内容に海蛇はカカカと愉快そうに笑い。

 

 笑われたドラムカンは、割と切実な顔で答える。

 

 

「やれやれ、男ってやつは……」

 

『ケダモノだね』

 

 

 そんな会話を見守っていた、海蛇の秘書艦である那智はため息を吐き。

 

 ドッペルもまた、ホワイトボード看板に素直な感想を記していた。

 

 

 




まさかの4800字オーバーでした。
ファベーラさん、フェンリス狼さん、美酒佳肴さん、kazukinさん、ウゼータさん、玲笙さん、クロロフィルリライトさん。
アイデア使わせていただきました、まことにありがとうございました!

ヨシー王さん、笑う男さん、かちゅーしゃさん。今回出せずに申し訳ありませんでした。
次回は優先して出したいと思います、重ね重ね申し訳ありません。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。