艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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※次回の更新はいつも通りであれば3日後ですが、その日は諸事情で帰宅するのがかなり遅くなりそうなので、難しいと判断した場合は次の日に更新いたします。
 

 しおいさんの暴走? ……も、なんとか終わり、温泉から一度上がりました。
そしてみなさんは一服がてらにドリンクを飲み始めたんですが、どうやら決まった方法があるみたいで……?


その16「お風呂上がりの……一杯?」

 

「んぐ……んぐ……」

 

 露天風呂でぷかぷかと浮きながら温もった後、少し湯あたりしかけてきたところで一度上がることにしました。

 

 そして脱衣所にあった冷蔵庫の中から茶色い液体が入った瓶を取り出したゴーヤさんが、お金を払い終えた途端に蓋を開けて、左手を腰に当てながら一気飲みをし始めたんです。

 

「ぷっはー……でちっ!」

 

「完全にやってることが年寄りくさいのね……」

 

「そう言うイクこそ、同じ格好をしてるでち」

 

「イクはそんな変な声は出さないのねー」

 

 そう言いながらペロッと舌を出したイクさんの手には、黄色い液体の入った瓶がありました。

 

 ゴーヤさんの瓶にはコーヒー牛乳、イクさんの瓶にはフルーツ牛乳って文字が見えます。

 

「ユーちゃんはどれを飲むのかなー?」

 

「あっ、えっと……」

 

 しおいさんの呼ぶ声が聞こえたので、ユーは冷蔵庫の方へと小走りで向かい、中を覗いてみました。

 

 ゴーヤさんやイクさんが飲んでいたのと同じモノから、白色の液体が入った瓶もあります。

 

「これなんかどうかな。お勧めだよー」

 

 そう言ってしおいさんが奥から取り出したのは……、緑色をした瓶なんですけど……。

 

「それって青汁オレじゃない……」

 

「その通りだよ。すっごく美味しいんだからー」

 

「はっちゃん……、しおいの味覚が全く分からないわ……」

 

「えー、どうしてそんなこと言うかなー」

 

 イムヤさんとハチさんが冷たい視線を向けながら呟きましたけど、しおいさんは全く気にすることなく緑色の瓶を持って、お金を支払いに行きました。

 

「ユーちゃんもその冷蔵庫の中にあるのを1つ、飲んで良いよー」

 

「ダ、Danke。ありがとうございます……」

 

 どうやらしおいさんがユーの分も一緒に払ってくれたみたいなんですけど、緑色の瓶は避けておくことにしました。

 

 中にあるのを1つって言っていましたし、どれを選んでも大丈夫ですよね……?

 

「それじゃあ……、ユーはこれにします」

 

「コーヒー牛乳ね。まぁ、それが一番無難かな」

 

「はっちゃんはこれにしよっかなー」

 

 ユーが瓶を取った後、イムヤさんとハチさんは冷蔵庫の中から黄色の瓶……フルーツ牛乳を取り出しました。

 

「しおいー。私とハチの分も、一緒に払っといてくれないー?」

 

「えー……、後でちゃんと返してよー?」

 

 ほっぺをぷっくりと膨らせながらも、言われた通り支払いを済ませたしおいさんは、緑色の小さな棒を持ってこっちにきました。

 

「はい、ユーちゃん。これで蓋を取ってね」

 

「は、はい……」

 

 しおいさんから棒を受け取って、マジマジと見てみます。

 

 細いプラスチックのような棒の先には針が付いていて、その周りを丸い枠が囲っています。

 

「………………」

 

 これって、いったいなにに……使うんでしょうか……?

 

「ん、どうしたのかな、ユーちゃん?」

 

「え、えっと……、あの……」

 

 棒と瓶を見比べたんですが、どうしたら良いのか分かりません。

 

 棒の先で蓋を突いてみますけど、丸い枠はふにゃふにゃで押し込めないみたいです。

 

 でも、押し込んじゃったら中身が飲み込みにくそうですし……、上手に蓋をパカッて取れないんでしょうか?

 

「あれ、もしかして……、蓋の取り方が分からないのかな?」

 

「え、えっと……、ごめんなさい……」

 

「あ、べ、別に謝らなくても良いんだよっ!?」

 

「あらら……、しおいがユーちゃんを泣かしちゃった……」

 

「しおいったら先生なのにねー」

 

「べ、別にそんなつもりは……」

 

 イムヤさんとハチさんが更に冷たい視線を浮かべると、しおいさんは両手のひらを交差させながら、あたふたと慌てていました。

 

「可哀そうなユーちゃん……。はっちゃん、ちょっと同情しちゃいます……」

 

「ユ、ユーは泣いてなんか……ないですけど……」

 

「ユーちゃん、泣きたいときは泣いて良いんだからね?」

 

「い、いや、ですからユーは、別に悲しくは……」

 

「なんて健気なの……」

 

「それに比べてしおいは……」

 

 よよよ……と、泣き崩れるイムヤさんとハチさんを見たしおいさんは、からかわれているのが分かったみたいで、

 

「ぶぅーーーっ! なんでしおいを悪者にするのぉーーーっ!」

 

 さっきよりも頬を大きく膨らましながら、ぷんすかと擬音が頭の上に付いちゃうくらいに怒りながら、大きな声を張り上げちゃっていました。

 

 そしてそれを見た2人は笑いながらしおいさんを指差し、更に怒らせることになっちゃったんですよね……。

 

 

 

 

 

 色々あったものの、しおいさんの機嫌が落ち着いたところで蓋を取ってもらうことになりました。

 

「この棒の先に付いている針をプスッと蓋に刺しちゃって……、こうやるんだよ」

 

 ポン……と、小気味良い音が鳴って、瓶の蓋が取れています。

 

「す、凄い……ですっ。こんなの、始めてみましたっ!」

 

「こうやって開けるときに捻りをつけると、良い音が鳴るんだよねー」

 

 言って、自分の分の蓋を取ったしおいさんはニッコリと笑います。

 

「……別に自慢できるほどすごくはないと思うんだけど」

 

「そういうお年頃じゃない?」

 

「そこっ! グチグチ言わずにさっさと飲むっ!」

 

「それじゃあ、その棒を貸して欲しいんだけどねー」

 

「あ、そっか……って、別に端っこを爪で引き揚げてからでも取れるじゃない!」

 

「それだと、蓋が半分にめくれちゃう場合があるのよねー」

 

「あー、それは確かに……」

 

 ハチさんの言葉に納得したかのような仕草を一瞬だけ見せたしおいさんは、これ以上からかわれてはなるものか……というような顔をしながら、棒をポイッと投げ渡しました。

 

「それじゃあ、早速飲んじゃおっか」

 

「は、はいです」

 

 しおいさんにコクリと頷いてから、ユーは瓶の中身を覗き見ます。

 

 茶色い液体がユラユラと動き、ほんのりと甘い香りがしてきました。

 

「いっただっきまーっす」

 

 しおいさんは先ほどのゴーヤさんと同じように左手を腰に添え、右手で瓶を持ちながら一気に持ち上げて口を付けました。

 

「んぐ、んぐ……」

 

 緑色の液体がどんどんと減っていき、しおいさんの喉がゴクゴクと音を鳴らしています。

 

 そして数秒と経たないうちに、瓶の中身は空っぽになっちゃいました。

 

「ぷっはーーーっ! きっくーーーっ!」

 

「………………」

 

 まるでビールのCMみたいな飲みっぷりに、ユーはあっけにとられちゃったんですけど、あの中身って青汁オレ……なんですよね……?

 

 一気飲みできるなんて……、色んな意味で凄いと思います。

 

「あれ、ユーちゃんは飲まないの?」

 

「あっ、い、いただきます」

 

 しおいさんの口の周りが緑色になっているのが気になりましたが、まずは一口飲んでみることにします。

 

 イムヤさんが言っていた通りなら、無難らしいので大丈夫だとは思うんですが……、

 

「……ごくごく」

 

 口の中に入ってくる冷たい感覚が火照った身体に心地良いかも……と思っていた瞬間、ユーは大きく目を見開きます。

 

「あ、甘くて……美味しいですっ!」

 

 祖国で飲んだことのあるマキラッテアトに負けないくらいのミルク感と、程よいでは済まされないレベルの甘さ加減が、ユーの好みにピッタリでした。

 

 フワフワのミルクの泡がたっぷり入った温かいマキラッテアトも良いですけど、お風呂上がりにはこっちの方がお勧めですっ!

 

「おおっ、気に入ったみたいだねー。それじゃあ、こうやってポーズを取りながら一気飲みすると良いよ」

 

「え、えっと……、さっきの……ですよね……?」

 

 腰に左手を添えて、一気に飲む……。

 

 そして「ぷはーーーっ!」って叫ぶんでしたっけ……?

 

「そ、それはちょっと……、恥ずかしいかも……です」

 

「ダメダメ。恥ずかしがってちゃ、なにんもできないよ?」

 

「で、ですけど……」

 

 しおいさんは一歩も引かず、ユーにポーズを取りながら一気飲みをするようにと言ってくるので、誰かに助けてもらおうと視線を動かしました。

 

「……どうかしたでちか?」

 

 すると、焦っていたのに気づいたゴーヤさんが、首を傾げながらこっちにきてくれました。

 

「あ、あの、実は……」

 

 助かった……と思ったユーは、ゴーヤさんに状況を説明しようとしたんですが、

 

「ユーちゃんに、風呂上がりに牛乳を飲むポーズを教えていたんだよねー」

 

「なるほどでち。それは絶対にするべきでち!」

 

「……ええっ!?」

 

 しおいさんの説明に当然だと頷いたゴーヤさんは、ユーにポーズを取るよう勧めてきちゃったんですよね……。

 

「はい、こうやって左手を腰にそえるんだよっ!」

 

「両足でしっかりと地面を踏みしめるでち!」

 

「あ、あぅぅ……」

 

 どうしてそんなにテンションが高いのかが分からないんですが、左右をしおいさんとゴーヤさんに固められてしまったユーに逃げ場はなく、言われるがままやるしかありませんでした。

 

「ええっと……、こうやって……ですよね?」

 

「うんうん。それで瓶を高く持ち上げてー」

 

「さぁ、そこから一気に飲むのでち!」

 

「わ、分かりました……」

 

 コーヒー牛乳の瓶を傾け、こぼれないように口でしっかりと受け止めて、中身を喉の奥へと流し込んでいきます。

 

「んぐ……んぐ……んぐ……」

 

 言われた通り一気に飲まなければと、ユーは頑張りました。

 

「んぐ……んぐぐ……」

 

 口の中はコーヒー牛乳でいっぱいになり、もの凄く甘い感じが広がります。

 

 喉を通って胃に溜まって行く感触が簡単に分かるくらいの冷たさが、なんだか少しだけ気持ちの良いモノとなり、

 

「んぐ…………ぷはーーーっ!」

 

 なんとか飲み干せた達成感と合わさって、しおいさんやゴーヤさんと同じような声をあげちゃったんですよね……。

 

「やった、完璧じゃないっ!」

 

「良い飲みっぷりだったでち!」

 

 そんなユーを見た2人はパチパチと拍手をしながら、ユーを褒めてくれたんですよね。

 

「げ……、げぷ……。ダ、Danke……、ありがとです」

 

 ゲップが出ちゃって行儀が悪い……と思いましたが、誰も全く気にする感じはなかったので、大丈夫だったみたいです。

 

「それじゃあ2本目……、いっとこうかー」

 

「ゴーヤもいっちゃうでちっ!」

 

「ユ、ユーは……、もう少し後で良いです……」

 

 ブンブンと首を左右に振って答えると、しおいさんは少しだけ残念そうな顔を浮かべてから冷蔵庫に向かいました。

 

 お腹はまだ大丈夫ですけど、さすがに一気飲みを続けてやるのはしんどいです……。

 

 それからしおいさんとゴーヤさんが冷蔵庫の中にある青汁オレとフルーツ牛乳を全部飲み干したのは、数十分後のことだったんですよね。

 

 

 

 なにごとも、程々が良いと思います……ですって。

 




※次回の更新はいつも通りであれば3日後ですが、その日は諸事情で帰宅するのがかなり遅くなりそうなので、難しいと判断した場合は次の日に更新いたします。


次回予告

 舞鶴で過ごしたのは少しの間だったですけど、すごく楽しかったです。
でもそろそろ佐世保に帰らないといけないので、お別れの時間……なんですが……。

 お姉さんたちの様子が、おかしいですよね……?


 艦娘幼稚園 第二部 スピンオフシリーズ
 ~ユー編~ その17「改めまして……ですって!」(完)


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