艦これMAX   作:ラッドローチ2

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やっと20話投稿できました。
今回は、迎撃組メインの話となります。



20 夜が来る

 

 

 

 浮島棲鬼を撃破した連合艦隊。

 

 彼らは、アクセルが率いる愚連隊を中核に置いた愛宕救出チームを突入させ……。

 

 残りの戦力で、突入班が外からの増援による挟撃を受けないよう入口を死守するというプランで作戦をまとめ。

 

 

「……なぁ、本当に俺が突入責任者でいいのかよ?」

 

「この浮島、グロウインを撃破した経験者は君だけだ。是非とも頼みたい」

 

 

 作戦を練るにあたって、アクセルは自らのグロウインについての経験と知識について提督らへ話しており。

 

 彼ら自身色々とアクセルに、今一度聞きたい事がいくつもあるが時間が押している以上聞くわけにもいかないため。

 

 この中で唯一の専門家ともいえるアクセルに、合流を果たした伊達はその頭を下げて頼み込む。

 

 

「まぁ別に俺はいいけどよ……」

 

 

 断る気も特にないアクセルは頬をかき、開いた水路の大きさから自分と6人ぐらいの艦娘が人数として順当と判断。

 

 周囲を見回し、連れて行くメンバーを選定していく。

 

 

「夕張、扶桑、ヲ級、初春、えーっとそこの眼鏡の戦艦の娘さんと、そこの魚雷山盛りのねーちゃん。ついてきてくれ」

 

「眼鏡って……私、霧島です」

 

「わりぃわりぃ」

 

 

 アクセルの言葉に、トレードマークともいえる眼鏡を手で押し上げながら。抗議するような視線を霧島はアクセルへ向け。

 

 もう片方はと言えば。

 

 

「いいねぇ、見る目あるねーアクセルっち。このスーパー北上様に任せておいてよね」

 

 

 ドヤァ、とばかりにドヤ顔を北上は浮かべ。

 

 その力強さを誇示するかのように、軽く腕に取り付けられた61cm5連装酸素魚雷発射管を叩く。

 

 

「……アレ? アクセルさん、私は?」

 

 

 当然自分も呼ばれると思ってた瑞鳳は、思わず自分を指さしてアクセルへ問い。

 

 

「スマン、恐らく火力勝負になるから留守番しててくれ」

 

 

 瑞鳳の問いにアクセルは、気まずそうに目をそらして釈明した。

 

 

 

 

 

 

 

「……アクセルさんのバカ、アクセルさんのアホ、アクセルさんの……」

 

「Oh、瑞鳳は一体どうしたのデスカー?」

 

「突入班から外されてご機嫌斜めみたいですよ、金剛お姉様」

 

 

 据わった目をしたまま、ブツブツと呟きながら艦載機を放つ瑞鳳。

 

 そんな穏やかじゃない空気を放つ彼女の様子に金剛は首を傾げ。

 

 彼女の隣で戦う比叡はというと、そんな金剛お姉様もステキですと内心鼻血を噴く勢いで首をかしげる金剛の姿を脳内ハードディスクに亜光速で記憶しながら。

 

 そんな内心を悟らせる事なく、軽い調子で金剛の問いに答える。

 

 

「敵影発見、皆。注意して!」

 

 

 気が付けば太陽は傾き水平線の向こうへと沈みかけていて。

 

 そんな、空母艦娘にとって難儀な時間帯に差し掛かる中……赤城が放った偵察機が敵影を発見。

 

 迎撃組の中に、緊張感が張り詰め始める。

 

 

「あの元帥の命令のせいで、Cユニットを持ってこれなかったのが。痛いわね」

 

 

 暗くなり始める空を見ながら、赤城の隣で加賀が呟く。

 

 

「そうね、アレがあれば夜でも艦載機を飛ばせたのだけど」

 

 

 鎮守府においてきた、愛用のアクセル印の空母艦娘用のCユニットを思い。

 

 赤城と加賀、二人して揃ってため息を吐く。

 

 そうしている間にも二人は航空機の射出を続け。

 

 自分たちが無力な状態になる前に、少しでも敵の数を減らすべく自らの務めを果たす。

 

「第一次攻撃隊発艦! 続いて第二攻撃隊も随時発艦して!」

 

「ここは、譲れません」

 

 

 所属している兵藤艦隊の中で最も高い錬度を誇る愛宕に続いて、艦隊のナンバー2とナンバー3を務めている二人が放った航空部隊は。

 

 迫りくる深海棲艦と機怪群の混成部隊に多大なる損害を次々と与える。

 

 しかし、敵勢力の真っただ中ともいえる現状では減らした分だけ敵がさらに出現し……。

 

 

「いかんな、島沿岸からだけではなく他海域からも敵が来ているとしか思えん」

 

 

 浮島棲鬼がいた岸付近に横付けされた船に乗船している伊達は、次々と上がってくる報告に背筋に嫌な汗を感じる。

 

 しかし、彼もまた百戦錬磨の軍人。

 

 すぐに考えを切り替え通信にて他鎮守府の提督と連携を取りながら作戦を進めていく。

 

「よし、艦隊この長門に続けぇ!」

 

 

 所属艦隊、鎮守府の垣根を越えて艦隊が結成され……。

 

 その中の一つの艦隊の旗艦である長門は、多方向から押し寄せてくる敵艦隊のうちの一つを迎撃する任についており。

 

 今この瞬間、敵艦隊と接敵。交戦に入っていた。

 

 

「そんな爆撃、当たってあげないぴょん!」

 

 

 初めて確認された、巨大なエイからの爆撃をまるで兎のように卯月はヒラリヒラリと海面を跳ねるように回避し。

 

 その合間を縫っては25mm三連装機銃や10cm連装高角砲を次々と命中させていく。

 

 そんな卯月をエイは確実に沈めようとミサイルを発射するが……。

 

 

「遅いんだぴょん!」

 

 

 それすらも、すり抜けるように卯月は回避してみせ。

 

 卯月に集中しているそんなエイを、今度は少し離れた位置にいる摩耶が対空砲で次々と穴だらけにしていく。

 

 

「おい卯月! 調子乗ってると怪我するぞ!」

 

「あははは、余裕なんだぴょん!」

 

 

 空が暗くなっていき、視界が悪くなる中でも少女は神がかった回避を見せ続ける。

 

 しかし、そんな彼女たちも決して余裕があるわけではなく……。

 

 

「長門、大丈夫?!」

 

「こちらは気にするな!」

 

 

 一匹、紅い鬼鮫が混ざった鬼鮫の群れの対処に長門と高雄が当たっており。

 

 連携をとるように次々と襲い掛かってくる鬼鮫に押されながらも、なんとか二人は戦線を維持していた。

 

 

「卯月と摩耶があのエイを止めてくれなかったら、どうなっていたか……」

 

「本当、助かるわよね……っと!」

 

 

 とびかかってきた鬼鮫を、馬鹿めとばかりに高雄が迎撃し。

 

 長門もまた、紅い鬼鮫が顔を出して射撃をしてくる瞬間を狙い的確に大火力主砲を叩き込んでいく。

 

 

 

 

 

 

 そして、長門達が巨大エイや鬼鮫の群れと交戦している間。

 

 他方面の迎撃に向かった艦隊もまた、交戦に入っていた。

 

 

「テンション、上がって……きたぁぁ!!」

 

「さぁ、とっても素敵なパーティしましょ!!

 

 

 口角を大きく吊り上げながら、夜の帳が下りてきた海に川内と夕立が歓喜の叫びを上げ。

 僚艦が止める間もなく、巨大な亀型機怪群を要する機怪群と深海棲艦へ飛び掛かっていく。

 

 

「ああもう……! 航空隊、前衛を援護して!」

 

 

 そんな二人に瑞鳳は叫び声をあげ、アクセル謹製のCユニットによる補整を受けながら。

 

 通常は困難な、夜間の航空戦を開始し……。

 

 今も二人を狙っていた、敵フラグヲ級の航空隊の迎撃に専念する。

 

 

「神通、雷、球磨! あの二人を援護して!」

 

 

 兵藤艦隊のなじみ深い仲間達に頼みつつ、瑞鳳は偵察機を新たに飛ばし夜間でありながら上空から敵配置の情報を回収、仲間へ伝達していく。

 

 

「私にお任せよ!」

 

 

 瑞鳳の言葉を聞きながら、すれ違いざまにエリート駆逐イ級へ砲撃を叩き込みながら。兵藤艦隊所属の雷が後衛に一度っている戦艦タ級めがけ魚雷を発射。

 

 砲撃によって駆逐イ級を沈めることこそできるも、戦艦タ級には魚雷を回避されてしまう。しかし。

 

 

「クマァ!」

 

 

 そこに間髪入れず、独特な叫びとともに球磨が放った砲弾が戦艦タ級へ直撃し。

 

 よろめいたタ級に神通が放った魚雷が炸裂、息もつかせぬ連携により一気に2隻の深海棲艦が沈み……。

 

 その間にも。

 

 

「さぁ亀さん、私と……夜戦しよ!」

 

 

 甲羅にびっしりと砲台を搭載した亀に肉薄した、助平艦隊所属の川内が至近距離で魚雷を亀の顔面めがけて投擲。

 

 ソレが炸裂した瞬間には真横へスライドしながら移動し、川内に砲台が向く一瞬の隙の間に20.3cm連装砲を次々と叩き込んで無力化していく。

 

 肉薄射撃により、亀を取り巻くように行動していた機怪群や深海棲艦は誤射を避けるためか中々川内へ射撃を行うことができずにいた。

 

 そして、まごつく敵群の中に夕立が歪な笑みを浮かべながら飛び込み……。

 

 

「さぁ、ソロモンの悪夢……見せてあげる!」

 

 

 両手に持った12.7cm連装砲B型改二で目に付く敵を片っ端から砲撃していく。

 

 敵もまた、狙いにくい川内よりも夕立を先に処理すべきと判断したのか彼女へ砲撃を加えていくが……。

 

 

「当たらないっぽい!」

 

 

 時に身を屈め、時に砲撃の反動を利用し、時に海上を飛び跳ね宙返りし。

 

 狂犬じみた戦闘で敵陣をかき乱しながら、更に目標の頭部等を狙い打って次々と敵を無力化していく。

 

 

「ほんと、楽しそうね……」

 

 

 時折航空機を飛ばして援護しながら、縦横無尽に暴れまわる川内と夕立を見て瑞鳳はため息を吐き。

 

 気を取り直して、次の目標の選定へ入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今のところ、戦況は順調に推移しているようです」

 

「有難い話だな……」

 

 

 報告をまとめながら、伊達へ兵藤は戦況報告を行い。

 

 時折、島の内部の方から砲撃音や振動がするたびに心配そうに浮島の方へ視線を向ける。

 

 

「心配かね?」

 

「……そうじゃない、と言えば嘘になりますが。それでも同時に安心もあります」

 

 

 伊達の問いに、兵藤は自嘲気味に笑い。

 

 申し訳なさが入り混じった表情で、軍帽を被り直す。

 

 そんな青年に伊達は穏やかな視線を向け……。

 

 その表情は、飛び込んできた通信を耳にした瞬間強張る。

 

 通信内容とは……。

 

 

「軽巡竜を3体引きつれた、軽巡竜以上に大きい恐竜型の機怪群を確認。さらにその周囲を深海棲艦が群れをなしている、だと……」

 

 

 報告に伊達は苦虫をかみつぶしたかのような表情を浮かべて逡巡し。

 

 予備選力として待機させていた、戦艦を中心とした艦隊へ指示を出し……。

 

 

 

 

「……はい、了解しました。これより撃滅に向かいます」

 

 

 妖精が捧げ持つ通信機から、伊達の指示を受け……力強く大和が頷く。

 

 そして、同じように待機していた武蔵、金剛、比叡、榛名を見回し。

 

 

「ふふふ、腕が鳴るな」

 

 

 大和と同じ艦隊所属の武蔵が、腕を組みながら獰猛な笑みを浮かべ。

 

 金剛たちもまた、大和の視線にこたえるように頷いて見せる。

 

 

「お姫様の救出を邪魔するような無粋な輩は、沈めてやるデース!」

 

「……なぁ比叡、お前の姉だがなんであんなにヤル気に満ち溢れているんだ?」

 

「……どうも、浚われた愛宕さんに凄く感情移入しているみたいで」

 

「……なるほどな……榛名、お前も変わった姉を持つと苦労するな」

 

「榛名は、大丈夫です……」

 

 

 やってやるデース!と雄叫びを上げている金剛を指さし、武蔵が比叡に聞いてみれば。

 返ってきたすごく納得のいく回答に、思わず金剛姉妹の中でも常識派な榛名に同情の視線を武蔵は送り。

 

 その言葉に、榛名はどこか儚げに笑いながら答えた。

 

 

「……あの皆さん、行きますよ?」

 

 

 いざ出陣、と気力に燃えていた大和にできたことは。

 

 困惑のこもった声で、妹を含む戦艦娘たちに出撃を促す事だけであった。

 

 




【思い出したかのようなMM用語辞典】
巨大エイ……PS2のメタルサーガで出てきた航空型お尋ね者モンスター『B2マンタレイ』。
 高高度からの爆撃と、HP低下時の大火力ミサイル攻撃が厄介なボス。
 ついでにエンカウントも面倒くさいという厄介極まりないヤツ。
巨大亀型機怪群……MM2,およびMM2Rで出てくる海上お尋ね者モンスター『トータルタートル』
 意気揚々と海に乗り出したハンターを次々と沈めた憎いヤツ、ただし対策すると割と楽勝。
 MM2Rでは鮫や飛び魚と一緒に襲い掛かってくるので、阿鼻叫喚っぷりが酷かった。
飛び魚型機怪群……MM2Rで追加された海上お尋ね者モンスター『トビウオン』
 ドロップ品が中々に美味いが固くて速い、しかもちょっと特殊なやつなので面倒くさいボス。
        こいつも鮫や亀と仲良くハンターに襲い掛かる、おい食物連鎖どこいった。
とりまき引き連れてるでかい恐竜型機怪群……MM2Rで追加されたお尋ね者モンスター『母艦ザウルス』
 ゲーム画面だととても小さい軍艦ザウルスを3体ほどつれているが、強さは元の大きさとほとんど変わらない。
 対処法を知らないと、高レベル編成でも容赦なく消し飛ばされかねないボス。おかんは強い。


 というわけで20話、大変お待たせしました。
 次回は、大和たちの決戦を入れた後内部攻略に移ります。                  

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