艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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 なんかもう踏んだり蹴ったりです。

 だけどこれはいつものこと。
さっさと治療を終えて、不能が解消するのかしないのか。それとも新たな問題が?

 しかしそこはやっぱり主人公。
謎には立ち向かわないとダメだよね……?


その18「謎はすべて解け……」(完)

 日向の冗談からなんとか落ち着いた明石は、額に浮かんだ汗を拭いながら不能の治療を再開した。

 

「そ、それじゃあ今から鍼を刺すんですが……、絶対に動かないで下さいね?」

 

「りょ、了解です……」

 

 刺される場所が場所だけに動く気は毛頭ない。しかし、近くで立ってこちらを見ている日向がまたいらないことをしないとも限らない以上、気を許すことができない。

 

「で、では……、まず関元からですね……」

 

 言って、明石はへそから少し下の辺りを指で押しながらツボを探しているんだけれど、耳まで真っ赤になっているのは少々いただけない。

 

 理由は分からなくもないが、治療なんだから割りきって欲しい……と、思いつつも、こんな表情をされると俺としてもなんだかやり難いのだ。

 

 でもまぁ、今の俺は不能状態。

 

 変な反応は起きないもんねー。

 

 ………………。

 

 考えたらへこむだけなので、止めておこう……。

 

「それじゃあ……逝きます……」

 

「何だかニュアンスが違う気がするんですがっ」

 

「き、気のせいです……よ?」

 

 鍼に集中しながら返す明石だが、やっぱり語尾が怪し過ぎる。

 

 とはいえ、これ以上突っ込みを入れて失敗されるのも具合が悪いので、黙っていることにしよう。

 

「い、痛みます……?」

 

「いえ。特に感触はないですけど……」

 

「分かりました……。それじゃあ、合わせて大赫(だいかく)の方もしちゃいますね」

 

「だ、大赫……?」

 

「うむ。大赫とは関元の両側にあるツボだな。主に男性ホルモンの分泌を促す効果があり、新婚さんにお勧めだ」

 

「そ、そうですか……って、詳しいですね」

 

「まぁ、乙女のたしなみだな」

 

 鍼灸やツボがたしなみなのか……。

 

 それはそれでどうかと思うが、役に立つのなら問題はないだろう。

 

 ……動機が不純だったりする気がしなくもないけど、分からなくもない。

 

 ………………。

 

 よし。頭の隅に覚えておこう。

 

「食事にスッポンが出るとなおよしだな」

 

「マムシなんかも良いですねー」

 

「……濁らす気が全くないよね」

 

「それ程でもないな」

 

「それ程でもないですねー」

 

 日向と明石の言葉に突っ込むものの、2人はにへらー……と、笑みを浮かべるだけで全く懲りていないようだった。

 

 うむむ……。俺の突っ込みも効果がないとは……恐るべし。

 

 とりあえず黙って治療を受けることにした俺は、じっとしながら成り行きを見守っていた。

 

 

 

 

 

「これで治療は終わりです。

 後は数日、様子を見て下さいね」

 

「あ、あぁ。ありがとね」

 

 俺は頭を下げて礼を言うと、明石は微笑を浮かべながらへそ下辺りにある燃え尽きたお灸を指で摘んでゴミ箱に入れた。

 

「お灸の後は少し赤くなってますけど、これは仕方ないですから我慢して下さいね」

 

「そこまで痛いとかはないし、大丈夫でしょ」

 

「そうですねー。

 低温やけどと同じなので、暫くすれば綺麗に戻る……はずですから」

 

 微妙に視線を逸らしたのが気になるが、不能が治るのならそのくらいの代償は仕方がない。

 

 ただ気になるのは、火を使うお灸であったにもかかわらず熱さを感じなかったことなんだけど、やはり不能が影響して感覚を鈍らせているのだろうか……?

 

「ふむ……、困ったな」

 

 そんなことを考えていると、日向がいぶかしげな顔をしながら呟いていた。

 

「ど、どうかしたんですか……?」

 

 明石は振り返りながら日向に問う。

 

「いや、ボケをするところが見つからなくてな」

 

「全く必要ないけどねっ!」

 

「……む。相変わらずキミの突っ込みは早いな」

 

「褒められても嬉しくないんですけど……」

 

「まぁ、アレの方が早いのは相手に不満を持たせるから止めた方が良いんだが」

 

「結局ボケてるじゃんっ! 必要ないって言ったのにっ!」

 

「はっはっはっ。

 キミを見ているとどうしてもボケたくなるのはもはや才能だな」

 

 朗らかに笑う日向だが、本気で嬉しくないです。はい。

 

「しかし、そこまで元気があれば大丈夫だろう。

 明石の言うように、数日はここで療養しているが良い」

 

「は、はい。そうさせて貰います」

 

 明石のツボ押しによって大分と楽になったけれど、未だに身体を動かすのは少し辛いので願ったり叶ったりである。

 

 幼稚園の業務が気になるところだが、ここはビスマルクに任せるしか仕方がない。元々俺が居なかったときはそうしていたのだから、なんとかなってくれるだろう。

 

 ビスマルク包囲網については、治ってからってことで。

 

 帰ったら一からやり直し……なんてことになってないと良いんだけど。

 

「それでは私たちはそろそろお暇するとしよう。

 明石も少し休ませないといけないし、後始末も残っているからな」

 

「ええ。ありがとうございます」

 

 俺は日向に礼を言ってから、明石の方を向く。

 

「明石もお疲れのところありがとう。

 色々と大変だったけど、これでなんとか元に戻れるよ」

 

「い、いえいえ。

 元はと言えば私が悪いんですから……」

 

 そう言って頭を左右に振る明石だが、表情は固く曇っていた。

 

 良く見れば膝の辺りが小刻みに震えているみたいだけど……、本当に大丈夫なんだろうか。

 

「では、気分が向いたら様子を見に来ることにしよう。

 間違っても治ったからといって、ハッスルし過ぎないようにな?」

 

「する予定も気力もありませんよ」

 

「それは残念だ。

 さすがはDTだな」

 

「く……っ!」

 

「あっはっはー」と、笑いながら手を振って部屋から出て行く日向の背中にジト目を向けながらため息を吐く。明石も苦笑いを浮かべながら俺に頭を下げ、後を追いかけて行った。

 

 そもそもまだ治ってないからそんなことはできないだろう……と、思いつつ、俺は自分の下腹部を見る。

 

 本当に治ったのか、それともダメだったのか。

 

 背筋に嫌な寒気を感じながら俺は布団を被り、楽しいことを考えながら目を閉じたのであった。

 

 

 

 

 

 結論から言うと、2日後の朝に俺の不能は治っていた。

 

 それはもう見事なまでに元通りで、あまりの嬉しさに絶叫をあげてしまったほどだ。

 

 それが災いしたのかは知らないが、数日後には鎮守府内に不能が完治したことが知れ渡ってしまったらしい。

 

 何やら小っ恥ずかしい気もするが、正直嬉しさの方が勝っているので問題ない。

 

 ただ、知らせてはいけない相手もこの鎮守府には居るんだよね……。

 

 

 

 

 

「治ったのなら、早速調教タイムよねっ!」

 

「ぶふーーーっ!?」

 

 扉が開かれた途端に聞こえてきたビスマルクの大声に、ベッドに座って備え付けのテレビを見ながらお茶を啜っていた俺は見事に吹き出してしまった。

 

「いきなり何を言い出すんだビスマルクはっ!」

 

「あら、嫌なの?」

 

「あたかも俺が望んでいたように言うんじゃねぇっ!」

 

 全力で否定する俺を見て、ビスマルクはお腹を抱えて笑っている。

 

 あぁ……、結局元に戻っただけなのか。

 

 でも、そんな日常が俺には合っているのかもしれない。

 

 それはとても大変だけど、やりがいがあって楽しくもある。

 

 ときには苦しいこともあるけれど、それ以上に得る者が大きいのだ。

 

「大丈夫大丈夫。

 慣れてしまえば問題ないわっ!」

 

「全力で慣れたくねぇんだよっ!」

 

 ……まぁ、これについては正直に言って持て余しているんだが。

 

 どうにかして対処しないとなぁ。

 

 俺はビスマルクを見ながら苦笑を浮かべる。

 

 そして、最後にやらなければならないことを考えながら、大きなため息を吐いた。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「元気そうだな」

 

 扉がガラガラと開けられ、見知った艦娘が部屋に入ってきた。

 

「ええ。おかげ様でなんとかって感じですね」

 

「ふむ。それは良いことだ」

 

 言って、日向はベッドの近くにある椅子に腰かけて腕を組んだ。

 

「……それで、私に用とはいったい何なのだ?」

 

 小さく首を傾げながら俺に問う日向。

 

 そう――。日向は自主的に見舞いに来てくれたのではなく、ビスマルクに伝言を頼んだからなのだ。

 

 その際にビスマルクが「浮気っ! 浮気なのっ!?」と、何度も叫んでいたが、その辺りは後々フォローしておこう。

 

「いくつか確かめたいことがあったんで、お呼びしたんですけど……」

 

 俺はそう言いながら、湯呑に入ったお茶を啜る。

 

 既に熱を失ったお茶は苦味を増しているが、頭を冴え渡らせるのにはちょうど良い。

 

 無言のままの日向の顔を見る。

 

「確かめたいこと……?」

 

「ええ、そうです」

 

 小さく頷いた俺はゆっくりと口を開く。

 

 今回の事件についての真相を、問い詰める為に――。

 

 

 

 

 

「今回の明石誘拐事件に関して、気になることがあり過ぎるんですよ」

 

「ふむ……」

 

 日向は顔色一つ変えないまま、俺から少しだけ視線を逸らして考える仕草をした。

 

「つまりキミは安西提督が通達した内容について、異論があると言うのか?」

 

「異論……と、言えば語弊があるかもしれませんが、謎をそのまま残して終わらせてしまうと気持ちが悪いと思いまして」

 

「つまりキミは完璧主義者なんだな」

 

「いえ、そういうのは全くないんですけどね」

 

 小さく顔を左右に振って、俺は手の平を日向に見えるように向ける。

 

「とりあえず気になったことを言いますので、まずは聞いて下さい」

 

 日向の返事を待たず、俺は指を折りながら質問を開始した。

 

「誘拐当初の明石の部屋……。

 伊勢は俺が犯人だと決めつけてましたけど、日向はどう思っていたんですか?」

 

「現場に立っていたのはキミしか居なかった。

 まずは参考人として話を聞くのが先決だと思い、連行することにした」

 

「その結果が棒に括りつけての連行ですか……」

 

「まぁ、あれは少しからかい過ぎたがな」

 

 日向はそれから「すまなかったと思っている」と続けつつ、苦笑を浮かべている。

 

「過ぎたことは仕方ないですが、謝って貰いましたからよしとしましょう。

 しかし、その時点で少しおかしいことがあるんです」

 

「それは……なんだろう?」

 

「明石の部屋の状況ですよ。

 刃物で切り付けられたような跡に、血糊のようなもので真っ赤に染まった壁や床。

 ひしゃげた机や椅子もありましたけど、どう考えても『ただ』の人間である俺にあんなことはできません」

 

「刃物で壁に傷をつけることは可能だろうし、血のりも争えば出るモノだろう?」

 

「誘拐が目的だとして、そんなことが必要なんですか?」

 

「……あの時点では誘拐だと判明していなかったはずだが」

 

「確かにそうですけど、明石の姿が部屋になかった以上、その可能性も考えるはずでしたよね?」

 

「ふむ……。

 そうとも言えるし、そうとも言えないかもしれないな」

 

 そう呟いた日向は少し俯きながら考え込むような仕草をした。

 

 やはり、これだけでは弱い……か。

 

 ここまでは正直に言って水かけ論に近く、上手く誘導尋問ができればと思っていたが仕方がない。

 

「どちらにしても、あの机と椅子は無理ですよね?」

 

「………………」

 

 その問いに、日向は黙ったまま俺の顔を見る。

 

 俺を心の中を見透かすかのようにジッと向けられる瞳を見ながら、続けて口を開いた。

 

「それ以外にもまだあるんです。

 あんな状態になった机の中に、どうして大鯨のメモが入っていたんでしょうか?」

 

「それは……、キミが見つけた四角い紙のことか?」

 

「『明石の身柄、暫く借り受けます。独立型艦娘機構 大鯨』と書かれていた、あの紙ですよ」

 

 俺は両手の人差し指と親指を使って四角の形を作り日向に見せる。

 

「なぜ、それがおかしいのだろう?

 大鯨は安西提督に前もって告知し、そして佐世保に居る私たちに分かるようにその紙を残した。

 これで何も問題は残らないはずだが……」

 

 そう言った日向の言葉に、俺は内心笑みを浮かべた。

 

 やはり――、間違いないと。

 

「そうですね。

 普通に考えれば問題はないと思うかもしれません。

 ですけど、明らかに順序が逆なんですよ」

 

「順序……だと?」

 

「だってそうでしょう?

 明石を誘拐する為に部屋が荒れたのなら、ひしゃげた机の中に紙を入れる方法がないんですから」

 

「……っ!?」

 

 俺の言葉を聞いた瞬間、今まで殆ど変化を見せなかった日向の顔が焦りにまみれた。

 

「それに、安西提督に前もって大鯨が明石の誘拐を告知していたのなら、そもそも紙は必要ないんです。

 出張に出ていたとはいえ、電話等で佐世保に連絡すればこと足りるんですからね」

 

「し、しかしそれは、大鯨が何かを行う際に必ず残すメッセージカードであって……」

 

「そんな話は聞いたことがないんですが、仮にそうだとしても順序は合いません。

 それに、もし日向が言ったことが本当なら、わざわざ机の中に残さなくとも壁に貼りつけた方が分かり易いですよね?」

 

 『明石の身柄、預かりました』と、壁に突き刺さるカードがあったのなら、俺は何の違和感も持たなかった。

 

 しかしそうだったのなら、一つの問題が出てくる。

 

 あの時点でカードを見つければ、犯人はすぐに誰だと分かる。

 

 それなのに順序を変えてまでそうしなかった理由は……

 

「今回の事件は、明らかに俺を嵌めようとしてますよね?」

 

「………………」

 

 日向は何も言わず、目を合わせようともしない。

 

 つまりそれは肯定であると共に、言えない何かを隠していることになる。

 

「そもそも、荒らされた明石の部屋に俺が入ってからすぐに伊勢と日向がやってきたこともおかしいんです。

 あのタイミングを偶然と済ませるのは納得ができないんですよ」

 

「だが、偶然というモノは起きるからこそ……」

 

「ええ。だから偶然と言われるんでしょう。

 しかし、部屋に入ってからの対応速度も明らかに速過ぎましたよね?」

 

「………………」

 

「あのような状況を発見した場合、俺の身を確保したのは妥当かもしれません。

 ですが、確保した後に現場を調査せず即座に連行したのは、どう考えてもおかしい。

 本来なら俺を含めた上で部屋の状況を調べ、その場で問い詰めるべきのはず……」

 

「つまり……、キミは何が言いたいんだ?」

 

「それはさっきも言いましたよね。

 明らかに俺を嵌めようとしている……と」

 

「それをしたとして、私たちに何のメリットがあると言うのだろう?」

 

「伊勢と日向にメリットはないんだと思います」

 

 ハッキリと答えた俺を見た日向は、一瞬だけ目を大きく見開いた。

 

「な、ならば、私や伊勢がキミの言うような行動を起こす理由は……」

 

「ありますね」

 

「……っ!?」

 

 何とか言い逃れをしようとする日向の言葉を遮り、俺は大きく顔を左右に振る。

 

 そして、俺は日向の顔をしっかりと正面から見つめ直し、口を開く。

 

「だって……、あなたは日向じゃないんですから」

 

 その言葉が部屋に響いた途端、空気がガラリと変わった気がした。

 

 

 

 

 

「……何を言っているんだキミは」

 

 一瞬の間を置いてから、日向がジト目を向けながら言う。

 

 しかし、俺の推理は頭の中で完璧に構成されているので、そんな視線に負ける気はない。

 

「単刀直入に言います。

 あなたは日向に変装した……大鯨ですよね?」

 

「………………は?」

 

 ぽかん……と、口を大きく開けた大鯨? は、呆気に取られた表情を浮かべている。

 

「舞鶴での言葉は、こういう意味だったんですね」

 

「……い、いや、キミの言っている意味が良く分からないのだが?」

 

「誤魔化さなくても良いですよ。

 俺にはもう、全てが分かっているんですから」

 

「………………」

 

 勝ち誇った顔を浮かべて大鯨? を見る俺。

 

 しかし、どうにも反応が悪い気がするのだが、往生際が悪いよなぁ。

 

「……つまり、今の私は日向の仮面を被って変装している……と、キミは言いたいのだな?」

 

「そういうことです。

 まぁ、仮面までは被ってなくても、カツラなどで……え?」

 

 すると大鯨? は急に頭のてっぺんを俺に向けてきた。

 

「ならば、このカツラとやらを取ってもらおうか」

 

「い、いや、えっと……」

 

 いやいやいや、ここは自らが取ることでやられた感を出さなきゃいけない場面ですよね?

 

「さあさあ、キミの言う推理が正しいとならば、存分に取ってみるが良いっ!」

 

「なんでそんなに気合入ってんのっ!?」

 

 大鯨? の声色がルンルンとしていてなんだか気持が悪いんだけど、もしかして簡単にはカツラが取れないように接着しているのだろうか?

 

「それともこれが取れないようにしていると思うのなら……、キミが納得するまで私の身体の隅々を調べてくれても構わないぞ?」

 

 頭を元に戻した大鯨? は、不敵な笑みを浮かべながら俺にそう言って、フフン……と、鼻息を荒くしている。

 

 ……え、何これ?

 

 もしかして、俺の推理が大外れなの?

 

 ついでに、身体の隅々まで調べて良いってことは、ボディタッチもオッケーってことだよね?

 

 ひょんなことで胸部装甲に触れちゃっても問題はない……で、ファイナルアンサー?

 

「ただし、調べた上で問題がなかった場合は、それ相当の仕打ちを受けてもらうがな」

 

「後が怖いので止めておきます」

 

「……なんだ、つまらんな」

 

 露骨に残念そうな顔を浮かべた大鯨? は、大きくため息を吐いてそう言った。

 

 そんなこと言われたら、触るのはマジで怖いじゃないですか。

 

 危ない橋は渡りたくないんですよ……って、大鯨を問い詰めた段階でヤバ過ぎるとは思うんだけどね。

 

 でも、本当に目の前に居るのが本物の日向だったのなら、俺の推理は大外れってことになるんだけれど……

 

「しかし、キミの推理はぶっ飛びまくっていて面白かったぞ?」

 

「い、いやいや、ここでそんな簡単に終わらせられてもですね……」

 

「ふむ。ということは、まだ他にも突きつけるネタがあるのだろうか?」

 

「そ、それは……」

 

 俺の頭の中にないこともないのだが、どれもが決め手に欠けるモノばかりであり、場合によっては墓穴を掘りかねない。

 

 先手必勝とばかりに第一の矢から切り札を出したのに、これが裏目に出てしまうとは……

 

「その感じだとないみたいだな。

 ならば、この話はこれで以上ということだ」

 

「ぐっ……」

 

 今度は俺が歯ぎしりをして苦悶の表情を浮かべてしまう。

 

 勝ち誇った顔をする大鯨? を前に、俺はもう何も言えないのだろうか……?

 

「だが、全てが間違いであったとは言えない……な」

 

「……え?」

 

「面白い推理を聞かせてくれたお返しに、いくつかの真相を教えてやろう」

 

 椅子から立ち上がった大鯨? はニヤリと笑い、腕を組みながら俺に言う。

 

「まず私は本物の日向だ。

 変装している訳でもなく、最初から最後までキミと出会ったままの姿だよ」

 

「……つ、つまり、俺の完全な勘違い……ですか?」

 

「あぁ、そうなるな。

 そして、伊勢もまた変装などはしておらず、本物だ」

 

「そ、それじゃあ最初から俺は……」

 

「いや、変装という点以外はあながち間違ってはいない」

 

「そ、それじゃあ……っ!」

 

 叫ぶように声をあげた俺に背を向けた大鯨……ではなく日向は、右手を振りながらこう言った。

 

 

 

「私も伊勢も、利用されただけなのさ……」

 

 

 

「……っ!?」

 

 ガラガラと扉が開かれ、日向は俺の方を見ないまま部屋を出て行った。

 

 残された俺は日向の言葉の意味を考えながら、ベッドの上で息を吐く。

 

 結局、何が本当で何が嘘なのか。

 

 どこまでの推理が当たっていて、外れていたのか。

 

 それは――、今の俺には分からない。

 

 心のモヤモヤは全く晴れぬまま、俺はもう一度大きくため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 艦娘幼稚園 第二部 ~明石誘拐事件発生!?~ 終わり

 




 今章はこれにて終わり……と言いつつも、謎は全然解けてないっ!
でもでも大丈夫。ジッチャンが出てこない代わりに、謎の殆どを本人が語っちゃう!?

 ということで、二部の序盤はこれにて終了。次章からはスピンオフが続きます。
つまり、この流れから察すれば……。

 誰が主人公か分かる……じゃなくて、こっちにまで浸食してきちゃったよっ!


次回予告

 遂にメインを張っちゃいますっ!
呼ばれて飛び出てぱんぱかぱーん!
誰がメインか分かるよねっ!?

 恐怖の艦娘、見参しますっ!


 艦娘幼稚園 第二部 スピンオフシリーズ
 ~ヤン鯨編~ その1「初っ端から黒幕発覚」


 乞うご期待!

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