艦これMAX   作:ラッドローチ2

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着々と進む扶桑姉様の魔改造。
ついでに色々頑張ってる夕張とヲっちゃん、そんなお話になりました。


15 やりたい放題やった、反省はしてるが後悔はしていない

 

 

 来るべき作戦、『お偉方の胃壁をぶち壊そうぜ!』に備え慌しくなり始めた港湾施設。

 

 そこでは今、演習が繰り広げられていた。

 

 

「……ソコ」

 

 

 かつてつけていたモノよりも大分小ぶりな、ヘルメットのような頭部艤装をつけたヲ級が。

 

 演習相手である初春めがけ、矢を放ち……放たれた矢は光とともに変化を起こすと。

 

 妖精が駆る航空機と化して洋上の初春めがけ襲い掛かる。

 

 

「そうそう、当たるわけにはいかぬのぅ!」

 

 

 迫り来る航空機に対し、初春は回避運動をとりながら。

 

 浮遊砲台型の艤装がガシャリと音を立てて変形させ、4連装16mm機銃を航空機めがけ発砲。

 

 そして。

 

 

「今じゃ、雷!」

 

「はーい!」

 

 

 快速であることを生かしヲ級へ接近をしていた雷が、初春の号令と共に連撃12cm単装砲をヲ級へ向け発砲。しようとした瞬間。

 

 危機を察知し、雷は射撃を中断して体をひねり急制動をかけ……先ほどまで雷が居た地点に『数発』の小型ミサイルが着弾し、大きな水柱を上げる。

 

 

「あっちゃぁ、当たってくれないかぁ」

 

「使イ慣レナイ航空機ダト、難シイ」

 

 

 飛び退いた雷の様子にぼやき、接近を続けながら連撃18cm単装砲を夕張は放ち。

 

 取り急ぎ瑞鳳の予備の艤装と衣装を借りたヲ級は、悔しげに呟きながら航空機の発艦を続ける。

 

 高いポテンシャルを持つとはいえ実戦経験の少ない夕張と、かつてフラグシップヲ級として猛威を振るっていたとはいえ使い慣れない艦娘用の艤装で戦うヲ級。

 

 今、二人はベテランの駆逐艦二人に翻弄をされていた。

 

 

 しかし、初春側が余裕かというとそういうわけでもなく。

 

 

「初春、あの二人強いわね」

 

「そうじゃのぅ、夕張が2門積んでおる小型ミサイルも厄介じゃし。連撃単装砲も妾らの装甲じゃ当たるだけで危険じゃしのう」

 

「ヲ級も、やっぱりフラグシップだっただけあって勘鋭いしね……」

 

 

 アクセルが妖精達と共に新たに開発した、駆逐艦や軽巡洋艦でも搭載可能なミサイル艤装……スモールパッケージを見てため息を初春は吐き。

 

 先ほど肉薄した雷は、さっきのやり取りの間にヲ級が見せた振る舞いと動きで高い技量を痛感する。

 

 だが、しかし。

 

 

「じゃが、妾らもそれなりに修羅場を潜っておるからのぅ」

 

「ええ、演習とはいえ簡単に勝たせてあげるわけには……いかないわね!」

 

 

 ヲ級が新たに航空機を発艦し、夕張がミサイルを一斉に発射したのを視認すると。

 

 初春と雷はどちらともなく口元に獰猛な笑みを浮かべると、その体を屈めさせ。

 

 不規則に蛇行しながら、機関最大戦速で吶喊。

 

 

 そして……。

 

 

 

 

 

 

「負ケタ…………」

 

「また、勝てなかった……」

 

 

 艤装、および戦闘経験によりヲ級と夕張は初春と雷をそれぞれ中破判定を出させるまで追い詰めたものの。

 

 奮戦空しく、二人揃って大破轟沈判定となり敗北した。

 

 

「まぁそう気を落とすでない、お主らは着々と強くなっておるよ」

 

「そうよー、元気出しなさいって」

 

 

 どんよりと重い空気を放つ二人に、鈴を転がしたような声で初春は笑いながら二人を励まし。

 

 雷もまた、自分よりも背丈の大きいヲ級の背中をぺしぺし叩く。

 

 

「……コノ衣服、胸ガ非常ニキツクテ。闘イニクイ」

 

 

 世の提督共を励まし、時に堕落すらさせてきた雷の言葉とオーラに少し気持ちも落ち着いたのか。

 

 ヲ級はぐったりとした上半身を起こし、戦闘中から思っていた事を口に出し。

 

 自らの視線を下にさげ、そこにある瑞鳳から借りた衣装をパンパンに内側から押し上げている胸を見てため息を吐く。

 

 

 今、ヲ級の姿は……。

 

 サイズの小さい袴を無理やり着ているような状態により、胸元ははちきれそうなくらいに膨らみ。生地が引っ張られる事で形の良いお臍が見える。

 

 そんな状態であった、なお腰はほとんど問題がなかったらしい。

 

 

 そんなヲ級の言葉に、自らの胸の慎ましさを思って夕張は不貞腐れ。

 

 初春と雷は肩をすくめてため息を吐き。

 

 ヲ級に予備の衣装と艤装を貸している瑞鳳はにこやかな笑顔を浮かべつつ、額に青筋を浮かべ。

 

 

「そのケンカ、買うわ」

 

「何故ニ!?」

 

 

 がっし、とヲ級の襟首を掴むと小柄な体躯に似合わない馬力で引きずり始める。

 

 思わず救いの視線を夕張へ向けるヲ級、しかし夕張は呪うような視線でヲ級のたわわな球体を睨み……目をそらす。

 

 その仕草にヲ級は、情けない悲鳴を上げながら引きずられていった。

 

 

「……口は災いの元じゃのー」

 

「そうねー」

 

 

 所属してる艦隊の筆頭秘書艦、愛宕を見慣れてる初春と雷は。

 

 どこか達観した表情で中空を見上げ、ヲ級の冥福を祈った。

 

 

 

 

 

 

 そんな、艦娘達が和やかなやり取りをしている中。

 

 アクセルはというと……。

 

 

「あ、あの……恥ずかしいからあまり見ないで下さい」

 

「何言ってんだよ、綺麗なもんじゃねぇか」

 

 

 顔を真っ赤にしながら俯く扶桑の、恥ずかしいところを隅々まで見ていた。

 

 と言ってもいかがわしい事をしているわけではなく。

 

 

「すげぇなこの砲塔配置、絶妙じゃねぇか」

 

「う、うう……恥ずかしいわ……」

 

 

 扶桑の改造案を進めるべく、彼女の艤装を隅々までチェックしていた。

 

 

「ふーむ……確かお前さん、航空機も運用可能になるんだったか?」

 

「はい、少し改造が必要になりますけども……」

 

 

 兵藤が渡してくれた資料を手に、確認するアクセル。

 

 

「航空機ってのは俺もよくわかんねぇんだよな……どうしたものか」

 

 

 後ろ頭をがりがりと掻きながらアクセルは考えを巡らせ。

 

 妖精がせわしなく駆け回るドックの中にアイデアの元を求め、視線を巡らせ。

 

 妖精たちが台車に載せて一生懸命運搬している、機怪群の残骸の一つに目を留める。

 

 

「なぁ扶桑……ちょっとUFO積んでみねぇか?」

 

「はい?」

 

 

 アクセルの思いつきとしか思えないトンチキな言葉に。

 

 扶桑はただ、困惑した声を上げるしかなかった。

 

 

 

 そして方向性が決まるや否や、改造はとんとん拍子に進んでいく。

 

 どこからともなく、少しマッドが入った妖精たちがワラワラと集まってくると。

 

 きょとん、としてる扶桑をよそに。あーでもないこーでもないと言いながらアクセルと妖精達が凄い勢いで図面を引いていく。

 

 思わず扶桑が、暇だったのかよさげな試作品を漁ってた兵藤へ視線を向けると。

 

 

「うん、諦めて慣れると色々と楽になれるよ」

 

 

 錠剤を一つ取り出し、応急修理女神が差し出したペットボトルの水で飲み下すと。

 

 朗らかな笑顔で扶桑へ告げる。

 

 

「……空は、こんなに青いのに」

 

 

 ドックの窓から見える青空を見ながら思わず現実逃避する扶桑。

 

 開けっ放しになってるその窓から聞こえる、瑞鳳のハイになった笑い声とヲ級の悲鳴は聞こえない事にしたらしい。

 

 しかし、そんな現実逃避もアクセルに声をかけられ中断させられることとなる。

 

 

「なぁ扶桑、弾薬費がクッソかかるけどバカ火力のミサイルと。大口径の連撃連装砲どっちが積みてぇ?」

 

 

 そんなマッドが入ったメカニックの提案に、扶桑は……。

 

 

「……両方、はダメですか?」

 

「……お前、それやると速力も装甲も殆ど強化できねぇけどいいのか?」

 

 

 逡巡し、遠慮気味にアクセルの問いに答える。

 

 予想だにしないその回答に、ずり落ちかけたサングラスを直しながら確認するアクセルに。

 

 

「ええ……だって、主砲の火力だけが自慢ですから」

 

「……いいねいいね、俺そういう無茶大好きだぜ!」

 

 

 儚げな美貌に、笑みを浮かべる扶桑の言葉に。

 

 一瞬呆気にとられるも、アクセルはニヤリと笑みを浮かべ。

 

 妖精たちに改造案についての指示を出し、ただでさえ慌しかったドックの中は更なる熱気に包まれていった。

 

 




嘘装備図鑑No.8
レアリティ:☆☆☆ホロ
名称:スモールパッケージ
種別:ミサイル砲
射程:短
装備適正:駆逐、軽巡、重巡、空母、軽母、揚陸
能力:火力+4、命中+2。開幕航空攻撃フェイズで攻撃が可能。
入手条件:水上機怪戦車残骸A、および水上機怪戦車残骸Bを一定個数用意し交換。
ただし、水上機怪戦車残骸Bの入手難度は高め。

と言うわけで、色々と準備する回になりました。
夕張は実戦経験の不足をベテランの初春さん達に稽古をつけてもらうことで、レベリングしてます。

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