スピンオフ終了っ! 先生のターンが戻ってきたよ!
響編でも公開したけど、これが今回の表紙ですっ。
【挿絵表示】
時間軸は時雨編で、愛宕に出張を言い渡された日の夜のこと。
佐世保に出張する事になった主人公は、自室で荷物をまとめていた。
夜分遅くに聞こえたノックに、扉へと向かう主人公。
やってきたのは、元帥の秘書艦である高雄だった。
愛宕分が足りなかったから今度は高雄分だっ!
しょっぱなからちょっちエロいけど気にしないっ!
その1「準備」
舞鶴鎮守府にある職員宿舎。
俺はそこの2階にある自室で、荷物をまとめていた。
カーテンの隙間から見える外の景色は真っ暗で、街灯と建物からもれる明かり以外はほとんど何も見えない。残念ながら曇り空の為、月明かりも今日は望めないようである。
まぁ、別に今から出かける予定がある訳でも無いので、問題ナッシングなんだけど。
しかし、こんなことを思いつつも、このような時間に、大きなボストンバッグに着替えや日用品を詰めている俺の姿は、端から見れば夜逃げの準備に思われてしまうかもしれない。
先に弁解しておくけど、出発するのは早朝なので夜逃げとは言わないし、そもそも仕事で遠出をするだけであって、逃げるようなことは何一つやっていない――と思う。
今回の出張というのが、実質的に左遷と言うのならば別の話ではあるが。
そんなことは一切聞いてないし。
だ、大丈夫……だよね?
少々心の中で心配事が膨らみながらも荷物をバックに詰め終えた俺は、固まってしまった体をほぐすために立ち上がって、ストレッチ運動を開始した。身体中からペキポキと音が鳴り、ほどよい気持ち良さが伝わってくる。
一通りの動作を終えて、そろそろ風呂にでも入ろうかと思っていた俺の耳に、扉をノックする音が聞こえてきた。
「はいはいー、どちら様ですか?」
「夜分遅くに申し訳ありません。元帥の秘書艦、高雄です。少々お時間をよろしいでしょうか?」
「あっ、はい。すぐに開けますね!」
俺は急いで扉の鍵を開けてノブを回すと、いつもと同じ格好でキリッとした表情を浮かべる高雄の姿が見えた。
「お待たせしてすみません。えっと――散らかってますけど、良かったらどうぞ」
俺はそう言って高雄を部屋に進めたけれど、よくよく考えたらこんな夜遅くにやって来た女性を部屋に連れ込もうとするなんて、元帥じゃあるまいし……と不覚にも思ってしまったのだが、
「ありがとうございます。それでは少しの間、失礼いたしますわ」
ニッコリと笑った高雄は、何の躊躇もなく俺の部屋に入った。
……考えすぎ……なのかな?
それとも、信用されているってことだろうか?
以前の会話ではそれなりに評価はされていたみたいなので、多分大丈夫だと思うんだけど。
も、もしかして慣れちゃってるってことは――さすがに無いか。
いつ見てもガードが固そうだし、“あの“元帥を恐れさせる高雄だもんね。
そんなことを考えながら扉を閉めて部屋に戻った俺の目に、ベットに腰掛ける高雄の姿が見えた。
「………………」
「あら、どうかしましたか、先生?」
いや、もう何て言うかですね。
これって誘われちゃってるってことですかね?
据え膳食わねば男の恥――って言うし、これで俺も晴れて大人の仲間入りに……
「それでは早速用件に入らさせていただきます。明日の先生の出張についてですが、午前7時に鎮守府内第一埠頭においでください」
うん。そういうことだよね。
わ、分かっててやったノリだったんだからねっ!(涙目
「あら、先生はどこか痛いのでしょうか? 少々目が潤んでいるみたいですけど……」
「あ、いえ……ちょっと目にゴミが入っただけなので……」
「それは大変っ!」
急に立ち上がった高雄は、どういう訳か俺の身体をがっしりと両手で掴んだ。正面から抱き合っているカップルみたいな感じなんだけど、もちろん俺は何もしてない。
……って、何これ?
これってやっぱり誘われて――
「結膜炎になる可能性がありますから、少しじっとしていてくださいねっ!」
慌てたようにそう言った高雄は、掴んだ両手に力を込めて体重を後ろにかけようとし、
「えっ、あ、ちょ……とおおおおおっ!?」
国会議員にもなったプロレスラーの得意技、フロントスープレックスで見事の放物線を描いた俺の身体が、ベットの上へと叩きつけられた。
「ぐえっ!」
か、肩が……高雄の肩がみぞおちにぃぃ……っ!
「はいっ、大きく目を開けてくださいっ!」
「ちょっ、い、いきなりって……むはあっ!?」
俺の身体にのしかかりながら、指で俺の両目を思いっきり開けて覗き込む高雄に、とんでもない恐怖を感じたのだが、
むにょん……むにょん……
「う……はぁ……」
愛宕に負けず劣らずのおっぱいが、俺の胸に押し付けられている感触で、何も言えなくなってしまった。
やばい……これは気持ち良すぎだろ……
マシュマロ……いや、これはもう例えようがない柔らかさだぜ……
生きてて良かったよ……マジで。
そんなことを思いながら、胸の感触を味わう俺に全く気づくことなく、高雄は指を動かして両方の目を調べていた。
「先生、どっちの目にゴミが入ったんですかっ!?」
「あっ、えっと、右の方ですけど……」
「分かりましたっ、もう少しだけ我慢してくださいねっ!」
ぐりぐり……むにょん……ぐりっ……むにむに……
あー、もう俺、死んでもいいわ。
――と、あまりの幸せ度に昇天しかけていたとき、
ごりゅっ
「ひぎぃっ!?」
「あっ」
両目の視界が塞がると同時に、強烈な痛みが身体中に駆け巡った。
「いってえええええぇぇぇぇぇぇぇっ!」
「ご、ごめんなさい、先生っ!」
「目が、目があぁぁぁっ!」
空中に浮かぶ大きな城から落下数秒前の王族のように、俺は両目を押さえながらベットの上を転がりまくった。
まさに天国から地獄。
自業自得だからしょうがないんだけど。
◆ ◆
それからしばらくの間、目の痛みがおさまるまで介抱してくれていた高雄さんに癒されながら、俺はベットの上で横たわっていた。
「ふぅ……もう、大丈夫っぽいです……」
「ほ、本当にごめんなさい、先生……」
「あ、いえいえ、気にしないで下さい」
自業自得なんで――とは、口が裂けても言えないけど。
目にゴミってのも咄嗟の嘘だったし。
「それに、ちょっと意外な高雄さんも見れましたし」
「……っ!」
何となく言った言葉に高雄は急に顔を赤らめたが、すぐにいつもの表情を取り戻して「もう、先生ったら、この間のお返しですか?」と言った。
「そう言うつもりじゃなかったんですけど……」
俺は頭を掻きながら返答する。多分、高雄が言っているお返しとは、コードEを解決した際の報告時にからかわれたことを指すのだろう。
ぶっちゃけると、今の今まですっかり忘れてたんだけどね。
「あら、もうこんな時間……あまり長居をしては悪いですね」
壁掛けの時計に目をやった高雄はそう言って、懐に手を入れて大きめの封筒を取り出した。
「明日の時間についてはさっきお話した通りなのですが、荷物にこれを加えていただきたいのです」
「これは……?」
「佐世保鎮守府の安西提督に渡してください。重要な書類なので、絶対に無くさないようにお願いします」
「わ、分かりました。ちなみにその安西提督という方はどういった感じの……」
急に真面目になった高雄に少々戸惑いつつも、出会ったときにヘマをしないように特徴を聞いたんだけれど、
「少し……いえ、かなり恰幅のよい大柄の男性で、眼鏡をかけた、口ヒゲが似合う方ですわ。指揮力と指導力が高いことで有名で、他の提督や艦娘から尊敬の意を込めて、『先生』と呼ばれることが多いですね」
それどこのバスケ顧問っ!?
心の中で思いっきりツッコミむ俺に気づくことなく、高雄は続けて口を開く。
「それと、あちらに着いてからの仕事なのですが、いくつかの質問を受けると思われます。先生のことですから大丈夫だとは思いますが、しっかりと真面目にお答えくださいね」
「はい――って、質問されるんですか?」
「ええ。佐世保鎮守府の方でも幼稚園を設立するかどうかを考えているみたいなので、経験者の意見が聞きたいらしいのです」
「なるほど……それなら確かに、俺か愛宕さんが行くべきですよね」
「いえ……本来なら、幼稚園を設立した元帥に行かせるのが一番なんですけど……」
そう呟いた高雄は、俺からそっと目を逸らす。
って言うか、今元帥に対して行かせるって言ったけど……立場弱すぎじゃね?
「私の方が少しばかり手が離せない案件を抱えてますし、元帥を一人で出かけさせると鉄砲玉の如く帰ってきませんし、間違ってすんなり帰ってきたら間違いなくトラブルを抱えているのは明白ですし……」
うん。立場弱いってもんじゃなかったよ。
もはや信頼度0じゃん。いや、マイナスかもしれない。
なんであの人でやっていけてんだろ……この鎮守府……
「なので申し訳ありませんが、よろしくお願いいたしますわ、先生」
「いえ、俺が役に立てるなら本望ですよ」
「ふふ、ありがとうございます。それじゃあ……そうですね、先生が無事に帰ってこられたら、ちょっとしたお礼を差し上げますわ」
「えっ、お礼……ですか?」
お礼はさっきもらったんだけど――とは言えないし、プラスアルファで目痛も貰っちゃったし。
「期待してて、良いですよ?」
言って、人差し指を口元に当てる高雄。
このポーズはヤバ過ぎると警報が鳴ってます!
まさにヤバス! ――って、色々とマズいから自重しておかないと……
「え、えっと、ありがとうございます――って、これってさっきのお返しだったりします?」
「さぁ、どうでしょうか」
そう言って、高雄は頭を下げると、意味ありげに微笑んで部屋から出て行った。
うーん、やっぱりからかわれてるのかなぁ……
つづく
※コピペしたまま更新しちゃったっ。ごめんなさいっ。(修正済み
次回予告
約束通りの時間5分前に埠頭に立った主人公。
目の前にあったのは、提督なら誰もが知っている? あの船だった。
喜ぶ主人公だったのだが、思い違いと知るのはすぐのことだった。
艦娘幼稚園 ~沈んだ先にも幼稚園!?~ その2「勘違い」
乞うご期待!
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