艦これMAX   作:ラッドローチ2

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待たせたな(CV大塚さん)
そんな勢いの17話、仕上がりましたのでどうぞ!


17 砲弾の雨と雹、後晴れと虹

 

 

 絶えず続く深海棲艦と機怪群が放つ砲弾と、不自然に広がった雲から降り注ぐ雹。

 

 それらは闘い続ける艦娘らを容赦なくうちのめしていく。

 

 ソレは、兵藤らが乗る艦艇も例外ではなく……。

 

 

「ぐっ……! 被害状況を報告しろ!!」

 

「対空砲座全て沈黙! 電探も同様です!」

 

 

 まるで砲弾のような雹は艦艇の甲板、そして艦橋に次々と穴を開けていき。

 

 的が大きい分、艦娘達以上に被害は深刻な事態となっていた。

 

 

「被害が大きい艦娘らを収容したはいいが、コレでは逃げる事もままならんな」

 

「損害を受けた彼女達を修復し、順次前線に出てもらってはいますが……焼け石に水ですね」

 

 

 軍帽を深くかぶり嘆息する伊達に、追従するようにため息を吐く兵藤。

 

 無論、彼らものんびりと戦場にて雑談に興じているわけではなく。

 

 前線で戦っている艦娘らに悲観的な話を聞かせないよう通信を切り替えつつ、入る報告を元に矢継ぎ早に指示を出していく。

 

 

 高い錬度を誇る艦娘達に、ソレを全力でサポートする提督達。

 

 決して彼らが手を抜いていたワケではないが、戦況は圧倒的不利な状況と言えた。

 

 しかし、その時。

 

 

「っ! アクセル殿から通信が入りました! 『今からどでかい花火を上げてやる』との事です!」

 

「やっと、来てくれたか!」

 

 

 待ち望んだ、この事態を打破してくれる希望を持つ人物からの通信に。

 

 伊達は喜色を隠そうともせず大声を上げる。

 

 そして、次の瞬間。

 

 

 とてつもない轟音と共に。

 

 今も雹を降り注ぎ続けていた、雲の一部が吹き飛び……その向こうに見える青空から。

 

 絶望的な空気に満ち始めていた戦場に、一筋の光が差した。

 

 

 

 

 

 

 ここで、少し時間はまき戻る。

 

 港湾施設を出港した、夕張、ヲ級、瑞鳳、初春、扶桑、そしてアクセルの6人は。

 

 時折襲い掛かってくる深海棲艦や機怪群をなぎ倒しつつ、合流地点への航路を急いでいた。

 

 

「……グロウイン、ですか?」

 

「ああ、不自然にでけぇ浮島って聞いてまず思い出したのがソレでな」

 

 

 インカムを通じて、夕張が牽引するマイクロバスの中で装備のチェックに余念のないアクセルに夕張は不思議そうに問う。

 

 

「日を追うごとに成長し、発達した触手で近隣の船すら薙ぎ倒す化け物だ。杞憂で済めばいいが……」

 

「……その杞憂、外れてくれると有難いのじゃがのう」

 

 

 念には念を、というアクセルの言葉に押され。

 

 お気に入りの4連装16mm対空機銃にあわせ、連撃12cm単装砲とスモールパッケージを搭載してきた初春がアクセルの言葉に溜息を吐く。

 

 

「楽観的に考えるのは、危険よね……扶桑、いきなりハードな闘いかもしれないけど大丈夫?」

 

「大丈夫よ。レイテに比べたらそれくらい……それに、今私凄くわくわくしてるの」

 

 

 アクセル達のノリに慣れてきた関係か、そんなとんでもモンスターがいるかもしれない事実を瑞鳳はすんなりと受け止め。

 

 自らの後ろをついてくる扶桑へ心配そうに声をかけ。

 

 扶桑は、どこかキラキラしたオーラを放ちながらソノ言葉ににこりと微笑み言葉を返す。

 

 

 今、扶桑は……。

 

 アクセルの改造によって追加された5つ目の装備スロットに、取り外しが困難ではあるが強力な超重量の大型ミサイルポッドを搭載し。

 

 クラゲのような大型機怪群兵器の残骸を用いて作成された、大口径の3連装連撃砲を2門。

 

 更にはUFO型の爆撃機に加え、射撃精度を向上させる為の艦橋飾り型Cユニットを搭載しているという。

 

 火力一辺倒の武装構成をしていた。

 

 

「……アクセルさーん、航空機ないって言ってませんでしたー?」

 

「勘弁してくれ瑞鳳、材料がちょうど尽きちまったんだ。今度とびっきりの作ってやるからよ」

 

「やったぁ! 約束ですからね!」

 

 

 そんな扶桑の豪華すぎる武装構成に、瑞鳳はマイクロバスへジト目を向け。

 

 マイクロバスの壁越しにすら感じる瑞鳳の視線に負けたのかアクセルが約束すると、とたんに元気になり歓声を上げる。

 

 しかしそんな和やかな雰囲気も

 

 

「見エテキタゾ」

 

 

 多少衣装を改造し、ゆったりとした印象になった頭部に被り物型Cユニットを搭載したヲ級の言葉に。

 

 6人を包む空気は緊迫し、緊張感が漂い始める。

 

 

「何アレ……雲?」

 

 

 うっすらと見える浮島とは思えない大きさの島を覆うような雲に夕張は怪訝な声をあげ。

 

 ソノ言葉に、アクセルはゲッと呻く。

 

 

「瑞鳳、ヲ級。偵察機を飛ばしてくれ! 扶桑はストロングミサイルをいつでもぶっぱなせるように頼む!」

 

「え? は、はい!」

 

「任セロ」

 

「了解致しました」

 

 

 アクセルの、中々見せない焦った様子に戸惑いつつ瑞鳳は弓を番え。

 

 ヲ級も同様の姿勢を取ると同時に、扶桑が速度をそのままにミサイルの発射体勢へと移る。

 

 

「アクセルさん、もしかしてあの雲も……?」

 

「違うと思いてぇけどな……」

 

 

 夕張の強張った声に、アクセルは口の中がひりつく感覚を味わいながら呟く。

 

 そして、アクセルの懸念は……。

 

 

「っ! 偵察機撃墜! 雲から目が現れたって最後に!」

 

「コッチモダ」

 

 

 瑞鳳の悲鳴と、ヲ級の抑揚のない声が最悪の結論を齎した。

 

 

「間違いねぇ、クラウドゴンだ! クソッタレ何が弱小戦力の制圧だ、とびっきりの厄介ごとじゃねぇか!!」

 

 

 マイクロバス車内の壁を勢いよく叩きながら、やり場のない怒りと苛立ちをアクセルは吐き出す。

 

 

「瑞鳳、ヲ級。偵察機の妖精は無事か?!」

 

「う、うん! なんとか皆脱出できたみたい!」

 

「コッチモダ」

 

 

 瑞鳳とヲ級に確認をしつつ、アクセルは兵藤に教えられた通信帯域へ通信をかける。

 

 

「こちらアクセルだ! 今からどでかい花火を上げてやる!」

 

『な、何者だ貴様はぁ!?」

 

「あ、すまん。間違えたわ」

 

 

 慌てたあまり示し合わせてた通信帯域とは別のところに繋いでしまったのか、聞き覚えのない声が聞こえ。

 

 慌てず騒がずアクセルは通信機を切り、なかった事にして再度通信をやり直す。

 

 

「こちらアクセルだ! 今からどでかい花火を上げてやる!」

 

『よ、よろしくお願いします!』

 

 

 相手から帰ってきた通信に、今度は間違えなかったとホっとアクセルは胸を撫で下ろし。

 

 応急修理女神が生暖かい視線を送ってきているのを背中に感じつつ、扶桑へ指示を出す。

 

 

「よっしゃ扶桑! 大量にでけぇのをあの雲にお見舞いしてやれぇ!」

 

「了解。主砲、ミサイル……撃てぇ!」

 

 

 扶桑の代名詞と言える巨大な砲塔が動くと同時に、ミサイルポッドが稼動し。

 

 単独の艦娘が放ったとは思えない量の砲弾と、大量のミサイルが雲へ殺到。

 

 

 迎撃の術を持たない雲……クラウドゴンに炸裂。

 

 最初に比べ大幅にその大きさを縮め、ストロングミサイルが突き刺さった場所に至ってはぽっかりと穴を開いていた。

 

 

「よし! 全員、行くぞぉ!」

 

 

 アクセルの号令に艦娘らは思い思いの返事を返し。

 

 砲撃を雲へ加えながら、全速力で戦闘海域へと向かう。

 

 

「兵藤、良く聞け! あの雲も機怪群の一つだ、対空兵器を全力で叩き込め!」

 

『わかった、すぐに指示を伝えるよ!』

 

 

 今も激戦区の中心部に近い位置にいる兵藤に対策を通信で伝えながら、マイクロバスの武装で迫り来る深海棲艦らをアクセルは海に叩き返し。

 

 その間にも扶桑は進撃を続けながら……。

 

 

「ふふふ、今の私ならレイテも怖くないわ」

 

 

 少し危ない笑みを浮かべながら砲撃を続け、砲弾やミサイルでクラウドゴンを次々と抉り続け。

 

 更に飛行甲板から発艦させたUFO爆撃機にて、進行方向にいる機怪群を容赦なく爆砕していく。

 

 そんな、戦術脅威度が極端に高い扶桑を敵は当然ほっておくわけもなく。

 

 危険すぎる艦娘を沈めようと、深海棲艦側のヲ級達が航空機を扶桑めがけて放つも。

 

 

「ヤラセナイ」

 

「数は少なくても、精鋭なんだからぁ!」

 

 

 ヲ級と瑞鳳が手際よく発艦させた航空機により、ソレらは次々と迎撃され。

 

 その合間を縫った敵航空機や、敵の軽巡洋艦や駆逐艦が迫る。しかし。

 

 

「残念、妾には見えておるよ」

 

「色々試させてね、貴方達で!」

 

 

 くふふ、と愉快そうに喉を鳴らした初春の4連装16mm対空機銃で生き残った敵航空機も尽く撃ち落され。

 

 ついでだとばかりにスモールパッケージからミサイルを発射し、連撃12cm単装砲を発砲……不幸にも手近なところにいた駆逐艦が木っ端微塵となり。

 

 生き残った軽巡洋艦も、夕張が一斉発射した連撃18cm単装砲とミサイルの弾幕で蜂の巣になり爆発四散する。

 

 

 

 無論、この海域で戦っているのは彼女達だけではなく。

 

 今先ほどまで雹の爆撃に晒されていた艦娘達もまた、兵藤から回された通信により深海棲艦を相手にしつつありったけの対空砲火を空へ放っていた。

 

 深海棲艦と機怪群の相手をしながら対空砲火をするのは、中々に骨とも言えたが彼女達に限って言うとそれほどでもなかった。

 

 なんせ、対空攻撃目標は薄くなってきたとはいえ……今も彼女達の頭上に広がっていたのだから。

 

 

「でぇぇぇぇぇい!」

 

 

 男らしすぎる叫び声と共に、自らに満載された高角砲と対空機銃をクラウドゴンへ摩耶が浴びせ。

 

 トドメだ、とばかりに三式弾を発射しようとし……直前で慌ててとりあえず正面にいた戦艦タ級へぶちまける。

 

 

「危ねぇ危ねぇ、確か火は厳禁なんだったな」

 

 

 三式弾の効果で炎上し、次の瞬間僚艦の長門の主砲で文字通り真っ二つにされたタ級を眺め摩耶は呟く。

 

 少しは状況が好転してきた戦場に、摩耶は自然と笑みを浮かべつつ。

 

 何度も最前線と後方を、傷ついた艦娘を護衛しながら往復している……色んな意味で有名な元帥のところの電とヴェールヌイを視界にいれ。

 

 少しでも、彼女達の進路に降り注ぐ雹を和らげるべく砲身の廃熱が完了した高角砲からの砲撃を再開する。

 

 

 

 そして、アクセル達が戦線に参加してから暫くして。

 

 ようやく彼女らの頭上に広がっていた忌々しい雲、クラウドゴンは四散して青空に溶けてゆき……。

 

 雲一つなくなった空に、一本の虹が架かった。

 

 その光景に、艦娘らは負傷し疲労を隠せない状態でもなお思わず歓声を上げる。

 

 

 

 

 しかし、戦闘が未だ終わったわけではなく。

 

 

「ちょっとぉ、これはやりすぎじゃないかしらぁ~~?!」

 

 

 浮島から伸びる触手が、最前線で戦い続けていた愛宕の足を掴み高く吊り上げたのは。

 

 まさに、戦場に立つ者達の気が抜けたその瞬間のことであった。

 

 

 




嘘艦娘図鑑No.2
レアリティ:☆☆☆☆SSホロ
艦種:航空戦艦
名前:扶桑改 MM
装備適正:通常の航空戦艦と同様
特製:5スロ目開封、但し武装は『ストロングミサイル』固定。
『解説』
大本は真っ当な扶桑であったが、悪魔(アクセル)と契約して力を得ちゃった扶桑姉様。
通常の扶桑改よりも基礎火力が著しく向上しているが、それ以外のパラメータは一切改善されていない。

嘘装備図鑑No.9
レアリティ:☆☆☆☆Sホロ
名称:火星爆撃隊
種別:水上/艦上爆撃機
射程:-
装備適正:航巡、航戦、空母、軽母、揚陸
能力:爆装+9、策敵+2、命中+1.開幕航空攻撃フェイズで攻撃が可能。
入手条件:水上火星機怪兵器残骸一定個数と交換。

嘘装備図鑑No.10
レアリティ:☆☆☆☆SSホロ
名称:火星連撃3連装砲
種別:大口径主砲
射程:長
装備適正:戦艦、航戦
能力:火力+21、対空+5、命中+1。
 装備編成に関わらず、昼戦・夜戦における連撃発生のチャンスを得る。この効果は同種装備を搭載する事で重複する。
入手条件:水上火星機怪兵器残骸一定個数(多量)と交換。

嘘装備図鑑No.11
レアリティ:☆☆☆☆☆SSSホロ
名称:ストロングミサイル
種別:重ミサイル砲
射程:長
装備適正:扶桑型MM仕様専用艤装
能力:火力+35、対空+4、命中+4。開幕航空攻撃フェイズで攻撃が可能。
装備艦娘の弾薬補給時の必要弾薬量が2倍。
入手条件:扶桑型をMM仕様にすることで入手、ただし専用の為取り外し不可。


というわけで自重をやめた17話お送り致しました。
扶桑姉様のMM仕様改造は、弾薬消費と燃費が大和よりちょいマシ程度になっています。
そんな姉様の消費が固有装備で2倍になるわけだから……かなり、大変なことに。主に資材的に。

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