艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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※かなり久しぶりではありますが、ヤンデル大鯨ちゃんのオシオキ日記を先日更新しました。宜しければ是非であります。


※余談ではありますが、現在ツイッターの方で艦これ二次小説『深海感染―ONE―』をまったり連載中です。
深海感染―ZERO―のその後の話となりますが、宜しければお願い致します。
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 これでとりあえずは一件落着……?
しかしそこは不運な主人公。通常業務に戻るや否や、いきなりトラブルに巻き込まれるっ!?

 そして遂にあの子が……壊れたっ!?



その11「お久しぶりの幼稚園」

 

 次の日。

 

 幼稚園の業務は普段通り――と、思っていた。

 

 いくら俺に身に覚えがない罪を被せられようとも、子供たちは変わらずここに居る。

 

 牢屋に捕まったままなら授業を行うことは難しくとも、既に誤解は解けているのだから何も問題はない。

 

 なので、いつもの時間にスタッフルームに来たのだが、そこにビスマルクの姿はなく、置き手紙だけがあった。

 

『ビスマルクの身柄を預かります by日向』

 

「………………」

 

 ……え、どういうこと?

 

 明石に続いて、今度はビスマルクまで巻きこまれちゃったのっ!?

 

 一難去ってまた一難。いつになったら平穏が訪れるんだと叫びたくなるが、ビスマルクが居ないことで騒動が減るのもまた事実……って、さすがに俺はそこまで薄情ではないのだが。

 

 とはいえ、ここで放っておく訳にもいかない俺は、慌てて日向に理由を聞かなければ――と、思ったところ、更に続く文面に気がついた。

 

『なお、理由は看守への暴力行為についての罰として、安西提督から後片付け作業を命ぜられた為である。

 従って幼稚園業務は先生1人なるが、まぁ、問題ないだろう』

 

「な、なるほどね……」

 

 そういうことなら仕方がないだろう。

 

 牢屋に居たとき日向に陳情したが、ビスマルクには口頭で注意をしたと聞いた。

 

 しかし、鎮守府の規律を考えるとビスマルクがやったことを簡単に済ませる訳にもいかないだろうし、安西提督が罰を与えたということも分かる。

 

 もちろん事情等を考慮した上で後片付け作業という軽いモノを選んでくれたのだろうし、その辺りは感謝しなければならない。

 

 まぁ、誤解から始まっただけに、ことを大きくしたくないという思考もあるんだろうけどね。

 

「それじゃあ、こっちの方は俺が頑張らないとな」

 

 2人のときよりも作業量が増えてしまうだろうから時間を無駄にはできないのだが、よくよく考えたらビスマルクが居たことによって作業量が増えていたふしがある。

 

 もしかしてこれ、いつもより楽になっちゃうんじゃないだろうか?

 

 そうだったら俺は今後どうすれば良いのだろう……と、考えながら、とりあえずは目の前にあることを片づけていこうと、両頬を叩いて気合を入れて準備をしたのであった。

 

 

 

 

 

「それじゃあみんな、また明日な」

 

「「「さようならー」」」

 

「う”ー……」

 

 それから色々あって終礼が済んだ。

 

 そうは言ったものの、指し当たって大きな問題が起こった訳ではない。

 

 朝礼の際に、今日はビスマルクが用事のために幼稚園に来られないとみんなに伝えたところ、レーベとマックス、ユーは少しばかり不思議そうな顔をしたもののすぐに頷いたのだが、プリンツだけがそうはいかなかった。

 

 ちなみにそのときの様子はこんな感じであるが……

 

 

 

「ど、どうしてビスマルク姉さまが幼稚園に来ないんですかっ!?

 今まで一度たりとも休んだことなんてないのに……っ!」

 

 半泣きになりながら俺に訴えるプリンツ……だが、その言葉を聞いたレーベたちが呆れた表情を浮かべながらツッコミを入れる。

 

「……そ、そうだったかな?

 寝坊したとかで朝礼が始まらなかったことは1度や2度じゃなかったと思うけど……」

 

「大体は前日に飲み過ぎたらしいわよね。

 まぁ、ビスマルクだから仕方がないのでしょうけれど」

 

「日曜日と間違えて……、全く来なかったときも……あったよね?」

 

「……うぐっ!」

 

 胸にグサリとナイフが刺さったように蹲るプリンツ。

 

 いやいやいや、ちょっと待て。

 

 ビスマルクって、そんなにダメダメだったのか?

 

 俺がここに来てから色々と見てきたが、問題点は多々あってもそこまで酷いのはなかったんだけど。

 

 ………………。

 

 そう思いかけて、即座に否定するような記憶が出てくる俺。

 

 うん。色々と問題が多過ぎた――が。

 

 それはあくまで俺に絡む問題が多かっただけであり、幼稚園に関しては酷さをあまり感じなかったんだけどなぁ。

 

 もしかして、俺という存在がビスマルクを刺激し、教育者としてのやる気を出した……なんてことがあったのだろうか?

 

 でも、良いところを見せようという感じもなかったし。

 

 ……むしろ、完全に子供と変わらなかった気がする。

 

 ………………。

 

 まさにダメダメじゃないか。

 

「やだぁっ! ビスマルク姉さまが居なきゃやだぁぁぁっ!」

 

 そして、遂にプリンツがごねた。

 

 床に寝転がって、両手をジタバタとさせているのである。

 

「「「………………」」」

 

 今までのプリンツではありえなかった行動に、本気で固まる子供たち。

 

 もちろん俺も同じように……って、どうすりゃ良いんだこの状況……。

 

 と、とりあえず、慰めないといけないよな?

 

「プ、プリンツ……。ビスマルクが幼稚園に来られないのは、少しの間だけだから……」

 

「いーやーでーすーっ!

 ビスマルク姉さまが居ない幼稚園なんて、何の楽しみもないんですからぁぁぁっ!」

 

「勉強したりみんなと遊んだり、色々あるじゃないか」

 

「ビスマルク姉さまが居てこそ楽しいんですぅっ!」

 

「な、なんだかちょっと残念だね……マックス」

 

「別に、私は余り気にしないけど……」

 

 苦笑を浮かべたレーベが問いかけると、マックスの顔は言葉と裏腹に明らかに残念そうに見える。

 

 こ、このままでは子供たちの仲まで悪くなるんじゃないだろうか。

 

 それはさすがに見逃す訳にもいかないし、ビスマルクが来られなくなったことが原因ならば、残っている俺がしっかりとしなければならない。

 

 しかし、ここまで駄々をこねているプリンツを宥める方法がパッと頭に浮かぶ訳もなく、いったいどうすれば良いんだと悩んでいると……、

 

「せ、先生……、ちょっと……いい……?」

 

「……ん、どうしたんだ、ユー?」

 

 俺は後ろから服の裾をクイクイと引っぱるユーに振り向きながら首を傾げた。

 

「あ、あの……ね。

 この前プリンツが泣いてたとき……、ギュッと抱きしめて慰めたんだよね……?」

 

「「「……えっ!?」」」

 

「だ、だから……、それをすれば良いんじゃ……ないかな……?」

 

「え、い、いや、あ、あの……だな、ユー。

 いったいそれは、どこの誰から聞いた話なんだ……?」

 

「ええっと、それは……その……」

 

 何やら恥ずかしそうな表情で、俺の顔から少しだけ視線を逸らせるユー。

 

 だが俺はそんなことよりも、ユーが言った内容に心が捕われていた。

 

 

 

 いったい誰が何の目的でユーに告げ口したんだよーーーっ!?

 

 

 

 ただでさえ危うい噂が立ちまくっているのに、踏んだり蹴ったりレベルじゃないですよねっ!?

 

 ……って、もしかしてユーがそれを聞いたのは、噂からってことですかっ!?

 

 それならまだ、言い訳が立たなくも……

 

「ちょっと待ってよ先生」

 

「ええ。ユーの言葉は、聞き捨てならないわ」

 

「……はい?」

 

 若干ドスが聞いたような声に驚きながら振る帰る俺。そこには両腕を組んで若干胸を張ったレーベとマックスが、非常に不機嫌そうな顔を浮かべながら俺を睨みつけていた。

 

「プリンツをギュッと抱きしめた……。ユーはそう言ったよね?」

 

「い、いや、それは……」

 

「これは浮気ね。間違いなく浮気よ」

 

「少しくらいは目を瞑る気だったけれど、このままだとどんどん増えていくんじゃないかな?」

 

「……そうね。いくら私でも2号の座を譲る気はないわ」

 

「いやいやいや、いくらなんでも見過ごせない言葉がたくさん……」

 

「「先生は黙っててっ!」」

 

「は、はい……」

 

 ビシリと人差し指で床を指したマックスに頷いた俺は、仕方なく正座をする。

 

「少しくらいは大目に見ようと思ったけれど、いくらなんでも手が早過ぎるよ先生」

 

「レーベの言う通りよ。ここでしっかり歯止めが効くように言い聞かせないと、後々面倒なことになるわね」

 

「い、いや……、だから……その……」

 

「あれ? どうやら先生は僕たちに言い訳をするつもりなのかな?」

 

「そうみたいね。

 けれど、先生は火に油という言葉を……知っているのかしら?」

 

 全く持ってそんな気はないんだけれど、聞く耳くらい持ってくれたって良いんじゃないかなぁっ!?

 

 そうして始まった俺への尋問は、昨日の夜に伊勢と日向から受けたモノよりも段違いなレベルで行われてしまった。

 

 その後、真っ白な灰のように燃え尽きながら、部屋の片隅でガタガタ震えて命ごいをするという現実逃避をしていた姿をユーに目撃されたようなのだが、俺の記憶には全くないのでなかったことにしておいた。

 

 これこそ、現実逃避なんだけどね。

 

 思い出しただけで膝がガクガクと震えてしまうので、思い出さないようにする所存であります。

 

 

 

 ……ある意味、ビスマルク以上でございました。

 

 

 

 

 

 とまぁ、そんなこんなでなんとか立ち直った俺は、ビスマルクが居ない穴を埋めつつ幼稚園の業務を開始した。

 

 授業を行う際、2つに分けていた子供達の班を1つにし、4人を一同にして授業をする。

 

 元々ビスマルク包囲網として考えた案だったので、今の状況ならばこちらの方がやり易い。

 

 正直な話、ビスマルクが居ない方が断然楽なのだが、それを言うとプリンツが拗ねてしまうので黙っておく。

 

 それよりも、俺には少し気になることがあるのだが……

 

「ユー、ちょっと良いか?」

 

「んっ、どうしたの……先生……?」

 

 勉学の授業を少し早めに終え、自由時間で子供たちがくつろいでいる頃、レーベとマックスから少し離れた場所に居たユーに小声で話しかけた。

 

 もちろんこの状況を見計らったのは言うまでもなく、またもや浮気と見なされないように配慮したんだけれどね。

 

「さっきの話なんだけど、プリンツを……その、ギュッとした……ってやつなんだが、いったい誰から聞いたんだ?」

 

「ええっと……それは……」

 

 ユーは人差し指を口元に当てて可愛らしい仕種で「う~ん……」と、考え込んでから、何かを思い出したように両手を小さく叩いた。

 

「そうそう……、確かあれは……」

 

「あーあー、ゆ、ユーちゃん。少しばかり私と一緒に遊ばないですかっ!?」

 

「え、えっと……?」

 

「お、おいおい、プリンツ。ユーは今、俺と話している最中で……」

 

「ユーと大事な用事があるんですっ! ちょっとだけお借りしますっ!」

 

「な、なんなの……です……っ!?」

 

「え、あ、ちょっ……」

 

 まるで人さらいのようにユーを小脇に抱えて走り去ったプリンツは、俺の制止を聞くことなく部屋から出て行った。

 

「……いやいや、なんだよこれ?」

 

 俺の呟きは風に吹き飛ばされるが如く消え去り、部屋の中にぽつんと取り残される形となってしまった。

 

 もちろんレーベとマックスは居るのだが、時折向けられる視線が恐ろし過ぎて気付かない振りをするしかなかったりする。

 

 もう……、尋問は勘弁したいからね……。

 




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次回予告

 久しぶりの幼稚園ではいつも通りの災難続きだった!
でも大丈夫。これが普通だからねっ!

 ということで、幼稚園の業務を終えた主人公。
明石の行方の捜索と周りの視線から逃げるように、ある場所へと向かったのだが……


 艦娘幼稚園 第二部 第四章
 ~明石誘拐事件発生!?~ その12「まな板タイム」

 乞うご期待!

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