艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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 しっかり寝たユーは早起きをして、待ち合わせの場所に向かったんですが……。

 あれ、なんだか変じゃないですか……?


その4「先生が悪党に染まってきた水夫のような感じに見えるんですけど……」

 

 次の日。

 

「おはよー。おきとるかー?」

 

「はい。大丈夫です」

 

 早朝に迎えにきてくれた龍驤お姉さんに挨拶をしたユーは、寝ぼけまなこのプリンツに「行ってきます」と声をかけてから荷物を持ちました。

 

「うみゅう……。気をつけてね……」

 

「うん。Danck」

 

 手を振ってくれたプリンツは、そのままドサリと布団に突っ伏しました。

 

 ユーはニッコリと笑みを浮かべながら寝息を立てだしたプリンツに手を振って、龍驤お姉さんと一緒に部屋を出ます。

 

「よっ。おはよう」

 

「おはよう……ございます。お摩耶お姉さん」

 

 部屋の外には摩耶お姉さんが待っていてくれたみたいで、挨拶を交わしました。

 

 ユーはしっかり早寝をしましたけど、まだ頭がフワフワする感じがして眠たいです。けれど、龍驤お姉さんも摩耶お姉さんも、全く眠そうに見えないんですよね。

 

 大きくなったら遠征とか出撃とかで夜も戦ったりするらしいですし、これくらいは当たり前かもしれません。

 

 それでもやっぱり、お姉さんたちは凄いんだなぁって思います。

 

「ほな全員揃ったし、そろそろ行こか」

 

 龍驤さんの言葉にユーと摩耶お姉さんが頷いて、みんなで寮から外へと向かいました。

 

 それでは、舞鶴への遠足――始まります。

 

 ……と、思っていたんですけど……ね。

 

 

 

 

 

「摩耶ー、艤装のチェックは一通り済んでるやんねー?」

 

「ああ。あたしのはもちろん、ユーの方もちゃんと調べといたから問題ないぜ」

 

「さすがは摩耶やね。それじゃあユーに装着を……って、どうしたん?」

 

「い、いや……、あの……」

 

 ユーは思いっきり困惑しちゃっています。

 

 お姉さんたちに連れられたのは鎮守府にある埠頭の先端で、今から艤装を取りつけようとしているんですよ。

 

 昨日、安西提督に龍驤お姉さんが「別に海路を使わんでも移動する方法はいくつでもあるし、その辺りはウチに考えがあるから任しといてくれへんかな?」と言っていたので、てっきり新幹線という乗り物で移動すると思っていました。

 

 ユーは初めて乗るので、ちょっとだけ楽しみにしていたんですけど……、どう考えても海から行くみたいですよね……?

 

「ユーたち、舞鶴まで海から行くんですか……?」

 

「せやで。ウチと摩耶が海上で警護しながら進むさかい、ユーは潜水の練習をしながら頑張るんやで」

 

「え、えっと……、ユーはまだ、潜水がそんなに上手じゃないかも……」

 

「それだったら、あたしの背中にでも乗せてやろうか?」

 

「それもかまへんけど、ユーの練習もちょくちょく混ぜた方がええんとちゃう?」

 

「確かにそうかもな。ユーはそれでも大丈夫か?」

 

「が、頑張って……みます……けど……」

 

 あれよあれよという間に話が決まっちゃっていますけど、本当に海から向かうみたいでした。

 

 でも、どうしてなのか、ユーは良く分からないんですよね……。

 

 安西提督は予算を申請……とか言っていましたし、陸から行く方が安全だと思うんですけど……。

 

「龍驤……、これで行き帰りの運賃は丸儲けだよな……?」

 

「しっ! 声が大きいで。誰がどこで耳を立てているのか分からへんさかい、気をつけんと……怒るでしかし」

 

「いや……、なんでやっさんみたいな言い方なんだよ……」

 

 ユーから少し離れたところで2人のお姉さんがボソボソと喋っていますけど、なんだか怪しい感じがします。

 

「おはよう、みんな」

 

「「「えっ!?」」」

 

 するといきなり後ろから声がかけられたので、ユーは慌てて振り返りました。

 

 そこには眠たそうに目を擦りながら先生が立っていて、ユーにニッコリと笑いかけてくれました。

 

「せ、先生。どうして……ここに?」

 

「ユーたちが朝に出かけるのは摩耶から昨日に聞いていたから、見送りをしようと寮に向かってたら姿が見えたんだけど……」

 

「そうだったんですか……」

 

「できれば俺も行きたいんだけど、他の子供たちのこともあるからな……。舞鶴までは遠くて大変だけど、頑張るんだぞ」

 

「先生、Danke……です」

 

 優しく頭を撫でてくれる先生の顔を、ユーは笑みを浮かべて見上げました。

 

「び、ビックリしたやんか……」

 

「ほ、本当だぜ……。驚かせるなよ、まったく……」

 

 2人のお姉さんは胸を撫で下ろしながら息をついていると、先生が首を傾げながら口を開きます。

 

「それは悪かったけど、いったいなにを相談してたんだ?

 言っちゃ悪いけど、かなり怪しい感じがしていたぞ?」

 

「なっ、なんでもあらへんよっ!」

 

「そ、そうだぜっ! 別にあたしらはなにも悪だくみなんかは……」

 

「………………」

 

 慌てたお姉さんたちは何度も首を振って否定していましたけど、先生は半目を浮かべながらなにも言わずにジッと見つめていました。

 

「そ、その目はなんなんっ!?」

 

「あたしらを疑うってのかよっ!」

 

「いや、別にそういう訳じゃないんだけどなぁ……」

 

 そう答えた先生ですけど、口元が少しつり上がっているのをユーは見逃しませんでした。

 

 お姉さんたちも怪しいですけど、先生の顔も怪しい気がします。

 

「まぁ、変なことをしないで、ユーをしっかりと見守ってくれるように頼むな」

 

「そ、それはもちろんやけ……ど……」

 

 額に汗を浮かばせながら答えようとした龍驤お姉さんの方に近づいていった先生は、なぜか耳元に口を近づけてボソボソと喋っているようでした。

 

「運賃がどうとか……聞こえてたんだけど?」

 

「……ぎくっ!」

 

「別に誰かに喋るとか、そういう訳じゃないんだけどなー」

 

「べ、べべべ、別にウチらは何も……」

 

「それじゃあ、俺の気のせいだったのかな?

 そっかそっか。それじゃあ、安西提と……」

 

「ちょっ、頼むわ! それだけは堪忍してっ!」

 

 ボソボソと内緒話をしていたのかと思っていたら、いきなり龍驤お姉さんが大きな声で叫びました。

 

 隣にいる摩耶お姉さんの顔も青ざめている感じですし、先生……なにを言ったんでしょうか……?

 

「まぁ……、……で、……なんだけど」

 

「そ、そんなんで、ええの……?」

 

「ああ。それじゃあ、頼んだぞ」

 

 そして先生は龍驤お姉さんの方をポンと叩いてから離れ、摩耶お姉さんに笑いかけました。

 

 小さい声で聞こえませんでしたけど、先生はいったいなにを言っていたんでしょう……。

 

 摩耶お姉さんも、もの凄く焦った顔を浮かべていますし……、なんだか怪し過ぎますよね……。

 

 

 

 

 

「そ、それじゃあ気を取り直して、そろそろ舞鶴に向かおか……」

 

 少し疲れた顔をした龍驤お姉さんが摩耶お姉さんとユーに声をかけ、艤装を装着してくれました。

 

「あの……、龍驤お姉さん……」

 

「ん、どうしたんや?」

 

「さっきの先生は、なにを言っていたんですか……?」

 

「そ、それは……」

 

 気になっていたので聞いてみたんですが、龍驤お姉さんはさっきよりも険しい感じの顔で、言葉を詰まらせているみたいです。

 

「ちょ、ちょっと先生から、頼まれごとをしただけやで……」

 

「そうなんですか……?」

 

「そ、そうなんや。あは、あはははは……」

 

 乾いた笑い声をあげる龍驤お姉さんでしたけど、どこからどう見ても無理をしている感じに見えます。

 

「どちらかと言えば、遭難って感じだけどな……」

 

「誰が上手いこと言えと言うたんやっ!」

 

 ボソリと呟いた摩耶お姉さんに平手打ちを放った龍驤お姉さんは、テレビで見たことがある漫才コンビのようでした。

 

 でも、テレビとは違って、2人のお姉さんはその後に大きなため息を吐いていたので、まだまだ修業が足りないなぁ……って思います。

 

「……ゴホン。気を取り直して、ほんまに行くで」

 

「その台詞……、2回目ですよ……」

 

「ぐふっ!」

 

「て、的確な突っ込みとは……、ユーもなかなかのやり手だな」

 

 龍驤お姉さんはその場で膝を折り、orzのような感じでうずくまりました。

 

 摩耶お姉さんは感心するような顔でユーを見ています。気になったから言っただけなんですけど、ダメだったんでしょうか……?

 

「ほ、ほんまに、若さゆえの暴走っちゅーのは、怖いもんがあるで……」

 

「過ちと言わないだけマシだよな?」

 

「誰が仮面を被った彗星やねん!」

 

「よく考えたら、先生に仮面を被らせたら良いんじゃね?」

 

「……ロリコンやしな」

 

「「あっはっはー」」

 

 そんなことを言った2人のお姉さんは、互いに笑いながら親指を立てていました。

 

 でも、ユーはどちらかと言えば、四男の末っ子な感じがします。

 

 その、どちらも薄幸っぽいですし……。

 

 あ、でも先生はそんなにイケメンじゃないかも……。

 

「あれ……、どうしたんですか……?」

 

 気づけばさっきの龍驤お姉さんのように、2人揃ってorzの格好になっていました。

 

「い、いや、自分で言うてて、なんやへこんでしもうてな……」

 

「龍驤はまだ良いじゃねぇか……。見た目、ロリなんだし」

 

「な、なんやてっ!? 今どこ見てその台詞を吐いたんやっ!」

 

「そりゃあ……って、言って良いのかよ?」

 

「……言ったら爆撃確定やで?」

 

「なら言わないことにするぜ」

 

「……それはそれでへこむんやけどね」

 

「どっちなんだよ、まったく……」

 

 そうして再び暗い表情をする2人のお姉さんですけど、自爆しまくっている気がします。

 

「……ところで、ちょっと質問良いですか?」

 

「……ん、なんや、ユー?」

 

「いつになったら……出発するんですか?」

 

「「………………」」

 

 このままだったら、全く前に進まないと思います。

 

 こういうときは、ユーが頑張らないとダメ……ですよね?

 

「せ、せやな……。ほんまにそろそろ、出発しよか」

 

「へ、へこんでばっかりもダメだしな」

 

 2人のお姉さんは膝を払いながら立ち上がり、ユーの艤装をキッチリと装着してくれました。

 

 今度こそ。本当に今度こそ、舞鶴に出発です。

 




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次回予告

 それでは出発です!
……と思ったら、色々と大変なことばかりが起きてしまいました。
それでもなんとか舞鶴に到着したんですけど、着いて早々とんでもないことが……?


 艦娘幼稚園 第二部 スピンオフシリーズ
 ~ユー編~ その5「ブチッ……と鳴ったんです」


 乞うご期待!

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