獅子帝の去りし後   作:刀聖

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第十節

 新閣僚の発表と任命が終了し、式典は続いて軍部の新しい人事の発表に移行した。

 

 まず最初に行なわれたのは、元帥杖授与式であった。後世『獅子の泉(ルーヴェンブルン)の七元帥』と呼ばれる七名の軍最高幹部たちに、いまだ乳児に過ぎぬ皇帝の代理たる摂政皇太后ヒルデガルドの名において、元帥の辞令と元帥杖が与えられるのである。

 

 始めに式部官によって名を読み上げられたのは、武官の代表たる軍務尚書ウォルフガング・ミッターマイヤーであった。すでに元帥号を得ている彼には、新たに『帝国首席元帥』という称号が贈られる事となる。

 

 就任直後である軍務尚書は再び玉座の前へと向かい、(きざはし)の下にて片膝を突く。それを見て、壇上の皇太后は式部官から差し出された辞令を広げ、それに記された簡潔な文章を凛然とした声で読み上げた。

 

「建国の元勲たる功績を賞し、汝、ウォルフガング・ミッターマイヤーを帝国首席元帥に任ず。新帝国暦〇〇二年八月一九日。銀河帝国摂政皇太后ヒルデガルド・フォン・ローエングラム」

 

 それを聞き終えた蜂蜜色の髪の勇将は静かに登壇し、皇太后の繊手から辞令と、それに続いて新たな元帥杖をうやうやしく拝賜する。この瞬間、ミッターマイヤーは帝国首席元帥となったのであった。皇帝(カイザー)ラインハルト亡き後の、帝国軍の精神的な支柱たる彼にふさわしい称号である事は万人が認めるところであろう。

 

 

 そうしてミッターマイヤーが壇上から下りた後、続いて故人であるジークフリード・キルヒアイスとパウル・フォン・オーベルシュタインの二元帥に対しても、生前の功績に基づいて帝国首席元帥の称号が追贈される事が公表された。

 

 ローエングラム王朝の創成から終焉に至るまで、結果として首席元帥の称号を与えられたのはこの三名のみであり、皇帝ラインハルト即位時にローエングラム王朝軍の元帥号を与えられていたキルヒアイス、ミッターマイヤー、ロイエンタール、オーベルシュタインの四名のうち、叛逆者として死を迎えたオスカー・フォン・ロイエンタールのみが、帝国首席元帥の称号を授与される事なく終わった。死後における元帥号の返還や戦没者墓地への埋葬に対しても「寛大に過ぎる」という声が少なくなく、この上首席元帥の称号まで追贈するわけにはいかないと、帝国の上層部は結論せざるを得なかったのであった。

 

 だが、それでもなお、当時のみならず後世においてもロイエンタールは三名の首席元帥と同格の存在とみなされ、他の三人と共に『獅子帝の四元帥』の一人として数えられる存在となるのである。

 

 歴史上ただ一人、ローエングラム王朝の帝国首席元帥の称号を生前に授与され、後世において『獅子帝の四元帥』と『獅子の泉の七元帥』の双方に名を連ねる事となるミッターマイヤーは、喜色を表面にも内面にも浮かべる事はなかった。後世の評価など彼は知る由もなかったが、無論の事、身に余る栄誉と思ってはいる。だが、軍務尚書や国務尚書の地位と同じく、自分以上にその栄誉にふさわしい者たちが健在であれば、という思いを『帝国軍の至宝』と呼ばれる人物は完全には拭えなかったのであった。

 

 

 続いて、現存する六名の上級大将への元帥杖授与が行われる事となる。

 

 最初に呼ばれたのは、上級大将の首座にして、最年少たるナイトハルト・ミュラーであった。

 

 彼は元帥号と同時に、ミッターマイヤーの後任として、宇宙艦隊司令長官の地位を与えられた。かつて前任のミッターマイヤーは、先帝たるラインハルトに辞任を申し出た際に「宇宙艦隊はミュラー上級大将にゆだねて不安はございません」と断言したものである。その評価は現在においても変わっておらず、軍務尚書となり司令長官職を退いた『疾風ウォルフ』は迷う事なく、後任者として『鉄壁ミュラー』を推挙したのであった。

 

 その推薦は万人を得心させるものと思われたが、異論を唱える者がただ一人だけ存在した。他ならぬミュラー自身である。当初、推薦に対しミュラーは「軍最高幹部の中で、軍歴がもっとも短い小官が司令長官の後任となるのは恐れ多く思います」と辞退の意向を示したのであった。

 

 人々はミュラーのその慎み深い姿勢に改めて敬意を抱いたが、皇太后ヒルダやミッターマイヤーを始めとする他の同僚たちの説得もあり、最終的にミュラーは受諾する事となったのである。

 

「なに、卿ならば大丈夫だろう。上手く俺たちを使いこなしてみせろよ」

 

 猛将フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルトなどは屈託なく笑いながら、ミュラーの背を強く叩いて激励したものである。ミュラーは手荒い祝福の痛みに顔をしかめつつ、苦笑してうなずかざるを得なかったのであった。

 

 

 そして、そのビッテンフェルトはミュラーの次に名を呼ばれ、元帥杖授与と共に宇宙艦隊首席副司令長官に任じられた。「副」の一文字が付くとはいえ、事実上は権限が二分され、帝国中枢部の艦隊戦力は帝国軍が誇る『歩く堅忍不抜』と『呼吸する破壊衝動』たる二人の主導によって動かされる事となるのである。

 

 

 アウグスト・ザムエル・ワーレンは『新領土』(ノイエ・ラント)総軍司令官として、ガンダルヴァ星系第二惑星ウルヴァシーの軍事基地に駐留し、新帝国の支配下に組み込まれた旧同盟領の大半に及ぶ領域の治安維持を担う事を命じられた。戦乱が終結したとはいえ、いまだ混沌とした状況から脱し切れていない旧同盟領の安定化に、ワーレンの実績を伴った手腕は大いに貢献するであろう。

 

 また、これまで旧『新領土総督府』の権限を引き継いで旧同盟領の行政を司っていた民政府も、現在の拠点であるバーラト星系が和約に基づいて共和主義者たちに引き渡されれば、それと入れ違いでウルヴァシーに移転する事が決定されている。ウルヴァシーは行政面においても、新領土の中枢として発展を遂げる事となるであろう。

 

 とはいえ、現在の所はまだ建設途上である未開の惑星の域を出ておらず、インフラの整備状況や周辺星系の治安面を考慮しても、将兵や官吏の家族を呼び寄せられるような環境とはほど遠い状態である。ワーレンが実家に残している老父母や、亡き妻の忘れ形見である一人息子と共に暮らせるのは今しばらく後の事になりそうであった。

 

 

 エルンスト・フォン・アイゼナッハは、かつて同僚のメックリンガーがその任にあった『後方総司令官』を前身とする『ヴァルハラ星系圏』(グロスラウム・ヴァルハラ)総軍司令官として、ヴァルハラ星系第三惑星にして旧帝都たるオーディンへの赴任を命じられた。

 

 ラインハルトによるフェザーンへの遷都により、オーディンが辺境の一惑星に転落する……時が来るにしても、それはまだまだ先の話となるであろう。ヴァルハラやその周辺星系は従来の帝国領内において、五〇〇年近く『帝都圏』の中心であった人口密集領域である。首都という地位を失ったものの、政治・軍事・経済・文化など、様々な側面から見ても、当分の間は人類社会屈指の要地であり続ける事に疑う余地はない。

 

 前王朝時代からの帝国領内は旧同盟領に比べれば安定しているとはいえ、点在する流刑地にはラインハルトに敗れた旧門閥貴族の生き残りが多数存在し、中央の統制が届きにくい辺境付近においては宇宙海賊などの非合法組織の行動が活発化の兆候を示しつつあるなど、くすぶる火種が存在しないわけではない。小なりとはいえ、放置しておけば燎原の大火になる可能性もあるそれらを新帝都から監視し、抑え込むにも限界があった。領内で変事が発生し、その領域を担当する治安能力では手に負えない事態にまで発展した場合、総軍が事態収拾のために出動する事となる。ローエングラム王朝創業の功臣たるアイゼナッハならば、確実な判断力と行動力をもって、その任に耐えうるであろう。

 

 

 先年のロイエンタール元帥叛逆事件の記憶は現在もなお生々しく、かつての新領土総督の権限には及ばないとはいえ、強大な兵権を有する機構の新設を不安視する声も確かに存在した。

 

 だが、現在も軍務省によって進められている帝国全土の軍管区再編はいまだ途上であり、それが完成するまで領内の治安維持のためにも、総軍新設が不可欠と判断されたのである。先年の叛乱を裏面で画策した陰謀家どもはすでに一掃され、総軍司令官を拝命した二人の元帥は人格および実績において充分に信頼に足る存在であり、過剰な心配は無用であると結論づけられた。言語化こそしなかったが、「ロイエンタール元帥の轍は踏まぬ」というのは、重責を背負う事となった二人の総軍司令官に共通した確固たる決意であった。

 

 軍管区再編が完了すれば、いずれ軍縮の一環として二つの総軍の権限と規模は縮小される事になるであろうが、軍最高幹部の一角たるエルネスト・メックリンガーは、同僚のミュラーに対し「軍事力は中央集権でよい。軍管区のそれぞれに兵権を与えれば、ひとたび中央の統制が衰えた時、割拠の原因となるのではないか」と、軍管区の兵権強化に懸念を語った事がある。無論の事、彼はその懸念を主君であった生前のラインハルトに奏上もしたのだが、

 

「卿の言にも一理あるが、中央の統制が衰えるとは、要するに統治者が無能や低能に堕したという事ではないか。そうならぬように国家の中枢にいる者たちが心すればよい。それができねば、衰退や滅亡も必然というべきものだ」

 

 と、覇気と矜持を全身に満たした皇帝は一刀両断にしたものである。「予は無能や低能にはならぬし、そのような輩が予の跡を継承する事も許さぬ」という強固な意志を目の当たりにし、『芸術家提督』は一礼して引き下がったのであった。

 

 現実問題として、銀河系の五分の一にも達する広大な帝国領全域を中央集権で完全に統制するのは、現在の様々な条件を勘案しても困難とメックリンガーも認めざるを得ない。不安があるにせよ、それを解決するのは今後の課題とし、腰を据えて対処すべきであった。軍管区再編が成れば、統帥本部総長がそれらを指揮し運用する国内軍総司令官の地位を兼任する事となり、総長の力量が問われる事となろう。

 

 そしてその統帥本部総長に、今回正式に任命されたのが他ならぬメックリンガー自身であり、幼帝及び摂政皇太后の代理として、帝国全軍を統括する重責を任される事となったのである。前王朝時代では統帥本部次長、新王朝では後方総司令官、大本営幕僚総監といった要職を歴任している彼の手腕と為人(ひととなり)に対して、懸念を表明するものは存在しなかった。

 

 

 最後に呼ばれたのは、現在の軍最高幹部における最年長者たるウルリッヒ・ケスラーである。憲兵総監の地位はそのままだが、帝都防衛司令官の座から退き、代わって軍務省首席次官に就任し軍政面におけるミッターマイヤーの補佐に当たる事となったのである。憲兵隊内部の改革には今しばらくケスラーの手腕が必要であり、それに目途がつけばブレンターノ憲兵副総監がその肩書きから「副」の字を外す事となるであろう。また、ミッターマイヤーが国務尚書の地位に昇った後は、その後任としてケスラーが軍務尚書の座を引き継ぐ事も内定しているのであった。

 

 ケスラーは本来、堂々たる前線の武人たらん事を志望していた。そしてその志望に見合う前線指揮能力と実績を有していたのだが、同時に後方における優れた実務能力をも兼備していた彼は、リップシュタット戦役後に主君たるラインハルトの命によって憲兵隊司令部と帝都防衛司令部の長たるべし、と命じられる事となる。それは彼の志向とは異なる地位であったが、それでも彼は新たな職務に最善を尽くし、主君の期待に充分に応えたのであった。

 

 

 今年の新帝国暦〇〇三年七月一八日、イゼルローン共和政府と交戦の末に講和を成立させた皇帝ラインハルトは新帝都フェザーンへと帰還する。ほどなく皇帝はヴェルゼーデ仮皇宮の一室にケスラーを招き、地球教徒の襲撃を受けた皇妃(カイザーリン)ヒルダとその胎内に在ったアレクサンデル・ジークフリード、そして大公妃アンネローゼといった一族を守り通した憲兵総監の功を改めてねぎらった。

 

 恐縮する憲兵総監に対し、病床の皇帝は目をやや伏せつつ、にわかに話題を改める。

 

「予は卿に、かねてから詫びねばならなかった事がある」

 

 予想外の主君の言葉に、沈着なケスラーも驚きの表情を隠し切るのに失敗した。

 

「何をおっしゃるのです。陛下が小官に詫びられる事など……」

 

「いや、ある。予は、卿が星々の海を往く武人たらんと欲していた事を察しながら、卿を地上に縛りつけてしまった。……赦せ」

 

 それを聞いたケスラーは口を開きかけたが、すぐには言葉を発しえなかった。

 

 かつて前線勤務を望むロイシュナーを幼年学校校長に任命したときもそうであったが、必要と判断しての事とはいえ、有能にして忠実な臣下から広大な宇宙を翔ける権利を奪った事に対し、ラインハルトも忸怩たる思いが(おり)となって心底に存在していたのであった。もはや余命いくばくもなく、己自身も地上に留まらざるを得ない立場となって、皇帝はケスラーの無念をより深く理解したのかもしれない。

 

「……もったいなきお言葉です。ですが、どうかお気に病まれませぬよう。陛下の覇業に微力ながら貢献させていただけた事は、小官にとってまぎれもなく幸福でございました」

 

 やがて発されたケスラーのその言葉は彼の赤心から発されたものであり、それを聞いたラインハルトは穏やかにうなずいたのであった。

 

 

「全宇宙を征服なさった覇王が、地上に足止めされ、病室に閉じ込められている。おいたわしい限りだ」

 

 新帝国暦〇〇三年七月二六日。ラインハルトが崩御する直前に仮皇宮に参内したケスラーは、低くそうつぶやいたものである。ケスラーも主命によって地上に留められた事に不本意を感じる身ではあったが、同時に偉大な主君の下で重責を担う緊張感と充足感に満たされてもいた。だが、その主君が今、地上に在るのは銀河系を翔けた両翼から生命力が失われた結果でしかない。数日前に皇帝から賜ったばかりの言葉を回顧し、ケスラーは胸を締めつけられるような思いとともに、沈痛な独語を吐き出したのである……。

 

 

 ケスラーにはオーベルシュタイン亡き後、己がローエングラム王朝における謀略の第一人者となる覚悟と決意があった。

 

 現在の軍務尚書たるミッターマイヤーは、かつて「謀略によって国が立つか! 信義によってこそ国は立つ」という言葉を、先代の軍務尚書たるオーベルシュタインに対して叩きつけた事がある。

 

 公明正大にして将来の国務尚書たる彼の意思はそれでよい、とケスラーは思う。だが、新王朝に仇なしていた名だたる陰謀家たちがことごとく(たお)れたとはいえ、ケスラーが把握している限りでもその残滓は少数とはいえ存在しており、ローエングラム王朝の支配体制を良しとせず、新たに陰謀を巡らす輩が現れないとは断言できない。それらに対処するためにも、オーベルシュタイン死後も謀略に通じた人材が王朝には必要となるであろう。そして軍最高幹部の中では、自分こそが亡き義眼の謀臣に最も近い思考と経験を有している、とケスラーは苦く認めざるを得ない。

 

 ラインハルト存命中に限っても、金髪の覇者の盟友たるジークフリード・キルヒアイス、ローエングラム王朝創成期における最高級の技術官僚(テクノクラート)ブルーノ・フォン・シルヴァーベルヒ、王朝にとって最大の雄敵であったヤン・ウェンリーなど、暗殺者の魔手により墜とされた巨星は少なくなく、ラインハルト自身、幾度も暗殺や謀殺の危機にさらされたのである。これから平和と発展を迎える時代、新帝を始めとする要人がテロリズムの犠牲となる事など、断じて許容してはならない。ケスラーは亡き主君の知遇に応えるためにも、己の手を果てなく汚し、他者から忌避され、己の身に代えてでも守るべきものを守り通す決意を固めていた。

 

 そして皇太后の御手から辞令と元帥杖を受け取って壇上から下りる際、ケスラーは参列する文官の中に、ある人物の無表情な相貌を見い出し、わずかに眉を動かした。

 

 現在の内国安全保障局長ウド・デイター・フンメルである。

 

 

 先の内国安全保障局長たるハイドリッヒ・ラングが不正の果てに失脚した後、その地位は一時的に上司である内務尚書オスマイヤーが預かる事となった。だが、武人たるラインハルトは前王朝の社会秩序維持局の流れを汲む秘密警察の再構築に対しては元々消極的であり、謀臣オーベルシュタインに説かれて設立を認めたという経緯がある。それを考えれば一連の不祥事により内国安全保障局は廃止される可能性もあったのだが、局の存続をオーベルシュタインは皇帝に進言し、オスマイヤーも皇帝に局の存続を嘆願した。

 

 前者はラングを再登用し、その暗躍を許した自己の責任を認めつつ、内国安全保障局の必要性を改めて理路整然と主君に奏上した。後者は直属の上司として、ラングを御しえず内務省の権威と信用を損なった自己の力不足を皇帝に陳謝し、同時にこのまま内国安全保障局が解体されては内務省の威信が更に失墜するとして、名誉回復の機会をいただきたいと懇願したのである。

 

 ラインハルトは自身が任命した二人の閣僚の意見を検討し、最終的にそれらを容れて存続を認める事となった。理由の一つとしては、帝国内における治安維持に関して、憲兵隊の存在が突出しがちであった事も挙げられる。

 

 本来、国内治安は内務尚書が最大の責任者であるべきなのだが、地球教団を始めとする武装したテロ組織に対して、調査はともかく掃滅には通常の警察力では荷が重いのは明らかであり、物理的な鎮圧では憲兵隊が前面に出ざるを得なかったという事情もあった。このまま憲兵隊のみが存在感を増すのは好ましくない上、現在の所は比較的良好な内務省の憲兵隊への認識も負の方向に傾きかねない。戦乱も終局が見えたこれからの時代において、治安維持における内務省の立場を相対的に強化する必要があったのだった。

 

 内務尚書オスマイヤーは自ら再建と綱紀粛正を行なうべく、正式な内国安全保障局長の兼任を申し出た。だが、軍務尚書オーベルシュタインは前王朝たるゴールデンバウム朝において、初代内務尚書エルンスト・ファルストロングが社会秩序維持局長を兼ねて思想犯や政治犯を弾圧した悪例を挙げて反対し、ラインハルトもそれを是とせざるをえなかった。オスマイヤーがファルストロングの再来になるなどとラインハルトも考えたりはしなかったが、閣僚が秘密警察の長を兼任するという事例がよい結果を生むとも思えなかったのも確かであった。

 

「では、卿には後任に心当たりはあるのか」

 

 その下問に対し、軍務尚書が推挙した候補者の名を聞き、ラインハルトはにわかに眉間に皺を寄せた。記憶巣から掘り起こすに際して、その名には忌避感という汚泥が付着していたのである。

 

 眠たげな目つきと整えられた濃い茶色の頭髪、そして口元とあごに切りそろえられたひげを蓄えた容貌のフンメルは独創性には乏しいものの整然たる行政処理能力の所有者と評されている能吏であり、『神々の黄昏』(ラグナロック)作戦時の遠征軍に随行していた行政専門家の一人であった。そして『バーラトの和約』後は同盟首都ハイネセンに残留し、高等弁務官に任命されたヘルムート・レンネンカンプ上級大将の首席補佐官たる事を命じられたのである。

 

 後にそのレンネンカンプは確たる証拠もないまま、高等弁務官の強権をもってヤン・ウェンリー退役元帥の逮捕を同盟政府に強要し、結果としてハイネセンにて収拾困難な騒乱を引き起こす事となる。そしてフンメルはそのレンネンカンプの暴走を制止するどころかヤンの逮捕を法律的に正当化する助言を行なった上、ラインハルトによる同盟領への再侵攻が宣言されたのち、国家の滅亡に臨んで動揺した同盟の一部軍人をそそのかして同盟最後の最高評議会議長ジョアン・レベロを殺害させるという挙に及んだのである。

 

 そうした陰険といえる一連の行為によってフンメルは皇帝の不興を買う事となり、ラインハルトは同盟滅亡後にフンメルに対し降格のうえ帝都オーディンへの送還という処分を下した。フンメルはその処置を、慇懃に淡々と受け入れて帰郷の途につき、その態度もラインハルトを不快にさせたものである。その後のフンメルは司法省や内務省を転々として、閑職に甘んじている存在であった。

 

「卿は予に、あのような男を再び起用せよというのか。第二のラングになりかねないような奴ではないか」

 

「官吏として、有能で勤勉な人物である事は保証いたします。陛下に他の候補者の心当たりがおありならば、その者をお取り立てになられるのがよいかと」

 

 ラインハルトは不機嫌に沈黙した。有能で忠実な官吏には幾人かは心当たりはあったものの、「秘密警察の長」という立場に据えるのにはためらいがあったのである。ほどなく、いささか苛立たしげにラインハルトはフンメルの内国安全保障局長就任を容認したのであった。

 

 

 帝国における謀略の責任者たる覚悟を固めているケスラーにとっても、現在の内国安全保障局長であり、就任して短期間で組織を掌握してのけたフンメルの存在は無視しえない。入手した複数の情報を照らし合わせ、彼がオーベルシュタインの息の掛かった人物である事をケスラーはすでに把握していた。

 

 確たる証拠はないが、レンネンカンプの暴走やレベロ殺害といった同盟末期の一連の混乱は、フンメルを介してオーベルシュタインが演出したのではないかという疑惑を、現在でもケスラーは捨てきれないでいる。そして義眼の謀臣亡き現在、フンメルがどのような行動原理に基づいて活動しているのかも明確ではないのである。

 

 憲兵総監の周到な調査の結果においても、閑職に回された後のフンメルが不正に手を染めた形跡は確認できなかったが、それでもケスラーはフンメルの直接の上司であるオスマイヤーと連絡を定期的に取り合い、内国安全保障局長の動向を怠りなく観察していた。ハイドリッヒ・ラングにしても、内国安全保障局長に登用された当初は私行上に問題はなかったと判断されていたのである。フンメルが職務に精励して王朝や臣民に益をもたらすならばそれでよいが、もし彼が「第二のハイドリッヒ・ラング」と成り果てるならば、害が顕在化する前に排除しなければならないであろう。

 

 そのような事を考えつつ壇上から下りたケスラーは、壇の袖に控えている近侍たちの中に、顔見知りの少女の姿がある事に気付いた。

 

 マリーカ・フォン・フォイエルバッハというのが彼女の名であり、摂政皇太后ヒルダの近侍にして大事な友人たる存在であった。

 

 ケスラーはこののち、亡き主君と自分自身に誓約した通り、長い年月において王朝の深き闇の部分に向き合っていく事となる。それは剛毅な彼をして、精神と神経を著しく消耗させる過酷な道程であった。そしてそのケスラーの心身を癒し、かつ救う存在となるのが、今より二年後にケスラー元帥夫人となるマリーカの笑顔と思慮なのであった。

 

 そのような未来図は、明敏な憲兵総監であってもさすがに現時点では予想し得なかった。だが、視線が合った黒い髪と瞳の少女の表裏なき微笑を見て、厳しい表情をしていたケスラーもわずかに口元をほころばせたのであった。

 

 

 軍務尚書 ウォルフガング・ミッターマイヤー首席元帥

 

 軍務省首席次官兼憲兵総監 ウルリッヒ・ケスラー元帥 

 

 統帥本部総長 エルネスト・メックリンガー元帥

 

 宇宙艦隊司令長官 ナイトハルト・ミュラー元帥

 

 宇宙艦隊首席副司令長官 フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト元帥

 

 ヴァルハラ星系圏総軍司令官 エルンスト・フォン・アイゼナッハ元帥

 

 新領土総軍司令官 アウグスト・ザムエル・ワーレン元帥

 

 

 以上のように、皇帝ラインハルト亡き後のローエングラム王朝軍最高幹部たる『獅子の泉の七元帥』の処遇は決定されたのである。

 

 

 

 迎賓館における式典は、つつがなく終了した。

 

 この後は、フェザーン中心街区においてパレードが開催される予定となっている。といってもそれほど大規模なものではなく、新帝や皇太后といった要人たちが地上車(ランド・カー)に乗って二時間ほど行進しながら、市民や将兵たちにお披露目を行なうのである。

 

 当初、テロなどの危険を考慮した一部の関係者はパレードを式典のスケジュールから外すべきではと主張したが、摂政皇太后たるヒルダはテロリズムや陰謀の存在を軽んじるつもりはないが、上に立つ者が危険を恐れ過ぎていては民や兵たちの信頼は得られないとして、パレードの実施を命じたのであった。かくして、摂政皇太后の意を受けて関係者はパレードのコースの選定や警備計画の立案などに奔走する事となる。

 

 

 その警備関係者の一人に、先日まで旧帝都オーディンの防衛司令官の任にあり、ケスラーから帝都防衛司令官の地位を引き継いだばかりのツェーレンドルフ大将という初老の士官も名を連ねていた。彼は前王朝時代から「堅物」として知られ、憲兵隊や陸戦隊などで経験を重ねた古強者でもある。ローエングラム独裁体制成立後は同世代の僚友であったモルト中将と共に憲兵総監謙帝都防衛司令官となったケスラーの部下に組み入れられ、組織内の改革や綱紀粛正に進んで協力したものであった。老練で手堅い人望を有していたツェーレンドルフやモルトの支持や補佐がなければ、ケスラーの組織改革は頓挫とまではいかなくとも大幅な遅延を余儀なくされていたであろう。

 

 モルトは三年前の旧帝国暦四八九年七月に発生した皇帝エルウィン・ヨーゼフ二世拉致事件当時における宮中の警備責任者であったため、その責を負って自決する事となる。長年の友人であったツェーレンドルフは誰よりもその死を惜しんだものであった。

 

「あいつが生きておれば、わしなんぞが帝都防衛司令官の後任となる事もなかったろうに」

 

 そう言って僚友を改めて悼みながらも、彼は現在の帝都防衛司令官として関係各所と連絡を密にしつつ、諸式典の警備の万全を期すべく努めたのである。

 

 

 そうして手配されたケスラーやツェーレンドルフらによる大規模な警備計画を、ヒルダは不意に亡夫の気性を思い起こしてつい苦笑しそうになったが、それを自制しつつ認可したのであった。

 

 

 かつて生前のラインハルトは、周囲の者たちが必要最低限と判断した護衛すら過剰であるとして忌避し、側近たちを悩ませたものであった。

 

 ラインハルトには前王朝時代、一五歳で少尉に任官してすぐに前線へと身を投じたが、それと同時に名義上のみ近衛師団に在籍していた時期がある。これは大貴族の子弟出身者に、箔付けのために与えられる名誉職としての意味合いのものでしかなく、ゴールデンバウム王朝末期の近衛兵はすでに形骸化した存在に堕していた。豪奢な金髪の少年は実際にその目で確認した「皇帝陛下を守護したてまつる精鋭」であるはずの近衛兵の規律意識と練度の低さに呆れ、「見栄えだけの玩具(おもちゃ)の兵隊」という酷評を赤毛の盟友に漏らしたものである。

 

 事実として、リップシュタット戦役勃発時において近衛兵司令部や皇宮警察は為すところなくローエングラム陣営の『新無憂宮』(ノイエ・サンスーシー)制圧を許してしまい、ラインハルトの評価を裏付ける結果となった。そして、戦役終結後に帝国の独裁者となりおおせたラインハルトは冷笑混じりに近衛兵司令部および皇宮警察の解体を命じたのだが、のちにその処置についてラインハルトは後悔する事となる。

 

 と言うのも、その結果としてエルウィン・ヨーゼフ二世拉致に際し、近衛兵に代わって宮中の警備責任者たる立場にあったモルト中将を自決させざるを得なかったからである。こうなると判っていたならば、近衛兵司令部だけでも残しておき皇帝拉致の責を近衛兵どもに負わせた後で解体したものを、とラインハルトは悔やみ、ツェーレンドルフにも劣らずモルトの死を悼んだのであった……。

 

 

 ともあれ、このような近衛兵へ抱いていた悪印象も、ラインハルトが身辺に最小限の親衛隊員しか置かなかった理由の一因とも言われている。だが、皇妃を迎え、姉たる大公妃が旧帝都オーディンより訪れ、皇子が誕生するに至り、側近たちは皇族周辺の警備力の強化を強く進言した。自分一人ならばともかく、家族までも自分の矜持のために無用な危険にさらすわけにはいかず、ラインハルトもそれを容れざるを得なかったのであった。

 

 かくして、皇帝の親衛隊は大幅な人員増強がなされる事が決定されたのだが、それが実現する前にラインハルトは世を去る事となる。そして、少将に昇進した親衛隊長ギュンター・キスリングに統率された隊員たちはパレードに際し、皇帝一家と随行する重臣たちが搭乗した地上車の列を、徒歩にて前後と左右から警護する事となるのである。

 

 

 軍関連学校の生徒代表たちは迎賓館の前で整列と敬礼を行ないつつ、機動装甲車に先導された皇帝陛下の車列を見送った。

 

 なお、その車列の中にはユリアン・ミンツを始めとするイゼルローン共和政府の代表者たちの姿は存在しなかった。彼らは戴冠式には参列せず、返還するイゼルローン要塞にて帝国の使者を迎える準備を整えるため、いったんハイネセンに戻るべく祝辞のみを残して出立していたのである。そのため、グスタフは皇帝の葬儀時のような表情を見せる事もなかったのであった。

 

 そして車列の全てが学生たちの前から去った後、夕刻のパーティーまでに皇帝一行を迎えるべく所定の場所へ集合するのと、規律と節度を保った行動を心がけるように注意された上で、自由行動を教官たちに許可された学生たちは一時解散したのである。

 

 何とはなしに迎賓館の入口に二人して残り、しばらく無言のままたたずんでいたユリウスとグスタフであったが、沈黙を破ったのはグスタフであった。

 

「お前はパレードを見に行かないのか」

 

 ユリウスは端整な顔に苦笑を浮かべつつ答えた。

 

「あんな混雑の中に紛れ込む気分にはなれないな。新帝のお姿は充分この目に焼き付けたさ」

 

 グスタフは広い肩を軽くすくめつつ、親友に賛意を表した。

 

「同感だ」

 

 彼らの視線の先に存在したのは、パレードのコースを警備する兵士たちの壁と、それらに遮られつつも車道の両側にて歓声を上げる、見わたすかぎりの大群衆の海であった。その中に生じていた空白地帯である車道を、皇帝の行列は緩やかな速度で堂々と進んでいる。

 

皇帝万歳(ジーク・カイザー)!」

 

皇帝アレクサンデル万歳(ジーク・カイザー・アレクサンデル)!!」

 

帝国万歳(ジーク・ライヒ)!!!」

 

 先ほどまで戴冠式の式場に鳴り響いていたのと同じ歓声が、将兵や市民たちから湧き起こっている。そして、それらに混じって異なる内容の歓声も、負けじ劣らじとばかりに生じつつあった。

 

我がアレク(マイン・アレク)!」

 

我らがアレク(ウンザー・アレク)!!」

 

 先帝ラインハルトの、健在であった頃の比類なき雄姿は人々を畏怖させたものだが、生後三ヶ月の乳児である新帝のあどけない姿は、父親とは別の意味で彼らを魅了したようであった。

 

 時間が来るまで迎賓館の中でも見学させてもらうか、とグスタフが提案しようとする前に、ユリウスが問いを発した。

 

「そういえば、元帥杖授与式の時に少し暗い顔をしていたが、何か思うところでもあったのか?」

 

 軍最高幹部たちが元帥杖を受け取る姿を見つめていた親友の表情に、憧憬や得心といった心理だけではなく翳りのようなものも、明敏なユリウスは見い出していたのである。

 

 親友のその問いにグスタフは目をまたたかせた。ほどなく後ろを振り返り、迎賓館の玄関上に掲げられている『黄金獅子旗』(ゴールデンルーヴェ)を仰ぎ見つつグスタフは言った。

 

「……大した事じゃない。もし父さんが生きてこの場にいたならば、元帥杖を手にしていただろうか、と思っただけさ。考えても詮ない事だがな」

 

  

 奇しくも、というべきか、八月一九日の今日はカール・グスタフ・ケンプの誕生日でもある。健在であれば三九歳、現在の軍最高幹部の最年長者であるケスラー元帥と同年であった。

 

 ローエングラム王朝成立時において、ケンプの旧部下たちの一部からケンプに元帥号を追贈してほしいという嘆願が出された事がある。だが、これは実現しなかった。

 

「多くの兵を無為に死なせたにもかかわらず、上級大将に特進させていただけただけでも身に余る厚遇です。これ以上のご好意に甘えるのは、あの人も望まないでしょう」

 

 とケンプ夫人は語り、戴冠したラインハルトも、結果として死せるケンプに元帥杖を贈る事はなかったのである。だが、その代わりとして、かつての撃墜王(エース)である彼の名を冠した戦闘艇搭乗員の育成基金の設立が決定されたのであった。

 

 

 ユリウスは友人のその言葉に対し、すぐには返答しえなかった。敗戦時の副将であったミュラーの現在の地位を思えば、主将のケンプも生き延びてさえいれば敗軍の将の汚名を返上する機会を得て、新王朝の元帥たりえていたかもしれない。確かに考えても詮ない事ではあるが、そういった思いを禁じえない親友の心情をユリウスは察したのである。

 

 だが、ほどなく不敵な印象を感じさせる表情を作り、白金色の頭髪の少年は友人に語りかける。

 

「だったら、おまえが元帥杖の所有者となればいいじゃないか。そうすれば『ケンプ元帥』の名は文句なく歴史に刻み込まれる」

 

 その大胆な発言に、グスタフは思わず目を見開きつつ友人に顔を向け、やがて苦笑した。

 

「……簡単に言ってくれるな。今は『元帥量産帝』の時代じゃないんだぞ」

 

 

 ゴールデンバウム王朝第二四代皇帝コルネリアス一世は、歴代皇帝の中では統治者としての手腕と意欲において屈指と言える存在であっただろう。だが、同盟領への大親征に途中まで成功を収めながら、留守中の宮廷内でのクーデター勃発を許した詰めの甘さと、後世『元帥量産帝』などと揶揄されるほどに元帥号を濫発したという二点は、彼の名君としての経歴における瑕瑾(かきん)と言うべきものであった。

 

 親征の中で三十五人もの『元帥』を失いながらも帝国本土に帰還しクーデターを鎮定した後は、さすがに自戒したのか、コルネリアスは新たに元帥を任命する事はなかった。そして彼の崩御後に即位した第二五代マンフレート一世は、先帝に元帥号を与えられた者たち全てが世を去った時期を見計らい、元帥への終身年金の大幅な増額や大逆罪以外での不逮捕特権などを制定したのである。これは先帝の遺言によるものであった。コルネリアスは後世において、かつての自分のように元帥号をみだりに授与する皇帝が現れないように制約を設けるという手を打っていたのである……。

 

 

「弟が父親の遺志を継いでパイロットを目指すのだとしたら、兄として負けてはいられないだろう? 父親が果たせなかった夢を、お前も引き継いだらどうだ。まあ、あえて目指さないというのなら、俺が先に元帥になってしまうかもしれないな」

 

 口で言うのは簡単だが、これからの戦乱が終結した時代、大きな武勲を()てる機会も著しく少なくなるのは明らかであり、元帥への道は困難極まりないであろう事は無論ユリウスも理解している。ローエングラム王朝は成立してから三年にも満たぬ現在、生者と死者を含めて一〇名以上の元帥を輩出しているが、これは激動の時代ゆえの事であり、元帥号を得たのはいずれも戦乱の中で著しい実績を示したと、万人が認める将帥であった。コルネリアス一世が濫発したものとは、元帥杖の重みが比較にならないのである。

 

 それを承知しながらもあえてユリウスが大風呂敷を広げたのは、尊敬していた父親、その父を斃した仇敵、そして畏敬すべき主君を全て失ったグスタフが、新しい主君に父親の分も仕えるという以外の目的を持てれば、と親友を奮起させるためでもあった。無論の事、立身出世にいたずらに固執して道を誤るような愚は避けねばならない。グスタフの父にしても、彼の敗死は功を焦った事が一因であるのは疑いないのだから。

 

 自分を発奮させようとしているユリウスの意図を、ほどなくグスタフは理解した。内心で感謝し、同時に「こいつなら、確かに早々と元帥杖を手にしてしまうかもしれない」と焦りに似た奇妙な思いを抱えつつ、挑発的な笑みを友人に返す。

 

「誰が目指さないと言った? 元帥杖を棒っきれみたいに言ってのけたお前に呆れただけだ。言われなくたって、いつか必ず元帥杖を俺の所有物(もの)にしてみせるさ。お前よりも先にな」

 

 そうして二人の少年は顔を見合わせて最初は皮肉っぽく、やがては朗らかに笑い合ったのであった。













 
 ラインハルトが近衛師団に所属していたという設定は、黎明篇序章の記述を基にしています。

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