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いきなり現れた人物に驚く主人公とビスマルク。
なぜ今更姿を現したのか。そしてその人の言葉に更に驚く2人。
明石の行方が、明らかに……なる?
「いやはや、お待たせし過ぎてすみません。
出張が少し長引いてしまいまして、帰ってくるのが遅れてしまいました」
驚く俺とビスマルクに向けて、優しくゆったりとした声がかけられる。
その声の主は、この鎮守府に居るものならば誰もが知っているであろう人物。
――安西提督、その人であった。
「あ、安西提督……。なぜあなたがこんなところに……っ!?」
「おや、ビスマルクは変なことを言うのですね。
鎮守府内が混乱しようとしているときに、のうのうと過ごしている訳にもいかないでしょう?」
「そ、それはそうかもしれないけれど、私が探しに行ったときには……」
「ええ。ですから、ことを聞きつけた私は急いで帰ってきたのですよ」
安西提督はそう言ってから、ゴホンと咳払いをして俺の顔を見る。
「そして、色々と謝らなければならないことがあります。
お手数ではありますが、私の部屋まできて頂けないでしょうか?」
「え、えっと、それは構わないんですが……」
そうは言ったものの、俺は現在追われる身。
安西提督に捕まったと見なされれば問題はないのかもしれないが、まさかこれが罠という可能性もある
安易な行動はすぐ死に直結する以上、疑うのは当たり前。
だが、この部屋の入口である扉は安西提督に塞がれてしまい、簡単には逃げ出せると思えない。そりゃあ、ビスマルクに頼めば無理ではないだろうけれど、それをした場合は確実に重い罪が加算してしまうだろう。
もちろん諦めた訳ではないのだが、状況はかなり厳しいと言える。
さて、どうするべきなのか……と、俺はビスマルクの顔を伺い見た。
「……提督。それはつまり、先生を拘束するという意味かしら?」
鋭い視線を安西提督に向けて威嚇するビスマルク。
まるでここが深海棲艦と対峙する海上であるかのような雰囲気に、俺は恐れと憧れが混じったような思いが胸に沸き上がる。
「いえいえ、そうではありません。
今回のことは……既に終わっていたのですよ」
「「………………え?」」
言葉の意味が理解できず、俺とビスマルクは素っ頓狂な声をあげてしまう。
そんな俺たちを見て、安西提督はニッコリと笑みを浮かべながらこう言った。
「全ては……私の責任なのです」
非常に申し訳なさそうに。
そして、辛く悲しい表情で――安西提督は頭を下げた。
佐世保に初めてきたときに立ち寄った部屋。
安西提督が普段色々な作業をしている指令室に、俺とビスマルクはやってきた。
部屋の中には既に伊勢と日向がスタンバイしており、その姿を確認した瞬間罠だと思って身構えたものの、安西提督が「2人があなたたちを捕まえるということは一切ありませんので、安心して下さい」と言うのを聞いて、恐る恐る入室した。
「………………」
しかし、伊勢の方は未だ納得ができていないという風に俺の顔をジッと睨みつけている。
安西提督に命令されたので仕方なく従っているのだろうが、このままの状態が続くとなると精神的に少しきつい。
そりゃあ、牢屋に閉じ込められた挙句に怪しい男の視線に悩まされるよりかは断然マシではあるが、立て続けに不幸にまみれてしまうと胃の方が心配である。
もちろん、いつものことなので耐性はあるのだけれど、心に余裕がない状態で繰り返されてしまうと穴が開くのも考えられるだけに、そろそろ安心したいところなんだよね。
「さて、それでは説明いたしましょう。各自楽にして下さい」
小さく敬礼をした俺たちは、立ったまま休めの体勢を取る。しかし安西提督は俺とビスマルクにだけソファーへ座るように指示し、互いの顔を見合ってからゆっくりと腰を下ろした。
伊勢と日向は立ったままなんだけれど、更に視線がきつくなった気がするんだよなぁ。
とりあえず怖いのでそちらの方に顔を向けないでおく。見なければ分からないと決め込む方が無難だろう。
後々怖いかもしれないけれど、胃に穴が開くことだけは避けておきたいし。
不能に続いて胃潰瘍とは、俺も全く運がない。
……うん。いつものことだけどさ。
「それではまず、先生の件なのですが……」
言って、安西提督はなぜか椅子から立ち上がり、机の上に立った
「……は?」
いやいやいや、何をしているんですかね。
行儀が悪いというか、結構高そうな机の上に靴を履いて……いないみたいだけれど、さすがに見ていられなかったのか伊勢と日向がダッシュで安西提督に駆け寄った。
「て、提督! な、何をしているんですかっ!?」
「さすがにこれはないぞ提督。いくらなんでもやり過ぎだと思う」
「いいえ。先生に謝るにはこれしかないのですっ!」
止めようとする伊勢と日向の手を振りほどこうとする安西提督ではあるが、さすがに2人の戦艦級には敵わないのか、殆ど身動きができないようだ。
というか、机の上に登って謝るって……何をするつもりなんだ……?
「離しなさいっ! 全身全霊をもってここから床に向かって五体投地で謝罪するしかないのです……っ!」
「「「………………はい?」」」
安西提督の叫ぶ声に、俺たちは一様に驚きの顔を浮かべ……って、ちょっと待て。
五体投地って、分厚い教本で軽々と撲殺しちゃうような四角い顔の神官が、毎朝地面に向かって神に祈りをささげている……尋常じゃないアレのことですよね?
「「「……いやいやいや、ないない。それはない」」」
そして俺たちは同時に右手を胸の前に立て、高速で有り得ないと振りまくったのがシンクロしたのは、奇跡でも何でもないだろう。
安西提督があんな感じになったら……マジで怖いんで止めて下さいね……?
伊勢に日向、そして俺とビスマルクも加わって安西提督を説得して落ち着かせ、なんとか椅子に座らせたのはそれから15分ほど経った後だった。
「ふぅ……ふぅ……。
いやはや、取り乱してしまい申し訳ありません……」
椅子に座ったまま俺たちに頭を下げる安西提督だが、再度机の上に登らないかと気が気でない俺たちはいつでもダッシュできるように注意を払っていたため、ろくな返事ができなかった。
「みんなに迷惑をかける訳にもいかないのでこのまま説明をさせてもらいます……が、既に全てが終わっていたと言えなくもありません」
大きくため息を吐く安西提督の仕草に、俺たちは得も知れぬ不安を感じてゴクリと唾を飲み込んだ。
「おそらくみんなが一番気になっているのは、明石がどうなったのかでしょう。
まずはそれについてお話しいたしますが、驚かずに最後まで聞いて下さい……」
軽く咳払いをした安西提督は、苦悶の表情を浮かべながら両肘を机の上に置いて語り始めた。
「明石が現在どこに居るか……。それは私にも分かりません。
ただし、誰が連れ去ったのかは分かっていますし、許可も出しています」
「……許可……ですか?」
伊勢の問いかけに頷いた安西提督は、そのまま言葉を続けていく。
「数日前から出張で呉に居た私に、1人の艦娘がやってきたのです。
彼女はある者の依頼によって、明石の身柄を暫く預からせて欲しいと言いました」
「そ、それに対して、提督は許可を出したと……?」
「本来ならば出す気はなかったのですが……、この紙を渡された以上、頷かざるを得なかった……」
言って、安西提督は俺たちに見えるように1枚の紙をポケットから取り出した。
「「「……っ!?」」」
見覚えのある紙に、俺とビスマルクは驚きを隠せない。
また一方で伊勢も日向も同じように驚き、言葉を失っていた。
「『独立型艦娘機構 大鯨』
我々提督……いや、我が国の鎮守府に属する者にとって何より恐れるべき存在。
本来ならば出会うはずがない相手ですが、明石はその標的になってしまったのです……」
そう言い終えた安西提督は、目尻を押さえながら大きくため息を吐いて俯いた。
見れば伊勢も日向も、そしてビスマルクさえも視線が合わないように顔を逸らして……って、思い当たるふしがありまくりってことですよね?
そりゃまぁ、俺の不能である原因も明石なんだし、龍驤から聞いていた内容も色々と問題がありそうだったから、どこかで恨みを買ったと考えられる。しかし、そうであったとしても、明石の部屋でビスマルクが言ったように処刑されてしまうのは、いささかやり過ぎのような気もするんだけれど……。
「提督……。大鯨が明石を処刑する理由について……お聞きになられたのですか?」
日向の問いかけに首を傾げながら安西提督が顔をあげた。
「あ、ああ。少し勘違いをしているようですね」
「……?」
「私が許可を出したのは、明石の身柄を暫く預かっても良いということです。
もし処刑と聞いていたのなら、何が何でも止めるつもりでした」
「そ、それじゃあ……」
「ええ。明石の命までは取らない……と、思われます」
「そっか……」
ふぅ……と、ため息を吐いた伊勢は大きく肩を下ろす。だが、完全には安心できていないのか、顔色はまだ少し青っぽく見える。
「なるほどね。これで明石の部屋で手に入れた紙の理由が分かったわ」
ニッコリと笑いながら俺に言うビスマルク。
そして、俺を覗く安西提督、伊勢、日向の3人はまたもや驚きの表情でこちらを向いた。
……空気、完全に読まないよね。
俺は思いっきりわざとらしくため息を吐いてから、ポケットに入れていた紙を取り出した。
「そ、それは……、提督が持っているのと同じ……っ!?」
「いえ、安西提督が持っている名刺とは違いますけど、内容は似てますね」
「ど、どこで手に入れたのですか……っ!?」
「明石の部屋にあった机……です」
「………………」
伊勢と安西提督は俺に問いかけ、日向は無言でこちらを見つめていた。
「つ、机って……、あのボロボロになってたあの……っ!?」
「ええ。あの引き出しの中に入ってました」
「……な、何をやってたのよ調査班はっ!」
「伊勢、そう言ってやるな。彼等は彼等なりに頑張ってくれたんだ」
「で、でも後から入った先生たちに見つけられるなんて……っ!」
「どちらにしても安西提督から説明を聞けたんだから、よしとするべきだ」
「ひゅ、日向は悔しくないのっ!?」
尋問されたときと同じように詰め寄る伊勢だが、日向は全くうろたえることなくマイペースに首を左右に振って両手の平を向けた。
「悔しいという気持ちはないな。むしろ、先生が有能過ぎて恐ろしい……と、感じてしまうかな」
「……っ!」
伊勢は日向の言葉を聞いて何を言ってもダメだと感じたのか、真っ赤になった顔を俺に向けた。
うおぉ……。滅茶苦茶睨まれているんですけど。
「……っ!」
するとその視線に勘付いたビスマルクが、とんでもない顔で伊勢を見る。
「……っ、……っ!」
「~~っ!」
そして無言の睨み合いが始まるや否や、2人は立ち上がってどんどん近づき、手を伸ばせば触れ合えるくらいの距離になっていた。
「あなたのその目……、先生には向けさせないわよ」
「何よ……、やる気……っ!?」
メンチビームがぶつかり合い、今にも殴り合いが始まってしまいそうな状況を見過ごせるはずもなく、俺は急いで2人を止めるべくソファーから立ち上がろうとしたのだが、
「2人とも……止めなさい」
腹に響くような安西提督の言葉が部屋に響いた瞬間、ビスマルクと伊勢の目が咄嗟に開かれ、額の辺りに大量の汗が噴き出した。
怒鳴った訳でもなく、ただ冷静沈着な言葉であるにもかかわらず、安西提督の声は遠くに居る人にも届きそうに感じる。そして更に俺の頭の中に浮かんだのは、逆らった時点でヤバいことになるのでは……という、恐れのようなモノだった。
「……きょ、興が醒めたわね」
「ふ、ふん……。今日のところは勘弁してあげるわっ」
そうは言うものの、二人の膝はガクガクと震え、表情は明らかに焦りの色にまみれている。
な、なるほど……。これが安西提督なのか……。
長く提督として佐世保を支えていたというだけのことはあるし、純粋に凄いと思う。
……なので、俺の膝もガクガクと震えているのはただの武者ぶるいと言うことにしておいて下さいね?
※余談ではありますが、現在ツイッターの方でとある艦これ二次小説をまったり連載中です。
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次回予告
伊勢とビスマルクの険悪な雰囲気が解かれた後。
安西提督は主人公にメッセージカードについて問う。
更には主人公が明石の行方を安西提督に問おうとするのだが……
艦娘幼稚園 第二部 第四章
~明石誘拐事件発生!?~ その10「ひとまずは一見落着か?」
乞うご期待!
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