艦これMAX   作:ラッドローチ2

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今回はアクセルは名前しか出ません。
なんか色々と雲行きが怪しいお話です。
なお、作者は軍事知識が非常にガバガバなので。
こんな無能なこと普通やらねぇよks、とか突っ込まれるか否か非常にドキドキしてます。


そして、謎の浮島が登場。
一体、何グロウインなんだ…!



16 晴天後雲行き怪し

 

 

 ここはラバウル鎮守府沖の海域。

 

 今、その場には錚々たる面々が集まっていた。

 

 

 ラバウルの元帥、大将らが擁する極めて錬度が高い艦娘らの艦隊のみならず。

 

 横須賀や佐世保、呉からも着ている艦娘らもまた非常に高い錬度を持っていた。

 

 

 それらの艦娘達が綺麗に整列し航行する姿を見て。

 

 大型艦に乗船している、大本営から派遣されてきた元帥は満足げに頷いて口を開く。

 

 

「見事じゃないか、我らの戦力は」

 

 

 長門級のみならず、大和級もちらほらと見えるまさに大艦隊といえる様相に男は自分の事のように誇らしげに笑い。

 

 

「これだけの戦力があれば、深海棲艦も機怪群もひとたまりもあるまい」

 

「全く、そうでありますな」

 

 

 言葉に出さず、近くにいた艦娘に元帥は酒を要求し。

 

 艦娘はいわれるがまま、おずおずとグラスに注いだ酒を差し出すと男は当然のようにその中身を飲み干し。

 

 太鼓持ちの中将はその軽い口を回らせる。

 

 

「しっかりと厳命し、元帥殿が嫌っている『例の艤装』は搭載させておりませんので。安心してご覧になって下さい」

 

「ソレはすばらしいな、あのような怪しい男が作り上げた兵器など。我らが誇る帝国海軍に相応しくはないからな」

 

 

 中将の言葉に、心底愉快そうに元帥は声を上げて笑い声を上げる。

 

 

「はい、全くですとも……ですので、元帥殿のお力で機怪群の残骸は全て私が管理している部署に回して頂けますか?」

 

「ああ任せておけ、あのような兵器などなくとも我らは勝利を収められる。あの艤装がなくて沈む艦娘など不要だからな」

 

 

 声を潜めるように中将は元帥に進言し、元帥は二つ返事でソレを受け入れる。

 

 中将にとっては自らの懐を潤すために、元帥にとっては自分の誇りと自尊心を満足させる為に。

 

 現場の提督や艦娘が聞いたら激怒しそうな内容を、ただ互いの利益のためだけに取り交わし決定事項のように話す。

 

 

「無論、見返りはあるのだろう?」

 

「当然でございます。例の料亭にて……」

 

「素晴らしいな。機怪群様々じゃないか」

 

 

 人の悪い笑みを浮かべる元帥の言葉に中将は恭しく頷いて答え。

 

 何人もの艦娘、何隻もの船が沈められた事などなかったかのように密約を続ける。

 

 当然、二人以外にも聞いている人間はいるが……。

 

 この話を今この場で咎める気概のある人間も艦娘も、誰一人存在しなかった。

 

 

 

 『今、この場で咎める』存在は。

 

 

 

 しかし、この二人を疎ましく思う人間は今この場にも存在しするわけで。

 

 そう、ご機嫌に自分達の都合の良い密約を続ける……軍人としての能力が控えめにいって足りない二人に気付かれない程度に、二人の会話を一部の提督へそっと無線で流す程度に。

 

 色々と企んでいる人間は、存在した。

 

 

 

 

 そして、そのこっそりと流された無線は。

 

 ラバウル所属の提督らが乗っている船にもしっかりと流されているわけで。

 

 

「……いやー、真っ黒ですねぇ。あのお二方」

 

 

 笑うしかねぇ、とばかりに朗らかに笑うのは兵藤。

 

 他の提督はと言うと、ありえないとばかりに顔を引きつらせる人間が多く。

 

 中には……。

 

 

「離せー!あいつら全力でぶちのめしたらぁ!!」

 

「落ち着け!気持ちは痛いほどわかるが落ち着け!」

 

「黙れぇ!艦娘は愛でるもんだろうがぁ!? 俺に今すぐあいつら沈めさせろぉ!!」

 

「け、憲兵!憲兵ーー!!」

 

 

 最近覗きが芋づる式に発覚し、中将に降格させられた川内とコンヤクカッコカリ中のスケベな元大将が他の提督に押さえられながらも怒り狂い。

 

 その暴れっぷりに、どうにもならんと判断した同期の提督が憲兵を召喚。

 

 瞬く間にスケベ中将は鎮圧され、ぐったりとしたまま引きずられていく。

 

 

「……で、どうします? 伊達元帥」

 

「今はまだ様子見だな」

 

 

 どうしたものか、と頬をかく兵藤の言葉に伊達はいつもと変わらない調子で答える。

 

 正直先ほど引きずられていった中将と同じように怒り狂ってる、とばかりに思っていた兵藤は肩透かしにも似た感覚を覚え……。

 

 血管が浮かぶほどに硬く握り締められた伊達の拳から血が滴り落ちてるのに気付き、思いを改める。

 

 

「この後観覧式の予定では、この先にある最近確認された浮島に建造されている敵基地の撃滅だったか」

 

「そうですね……ただ、正直報告通りの弱小艦隊がいるとは思えないんですけどね」

 

 

 伊達の言葉に、兵藤は沸き起こる嫌な予感を隠しきれない言葉を口にする。

 

 彼自身、何度もこの感覚の赴くままに撤退指示を出し……結果的に誰一人失うことなく戦い続けてこれた感覚で。

 

 出来ることなら、今すぐにでも観覧式に出ている愛しい愛宕と彼女が率いる自分の艦隊に帰るよう指示を出したいくらいであった。

 

 

「……奇遇だな、私もだ。せめてもの救いは……浮島に我々が到着するくらいのタイミングで、彼の艦隊が合流することだな……。確か君の初春と瑞鳳もそこで合流するのだったな」

 

「はい、あの二人がいれば戦力としてはともかく。戦術行動については問題ないと思います」

 

 

 今回の馬鹿馬鹿しい観覧式、そして作戦にぶつける形でのやらかしをする企みを聞かされた時は伊達も思わず頭痛を感じた事を思い出しつつも。

 

 今この状況では、報告に聞く破天荒な人物……アクセルはある意味で希望にも思えた。

 

 

「……雲行きが怪しくなってきたな」

 

「ええ、間違いなく何か。ありそうですよね」

 

 

 やがて見えてきた、明らかに不自然な大きさの浮島。

 

 そしてソレを覆い隠すような大きな雲に、歴戦の提督二人は言いようのない悪寒を感じ。

 

 次の瞬間、二人は確かに目撃した。

 

 

「……今、あの雲」

 

「……ああ、間違いないな」

 

 

 目を見開き絶句し、言葉を痞えさせながら兵藤は呟き。

 

 伊達も、重々しく口を開いて同意を示す。

 

 今、二人の視線の先にある入道雲がごとき巨大な雲が。

 

 確かに、『目』を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ソレは、唐突かつ急な変化であった。

 

 浮島を覆うような雲が急速に、多数の艦娘らが整列し進む艦隊に覆い被さって来たかと思った次の瞬間。

 

 

 爆撃と見まごうほどに強力な雹が彼女達を手酷く打ちのめし、不幸に回避できなかった駆逐艦や当たり所の悪かった軽巡洋艦らが中破にまで追い込まれ。

 

 艦隊が混乱した瞬間を狙い打つかのように、浮島から大量の深海棲艦と機怪群が出撃し……。

 

 予想だにしない奇襲に浮き足立つ艦隊を撃滅すべく、容赦なく襲い掛かってくる。

 

 

 ここで、艦娘らにとって幸運と言えたことは二つ。

 

 一つは混乱に陥ってもすぐに動ける程度に錬度が高い艦娘のみで構成されていたこと。

 

 そしてもう一つは、企みに向けて伊達と兵藤が働きかけていたことにより……。

 

 この場において指揮権を持っている、有体に言って無能な元帥殿と中将殿の指示を聞く事なく生き残るために……提督と彼らが擁する艦娘が動けた事である。

 

 

 

「食らいなさい!」

 

 

 

 爆撃のように降り注ぐ雹を身を捻りながら回避し、飛び掛ってきた大口を開けた鬼鮫……Uシャークめがけ一斉射撃。

 

 無防備な口の中を大火力の暴力で蹂躙されたUシャークはそのまま爆裂四散し、スクラップと肉片を撒き散らしながら海面へ没する。

 

 しかし、一斉射撃により生じた隙を深海棲艦は逃すことなく狙いを定め……。

 

 

「危ないのです!」

 

 

 次の瞬間、愛宕に狙いを定めていた重巡リ級が電の放った10cm連装高角砲で射撃を妨害され。

 

 そこをすかさず暁と雷が魚雷を発射。なすすべもなく重巡リ級もまた海に沈む。

 

 

「うう……一航戦の誇りがぁ……」

 

「諦めなって、とりあえず提督のいるとこまで下がろ。 日向、アンタも他のとこの子庇って危ないんだから下がりなさいって」

 

「むぅ……そうなるな」

 

 

 不幸にも当たり所が悪く、雹に飛行甲板をぶちぬかれ涙目な赤城を川内が宥めつつ。

 

 とっさに飛行甲板と自らの艤装を盾代わりにして付近にいた、他鎮守府の艦娘を庇ったことで大破に追い込まれた日向も川内は手招きし。

 

 

「愛宕、ちょっと危険域な子連れて下がるけど。大丈夫?」

 

「任せておいてぇ~♪」

 

 

 今の元気に飛び掛ってくる機怪群や深海棲艦を千切っては投げ、千切っては投げを繰り広げてる愛宕へ声をかけ。

 

 返事を聞いて問題なさそうと判断した川内は、伊達艦隊のヴェールヌイと五月雨を率いつつ破損状況が危険な艦娘を率い。

 

 一気に戦域の離脱を図るべく動き出す。

 

 

「電ちゃん雷ちゃん、それに暁ちゃん……手伝ってくれる?」

 

「任せてほしいのです!」

 

「ふふんっ、もーっと頼っていいのよ!」

 

「……レディなら、この程度乗り切れないとね。頑張って司令官に可愛がってもらいたいし!」

 

 

 遠慮気味に笑いながら、絶えず弾幕を張り敵を寄せ付けずに愛宕は伊達艦隊の駆逐艦達に問い。

 

 三者三様の返事を受け、にこりと微笑むと。

 

 

 

 愛する男性の下へ生きて帰る為に、未だ終わりの見えない敵勢力との闘いへと身を投じた。

 




と言うわけで、色々と汚い事情に巻き込まれた現場の提督らと艦娘なお話でした。
なお、元帥殿と中将殿は色々とがなりたててますが……内通者的な通信士が上手い具合に通信不良と言い張って現場はのびのびと戦える状態になってます。
そして、今回の話はラバウル組だけじゃなく他の鎮守府組も聞いているので……。
現場レベルの連帯感は非常に強い状態です、縛りプレイあるからかなりキツイけども。

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