タダクニの日常   作:龍気

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日常ギャグって思った以上に難しいですね。


第1話『タダクニとイベント』

「やべえ!!遅刻する!!」

 

 

この何処にでも居る平凡な少年の名はタダクニ。

 

個性豊かな友人達に囲まれ、必然的に影が薄く存在感に欠ける事を気に病む男子高校生だ。

 

如何やら寝坊かなんかで、遅刻しそうであるのか全力で学校に向かうと言う、なんとも在り来たりで平凡な行動をしていた。

 

 

「んっ?あれって・・・ミツオ君?」

 

 

そんな中、反対側の歩道を歩くクラスメイトのミツオを見かけ少し足を止めてしまう。

 

 

(俺と同じで遅刻しそうだってのに、余裕に歩いてる・・・ひょっとして遅刻しそうだって事に気付いてないのか?流石ミツオ君)

 

 

どうやらミツオはタダクニからしたら、ある種残念な男子の様だ。

 

そんなミツオが曲がり角に差し掛かる直前、曲がり角の向こうから食パンを口に銜えて走る他校の女子の姿が見えた。

 

 

(こっ!これは食パンを銜えて走る女子とぶつかって、その子との恋が始まると言う少女漫画でありきたりな展開!?

あのミツオ君に彼女が出来るかもしれないだと!?そんな事そs・・・じゃなくて普通に危ないから止めないと!)

 

 

本心と建て前をかねてミツオを止めようと声を上げ様とするタダクニ・・・しかし・・・。

 

 

「ちっ・・・靴紐が・・・」

 

たったったっ・・・

 

「・・・えっ?」

 

 

何とぶつかる直前、靴紐が解けている事に気付き、その場で止まり靴紐を結ぶミツオ。

 

その結果女子とぶつかる事も、存在を知る事も無く、何事も無く歩き出すミツオ。

 

 

「あんなベタで嬉しおいしいイベントを直前で逃すなんて・・・流石ミツオ君・・・」

 

 

彼は本当にタダクニが思う様に、色々と残念な男子の様だった・・・。

 

 

「って!!ミツオ君の残念イベントを見てる場合じゃない!!遅刻!!」

 

 

遅刻しそうであった事を思い出し、慌てて走り出すタダクニ・・・しかし・・・先程のミツオ同様、

曲がり角に差し掛かった時。

 

 

ドンッ!!

 

「うわっ!?」

 

「きゃっ!?」

 

 

ミツオと違い誰かとぶつかり転倒するタダクニ。

 

そしてぶつかった相手の声からして歳の近い女子である事は理解できた。

 

 

「だっ!大丈夫!?」

 

「うっ・・・うん・・・大丈夫・・・」

 

ドキッ!!

 

(えっ!?)

 

 

ぶつかった女子は真田西高の制服を着たおかっぱ頭の女子だった。

 

彼女は心配無いと言わんばかりに笑顔で応え、それがタダクニの心の臓を激しく刺激した。

 

 

(かっ・・・可愛い・・・)

 

「あの?如何かした?」

 

「いっ・・・いや!!その・・・ゴメン!俺慌てていたから・・・」

 

「ううん、私の方こそごめんなさい・・・私も急いでいたから・・・あっ!私遅刻しそうだから、じゃあね」

 

「うっ・・・うん・・・じゃあ・・・」

 

 

女子は駆け足でその場を去って行った。

 

残されたタダクニは呆然とその後ろ姿を見詰めていた。

 

 

(可愛い子だったな・・・名前・・・聞いとけばよかった)

 

 

名前を聞けなかった事に少しガッカリし、その場に立ち尽くす・・・しかしふと足元を見ると手帳の様な物が落ちていた。

 

 

「これって・・・あの子の生徒手帳?」

 

 

それは真田西高の生徒手帳であった。

 

タダクニは真田北高で、今の女子は真田西高の制服を着ていた、間違いなく彼女の物だろう。

 

 

「う~~~ん・・・今追いかけて果たして間に合うだろうか?こんなの持っていてあいつ等に見られたら何て言われるか・・・」

 

 

他校の女子の生徒手帳を持っているところを、からかう事はからかい、弄る事は弄りたおす友人達の事を頭に浮かべ、

すぐに届けに行こうとしたが、もう時間も残り少なく、他校では入る事も出来ないだろうと、仕方なく自分の学校の方へと歩を進める。

 

 

「今日の放課後届けに行くか・・・それまで見つからないと良いが・・・それにしても・・・本当に可愛かったな・・・あの子・・・」

 

 

これが彼の何時もの平凡な日常が変わるきっかけである事を、この時の彼自身まだ知らない・・・。

 

 

 




ヒロインもう分かるじゃん・・・。

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