だけども、書きたいこと書いたからちょっと満足してます。
シリアス? ヤツは死んだよ。
夜通し妖精達と第三回技術交換会という名の、前に居た世界では考えられない食事と酒を宴と共に満喫したアクセル。
そんな彼は翌日から何を始めたかというと。
「わりぃ、そこにあるパーツ持ってきてくれ。ああそうそう、それそれ」
施設に放置されていたマイクロバスの修復作業であった。
思った以上に状態が良かったソレの整備は割りとトントン拍子に進み。
「……エンジンかけるぞ」
整備を手伝った妖精達が固唾を呑んで見守る中、アクセルはキーを差し込んでひねり……。
大きな駆動音と共に、マイクロバスのエンジンが唸りを上げ始める。
「ま、俺にかかりゃぁ楽勝過ぎんだけどな!」
口ではそういいつつ、アクセル自信口元をニヤつかせ。
妖精達はやんややんやと喝采をあげ、中には仲間を胴上げする妖精まで現れていた。
武装は施設に残されていた備え付けの12.7mm機銃2門。それ以外は特に武装もなく。
余剰出力分で鉄板を装甲タイル代わりにはりつけた間に合わせの代物であった、しかし。
「とにかくコレで、化け物への対抗手段は出来たってわけだ」
この島の港湾施設にも敵が巣食っていると聞いたアクセル。
自分達の安全のために、ついでに物資のために是非ともそこを奪還したいと思い至り。
朝から施設のガレージにこもり、夕方までかけて修理と改造を続けていたのであった。
が、しかし。
彼がかつていた世界では、クルマを動かし戦うためにCユニットと呼ばれる高性能演算機が使われていた。
通常は複数人で分担して動かす戦車すらも一人で動かせるようになる高性能品であるが……。
当然、この世界にそのような代物は影も形もなく。アクセル自身にソレを0から作り出せるような能力も備わってはいない。
ならば、どうするか。
「じゃあ、ちょっくら慣らし運転がてら殴り込みに行くか!」
騒ぎ続けていた妖精達にアクセルは声をかける。
すると、安全帽やツナギを身に着けた妖精の中から何人かが勢いよく飛び出。
空中でくるくると回転し、マイクロバスの上部に備え付けられていた機銃用の銃座へと飛び乗る。
明らかにサイズ比が合っていないが、動きを確かめるかのように銃座が旋回していることから動作に問題はないらしい。
その動きにアクセルは満足げに頷き、自らも肩にねじり鉢巻を頭に巻いた妖精を乗せてマイクロバスへと乗り込む。
移動目標は占領された港湾施設。
作戦目標は、占領勢力の殲滅であった。
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夕日が水平線の向こうへと沈もうとしている光景の中。
異形の群れに占拠された港湾施設を観察している影がいた。
「此れはまた、厄介なもの見つけてしまったのぅ……」
整った眉毛が特徴的な、紫色の長い髪を持つ娘が古風な口調でぼやく。
所属している艦隊の古株にあたる彼女は、新人に近い力量の仲間らと共に海域の警戒遠征に出ていたのだが。
付近の深海棲艦と、最近現れ始めた化け物達がよく見られる島を発見し……。
なんとか上手い具合に追跡に成功したことで、敵の基地と思しき港湾施設を見つけた。が。
「さすがに、あの数は危険ですね。」
物憂げな印象を与える、オレンジ色の衣服を着た少女も古風な少女の言葉に合わせて声を潜めて答える。
「やはり、神通もそう思うか……」
「球磨はとりあえず帰って、てーとくに相談するべきだと思うクマー」
うぬぅ、と唸る少女に白い水兵服みたいな衣装をきたアホ毛の少女も撤退を具申する。
なんせ遠目に見るだけで空母型の敵が数人いる上に他の種類も数多く見られ、更にアメンボ型の緑色の化け物が5匹はくだらない数がいるのだ。
単独で高い戦闘力を持つ艦娘と呼ばれる彼女たちでも、挑むのは無謀を通り越して自殺行為でしかなかった。
「初春、どうする?」
「そうじゃのぅ……瑞鳳、気付かれないように偵察機は飛ばせるかの?」
「ちょっと自信がないかな、第一艦隊の赤城さんや加賀さんなら出来るかもだけど」
前髪をヘアピンで留めた八重歯が印象的な少女の言葉に、初春と呼ばれた少女は唸り。
隣に立つ胴衣を身に着け、弓を携えた少女に声をかければ少女は汗を一筋たらし。正直な意見を口にする。
「ならば、しょうがないのぅ……気付かれる前に撤退じゃ」
「慢心ダメ、絶対ってヤツね」
しばし黙考し、部隊を預かる旗艦として初春は決断し。
ヘアピンの少女が、所属している艦隊の提督がよく口にする言葉で同調する。
その言葉に初春は嬉しそうに目を細め、撤退しようとした。その時。
少女らの目の前で、港湾施設の一角が勢いよく大爆発した。
思わぬ展開に少女達の目が点になり、あれよあれよと言う間に蜂の巣を突いた騒ぎとなる港湾施設。
初春が仲間たちに視線を向ければ、皆が自分は何も攻撃していないとばかりに首を横に振る。
じゃあアレは?と再度初春が施設へ目を向ければ。
なんか、武装したマイクロバスが港湾施設に勢いよく突撃をしていた。
予想の斜め上どころの騒ぎじゃないソレにあんぐりと少女達は口を開き。
その間もマイクロバスに備え付けられていた機銃が縦横無尽に敵へと射撃を加えていて。
よくよく見れば、運転席から身を乗り出したカラフルな髪の毛をした人物が何かをばら撒いては爆発を引き起こしていた。
「……なんじゃぁ、アレは?」
初春が思わず口にするのもやむを得ないだろう、地上にいるとはいえ深海棲艦が武装した車両に打撃を負わされているなど常識外にもほどがある。
少女達が目の前の現実を理解できない間も戦いは続き、アメンボが車両へ攻撃を加え始めるも。
先ほどまで運転席から爆発物を投げまくっていた男が飛び出たと思ったら、手に持ったスパナを投げつけられコッパ微塵に分解される。
「……初春さん、コレは攻撃する機会では?」
「ん? う、うむ。そうじゃのぅ……よし、みなのもの!何がなんだかわからぬがあの男を援護するぞ!」
艦載機を飛ばそうとしていたヲ級が、カラフルな頭をした男に右ストレートで殴り飛ばされたのは見ないフリしつつ初春は号令を発する。
男がその時、遠くにいる少女らに聞こえるほどの大声で『男気パンチ』などと叫んでいたのは聞こえなかった事にした。
簡単な解説
Cユニット:一人で戦車を動かせるようになるスーパーコンピューター。
モノによっては迎撃機能があったり一斉射撃能力があったりと戦車の能力を左右する重要な要素。
ただし、極端に軽いものでも0.1tはありモノによっては10t超えるモノもある。
男気パンチ:メタルマックス3から導入されたパラメータである『男らしさ』が高ければ高いほど高ダメージをたたき出す特技。
工夫しないと生身戦闘がつらいメカニックの切り札になったりする特技だが、大体使われない。
解体:メカニックが高レベルになると覚える特技、メカ系の敵を確率で即死させる強力な必殺技。
ただし、戦車から降りないと使えない上メカ系は大体がバ火力なので使う前に臨終する事もしばしばある。
うん、すまない。
かなり、やりたい放題やりました。ヲ級ちゃんは犠牲になったのだ、レベル100オーバーメカニックの鉄拳の犠牲にな…。