艦これMAX   作:ラッドローチ2

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申し訳ありません、お待たせしました。
ようやく13話投稿できました。

色々とぶっ飛んでしまったかもしれませんが、よろしければどうぞ。


13 みんなで胃痛になろうよ(白目)

 

 

 

 いつも賑やかで喧騒が絶えず時折爆発と共に妖精が吹っ飛んでる港湾施設。

 

 そんな混沌とした場所においても、応急修理女神が特に厳しく管理している食堂は割と平和である。

 

 そして今日も。

 

 

「……なんだぁ? コレ」

 

「納豆だよ、大豆を発酵させる事で出来る食品さ。癖は強いけど美味しいよ?」

 

「ヲー」

 

 

 とある事案の報告を受けてやってきたラバウル所属の、兵藤……最近色々あって大将にスピード昇格した提督が。

 

 糸を引く茶色の豆を箸でつかみ、怪訝な表情をしているアクセルに解説をしていた。

 

 

「……なんか、中々に独特な臭いっつか。ぶっちゃけて言うとクセェんだが」

 

「好き嫌いは分かれるからねー」

 

「ヲヲヲ?」

 

 

 器用にも箸を使い、糸を引く納豆に驚愕している妙に色白で銀髪な少女が居るが。

 

 兵藤は特に気にもせず納豆についてアクセルに解説を進める。

 

 

「いやまぁ、せっかくもらったもんだしありがたく頂くけどな。アメーバよりゃマシだ」

 

「君の食事についての比較に出てくる、アメーバって一体どれだけ酷いのさ」

 

「聞きたいか? 一つ目でピンク色の触手が生えたぬめぬめした化け物から剥ぎ取った……」

 

「いやごめん食事時に聞く話題じゃなかった、ホントごめん」

 

「……納豆、美味イ」

 

 

 アクセルの世界に居た割とポピュラーなモンスター、殺人アメーバについて解説しようとするアクセル。

 

 そして、ソレを必死で止める兵藤。

 

 そんな彼らに対して我関せずで、応急修理女神が用意したカツオ出汁を納豆にかけて味わってる少女。

 

 とても、平和な食卓であった。

 

 

「……って、アホかぁぁぁぁ!?」

 

 

 そんな和気藹々とした食卓は。

 

 一連の流れを見守っていた初春の怒りの咆哮にて終わりを告げる。

 

 

「いきなり何大声出してんだよ、静かに食わねぇと女神さんがキレるぞ」

 

「行儀ガ悪イ」

 

「彼らの言う通りだよ初春、君らしくもない」

 

 

 大声にびっくりしたアクセルと少女……ヲ級がジト目で初春を見。

 

 朗らかに笑いながら兵藤が初春を嗜める、空ろな目をしたまま。

 

 

「じゃかぁしいわ!? つか提督も提督じゃ! 少しは全力で今のコノ状況をおかしいと思わぬか!」

 

「いやもうさ、僕疲れたよ。お薬飲んで愛宕の作ってくれた濃い目のお味噌汁飲んで、愛宕の膝枕でお休みしたい」

 

 

 額に青筋を浮かべ、カーっと怒鳴る初春の言葉に。

 

 中空へ視線を移し、空ろな瞳を浮かべたまま兵藤は乾いた笑いと共に答える。

 

 

「……おい、良介のヤツやべぇぞ。何かあったのか?」

 

「……知ラン、キット持病ナノダロウ」

 

 

「「君(お主)らのせいだ(じゃ)よ!!」」

 

 

 こそこそと話し合うヲ級とアクセルの言葉に。

 

 初春と兵藤の異口同音のツッコミが食堂に響き渡った。

 

 

 

 

 なお、普段は食堂の治安に煩い応急修理女神はというと。

 

 兵藤の有様に、一人ハンカチを手に涙を堪えていた。

 

 

 

 

 

 

 少しハプニングがあったものの。

 

 そっと応急修理女神が差し入れた熱いお茶を互いに無言で啜る程度には状況も沈静化し。

 

 湯飲みを机の上に置いた兵藤が初春に退出を促し……彼女が食堂を出たことを確認した上で話を切り出す。

 

 

「……で、改めて色々聞きたいのだけども。いいかな? 二人とも」

 

 

 ふぅ、とため息を吐きアクセルとヲ級の二人を見詰めるアクセル。

 

 色々と頼りない姿を見られたり見せたりしているが、その眼光と貫禄は確かに一つの艦隊を率いる男のソレで。

 

 

「……ああ、構わないぜ」

 

「……ウム」

 

 

 その様子に、アクセルとヲ級も真面目に話を聞く姿勢に入る。

 

 二人の様子に兵藤は軽く息を吐き。

 

 

「僕や伊達元帥、それに君と取引を行う提督や君の装備に助けられている提督はそんな事は決してないと思っている。それでも敢えて聞きたい」

 

 

 そう宣言するのは、一度は友誼を結んだ男に対しての義理かそれとも己の流儀か。

 

 前置きしながら、兵藤は嘘偽りを許さないという意思を込めてアクセルへ問う。

 

 

「君は、人間に敵対する気はあるのか?」

 

 

 アクセルと同年代、もしくは彼の風貌を差し引いても年下に見えかねない青年が。

 

 真剣な面持ちで、対面に座るアクセルへ問いかける。

 

 そんな、青年の言葉にアクセルは……。

 

 

「……もし、そうだと言ったら?」

 

 

 ククク、と喉を震わせて笑いながら。

 

 アクセルは剣呑な光を目に宿し、挑発気味に笑いながら目の前を男を見る。

 

 その内容、そしてアクセルの言葉にヲ級は戦闘態勢に移行しようとするも、応急修理女神にお盆で頭を叩かれておとなしくなる。

 

 

「そうしたい理由を聞きたい」

 

 

 剣呑な瞳の視線を受けながらも、まっすぐその瞳を見詰め兵藤は言葉を返す。

 

 

「理由を聞いてどうすんだ?」

 

「その理由を聞いた上で、君を説得する」

 

 

 アクセルの返答に対しての兵藤の言葉に、ほう。と表情に出さず目の前の男を見直す。

 

 そして、ソレをおくびにも出さずアクセルは言葉を重ねる。

 

 

「説得できんのか? お前に」

 

「出来るか出来ないかじゃない、説得する。 色々やらかすとはいえ妖精がアレだけ懐く君が悪い人間だとは思えないから」

 

 

 挑発を繰り返すアクセル、しかし正面からぐいぐい来る兵藤。

 

 そんなまっすぐな青年の言葉に、アクセルは。

 

 

「……俺の負けだ良介。試して悪いが……俺ぁそんな面倒なことする気はこれっぽっちもねぇよ」

 

「……意地が悪いね、君も」

 

「そりゃお前、いきなりあんな事言われたら意地悪の一つもやりたくなるってよ」

 

 

 降参だ、と軽く両手を挙げておどけるアクセルに。げっそりとした表情で兵藤が呟き。

 

 その言葉に、カカカと笑いながらアクセルは悪びれず言い放つ。

 

 そして。

 

 

「……で、なんでまたそう言う事言い出すんよ? お前さんらしくもない」

 

「……正直に言おう、大本営と一部の提督が君に対して強い疑いを持っている」

 

「疑い、だぁ?」

 

 

 応急修理女神がさりげなくお盆に載せて出してきた茶菓子をかっ喰らいながら、チンピラ感丸出しで問いかけるアクセル。

 

 問われた内容に兵藤は一瞬逡巡しながらも、正直に理由を伝え……その返答にアクセルは素っ頓狂な声を上げる。

 

 

「銃弾や爆撃を受けてもピンピンし、フラグシップの空母ヲ級を配下にするなんて人間とは思えない。と言うのが彼らの言い分みたいだよ」

 

「失礼な、どこからどうみても人間だろうが」

 

「イヤ、ソレダケハナイ」

 

「あァン!?」

 

「イヒャイイヒャイ」

 

 

 兵藤の言葉に、ケッと小ばかにしながらアクセルが吐き捨て。

 

 その内容に、これまで一番彼の人外っぷりで被害を蒙ってきた……先ほどまで茶菓子を頬張っていたヲ級が思わず口を出し。

 

 イラっときたアクセルが涙目のヲ級の頬を両方からぎりぎりと引っ張る。

 

 

「……しっかし、俺が今まで納入した装備については考えてねぇのか? そいつら」

 

「自分達が判断することに都合の悪い情報は目に入らないんだよ、その手の人たちは」

 

「……お前さんも、中々に言うねぇ」

 

 

 ヲ級のほっぺを開放し、肩を竦めながらアクセルはため息を吐き。

 

 今回、アクセルの真意を問い質すという無茶振りをされてきた兵藤は……少し腹黒い顔でさりげなく毒を吐く。

 

 

「やれやれ、どうしたもんかぁ……」

 

 

 だがしかし、疑われたままというのは面白くないアクセルは腕を組んで天井を見上げながら考える。

 

 隣からほっぺを押さえた涙目のヲ級が無言の抗議オーラを放ってくるが、見事にスルーしつつ彼は考える。

 

 そして、ひらめいた。

 

 

「良介よう、近場でお前さんのいるところにお偉方が集まる予定ってあるか?」

 

「え? あるにはあるけど、まさか……」

 

「安心しろ、殴りこみかけるワケじゃねぇよ。ただ」

 

 

 ちょっくら、お偉方の前で色々とデモンストレーションするだけだ。と人の悪い笑みと共にアクセルは兵藤へ言葉を続け。

 

 そろそろ、自分だけが胃痛と頭痛に苦しむのは不公平だと思っていた兵藤は。

 

 似たような意地の悪い笑みを浮かべて、アクセルの提案に全力で乗ることを決意した。

 

 

 




【悲報】兵藤さん、フォースの暗黒面に落ちる。

そんな13話でした。

でもぶっちゃけ、アクセルのやった行動を書面と結果だけで報告されたら。
一部の性急な人は勘違いして焦ったり、強硬論出したりしそうですよね。
つか、出すよね。こんな危険物が野放しになってたら。
そんなお話でした。

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