遊戯王~あおい眼に写る夢~   作:うみうま

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2016/6/10、色々書き直しました。


第一歩 私の始まりの道

デュエルアカデミア、海馬コーポレーションが設立したプロデュエリストを育成する為の学校。

その入学試験実技会場に【俺】・・・・・・いや、【私】はいる。

 

 

『わぁ、見て下さい沙羅!デュエルが沢山行われていますよ!!』

 

 

アカデミアの実技試験会場なのだから当たり前だろうに。私の隣で相棒がはしゃいでいる。

まあソリッドビジョンによるデュエルは迫力があってまだ見慣れない私には興奮する気持ちもわかるけど。

 

 

私がまだ【俺】だった頃、私は【遊戯王】と言うカードゲームが好きだった。そのモンスター達がソリッドビジョンと言う形で目の前にいるのは感動するが正直未だに信じられない。初めて見たときは腰を抜かした。まあ今はもう慣れてきたけれども。

そんなこんなで今の現状を楽しんでいるのは事実なので隣にいる相棒と私はあまり変わらないのかもしれない。

 

 

『私達の出番はまだでしょうか?』

 

「その内来るよ」

 

 

私達が今ここに居るのは当然試験を受けに来たからだ。

ただ私が今から使うデッキとカードの事を考えると頭が痛くなる。

 

 

私はこの世界を物語として知っている。

私の持っているカードはこの世界のこの時代にはまだ存在しないし、私が使うカードの中には本来違う人が持ち主である筈のカードがある。

だからそのカードを使った時の事を考えるだけで胃が痛くなる。

 

 

「受験番号0番、デュエルスペースへ降りてきなさい」

 

『やっと私達の出番ですよ!』

 

 

会場内にアナウンスが響き、私の相棒がさあ行くぞと目を輝かしている。

私は重い腰上げ、死刑執行される死刑囚のような気分でデュエルスペースへ向かった。

 

 

 

 

 

□□□□□□

 

 

 

 

 

デュエルスペースの中央へ行くとそこには私達と目の前の試験官しかいない。他の受験生や試験官達は観客席にギャラリーとして居る。その中にはアカデミアの制服を着た者達もちらほら。

このギャラリーは私達のデュエルを見るためにわざわざ居る、と言うより私の使うカードを見るために居るのだろう。

 

 

そもそも受験番号0番なんて存在しない。

私は海馬コーポレーションから新システムのテスターとしてこの学校へ送られた。あるカードの新規運用の為に。だから筆記免除の受験番号0番、特別枠と言うやつだ。

今日の私の試験にはそのカードのお披露目も兼ねている。

だから自分達の実技試験が終わっても受験生が残っているし、わざわざアカデミア本島から来た者達も居るのだろう。

 

 

「受験番号0番、葵沙羅です。よろしくお願いします」

 

「試験官のクロノス・デ・メディチでスーノ。今回は新システムの運用も兼ねている為、特別に私が相手するノーネ」

 

 

目の前に居る独特な喋り方をする試験官、クロノス先生。【俺】だった頃に好きだったキャラクター、それが今目の前に一人の人間として居る。

そう人間なのだ。俺の知っている物語の中の登場人物ではなく、今を生きる人間。

 

 

『この人さっき違う人デュエルして負けてませんでした?』

 

 

私の隣で相棒が物凄く失礼な事を言っている。

私だけにしか聞こえないからいいものを、本人聞こえていたら目の敵にされただろうに。その事を叱ろうにも今は出来ないので無視する。

 

 

「この試験では全力でデュエルするようにと言われているノーデ、貴女には悪いケード全力で行くノーネ」

 

「それでお願いします。私も社長にそう言われているので」

 

 

相手はあのクロノス先生、侮れない。それにこのデュエルに負けると社長に何を言われるかわからない。

なので今更このデッキを使えばどうなるだとかはどうだっていい。私はただデュエルに集中する。

 

 

「それではお願いします」

 

「行きまスーノ」

 

「「デュエル!!」

 

 

 

沙羅 LP/4000

 

クロノス LP/4000

 

 

 

 

「私の先行、ドロー!」

 

 

先行はデュエルディスクの判定により私だ。ドローにより初手は六枚、これはこの時代だからこその良さか。【俺】の世界には先行ドローはもう無くなったので少し懐かしく思う。

とりあえず隣の相棒、【キサラ】が今か今かと出番を待っているので出してやる。

 

 

「私は【青き眼の乙女】を攻撃表示で召喚、カードを二枚セットしターンエンド」

 

 

 

【青き眼の乙女】 ☆1 ATK/0 DEF/0

 

 

 

フィールドに私の相棒、キサラこと【青き眼の乙女】が召喚される。その顔はソリッドビジョンなのになんだか生き生きとして見える。

しかしそんなキサラとは裏腹に周りからはやれ「それだけ?」だとか「可愛いカードね」だとか「チューナーモンスター?」だとか「ただのザコモンスターか」などと言った声が聞こえる。

 

 

『可愛いは嬉しいですけど、ザコモンスターは心外です』

 

「気にすること無いよ、今にわかる」

 

 

キサラの愚痴に小声で答える。

確かに海馬コーポレーションが送り出したテスターの先行がこれだけなら拍子抜けだろう。

だがこれでいい。

本来ならセットカードを警戒する場面だが相手がクロノス先生なら、と言うよりクロノス先生のモンスターなら臆せず攻めてくる筈。ある意味相手のデッキテーマ知っている分ズルかもしれない。

 

 

「チューナーモンスターが何をするかは知りませンーシ、何を企んでいるかも知りませンーガ、私の前では無駄なノーネ。私ターン、ドロー」

 

 

クロノス先生がカードをドローする。さて、狙い通りになるか否か。

 

 

「私は【トロイホース】を召喚しまスーノ」

 

 

 

【トロイホース】 ☆4 ATK/1600 DEF/1200

 

 

 

「そして魔法カード、【二重召喚】を発動!これによりもう一度通常召喚を行いまスーノ!そして【トロイホース】のモンスター効果!地属性モンスターを生け贄召喚する際このカードを二体分の生け贄として扱うノーネ!!」

 

「いきなり来るか・・・・!」

 

「【トロイホース】を生け贄に、【古代の機械巨人】を召喚なノーネ!!」

 

 

 

【古代の機械巨人】 ☆8 ATK/3000 DEF/3000

 

 

 

クロノス先生のフィールドに古びた機械の巨人が現れる。

【古代の機械】シリーズ。攻撃時に魔法、罠のカードを発動させない厄介な効果を持つ。そのシリーズの最上級モンスターを召還したことで私の時とは逆に喝采が起きる。

いきなり【古代の機械巨人】が出たのは驚いたけどここまでは私の読み通りだし、キサラも別段焦っている様子はない。私を信じているのだろう。

 

 

「その可愛らしいカードを破壊するのは心苦しいケード、全力で行くと言った手前手加減はできないノーネ!【古代の機械巨人】で攻撃!アルティメット•パウンド!!」

 

 

キサラに鋼の鉄槌が迫る、が。

 

 

「この時【青き眼の乙女】の効果発動!このカードが攻撃対象に選ばれた時、その攻撃を無効にし、このカードの表示形式を変更する。そして・・・・・」

 

 

キサラが跪き、祈りを上げる。そして私はデッキより一枚のカードを取り出す。

乙女の祈りは白龍を呼ぶ!!

 

 

「手札、デッキ、墓地よりのいずれかより【青眼の白龍】を特殊召還する!出よ!【青眼の白龍】!!!」

 

 

 

【青眼の白龍】 ☆8 ATK/3000 DEF/2500

 

 

 

フィールドに青き眼の白龍が現れ、荒々しくも気高い雄叫びを上げる。周りからは驚きの声と同時に動揺している様子が伺える。

目の前のその人も同じ様だ。

 

 

「どっ、どうして貴女がそのカードを持っているノーネ?!」

 

「簡単な話、社長から預かり受けただけです。それよりも今はデュエルを続けましょう」

 

「わ、わかっているノーネ!どの道【青眼の白龍】デーハ『【古代の機械巨人】とは相打ちなノーネ!そしたら残るのは攻撃力0のそのモンスターだけなノーネ!焦る必要無いノーネ!私はカードを一枚セットしてターン終了なノーネ!!」

 

 

綺麗に負けフラグを建てて私にターンが返ってくる。説明は負けフラグだと言うに、なぜ分からんかね。などと原作メタな思考を巡らせつつ先生に視線を向けると焦りは抜けないものの何か企んだような顔をしている。

恐らくあのセットカードに裏があるのだろう。

しかしそんなもの関係ない、真っ向から叩き潰すのみだ。

 

 

「私のターンドロー!私は手札より魔法カード、【滅びの爆裂疾風弾】を発動!これにより相手フィールド上の全てのモンスターを破壊!!」

 

 

【青眼の白龍】から放たれた爆風により【古代の機械巨人は】跡形もなく爆散する。

ここれによりクロノス先生は一瞬怯むも、すぐに安堵した表情になる。それは【滅びの爆裂疾風弾】のカードの効果を知っているからだろう。

 

【滅びの爆裂疾風弾】、自分フィールド上に【青眼の白龍】が居れば発動でき、発動すれば相手フィールド上モンスターを一掃出来る強力なカード。しかしその代償として発動したターンは【青眼の白龍】は攻撃出来なくなる、故に【俺】の世界では使う人は殆ど居なかった。

だかそんな事はどうでもいい、本番はこれからである。

 

 

「そして、私はレベル1、チューナーモンスター【青き眼の乙女】をレベル8、【青眼の白龍】にチューニング!!」

 

 

キサラが、【青き眼の乙女】が一つの輪になり【青眼の白龍】がそれに向かい舞い上がる。

 

 

「心に秘めしその姿、王道を行き、今こそ真の姿を現せ!!!!!」

 

 

その姿は光を放ち、姿を変える。その眼はより一層蒼く、銀色の翼を広げる。

 

 

「シンクロ召喚!我が道!【蒼眼の銀龍】!!」

 

 

 

【蒼眼の銀龍】 ☆9 ATK/2500 DEF/3000

 

 

 

フィールド上に一頭の龍が舞い降りる。その姿は見る者全てを魅了する王の風格がある。

観客席からは綺麗や美しい等と言った声が聞こえる。ふつくしいとも聞こえた気がする。

 

 

「シンクロ召喚?まさかソレーガ!?」

 

「そうです。海馬コーポレーションとインダストリアル・イリュージョン社により新たに提案された召喚方法です。その試験、テスターとし私はこのデュエルアカデミアに来ました」

 

 

そう言った後私はシンクロ召還について話す。これも私の役目だ。

シンクロ召喚を実際に使いその性能を実験、世界にシンクロ召喚の存在を知らしめる。

その二つを果たすのに最適だったのがデュエルアカデミアである。これは海馬社長とペガサス氏直々に託された仕事。

私【のもう一つ役目】を果たす為にこの仕事を引き受けた。そして今はその新たな道の第一歩に過ぎないし、こんな所で躓いてられない。

一通りの説明を終えデュエルを再開する。

 

 

「リバースカードオープン、【リビングデッドの呼び声】を発動。これにより墓地から【青き眼の乙女】を特集召還!そして手札より【団結の力】を【青き眼の乙女】に装備!【団結の力】は自分フィールド上のモンスター一体につき800ポイント攻撃力をアップする!」

 

 

 

【青き眼の乙女】 ATK/0→ATK/1600

 

 

 

『私復活!まだまだ行きますよー!!』

 

「そして【青き眼の乙女】がカードの効果対象に選ばれた事により効果発動!再び手札、デッキ、墓地のいずれかより【青眼の白龍】特殊召喚する!舞い戻れ【青眼の白龍】!よって更に自分フィールド上のモンスターが増えたことによって【青き眼の乙女】は攻撃力上昇!!」

 

 

 

【青き眼の乙女】 ATK/1600→ATK/2400

 

 

 

私のフィールドに二頭の龍と一人の武闘派乙女、なかなか圧巻の光景である。思考をキサラに読まれたら何と言われようか。

そんな心情は露知らず、クロノス先生含め周りが騒然としている。

無理もない。LP4000という中で攻撃力2000オーバーのモンスターか三体も並べばそれだけでゲームが終わる。ましてやクロノス先生のモンスターはゼロ、絶望的状況だろう。

まあブルーアイズは攻撃出来ないけどね。

 

 

 

「行きます。【青き眼の乙女】で攻撃!」

 

 

武闘派乙女ことキサラからブルーアイズ顔負けの波動が放たれる、が・・・・・・。

 

 

「ここまでの流れは良かったケード詰めが甘いノーネ!罠カード発動!【聖なるバリア-ミラーフォース-】!!」

 

 

 

待ってましたと言わんばかりにリバースカードオープン。しかし王者の前では無駄な足掻きに終わる。

 

 

「それはどうですかね!カウンター罠発動!【王者の看破】!このカードは自分フィールド上にレベル7以上の通常モンスターが居るとき発動可能、相手の魔法、罠の発動、モンスターの召喚、反転召喚、特集召喚をどれか一つ無効にする!!」

 

 

これによりミラーフォースは砕かれ『青き眼の乙女』の攻撃が通る。

そしてこの乙女したり顔である。

 

 

 

クロノス LP/1600

 

 

 

「【蒼眼の銀龍】で止め!!!」

 

「マンマミーヤーーーーー!!!!!?????」

 

 

クロノス LP/0

 

 

 

【蒼眼の銀龍】の攻撃が轟砲となりクロノス先生を飲み込みLPを0にする。

こうして私の実技試験は終わった。

 

 

 

 

 




かなり放置した果ての加筆調整。
ブルーアイズの派生、補助が増えたことによる行動です。
申し訳ないです。
亀更新でやっていこうと思います。

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