艦これMAX   作:ラッドローチ2

12 / 46
実家から帰還、アンド執筆のち投稿。
ちょっと今回は準備回なので短めな上あまりインパクトが強くないかもしれません。


12 元の場所に戻してきなさい(懇願)

 

 

 

 港湾施設の桟橋にて。

 

 

「ねぇ初春」

 

「なんじゃ? 瑞鳳」

 

 

 予定をかなり遅れて戻ってきたマイクロバスが遠目に見えた瑞鳳が、隣に座る初春へと声をかける。

 

 

「私の気のせいかもしれないけど、なんか煙噴いてない? アレ」

 

「噴いておるのぅ、ソレに車上に何か括り付けておるのぅ」

 

 

 乾いた笑いを二人してあげながら、ゆっくりと近づいてくるソレを眺める二人。

 

 二人の視線の先に見えるマイクロバスはあちこちがボロボロになっており、上部に搭載された武装からは黒煙を吐き出し続けていて。

 

 挙句のはてには、車上に簀巻きにされた何かが積まれていた。

 

 

「ねぇ……あの髪の色、というか顔って……」

 

「言うな、妾の目には何も見えておらぬ」

 

 

 目の良い瑞鳳が、よく見え始めてきた簀巻きの何かを指差して声を強張らせ。

 

 うつろな瞳で青空を見上げた初春が、感情の篭ってない声で返事をした。

 

 

 

 

 

 

 結論から先に言えば。

 

 水上走行車両の動作試験は大成功に終わった。

 

 そして……。

 

 

「……で、どうするつもりじゃ? コレ」

 

「そうだなぁ」

 

 

 簀巻きにされたまま吊るされてるヲ級を眺めながら、じと目でアクセルを見る初春。

 

 その初春の言葉に。

 

 つい先ほど、敵とはいえ乙女を裸に剥くとは何事か!と応急修理女神にドロップキックを食らったアクセルが頬をかき。

 

 

「ちょっくら、色々と試してみたいことがあってな」

 

「……まさか、お主」

 

 

 簀巻きにされたまま目を回しているヲ級を眺めて口にしたアクセルの言葉に。

 

 初春が目を細め、剣呑な光を目に宿しながらカラフルな頭をした男を睨む。

 

 

「ん? ちょっくら艦娘自身の改造の試験体になってもらおうと思ってな」

 

 

 別にメス入れたり文字通りバラしたりしねぇよ。と朗らかに笑うアクセルを見て。

 

 初春は、先ほどから絶句したままの瑞鳳と思わず目を見合わせる。

 

 

 

 妾、これどんな顔したらいいんじゃろ?

 

 笑えば、いいと思うよ?

 

 

 

 そんな、無言のやり取りを二人の少女は目だけでやり取りしつつ。

 

 

「で、でも改造って……どんな事するつもり?」

 

 

 少し卑猥な方向に思考が行きかけた瑞鳳が、頬を赤らめながらアクセルへ問いかける。

 

 

「んー、そうだなぁ。 航空管制の強化とかその辺りの試験できるようにするかねぇ」

 

「ど、どうやって?」

 

「そりゃお前、武装を搭載する穴をふや……ぐぇ?!」

 

 

 穴を増やすとか、卑猥なこと言ってんじゃねぇ! とばかりに額に青筋を浮かべながら本気のドロップキックを応急修理女神に叩き込まれるアクセル。

 

 そんな女神に、仕方ねぇだろ俺らはそう言ってたんだから!と弁解するように叫ぶアクセル。しかし判定はギルティ。

 

 そのまま、応急修理女神の号令の下妖精たちに袋叩きにされていった。

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで日が暮れて。

 

 簀巻きにされたヲ級がようやく目を覚ます。

 

 ぼんやりとした思考で周囲を見回すとそこは、かつて根城にしていたドックの中で。

 

 見覚えのある艦娘、夕張と思しき何かに初春、瑞鳳、そしてアクセルを見つけるも、どこか諦めたような瞳で4人を眺めていた。

 

 アクセルを見つけた時にその瞳に怯えと敬意があったのは、ある意味しょうがない。

 

 

「……私ヲ、ドウスルツモリダ?」

 

 

 未だ身動きが取れない自分の状況にヲ級は歯噛みしつつ、目の前の男達の意図が読めず……。

 

 ヲ級は震える声で問いかける。

 

 

「思った以上におとなしいのう……」

 

「ソチラノ方ニ、私ハ完膚ナキマデニ敗北シタ。ソレダケダ」

 

 

 暴れると思っていた初春は、艤装を下ろしつつ思わず呟き。

 

 その言葉にヲ級はどこか達観したような表情で答える。

 

 

「じゃ、じゃあ貴方は。もう私達に害を加えるつもりはない、と?」

 

「今コノ場ハナ」

 

 

 恐る恐る問いかける瑞鳳の言葉に、ヲ級は答える。

 

 ソノ言葉に初春は思わず顔を顰める。

 

 要するに、万が一開放された場合は深海棲艦として敵に回ると言外に言っている事を理解したからだ。

 

 

「ダガ、一ツダケ希望ヲ言ワセテモラエルナラバ」

 

 

 初春が顔を顰めたことに対して何か問いかけるでもなく、ヲ級は続けて口を開き。

 

 

「ソチラノ方ノ下デ、戦ワセテ欲シイ」

 

「……あん?」

 

 

 妖精たちに袋叩きにされた後、政治的な問題を初春から懇々と説明を受けて、ヲ級の対処を無言で考えていたアクセルをじっとヲ級は見詰め。

 

 急に話を向けられたアクセルが、予想外の言葉に少し驚く。

 

 

「……何故、じゃ?」

 

「アノ強サ、ソシテ海上ニ立チ戦ウ能力。間違イナク我々ノ同胞デアリ上位存在ダカラダ」

 

 

 アクセルに若干怯えながらも、初春からの問いかけに簀巻きにされたまま自信を持って答えるヲ級。

 

 物凄い勢いで、アクセルは勘違いされていた。

 

 

「失礼な、どう見ても人間だろうが」

 

「いやー、アクセルさん。ソレはさすがに無理あると思う」

 

 

 ヲ級の言葉に半ば不貞腐れたようにアクセルが呟き、最初から最後まで見ていた夕張が汗を浮かべて答える。

 

 

「まぁ、言いたい事はいろいろあるが……お前さんは俺の指示に従うつもりなんだな?」

 

「アア」

 

 

 思い切り嘲り、死闘を繰り広げた相手とは思えないほどに素直なヲ級にアクセルは肩透かしを感じつつ。

 

 

「というわけで初春、この娘は俺んとこで預かるわ」

 

「元の場所に戻して来い、と妾は言いたいところじゃがのう」

 

 

 特に、何とかしないといけなくなる妾らの提督を思うとのう。と諦め半分に初春はため息を吐き。

 

 ワイワイと、ヲ級の改装計画に妖精たちが色めき始めるドックの中で提督の胃壁の冥福を祈った。

 




そんなワケでフラグシップヲ級ちゃん加入、そんな話でした。
彼女にとってアクセルは、鬼級の方達並に畏怖と敬意を持つ存在となりました。

脱ぎポ、もしくは解体ポ。そんな露骨なオリ主要素。
ヲ級ちゃんの嘘艦娘図鑑的なスペックは、次回をお楽しみに!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。