艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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 伊勢と日向、そして主人公が言葉のバトルで戦うが、分が悪くなるのは予想通り。
しかし、話を聞くうちにとんでもない状態になってきて……?

 遂に先生、年貢の納め時なのかっ!?



 余談ではありますが……
今章予定よりもはるかに話数が増えております。
更に別のネタまで降ってきちゃって……楽しいです(ぉ

 ということで、水面下で別の動きもしていますので、後々にでも。
休むとか言ってたけど……、アレは嘘だ(吐血


その4「遂に危うし!?」

 

 牢屋から日向に連れだされ、小さめの部屋に入ってからのこと。

 

 ハッキリ言って、今の状況は変過ぎる。

 

「ところで一つ、聞いても良いだろうか?」

 

 しかし日向はそんなことを全く気にする素振りも見せず、俺に向かって話しかけてきた。

 

「は、はい……」

 

 ちなみに頷くことができない俺は、視線を上に向けながら返事をする。

 

 前門の虎に、後門の狼。

 

 とは言っても、恐ろしいのは目の前に居る伊勢の方だけではあるが。

 

 ちなみに後ろの日向は、未だに俺の頭のてっぺんに胸を預けている格好である。

 

 ――そう、ここは楽園です。

 

 おっぱい星人としては、ここで死んでも悔いはない。

 

 例え、これからどんなことが起きたとしても……

 

「キミはDTだよな?」

 

「いきなり何を聞くんですか日向はっ!?」

 

 前言撤回。

 

 さすがにこの質問は恥ずかし過ぎでしょうがっ!

 

「違うのか?」

 

「声のニュアンスが明らかにおかしいって感じに聞こえますけど、俺ってそんな風に見えるんですかっ!?」

 

「私の直感だが……、そうなるな」

 

「直感だけで恐ろしい質問しないで下さいよっ!」

 

「何だ、この質問がそんなに恐ろしいのか?」

 

「そ、それは……その……」

 

 思わずしどろもどろになってしまう俺。

 

 日向の顔を見ることができないが、間違いなくニヤニヤしているのだと予想できる。

 

 この質問に関しては、どう返答しても突っ込まれた時点で負けな気がするんだよね。

 

「………………」

 

 ちなみに前門の虎である伊勢は、未だに俺の顔を睨みつけている。

 

 先程と比べると、ほんのりと頬が赤いのは……気のせいだということにしておこう。

 

 多分だが、俺から突っ込みを入れた時点で負けだと思うから。

 

 つーか、完璧に詰んでんじゃねぇか。

 

「まぁ、キミの反応で答えは分かったようなものだがな」

 

「それじゃあもう、解放して下さいよ……」

 

「それは断る。

 こんなに面白いキミを離すのは、少々勿体ないからな」

 

 完全に遊ばれてるじゃん俺。

 

 やっぱり日向に惚れられているなんて妄想は、早めに切り捨てておいた方が良さそうである。

 

 いや、頭からそんな訳はないと決めかかっていたけれど。

 

「……あのさ。

 そろそろ尋問の方、始めちゃわないかな……?」

 

「ふむ……。そうだな」

 

 背筋が凍えてしまいそうな視線を向けた伊勢に、日向は少し残念そうな声で返事をする。

 

 話が逸れまくっていたので俺としては助かるのだが、頭の感触だけは名残惜しい。

 

 しかし、ここは心を鬼にしてでも無実であることを証明し、牢屋に閉じ込められることは避けなければならないのだ。

 

 そうじゃないと、またあの男が……俺の……うぐぐっ。

 

 マジで勘弁して欲しいですって!

 

「ではそろそろ、本題に入るとするか」

 

 日向の声が聞こえると同時に、頭にかかっていた重みがスッ……と、消えてしまった。

 

 うむむ……、残念だが仕方がない。

 

 身の安全を確保してから、もう一度してもらえるように頼んでみるか。

 

 ………………。

 

 あっ、嘘です。冗談ですよ?

 

 誰に向かってか分からない弁解をしている間に、日向は椅子へと戻って腰を下ろす。

 

 伊勢の大きなため息が聞こえ、俺の尋問が開始された。

 

 

 

 

 

「まず最初に、どうして先生は明石の部屋に居たのかな?」

 

 机に向かい合うように座った伊勢が、真剣な目を俺に向けて問いかける。

 

 イメージとしては刑事ドラマで良くある尋問のような感じ……というか、ガチである。

 

 さすがの俺も、こんな状況は想定外。もう少し柔らかいと思っていただけに、心臓の音がバクバクと鳴っていた。

 

「え、ええっと……、さっきも言いましたけど、俺のEDを治す方法が見つかっていないかなぁと思って会いに行ったんですが……」

 

「ふむ。理屈は通っているが、素直に納得することはできないな」

 

「そ、それはどうして……?」

 

 日向の言葉に、俺は首を傾げながら問い返す。

 

「明石が先生に連絡を取ったとか、前もって約束をしていたのならまだ分かるのだが、そうでない場合、キミが嘘をついている可能性も捨てきれなくなるんだ」

 

「そ、それは……」

 

 日向が言うことも一理あるかもしれない。

 

 しかし、嘘をつく可能性と言われてしまった場合、全てに対して当てはまると思うんだよなぁ。

 

 どれだけ説明しても、嘘だと決めつけられたら怪しく聞こえてしまうのだ。

 

 もちろん、俺は2人嘘を言っているつもりはないし、隠していることもない。

 

 そうしないと牢屋に舞い戻ることになりそうだし、ケツが非常に危うくなる。

 

 ともあれ、どうにかして俺の心証を良くしないと、何を言ってもダメなんだろう。

 

「ここで言い返せない以上、やっぱり先生が犯人なんじゃないっ!」

 

「い、いくらなんでも早計過ぎですよっ!」

 

「それじゃあ他に、あんなことをするヤツがいるってのっ!?」

 

「そ、そんなこと、俺に分かる訳が……」

 

 伊勢の言葉が俺を犯人だと決めつけるように聞こえ、思わず強い口調で言い返してしまう。

 

 しかしこれでは火に油を注いでいるのと同じであり、売り言葉に買い言葉では話は一向に進まないどころか、更に俺の立場を悪化させてしまった。

 

 そして伊勢の顔は更に険しくなり、今にも俺に噛み付こうと歯をガチガチと開閉させて……って、犬かよ。

 

 だが、仮にも伊勢は戦艦クラス。日向の抱きつきからも分かる通り、俺の力では太刀打ちできるとは思えない。

 

「まぁ、そう焦るな。

 伊勢の気持ちも分からなくないが、さしたる証拠がない以上決めつける訳にもいかないだろう?」

 

「だから、それは先生が明石の部屋に居た時点で……っ!」

 

「部屋に居たから犯人だとするのなら、私たちだってその可能性があることになるぞ?」

 

「私たちより先に、先生が居たじゃない!」

 

「犯人は現場に舞い戻るという言葉もあるのだが?」

 

「そ、それじゃあただの水かけ論じゃない!」

 

 今度は日向に噛みつこうとする伊勢。

 

 しかし、伊勢の言った通りこのままだと完全に水かけ論にしかならないのだが、日向はいったいどちらの味方なのだろうか?

 

 さっきは俺を追い詰めようとしていたし、今度は伊勢を追いこんでいる。

 

 尋問を行う側である日向の立場を考えれば、いくら公平にしようと思っても伊勢の方に寄ってしまうはずなのだが……。

 

 いや、むしろ俺としてはありがたいんだけどさ。

 

 なんかこう……、嫌な予感がするのはどうしてだろうか。

 

「とにかく……だ。未だ状況が詳しく分かっていない以上、犯人が誰かと決めつけるよりも先に情報を得る方が大事ではないか?」

 

「そ、それはそうだけど……」

 

 日向の言葉に少し不機嫌な顔を浮かべつつも頷く伊勢。

 

 落ち着きを取り戻してくれたのは何よりだが、少々聞き捨てならない言葉が聞こえた気がする。

 

「あ、あの……。ちょっとだけ良いですか?」

 

「ん、どうした?」

 

「今、状況が詳しく分かっていないって言ってませんでしたか?」

 

「ああ、確かにそう言ったな」

 

「……えっと、俺が牢屋に入れられてから、そこそこ時間が経ってます……よね?」

 

「んー……。時間を見る限り……そうだな」

 

 言って、日向は壁にかけられている時計に眼をやってから、コクリと頷き俺の方へと向き直る。

 

「おおよそ3時間くらい経っているな」

 

「………………」

 

 それを聞いた俺は、2人に向かって大きく首を傾げる。

 

「……何よ?」

 

 不審そうに問い掛ける伊勢だが、これを言ったら機嫌が悪くなりそうなんだよなぁ。

 

 でも、言わない訳にもいかないし、話が前に……進まないんだろうか?

 

 まぁ、なるようになれ……だな。

 

「えっと……、3時間が経って、未だに状況を把握していないってことなんですかね?」

 

「何よ。文句でもあるのっ!?」

 

「い、いや……まぁ、そうなんですけど」

 

「……なっ!?」

 

 目を大きく開けた伊勢はすぐにブルブルと肩を震わせて、怒りを抑えようと……せずに立ち上がった。

 

「あんた自分の立場を分かって言ってるのっ!?」

 

 伊勢は机を思い切り叩き、部屋の中に激しい音が鳴り響く。

 

 そしてそのまま俺の方へと近づいてきた伊勢は、胸倉を掴もうと手を伸ばしたのだが、

 

「待つんだ、伊勢」

 

 日向が低く威圧感のある声で制止させ、伊勢が再度机を叩いてから大きな声をあげた。

 

「なんでよ日向っ! 馬鹿にされたのにどうして怒らないのよっ!」

 

「……どうして馬鹿にされたのだと思うのだ?」

 

「だって、先生は私たちのことを無能呼ばわりに……っ!」

 

「だが、実際のところはその通りだぞ?」

 

「……ぐっ!」

 

 ギリッ……と、強く歯ぎしりをする音が聞こえると、伊勢は俺達から離れるように壁の方へと向かい拳を振り上げた。

 

 

 

 ゴンッ!

 

 

 

 伊勢の拳が壁に叩きつけられ、地震が起きたかのような振動と腹に響くような低い音が襲ってくる。

 

 怖ぇ……。戦艦クラスマジ怖ぇ……っ!

 

 さすがに聞き捨てならないと思って問いただしてみたけれど、日向が止めてくれなかったら俺って死んじゃってたんじゃないだろうか。

 

 いくらなんでもあの拳を俺の顔面に叩きつけられていたら……。

 

 完全にブラックホールのような顔になっちまうじゃねぇか。

 

 俺は悪魔超人にはなりたくないし、普通に死んでしまう。

 

 いくらプリンツの踏みつけを食らって耐えた俺とは言え、今回ばかりは生き残れそうとは思えないぞ……。

 

「伊勢……」

 

「……なによっ!」

 

 未だ拳を壁にめり込ませた伊勢に向かって日向が声をかけると、無茶苦茶不機嫌そうな顔でこちらに振り返った。

 

 その顔はまさに悪鬼羅刹。

 

 子供たち……、特に天龍や潮が見たら、おもらし確定コースである。

 

 立ったまま『じょばーーー』って感じで。

 

 ………………。

 

 掃除、大変だから止めて欲しいです。

 

 いやまぁ、可愛いから許すけど。

 

 ………………。

 

 あれ……、これって、危ない思想じゃ……ないよね?

 

「壁の修理代、請求されても知らないぞ?」

 

「う”……っ!」

 

 俺の思想はさておいて、日向の言葉に顔を青ざめさせる伊勢。

 

 冷や汗を額から頬に垂らしながら、伊勢はゆっくりと壁の方へと顔を向ける。

 

 そこには拳の形をした穴から、いくつものひび割れが広がっており、

 

 どう考えても隠し通せるようなモノには見えなかった。

 

「え、えっと……これは、その……」

 

 背中を向けたままの伊勢の声が完全に焦りまくっているが、なかったことにするなんて無理な話である。

 

「はぁ……」

 

 そんな伊勢の姿を見た日向は大きくため息を吐き、

 

「分かった。こうしよう……」

 

 落ち込んでいた伊勢の肩に手を置いて、優しく声をかけた。

 

「この穴は先生がやったということにしておけば問題あるまい」

 

「あっ……、確かにその通りよねっ!」

 

 驚きながら振り返った伊勢は満面の笑みを浮かべて日向に抱きつこうとする……が、

 

「いやいやいや、ちょっと待ってくれないかなっ!?」

 

「……む、どうしたんだ?」

 

「いくらなんでもそれは無茶苦茶ってもんでしょう! 普通の人間である俺が、どうやってそんな穴を開けられるんですかっ!」

 

「そこはまぁ……、気合論でだな」

 

「無理にも程があるでしょうっ! どう考えても通るとは思えませんっ!」

 

 そう言いながらもなぜか通りそうな気がしてしまうのだが、通っちゃったら通っちゃったらで問題なんだけど。

 

 やってもいないことを俺のせいにするなんてマジで止めて欲しいし、そもそも牢屋に入れられていること自体が間違いなんだから。

 

「別に良いじゃん。どうせこのままだったら軍法会議で処刑されちゃうんだし一緒でしょ?」

 

「納得できる訳ないでしょうがーーーっ!」

 

 全く悪そびれることのない伊勢の言葉にプッツンしちゃった俺は大きく叫んだのだが、

 

 

 

 処刑って……マジですか……っ!?

 

 

 

 ――と、一気に背筋が凍りついてしまった俺は、すぐに冷静さを取り戻すのであった。

 

 これって、完全に大ピンチってやつなんだけど……って、冷静に分析している余裕はないんですけどねっ!

 




次回予告

 まさに絶体絶命。どうなる主人公。
そんな感じの次回予告が明けた後、主人公は牢屋に戻されていた。

 すると、牢屋の外から声がする。
それは敵か味方なのか。それともただの……?


 艦娘幼稚園 第二部 第四章
 ~明石誘拐事件発生!?~ その5「無鉄砲な救世主」

 乞うご期待!

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