榊蒼十郎氏はディアーチェ推しらしい……サービスカット多いし。
「よし動くな」
「抵抗するなら『焼き』ます」
「あわわわわ」
「王様もシュテルんもお兄さんいじめちゃダメーッ!」
彼の仕事場に突如乱入してきたレヴィと、彼女と同年代の少女たち。
なにやら武器とおぼしき金属製の杖を突き付けられている。
「この異様な数の下着、やはり変態であったか!」
「焼きましょう、塵ひとつ残さず、もろともに」
「あわわわわ、シュテルの後ろに『天』って文字とでっかいロボットが見えますー」
「お兄さん焼いちゃダメーッ!」
どうやらレヴィの友人であることを理解した彼は、ひとまず誠心誠意の謝罪を行うことにした。
いかに同意の上とは言え、自身がレヴィに行っている行為は社会的に許されるものではないだろうことは自覚していたのだから。
「む……そこまで誠意の篭った謝罪をされてはさすがに」
「命拾いしましたね……チッ」
「シュテルが怖いです!」
「わーん! よかったよー! お兄さーん!」
正直、自身のことよりもレヴィを不安にさせたことのほうが彼には辛かった。
自身に抱きついて涙するレヴィの頭を撫でながら、彼女と離れたほうが良いと考えつつも、もはやそれが出来ないくらいレヴィに惹かれている自分を感じずにはいられなかった。
「むむ、なにやら桃色の空気が」
「お似合いですね……口惜しいですが」
「はわー、ラブラブですよー」
場が落ち着いたのを確認し、とりあえず彼は自分の『仕事』について説明することにした。
「下着……ランジェリーのデザイナー、とな?」
「確かに色々と凝ってますね」
「あ、これすごくかわいいですー」
「でしょでしょ! お兄さんはすっごいんだ!」
きゃいきゃいと色鮮やかな下着を前にはしゃぐマテリアル娘たち。
「ふむ……ではこれをわたしに着せてもらえますか?」
「ぬ?」
「シュテルん?」
「わわ、大胆なパンツですよ」
シュテルがそんなことを彼に申し出た。
(どういうつもりだシュテル?)
(彼の反応を見ます。もし私にいやらしい視線を向けたり、行為に及んだなら……)
(焼くのか)
(いえ、『消し』ます)
(…………有りだな。許す)
「はわわわ、シュテルとディアーチェから黒いオーラが」
「えへへ、シュテルんびっくりするよー」
「「?」」
レヴィの発言に?マークを浮かべるシュテルとディアーチェ。だがその疑問はすぐに解消される。
パンツを受け取った彼はシュテルをチラリと一瞥すると……凄まじい速さで補正を始めた。分解・裁断・装飾修正・再縫製の一連の工程がミシンも使わず『空中』で成され、彼の手に収まる。
「こ、この技量……シュテルと同等、いや、それ以上だと!?」
「一目で私のサイズを見抜き、補正したと言うのですか……!?」
「はわー、速業ですー」
「お兄さん、スッゴイでしょ!」
驚愕するシュテルに彼はパンツを手渡す。
「おや、穿かせてはくれないので?」
彼にとって直に触れてまで完成度を追い求めたい『偶像(アイドル)』はレヴィだけであり、それ以外は自分の作品を纏っただけの『人形(マネキン)』でしかない。
とは言え、相手も人間なのだからわざわざ勘違いさせる行為はしたくないし、したくもない。よって過度な接触は行わないし、完全な『特注品(オリジナル)』はレヴィを除いて誰にも作っていない。あくまでレヴィだけが特別なのだ。
ということを彼は説明した。
「……つまりあなたにとって、私も有象無象の一人でしかない、と。安心はできますが随分失礼な話ですね」
内心ムッとするシュテルに、あくまでモデルとして、異性としての認識であり、個人としてはレヴィの友人として友好的にしたい事を重ねて彼は強調した。
「まあそういうことであれば。では、せっかくですので穿き変えてきます。更衣室はあちらで? ではお借りします」
そう言って更衣室に入るシュテル。
「筋の通った変態と言うか、往くべき所に行き着いた変態と言うか……まあ、レヴィを裏切るような輩でないことに安堵すべきか? いやしかし……」
「えへへ、僕アイドルだって」
「レヴィなら人気間違いなしですよー」
「……レヴィが色恋に目覚めるのが先か、こやつが劣情に負けるのが先か……悩ましい所だ」
ディアーチェが頭を痛めていると、穿き変え終えたシュテルがやって来た。
「む、戻ったか……どうした?」
「いえ……予想以上の穿き心地の良さと、適当に選んだにも関わらず、私に似合うよう修正した彼の腕前に愕然と……」
「そこまでか!?」
「シュテルん、見せて見せてー!」
「見たいですー!」
「ええ、では……さすがに恥ずかしいのでちょっとだけですよ? …………チラ」
「「「おおーっ」」」
下着一つでここまで変わるものかと、シュテル本人含め驚きのマテリアル娘一同。
「……で、作製者としていかがですか?」
少し顔を赤くしたシュテルに、彼が告げた言葉は、
『……75点(ため息)』
だった。
「シュテル! それ以上はいかん!」
「わーん! お兄さんが死んじゃうよー!」
「(ガタガタガタガタガタガタ)」
無言でルシフェリオンでの殴打を続けるシュテル。
血まみれで倒れながらも決してシュテルへの評価を変えない彼は、ある意味クリエイターの鑑だった。
・青髪
・食欲旺盛
・アホの子(orお子様)
自分はこの条件を満たすキャラに弱いらしい……徹底的に甘やかしたくなる。嫁というより娘にしたい。