Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ EXTRA 作:白狐
「えーっと、ここは一体どこだ?」
辺りを見渡すと随分とボロボロの廃墟の中にいるようだ。
「ここは中東にある紛争地帯ですよ、センパイ」
「! ど、どこから声が!?」
いきなり聞こえた声に驚き再度周りを見渡しても人影らしきものは見当たらない
「ここ!ここですよ、センパイ!」
「もしかして、これから?」
良く聞いてみると声は自分の右手にある桜の飾りのついたブレスレットから聞こえてくる
「これって、この才色兼備、完全無欠の小悪魔系美少女の可愛い後輩に向かってこれ呼ばわりはひどくないですか?それとも、私のこと忘れちゃったんですか?センパイ。」
この声、この態度間違えるはずもない。そう!彼女こそ月の裏側で岸波白野を苦しめた存在。
その名も、フランシスコ・ザビ……
「ちなみにしょうもないこと言ったら流石の私もきつーいお仕置きを実行しないといけなくなるので気をつけてくださいね。」
…コホン。そう!忘れるはずもない、彼女の名前は『BB』!
「はい、正解です。ですがその若干の間は何ですか?」
「…そ、そういえばBBこれは一体どういうこと?自分はムーンセルに分解された筈じゃ。」
「むー、なんかはぐらかされましたけど、まあいいでしょう。たしかにセンパイはムーンセルに接続された際に不正データとして削除されるはずでした。ですがセンパイが消されることはBBちゃんが望むことではないですし?こう見えても私、あきらめが悪いんですよ?誰かさんを見続けてきたせいですかね。なのでセンパイが分解される一瞬を狙ってムーンセルに記録されていた世界の一つを再現してセンパイを送ったわけです。ばれないようにダミーを置いてきたし、この世界はムーンセルの管理外なのでムーンセルに戻れることはありません。センパイは一生ここにいるしかないわけです。」
つまりはこのAIは1度ならず2度もムーンセルの目を盗んで自分を救おうとしたのである。しかも2度目はまんまと成功して消える筈だった自分の運命を変えたのだ。なんとも身勝手なことである。
しかし、その身勝手さが自分のことを想ってのことと考えると笑みがこぼれてしまう。
「な、なんですか?いきなり笑いだして、気持ち悪いですよ。」
「何でもない。ありがとう、BB」
「い、いきなりなんですか?罵倒されてお礼だなんてどんな思考ですか、それとも変な性癖にでも目覚めたんですか?だいたいそんな姿で言ってもきまってなんか・・・あっ!」
そんな姿?BBの言葉を聞いて自分の姿を見ると
「び、BB!なんで俺の体が小さくなって!?」
なんと自分の姿が幼くなっているのである。大体7歳程度であろうか?
「えーっと、ですね。そのー、センパイが分解される途中に回収して、再構成する時にちょっとだけ構造をいじったらですね?何故かは分かりませんがセンパイの姿が幼くなっちゃったんですよね~。まあ、お茶目な後輩のかわいいミスということで、優しいセンパイなら許してくれます…よね?」
なんてことだ、どこが完全無欠なのか、あちこち穴だらけではないか
「そういえば、姿と言えば、BBもその姿はどうしたの?」
「ああ、この姿のことですか。この世界じゃ私、実体化できないようでしてね?だからこうやって魔術礼装になってセンパイのサポートをしてあげようというわけです。」
今、自分のことを『魔術礼装』と言ったか?この
「そうですよ?ああ、そういえばこの世界についての説明がまだでしたね。この世界は2000年頃の地球、まだ魔術が存在していた頃です。」
「魔術が存在していた頃って、自分は魔術はを使えるの?」
「はい、使えます。さっき『センパイの構造をいじった』って言いましたがその一つが魔術を使う際に必要な魔術回路の付属です。まあ、センパイの性質ゆえかそこまで強力なものは付けれませんでしたけど扱い方が上手ければ十分強力なのでちゃんと勉強してください。教師役の方も用意しておきますので。」
教師役?一体どういうことだろう。BBに詳しく聞こうとすると
「そこに誰かいるのか?」
そんな男の声が廃墟に響いた
「それじゃセンパイ、続きはまた後で。」
「あ、ちょっとBB。」
BBが黙ると同時に奥から男が歩いてきた
「君は、見たところ日本人の様だが、どうしてこんなところに?」
男は黒ずくめの格好をしており、大人の渋みを感じさせる男前な顔だ
本当のことを言うわけにもいけないし
「分かりません。気が付いたらここにいたんです。」
「分からない?君、名前は?どこから来たんだい?」
「名前は岸波白野です。それ以外は、分かりません。」
「記憶喪失かということか?ああ、自己紹介が遅れたね、僕の名前は衛宮切嗣。
だが、記憶がないとは・・・」
切嗣と名乗った男性はそうやって少し考え込むと
「白野君、君さえ良ければ、僕と一緒に来ないかい?」
そんな提案をしてきた
-切嗣視点-
今日は不思議な少年を拾った。中東にある紛争地帯の廃墟の中にいた7歳ごろの少年だ。
名前は岸波白野と言うらしいが名前以外の他の記憶が無いというのだ。すぐに嘘だとは分かったが僕は彼を放っておくことができなかった。まずは彼には魔術回路が存在した。普通の魔術師の平均か、それよりやや上程度ではあるがだが。しかし、『岸波』という姓の魔術に関係のある存在は僕の記憶にはない。もしかしたらこの魔術回路のせいで一人こんな場所に送られたのかもしれない。
そして何よりも興味を引かれたのは彼の右手にある魔術礼装だ。かなり高度な魔術礼装だ。もしかしたら大師父ゼルレッチが作ったといわれる『宝石剣ゼルレッチ』よりも高度な魔術理論で作られているかもしれない。
そう思うと自然と彼を自分と来ないか誘っていた。後から考えると少々迂闊であったが、どうも彼からは邪念のようなものは感じられない。なんというか、根っからのお人好しで底抜けのバカという表現がぴったりっと当て嵌まる人間だ。彼ならば、去年生まれてきたばかりの娘『イリヤ』の良い兄になってくれるかもしれない。そんな思いを抱きながら、彼を拾ったことを妻に報告をするため携帯をとった。
「もしもし、アイリかい?どうやら僕たちにもう一人子供ができそうだ。」
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