艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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 ちっちゃい那珂ちゃんいじくりプレイ……ではなく、ちょっとじゃれあった後の事です。
那珂ちゃんの希望によって元に戻る方法を探す事になった青葉は、まず一番にお願いをしなければならない方が居る場所へと向かったのですが……


その3「許可申請の代償?」

 

「うー……那珂ちゃん暫く、立ち直れないかも……」

 

 ベッドの上にうつ伏せで倒れる那珂と、満面の笑みでキラキラモードの青葉と神通。傍から見れば憲兵さんに通報されちゃうかもしれませんけど、可愛いは正義ですから仕方ないですよねー。

 

「い、いやはや、青葉ったらテンションがあがり過ぎちゃって……反省反省っ」

 

「ご、ごめんね那珂ちゃん。私ったら、つい那珂ちゃんが可愛過ぎちゃって……」

 

「うぅぅ……那珂ちゃんはそんな言葉に騙されたりしないもんねっ!」

 

 うつ伏せのまま顔だけこちらに向けて、尻尾を踏まれた猫みたいに怒る那珂なんですが、そんな仕草も可愛いんですよねー。

 

 もう一回だけ……いや、何度もプニプニしちゃって良いでしょうか……?

 

「あ、青葉ちゃんの顔が危険な雰囲気を醸し出している気がする……」

 

「き、キノセイデスヨ?」

 

「気のせいじゃないよねっ!?」

 

 即座に立ち上がって指を突きつけられたので、口笛を吹きながら知らんぷりをしちゃいます。

 

「……口笛っぽくしているけど、全然吹けてないよ?」

 

「そう言えば、青葉って口笛吹けないんでしたっ!」

 

「動揺し過ぎですね……青葉さん……」

 

 いやはや面目ない……

 

 しかしまぁ、こんな感じで漫才をしていたら時間がいくらあっても足りませんから、話を戻す事にしましょう。

 

「確認なんですけど、那珂ちゃんは元の身体に戻りたいんですよね?」

 

「もちろんだよぉっ! 那珂ちゃんこのままだったら、アイドルとして活動できないんだからっ!」

 

「残念です……神通はこのままの那珂ちゃんが素敵だと思うんですけど……」

 

「可愛いかもしれないけど、やっぱりダメなのっ!」

 

 神通に向かてプンプンと怒る那珂ですけど、子供の身体でそれはやっぱり反則だと思います。

 

 そう考えると、確かにこのままでは危険かもしれませんねー。可愛過ぎると暴走しちゃいますし。

 

 主に……青葉と神通だけかもしれませんけど、下手をすれば幼稚園の先生も危険な行動をしかねませんし。

 

 口ではロリコンじゃないとか言っていますけど、子供達を見る目が最近いやらしく感じるんですよねー。

 

「だから、どうにかして元に戻る方法を探して欲しいのっ!」

 

「ふむー……まぁ、乗り掛かった船ですから、できるだけやってみますけど……」

 

 そうは言ったものの子供になってしまった身体を元に戻す方法なんて想像もつきませんし、それを探し出すという行為自体に利点が無いんですよねー。

 

 そりゃあ、那珂は同じ鎮守府に居る仲間ですから助けてあげたいって気持ちはありますけど、青葉は取材もありますし……って、この言い方だと何だか薄情過ぎる気がしちゃいますっ!?

 

 うむむ、このままだと青葉のイメージがダウンしっぱなしですけど、取材の時間を削られるのはちょっぴり痛いんですよね……

 

「ご、ごめんね……那珂ちゃん。私があんな方法を使ったばっかりに……」

 

「ううん、そんなこと無いよ。那珂ちゃんはあのままだったら轟沈していたかもしれないんだから、神通ちゃんは悪くないからねっ」

 

 そう言い合った二人は、ベッドの上で優しく抱き合います……って、別にいやらしい意味じゃないですから興奮しないように。

 

 仲睦まじい光景なんです。ただちょっと、身長のバランスがちぐはぐですけど。

 

 これはこれでネタにはなりそうな気がしますが……って、ちょっと待って下さい。

 

 確か那珂が子供の姿になったのは、轟沈寸前だったのを無理やり直そうと応急修理女神を使用したのが原因である……と、考えられていますよね。

 

 でも実際のところ、青葉達が戦闘中に轟沈しかけても問題なく応急修理女神は使用されます。もちろん、子供化なんてしちゃいません。

 

 なのに、那珂がそうなったって事は、やっぱり何か原因がある筈なんですけど……

 

「ちょっと質問しても良いですか?」

 

「え、あ、はい。なんでしょうか……?」

 

「那珂ちゃんに応急修理女神を使用したのって、攻撃を食らった時じゃなかったですよね?」

 

「ええ、轟沈寸前の那珂ちゃんをドッグまで曳航して、高速修復材では回復が見込めないから……無理矢理使用しました」

 

「無理矢理って……そんな事、できるんですか?」

 

「普通は無理みたいですけど、ある艦娘からその方法を聞いた事があって……」

 

「ある艦娘……?」

 

「はい。佐世保に居る、明石さんという艦娘から聞いたのです」

 

 そう言った神通は、小さくため息を吐いてから話を続けます。

 

「本来は使用自体が無理らしいのですが、どうしようもない緊急時にのみこの方法が使えると……」

 

「はぁ……そんな事ができるんですねぇ……」

 

 そう呟きながら、青葉はピンと思いついちゃいました。

 

 そう言えば佐世保から来た榛名を除く比叡達って、元は青葉達と同じ普通の艦娘だったみたいですよね。

 

 もしかすると今回の那珂の件は同じ現象によるモノなのかもしれません。そう考えたら辻褄が合うんじゃないでしょうか。

 

 つまり、これらの件について取材を進めれば、子供化する事について色々な情報を手に入れられるかもしれません。もしそれが上手くいけば……

 

 

 

 自由に子供と大人の身体を行き来できる方法が手に入るかもしれないんですよっ!

 

 そんな事が可能になったったら、青葉は艦娘ノーベル賞みたいなのをゲットできちゃうかもしれません!

 

 いやむしろ、賞なんかよりもっと凄い事が……

 

 仮にその方法が簡単にできた暁には、大儲けできちゃう可能性も……

 

 そうなったら、青葉は一気に大富豪ですっ! もう取材費に悩む必要もありませんっ!

 

 そして、ついには先生に……って、これは別に……その、言葉のあやですっ!

 

 ようしっ、青葉頑張っちゃいますよっ!

 

「分かりましたっ!」

 

「「ふえっ!?」」

 

 勢いよく立ち上がりながら叫んじゃったせいで、神通と那珂がビックリしちゃっていました。

 

「不肖青葉、那珂ちゃんの身体を元に戻す方法を探る為、一肌でも二肌でも脱いじゃいましょうっ!」

 

「ほ、本当にっ!?」

 

「二肌はいらないと思いますが……」

 

 神通のツッコミはスルーしておきますが、那珂は目をキラキラさせて喜んでいるみたいです。

 

「そ、それじゃあ、青葉ちゃん。宜しくお願いしますっ!」

 

「了解ですっ! 青葉にドーンと任しちゃってくださいっ!」

 

 全くアテは無いですけど、こういうのは勢いが大事なんですから……と、青葉は自分の胸を思いっきり拳で叩きました。

 

「……げふぅ」

 

 つ、強く叩き過ぎて……むせちゃいました……

 

「い、一気に那珂ちゃん、不安になっちゃったんだけど……」

 

「き、キノセイデスヨ……?」

 

「本日二度目ですよね……それ……」

 

 さすがに今度の神通のツッコミには、青葉も愛想笑いを浮かべるしかできなかったですよ……

 

 あは、あはははは……

 

 

 

 

 

 ――という事で、神通達の部屋から出た青葉はとある場所へと向かいました。

 

 もちろん真っ先に向かいたいのは佐世保なんですけど、青葉も舞鶴鎮守府に所属する艦娘である以上、無断でお出かけという訳にもいきません。

 

 ならば向かう先は、もうお分かりですね。

 

 舞鶴鎮守府の最高司令官、元帥に佐世保への取材遠征を直談判です。もちろん応急修理女神を使用した件などの話も聞いてみたいですし、幼稚園の設立者ですから何かしらの情報を持っている可能性もありますよねー。

 

 これでいきなり治す方法を知っていると言われちゃったら佐世保への取材がお釈迦になっちゃいますけど、それはそれで手っ取り早く事が済みますから別の取材ができて問題ナッシング。

 

 どちらにしてもそれなりに良いネタは揃いそうですし、あの目的が達成できるかもしれません。

 

 そうなれば、青葉の株とマネーはどんどん増え……明るい未来が待っていますっ!

 

 そして先生との仲も……って、何を考えているんですか青葉はっ!

 

「おっと……危うく目的の場所を通り過ぎるところでした」

 

 考え事をしていた性で、元帥がいつもいる指令室の扉を見落とすところでした。

 

 集中過ぎるのもたまに傷ですけど、こればっかりは仕方ありません。取材には必要ですからねー。

 

 ――と、そろそろ考え込むのは止めにして、元帥にちゃっちゃと話をつけちゃいましょうかー。

 

 

 

 コンコンッ……

 

 

 

「開いてるよー」

 

 扉越しに元帥の許可が出たので、さっそく中に入っちゃいますね。

 

 ではでは、元帥に向かって取材開始ですっ!

 

「失礼しまーすっ」

 

「おや、青葉がここに来るなんて久しぶりじゃないか。いったいどうしたのかな?」

 

「ちょっとばかり元帥にお願いがありまして……」

 

「お願い……? ふむ、まぁ聞いてみようかな」

 

 元帥は椅子に座ったままソファーを指差したので、頭を下げてから座る事にしました。

 

「それで、いったいどんなお願いなのかな?」

 

「それについてなんですが、まず聞きたい事があるんですけど……」

 

 青葉の声を聞いた元帥は考え込むように頭を傾げましたが、何も思いつかなかったのか、青葉に問いかけてきました。

 

「聞きたい事ってなんだろう?」

 

「えっとですね、昨日の那珂についての事なんですが……」

 

「あぁ、アレの事かぁ……。青葉ったらさすがに耳が早いねぇ」

 

「情報戦は青葉の得意分野ですからねー。もちろん、今現在那珂がどうなっているかも確認済みですよ」

 

「なるほどね。それで僕に話を聞きに来たって事か」

 

「そうなんです。ですけど、ただ単に聞きに来た訳でもないんです」

 

「……と、言うと?」

 

「神通や那珂に頼まれたんですよ。子供化した身体を元に戻したいって」

 

「それを……僕に聞きに来たって事?」

 

「単刀直入に言えばそうですけど、元帥はその方法をご存じないですよね?」

 

 青葉の言葉を聞いて苦笑を浮かべた元帥は、小さくため息を吐いてから椅子に腰掛けました。

 

「その通りだね。残念ながら僕は、子供化してしまった艦娘を元に戻す方法は分からないよ」

 

 少し申し訳なさそうに言った元帥が、両手を上げて背伸びをしました。長い付き合いがあるから分かる事なんですけど、この動きは元帥が困っている時にやっちゃう仕草なんですよね。

 

「それで、その事が本命って訳じゃないんでしょ?」

 

「ありゃ、やっぱり分かっちゃいます?」

 

「そりゃあ、そうだろう。僕が那珂を直す方法を知っていたのなら、今現在子供の姿をしている訳が無い。青葉ならそれくらいの事を予想できないとは考えにくいからね」

 

「いやぁ……褒めても何にも出ないですよ?」」

 

「えー、そうなの? ちょっとしたお礼とか言って、新しい写真とか分けてくれると嬉しいんだけどなー」

 

 ニヤニヤと笑みを浮かべながら青葉の顔を見ている元帥ですけど、この人は全く懲りていませんよね。

 

 こういう事を言っちゃうと、後でこってりと秘書艦に絞られちゃうのが分からないのでしょうか?

 

「新作が入ったら優先的にお譲りするのは構わないんですが、元帥にお勧めできるモノは入ってきてないんですよ」

 

「そうなんだ……」

 

 本当に残念そうな表情を浮かべた元帥はガックリと肩を落としてため息を吐いていました。

 

 どれだけ期待していたんですか……この人は……

 

「――っと、話が逸れちゃいましたけど、本命の方へ移っても宜しいです?」

 

「あ、あぁ。構わないよ」

 

 元帥の返事を聞いた青葉はゴホンと咳払いをしてから、姿勢を正してお願いをします。

 

「那珂の身体を治す方法を知るために、青葉に遠征許可を下さい」

 

「おっけー。許可するよ」

 

「早っ!」

 

 さすがに即答されるとは思っていなかっただけに驚きましたけど、そんなに簡単に返事をしちゃって大丈夫なんでしょうか……?

 

 一応青葉も艦娘な訳ですから、遠征とか出撃とか演習とか……色々あるんですけどねぇ。

 

 それとももしかして、役に立たない艦娘のレッテルが既に貼られちゃっているとかっ!?

 

 そうだったら青葉、思いっきり泣いちゃいますよっ!

 

「那珂が困っているのを見過ごせないからね。僕の方でも色々と調べるように、高雄にお願いしていたところなんだよ」

 

「え、あ……そうだったんですか」

 

 言われてみれば、常時元帥の傍にいる秘書艦の姿が見えない事に気づきました。

 

 青葉ったら集中力が散漫になっていましたね。これはジャーナリストとして失敗しちゃっています。

 

「だから、青葉の申し出は非常に嬉しいんだよ。他にも動いてくれる人や艦娘がいれば助かるんだけど、鎮守府の運営上それも難しいからさ……」

 

 そう言った元帥は目尻を指で押さえながら、首をコキコキと鳴らしていました。よく見てみると元帥の目の下は薄らと隈ができていて、あまり寝ていないのではないかと伺えます。

 

 何だかんだと言って、部下の事を良く見て考えてくれている元帥に頭が上がりません。だからこそ慕われているんでしょうけどね。

 

 まぁ、後は女癖が悪いのが治れば言う事が無いんですけどねー。

 

 それはそれで、青葉としても収入源にさせてもらったりしていますから文句は言えません。まだまだ元帥の写真も売れ行きはそこそこありますからね。

 

「青葉に僕からもお願いする。那珂の身体を治す方法を探してくれるかな?」

 

「ええ、もちろんです」

 

 言って、青葉は元帥に笑いかけたんですが……

 

「そこは……イイトモー! って言うべきところじゃないのかなぁ……」

 

「い、いやいや、結構真面目な雰囲気でしたよっ!?」

 

「まぁ、そうなんだけど……、最近の青葉って先生みたいな突っ込み方をするよね」

 

「え、そ……そうですか……?」

 

 い、いきなりそんな事を言われると困っちゃうんですけど……

 

「おやおや? なんだか怪しい雰囲気がするんだけど?」

 

「げ、元帥の気のせいですよっ!」

 

「慌てるところも怪しいなぁ~」

 

 そう言ってニヤニヤと笑みを浮かべる元帥に耐えられなくなってきた青葉は、そそくさと部屋から退出する事にしました。

 

「そ、それじゃあさっそく青葉は取材に行ってきますっ!」

 

「うん、宜しく頼むねー」

 

 元帥の言葉を背に受けながら逃げ去るように扉を開けた青葉でしたが、小さい声で「いつか先生に痛い目を……」と、聞こえた気がしました。

 

 うぅぅ……青葉のせいで先生がちょっとピンチになっちゃったかもしれませんっ!

 

 これはなんとしても那珂の身体を直す方法を見つけ出して挽回しなくては……と、青葉は埠頭に向かって通路を駆けました。

 

 いざゆかん、佐世保へ!

 

 

 

 

 

 そう思った矢先――

 

「通路を走るんじゃありませんっ!」

 

「ご、ごめんなさいっ!」

 

 元帥の元に戻ろうとする高雄秘書艦に見つかって、こっぴどく怒られてしまった青葉でした。

 

 

 

 幸先悪い出発ですよね……くすん。

 





 次回予告

 先生の立場が危うくなってしまった気がしますが、なんとか佐世保への許可が取れました。

 そしてやってきました故郷の土地。
早速、元帥の知り合いである提督と話をし、神通から聞いていた”とある艦娘”に会いに行ったのですが…… 


 艦娘幼稚園 スピンオフシリーズ『青葉の取材遠征日記』
 その4「効果は未知数」


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