機動戦士ガンダム00 変革の翼 2nd   作:アマシロ

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すみません、帰省してました!
前日の夕方に急に決まったので、お知らせもできずに長期休暇で申し訳ないです…。







第6話:故国燃ゆ

 

 

 

 

 

 アザディスタンの上空を、幾筋もの赤い流星が飛び交う。

 

 それら――――ガンダムアイシスの構える二丁のビームライフルから絶え間なく放たれる粒子ビームと、アルケーガンダムのファングからアイシスを半ば包囲するように放たれるビームは、それぞれサーシェスの戦場を知り尽くしたような動きと、セレネの超人的な反射神経によって互いに掠める程度に留まり、それでも状況は拮抗しているとは言い難かった。

 

 

 

(―――――っ、動きの、ラグが…っ!)

 

 

 

 ヴェーダを介した脳量子波通信とはいえ、やはり完全に思考と操作が同時ということはできない。自分が乗っていれば確実に回避できた攻撃がアイシスを掠め、当てられたはずの粒子ビームが虚しく空を裂く。

 

 

 

『どうした、動きが鈍いじゃねぇかよぉ!?』

(やっぱり、この人――――…強い…っ)

 

 

 

 並の相手なら問題にならず、黒いアイシス―――“セレネ”が相手なら経験と先読みで埋められただろう“差”が、始まったばかりの戦闘でも既に感じ取れた。

 なにより、この独特の戦闘リズムを持つ相手には、油断すれば即座に落とされるだろう。

 

 とはいっても、刹那の故郷が襲撃されるという確定情報があっても黙っていることはできなかっただろうし、何よりこのまま大人しく負けるつもりは微塵もなかった。

 

 

 

『おらおらおら、その程度で邪魔すんじゃねぇよ!』

 

 

 

 アルケーガンダムが突進と共に放ったGNビームサーベル付きの蹴りになんとか左腕の盾を合わせるものの、勢いで負けたために大きく弾かれ、建物すれすれまで高度が落ちる。

 

 こんな場所で戦っていたら一般人が巻き込まれる――――…っ!

 

 

 

 

「調子に―――乗らないで下さいっ! ガンナーストレージ、分離! HARO、制御を!」

『シャーネーナ!』

 

 

 

 既にこの前の時点でアイシスの存在がバレたことも考慮して解禁した装備。3つ存在するうち今回装備してきたのは2つだが、それを開放する。

 

 脳量子波と音声、両方の指示を受けて零式の左腕に装備された盾のようなもの、それが4つに割れ―――――試作段階のシールドビットが分離し、ファングの放った粒子ビームをその表面にGNフィールドを展開することで弾く。

 

 

 

「ソードストレージ、開放! バースト!」

 

 

 次いで右腕に装備された細身のGNソードと、腕全体をすっぽりと覆う形の手甲が擬似GN粒子の真紅の光を纏い――――無造作に腕を振るう。

 

 内蔵されたブースターによって勢いを大きく増した斬撃が空を切り――――アイシスを囲むように飛んでいたファングの1基が、届かないはずの斬撃で真っ二つに割れ、爆発する。

 

 

 

『――――んだと…っ!?』

「背部GNブースター、バースト! 出力全開――――!」

 

 

 

 タネが割れる前に、一気に畳み掛ける!

 

 二基の擬似GNドライヴの甲高い稼動音と共にGNブースターが真紅の光に包まれ、同時にアイシスがキュリオスに似た飛行形態に姿を変え、何かが破裂するかのような炸裂音と共に――――視界から消えた。

 

 

 

 

『なに…っ!?』

「――――――ここから、いなくなれぇぇぇぇぇッ!」

 

 

 

 その瞬間、咄嗟に回避を選択したのはサーシェスの培った“勘”とでも呼ぶべきものだったのだろう。

 

 技も芸もなく、真紅の流星と化したアイシスはその機体そのものを凶器に変え、コクピットのありそうな機体の中心付近を狙って串刺しにせんと突進し―――――すんでのところで回避したアルケーガンダムの左腕を肩からもぎ取り、更には背部に装備されていたコクピットユニットの外壁の一部を切り裂き、勢いを一切落とすことなく通り抜けた。

 

 

 

 

『―――――なんなんだ、この動きは!?』

「…っ!」

 

 

 

――――仕留め損ねた!?

 

 

 確実に“殺す気”で放った不意打ちを回避され、唇を噛み締めつつも、内部に乗っていたらできないだろう無理な急制動でターンをかけ、旋回と同時にファングの攻撃を躱す。

 

 再び突進の体勢に入ろうとしたところをファングとGNビームライフルの弾幕に遮られ、シールドビットで直撃コースを防ぎながらバレルロールで回避し、こちらも粒子砲で牽制。リズムが崩れたからか、焦ったようなサーシェスの声が響いた。

 

 

 

『まさか、クルジスのガキと同じ―――ちっ、どこが虫も殺せねぇ甘ちゃんだってんだ!』

「あなたは、ここで倒します! ―――――沈め…っ!」

 

 

 

 アイシスがGNフレア――――真紅の粒子を撒き散らして即席の煙幕とし、サーシェスがその姿を見失った次の瞬間。

 

 

 咄嗟に背後を振り返ったアルケーガンダムを下から突き上げるような凄まじい衝撃が襲い、右、左、上、右、下、左と全方位から無秩序に、絶え間なく、残像と共に人型形態に戻ったアイシスの強烈な斬撃が、蹴りが放たれる。

 が、決して完全に一方的な攻撃というわけでもなく、連続して閃くスパークの光が互いのビームサーベル同士が交錯していることを示していた。

 

 

 

『見えてんだよ!』

「……もっと、もっと速く! 動いて――――ガンダム…ッ!」

 

 

 それでも“ラグ”がある故の限界はどうにもならず、むしろアルケーガンダムが徐々にアイシスの動きに追いついてくる。

 アルケーガンダムの放った蹴りと、それに付随するGNビームサーベルがアイシスの左足をバッサリと切り落とし、コクピットを狙ったファングの攻撃をシールドビットが辛うじて防ぐ。

 

 それでも、なんとか市街を巻き込まないようにアイシスを急上昇させ、叫ぶ。

 

 

 

 

「――――それでも、それでもまだ! 奥の手はあるのです…!」

 

 

 

 

 

 アリー・アル・サーシェスは、決して侮っていい相手じゃない。

 私は“殺しにいかない”という先入観を――――いや、自分の信念を利用した不意打ちをしてでも、この人だけは仕留めておきたかった。直接対峙していないのに、手も抜いて勝てる相手じゃないと思ったから。そして、刹那と因縁のある相手だと知っているから。

 

 

 けれども、それでも仕留め切れなかった。

 強い。強いと思う。単純な戦闘力ならお兄ちゃんの方が上かもしれないけれど、型破りな動きのせいで先読みがままならない。予測のできない怖さと、焦りがある。そしてその上で、こちらの裏をかこうとする狡猾さを感じる。

 

 

 このままでは、そう長くは持たない。

 何も打つ手がなければすぐに追いつかれ、そのまま私は負けるだろう。

 

 

 

 

 

「それでも………もう、もう二度と奪わせない――――っ!」

 

 

 

 

 かつての戦いで、結局私は3人の命を奪った。

 

 クリスにリヒティ。そして、名前も知らないフラッグファイターの人。

 二人は、クリスとリヒティは、私が“全力で”戦っていれば助けられたはずだ。そして、“私”に『殺せない』甘さが無ければ――――…。

 

 

 

―――――私には、覚悟が足りなかった。

 

 

 

 “殺さない覚悟”なんて、ほんとはもっていなかった。

 

 自分の、そして“ガンダム”の力があれば全てを救うことができると、無邪気に信じていたから。

 

 

 でも、もしもそうでないのなら―――――…。

 “命を背負う覚悟”を、持たないといけない。私たちが奪った命のためにも、少しでもやさしい世界を実現させてみせなければ。

 

 もう、大切な人を奪わせたりしない。その上で、世界を変える。

 

 

 

 

 そのためなら―――――世界の歪みを、私は“討つ”――――!

 

 

 

 

 

 

「だから、力を貸して……ガンダムッ! ―――――トランザム…っ!」

 

 

 

 

 アイシスの背負うGNブースターが2つに割れ、鉄の翼が広がる。

 そして、内部に隠されていた青白い輝きを放つGNドライヴが――――オリジナルの太陽炉が露わになり、GNブースターに埋め込まれていた擬似太陽炉と並ぶ。

 

 その瞬間、それまでソードストレージとGNブースターのみを覆っていた真紅の輝きが、一気にアイシス全体に広がり――――爆発的に広がった黄金の輝きが、アザディスタンの空を染めた。

 

 

 

『なんだ、この光は―――――…ッ!?』

 

 

 

 

 

 私の意思に、その理想に応えるかのように、“ラグ”すらももろともせず、真紅の残像と黄金の粒子だけを残して、アイシスがこれまでにない速度で夜空を切り裂く。

 

 

 

 

「――――その歪み、私が破壊します…っ!」

 

 

 

 

 背後から斬りかかる――――と見せかけて反撃を誘い、残像を斬らせ、カウンター気味にファングを収納する腰のバインダーを破壊する。

 

 

 

 

「武力による戦争の根絶―――――世界の歪みの破壊…! そのために!」

 

 

 

 慌てて距離をとったアルケーが向かう先には、シールドビット。

 そこに内蔵された小型ビームガンが一斉に火を噴いて頭部を撃ち抜き、その瞬間にGNソードを構え、コクピットを貫かんと突撃する。

 

 

 

 

「――――貴方が、世界の歪みを望むのなら…っ!」

『くそっ、こんなことで、この俺がァ――――ッ!』

 

 

 

 

 トランザム、そしてGNブースターによって隠されたオリジナルの太陽炉と、擬似太陽炉の同調。―――――擬似ツインドライヴの後押しを受け、黄金色の粒子を纏ったGNソードが、アルケーガンダムの右足に隠されていたビームサーベルと激しいスパークと共に激突し――――貫く。

 

 

 

 

 

「―――――貴方は私が討ちます! 今! ここで―――…ッ!」

 

 

 

 

 

 濃密なGN粒子が擬似的なGNフィールドとなってアルケーガンダムのGNビームサーベルを消し飛ばし、黄金の槍となったアイシスがアルケーガンダムの胸の太陽炉を真っ二つに切り裂き―――――アルケーガンダムの内部から膨れ上がった爆炎が、真紅の粒子とともに広がり、花火のようにアザディスタンの夜空を照らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………

 

 

 

 

 

 アザディスタンの空に咲いた真紅の花火を“視”ながら、ようやく自分の視界が涙で滲んでいることに気づく。

 

 戦いの熱が冷水を浴びせかけられたように冷め切って、凍えるような恐怖が足元から這い上がってきていた。

 

 

 

 

―――――怖い。怖い。怖い。

 

 

 

 何の躊躇もなく命を奪おうとした、自分が怖い。

 

 どんな人とだって分かり合える。そう、信じていたはずなのに――――…。

 

 

 

 

「せつ、な。……私、は―――――…」

 

 

 

 

 もう、ガンダムにはなれない……かな。

 

 

 

 

「……けほっ、けほっ」

 

 

 

 なんだか、眠くなってきた。

 

 このまま、眠ってしまいたいな―――――…と、グラグラと揺れ始めた視界に、真っ赤に染まった机が見えた。

 

 

 

「………ぁ、れ………」

 

 

 

 バシャリ、と音を立てて身体が血溜まりになった机の上に倒れ伏し、脳量子波による通信が途切れたことを知らせるアラートがけたたましく鳴り響く。が、寝落ちを防ぐためのそれでも、霧がかかっているかのように思考がはっきりしない。

 

 

 

「…………せ、つな……?」

 

 

 

 手を伸ばせば届きそうな位置で、刹那が笑っているのが見える。

 

 それはきっと幻だけれど、不可能ではないと私は信じたい。平和な世界になったら、その時は………きっと。

 

 

 

 

 でも、持ち上げようとした手はわずかに震えただけで、真っ暗になった視界にはもう何も見えない。

 

 

 

 

「………も、いち……ど」

 

 

 

 

 そのまま意識は闇に落ちて。

 最後に、誰かの呼ぶ声を聞いたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 









おまけ


解説?



高速機動時の破裂音
 種割れとかじゃなく、ただのソニックブーム


アイシスさんのバースト
 スペシャルギミック・部分限定のトランザム(低燃費)


サーシェスさん瞬殺
 2ndでもトランザムすればまず負けない(相手がトランザムできない場合)というアニメからのアレ。アニメでのVSトランザムライザーの時よりは奮戦した……はず。全部トランザムが悪いのです。


黄金の粒子
 オリジナルと擬似が混ざった黄色の粒子。ちなみに何か凄い力とかはない。


GNストレージ
 GNパックの第四世代機仕様。ケルディムに搭載予定のシールドビットのセレネカスタムなガンナーストレージ、先取りライザーソード(微弱)なソードストレージ、そして最後のライザーストレージ(未完成)からなる有り合わせ(極悪)なセレネさんシリーズ。
 ちなみに背負っていたGNブースターはライザーストレージの代役。なお、王留美によって開発中のガンダムの情報はレナに漏れている模様。


GNフレア
 トランザムをごまかすための煙幕。……のはずが、意外と防御や奇襲に優秀。


戦闘描写
 もうなにがなにやら。どこかに戦闘描写のいい作品がありましたら是非お教え下さい><



もうちょっと進めば書くのが楽になる予定なのですが………はぁ。



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