「タダクニ君か・・・何か変わった男の子だったな・・・私に怯えないなんて・・・」
家に着いた羽原は部屋で1人、今日会ったタダクニの事を考えていた。
自分を前に・・・羽原と聞いて脅えない不思議な男子。
羽原は今は大人しい雰囲気だが、小学生の時は名の知れたレベル程度でない、同学年か歳の近い男子から恐れられる女の子だった。
他を寄せ付けない力と、相手が倒れるまで手と止めない残虐性から「谷田東小のアークデーモン」と恐れられるいじめっ子だった。
その被害者は数知れず、トラウマを植え付けられた歳の近い男子高校生は今でも彼女を恐れている。
「何処からか転校して来たのかな?だったら私の事知らなくても不思議じゃないね」
今でも羽原は・・・何故当時そんな事をしたのか、本人もよく分かっていない・・・いや、思い出したくないのだ。
当時の自分がしてきた非道とも言える暴力の数々・・・中には消えない傷を負わせた者も居る・・・隣に住む同い年の男子等・・・。
「如何してあんな事したんだろう?本当に・・・何で・・・」
次第に羽原の声が泣き声へと変わっていき、目に涙を浮かべて謝罪の言葉を何度も呟いた。
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・あんな事してごめんなさい・・・怪我させてごめんなさい・・・」
あの時・・・タダクニに言った言葉は、本当は自分に向けてのものだったのかもしれない。
「・・・タダクニ君も・・・昔の私を知ったら怖がるのかな?皆と同じで・・・脅えちゃうのかな・・・それとも・・・」
羽原はそこまで言うと、強烈な眠気に襲われた・・・まるで自我を保つ為に、それ以上考えさせない様にするかのように・・・。
一種の防衛本能か、羽原はそのまま兄が起こしに来るまで眠りにつくのだった・・・。
その眠りの中で・・・羽原は夢を見た。
今の自分にとっては悪夢と言えよう昔の自分の夢を・・・。
夢の中の自分は1人の男の子をいじめていた・・・泣こうが喚こうが自分は手を止めないで笑っていた。
あの頃の自分にはありきたりな光景・・・だが・・・。
『止めろ!!』
そこに仮面を付けた少年が現れた。
仮面を付けた少年は輪ゴムを飛ばし、羽原が怯んだところでいじめていた子供を助け、そこから羽原と少年の一騎打ちが始まった。
結果で言えば羽原の圧勝・・・例えるならゼ〇トンと初代ウ○トラマンとの戦い。
だが倒された仮面の少年は、何度も立ち上がろうとし、去ろうとする羽原に叫んだ。
『絶対君を止めて見せる!!』
そこで羽原は兄に起こされ目を覚ました・・・。
「今の夢・・・とても懐かしい・・・あの時の子・・・何て名前だったかな・・・?」
その夢は何を意味し、何を表すのか・・・羽原自身も知らない・・・。
こんな感じの閑話は、この時間に上げます。