中々に難産でした…。
突入に成功したアクセル達の目の前に現れた、浮島棲姫と……浮島棲姫に操られた愛宕。
さらに開いたままの背後から敵が押し寄せてくる状況で、真っ先にアクセルが戦線から離脱。
そのような状況で、真っ先に状況を看破した初春は。
「アクセルが復帰するまで妾が指揮を執るぞ!」
「お任せします、私は……扶桑さんとあの奥にある目玉心臓姫吹っ飛ばしてきますね」
「んじゃ、あたしは背後からくる連中沈めとくよー」
同様に、錬度の高い霧島と北上へ指示をだし。
それぞれが成すべきことを解した二人は、各々に行動を開始する。
「私モ、北上トトモニ背後ヲ守ロウ」
「頼むのじゃ、ヌシの航空戦力がないと。恐らく誰かが沈みかねん」
愛宕へ向かいながら、ヲ級の申し出に頷き。
愛宕からの砲撃を苦心して回避し続けている夕張の横に並びつつ。
兵藤艦隊最高錬度だった割に緩慢な動作な愛宕の艤装めがけて連撃12cm単装砲を射撃し、砲撃の向きを逸らす。
「夕張、アクセルなら愛宕をなんとかできるかの?」
「多分いけるわ! 前もヲっちゃんで実験して脱がせてたし!」
「……何やっとんじゃ、あやつは」
嘆息しつつも初春は回避を続け。
「ならば、アクセルが戦線復帰できれば。見込みはあるんじゃな……ならば、妾に任せよ。夕張はその火力であの心臓を叩きのめすのじゃ!」
「了解したわ!」
初春の指示を受け、心臓の目玉から放たれるビームを受けながらも砲撃を続けてる扶桑と霧島の援護へ向かうべく夕張が動き。
バスをけん引する夕張の動きを阻害しようと愛宕が動くも、するりと愛宕の射線上に初春が割り込み。
「どれ、同じ艦隊のよしみじゃ。時間稼ぎに付き合ってもらおうかの!」
高速移動を続けながら、愛宕の深海棲艦艤装めがけピンポイントで初春が射撃し。
度重なる妨害に愛宕は攻撃目標を、初春へ切り替える。
「そうじゃ、妾に向かって来るがよいぞ。 今少しの辛抱じゃからな、愛宕!」
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初春が愛宕を抑え、北上とヲ級が背後から迫る敵を排除し続ける中。
戦艦娘の二人は、光の奔流に晒され続けていた。
「ビームとか、SF小説の世界ね……」
「波動砲とか、あるのかしら」
口では呑気に言葉を掛け合い、射撃を続ける二人であったが……。
『二人だけなんて……ずいぶんと、余裕なのね』
光線であるが故の弾速を誇る、目玉から放たれるビームは一本一本の火力こそ大したことないものの。
回避がほぼ不可能なソレは、確実に二人の装甲を削り取っていく。
さらに……。
「私の計算だと、このままじゃ撃ち負けるかもしれないわね」
「撃ち負ける前に、私が誘爆しそうよ……」
霧島の41cm連装砲に、扶桑のストロングミサイルや火星連撃3連装砲の砲弾が次々と撃ちこまれているも。
今も脈動を続ける、浮島棲姫の下半身と同化している心臓は。脈動するたびに砲撃によって空いた亀裂が緩やかに塞がり。
亀裂から生じている出血が、二人の目の前で止まっていくのが確認できて。
そのような、状況で。
「遅れて、ごめんね!」
初春の指示を受け、戦線に合流した夕張が。
ここぞとばかりに、自身に搭載された主砲とミサイル。それに合わせてマイクロバスに積載されている武装を一斉に発射し。
軽巡とは思えない火力をたたき出す。
「ベストなタイミングよ。これなら行けるわ!」
「私も、負けてられないわね……!」
夕張からの砲撃支援に、霧島が獰猛な笑みを浮かべて眼鏡を押し上げ。
静かに対抗心を燃やした扶桑が、少し折れかけていた戦意を立て直し。気が付けば中破によって肌蹴ていた胸元を片手で隠しつつ。
「主砲、ミサイル……撃てぇ!」
多少バランス崩す事も覚悟の上で、全砲門の一斉射撃を扶桑が実行する。
しかし、特殊な存在とはいえ姫型と判断された浮島棲姫。
『悪足掻きね……どうせ、いずれ皆沈むのに……』
砲撃を次々と受け、ビームを放つための目玉をつぶされながらも。
新たに目を開き、艦娘たちへ反撃のビーム射撃を繰り返す。
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「いやー、中々にどこもかしこも大変だねぇー」
背後から聞こえる轟音や、艤装に砲弾が当たる甲高い金属音を耳にしつつ。
飄々とした調子で、北上は迫りくる深海棲艦や機怪群へ魚雷を一本一本確実に当てていく。
「見レバ見ルホド、オカシイ精度ダナ」
「何言ってんのさヲきゅっち、丁寧に狙って素早く発射して確実に当ててるだけだよー」
艦載機を手早く射出し、自分たちの背後に敵がすり抜けないようヲ級ですら神経をすり減らす中。
ゆるく、不敵にドヤ顔を浮かべた北上は職人と称すべき速度と精度で魚雷を射出し。
「ッ、危ナイ!」
「んー? おーっととと」
ヲ級の艦載機が撃ち漏らし、魚雷射出直後の北上にグロウイントゥースがとびかかるも。
慌てず騒がず、北上が手に持っている15.5cm3連装副砲によってハエ叩きのごとく、物理的に叩き落とされ。
水路に、半ば肉片と化しつつ叩き落される。
「ありがとねー、ヲきゅっちー」
「私、必要ナインジャナイカ……?」
「そんなことないよー」
血がべっとりとついた15.5cm3連装副砲を軽く振り回して血を払いつつ、ニヘラと笑った北上がヲ級に感謝の意を述べ。
少しばかり想定外なその動きに、ヲ級は冷や汗を浮かべつつ正直な感想を口にする。
「おっと、敵のヲ級がまた来たみたいだねー。ヲきゅっち、よろしくー」
「任セロ」
心なしか、瑞鳳の艤装と衣装を改造したものを装備しているヲ級をにらむかのようにじっと見詰めている敵の空母ヲ級に北上が気づき。
順調に維持している、戦場の制空権を取り返されないためにもヲ級は新たに艦載機を放った。
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そして。
戦いの狼煙ともいえた愛宕の砲撃から、短時間のうちにめまぐるしく状況が変わり続ける中。
「わりぃ、待たせた」
「本当に生きておったし、こやつ」
せき込みながらも、あちこちに焦げ目をつけたカラフルな頭をし肩に応急修理女神を乗せた男。
アクセルが、ようやく戦線に復帰する。
「藪から棒にひでぇなオイ……んで、中々にハードな状況だなこりゃ」
「うむ、だから……とっとと愛宕を解放するのじゃ!」
すでにアクセルが水面に浮いてる事についての突っ込みは放棄した初春が、アクセルめがけて砲撃しようとした愛宕の艤装へ砲撃して照準をずらし。
初春の言葉を受けて、アクセルは頷いてみせ。
「……勢い余って服脱げたら、良介やっぱおこるかな?」
「いいからとっととやれと言うに!!」
緊張感のない事を初春に問いかけ。
アクセルの言葉に、額に青筋を浮かべて初春が怒鳴る。
「あいよー、注意ひきつけ頼むわ」
応急修理女神からの頬をつねられつつ、アクセルは後ろ頭をがりがりとかき。
女神の補助を受けつつ、水面を走って愛宕へ突撃を開始する。
むろん、浮島棲姫に操られる愛宕がそんな男を放置するわけがなく攻撃を加えようとするが。
「そう暴れるな、すぐ解放してやるからのぅ」
表情のない愛宕へ、幼子をあやすように初春が呼びかけ。
アクセルの突撃を初春はサポートし続け、ついに被弾を受ける。しかし。
「どうした? お主にしてはずいぶんと弱弱しいのう」
衣服を一部はがれながらも、ふてぶてしく愛宕へ笑って見せ。
その挑発に乗せられたのか……愛宕はさらなる砲撃を加えようと照準を初春へ合わせる。
そして。
「わりぃ、待たせた」
「遅いわ、ばかたれ」
愛宕の艤装が火を噴くよりも早く。
射程距離にアクセルが到達、そして。
愛宕がアクセルへ向き直ろうとした瞬間に、アクセルは愛宕とすれ違うように動きながらその両手を、艦娘ですら捕捉できない速度で振るい。
浮島棲姫から愛宕へ向けて伸びる管も、愛宕の体を覆うように装着されていた艤装すらも。
全て分解し、そして解放した。
そして、その間も続いていた戦闘は少しずつ落ち着きを見せ始め。
扶桑、霧島、夕張をずたぼろにしつつも致命傷を負った浮島棲姫が。
アクセル達へ語りかける。
『いずれ沈む運命にあるというのに、何故足掻くのかしら』
何も知らないまま、無為無策に動く子供を嘲るかのような顔と物言いで言い放つ浮島棲姫。
その言葉に霧島が片目を吊り上げ、とどめを刺そうと砲身を向ける中。
「んなもん知るか、ダチが泣いて惚れた女のこと頼んできたんだ。応えてやるのが男だろ」
『愚かね……知性を身に着けた悪魔のサルよ、先に地獄で待っているわ』
バカバカしいと言い捨てるアクセルを嘲笑しながら、浮島棲姫は。
霧島の砲撃で、下半身と同化している心臓ごと蜂の巣となり。
物言わぬ骸となった。
嘘深海棲艦図鑑 No.2
名前:浮島棲姫
出現海域:コラボイベント『鉄と荒野から来たモノ達』イベント海域 E-2ボスマス
火力:低
耐久:極高
装甲:高
射程:短
特性:絶対命中(相手の回避、運を無視する)
取り巻き:Flagship重巡リ級改、elite空母ヲ級改×2、グロウイントゥース(駆逐イ級並の耐久と回避、そして高めの火力)×2
解説:一定時間ごとにゲージが回復。ボスルート固定に駆逐艦最低1隻が必要、なくてもボスマスに到達できるが羅針盤に祈る必要あり。
というわけで、予想通り解体にて救出なお話でした。
ボス自体は火力が低いので、戦艦だけで突入すれば実は楽勝なボスです。羅針盤がデレてくれれば。