五の軌跡   作:クモガミ

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第二章ー10 5月29日 撃退

《午後14:40 『セントアーク』 北ホーツネック街道 大型魔獣出没地点 》

 

旧都『セントアーク』で行方不明の男爵夫婦の子息を最後の課題中に見付けた私達B班。

ですが、保護しようとした途端。

討伐予定の大型魔獣が仲間を引き連れて襲い掛かって来て、今私達は魔獣の大群に取り囲まれている状態になってしまいました。

逃げ道は封鎖され、もう戦うしか道はありません。

傍に居る男爵の子息を守る為にも。

 

「ラウラ! ゼオラ! アリサ! ガイウス! お前達で卍の字の陣形を組んで、その中にその子を入れて守れ! 俺とトモユキとエレカは敵の殲滅だ! 良いな!」

「はい!」「「ええ!」」「あぁ!」「了解!」「承知!」

 

敵が本格的に襲い掛かる前にイビトが私達に指示を出し、その指示通りに私、ラウラ、アリサ、ガイウスは子息を囲むように卍の字の陣形を組む。

私達護衛側が配置に付くと同時に殲滅側のイビト、トモユキ、エレカが行動を開始する。

 

この役割分担、概ね理解しましたわ。

子息を死守する為に私達護衛側が子息を狙う敵を迎撃し、そして極力敵が護衛側の方へ行かないように敵を撃破するのが殲滅側。

確かにこの戦法と陣形なら比較的安全に子息をお守りすることが出来ますわね。

 

――そう感心した直後、『ラフレフラ』達の一体、ラフレフラCが縄のような4本の枝をこちらへ伸ばして来る!

 

しまった! 回避も斬り払いも間に合わない―――!

 

そう思い、枝が私に巻き付こうとした瞬間。

イビトの『アームド・バンカー』の回転式機関砲から銃弾が発射され、ラフレフラCの枝を4本全て撃ち落とした。

更に銃撃はそれだけに留まらず、イビトはラフレフラCの周りに居る『ラフレフラ・ベビー』達を撃ち抜いた後、続け様にラフレフラCを蜂の巣にし、僅か3秒程度でラフレフラ一体と5体以上のラフレフラ・ベビーを仕留める。

 

た、助かりましたわ……。

私のお馬鹿! 戦闘中に敵から意識を外して!

直前にイビトの助けが無かったらどうなっていたことやら………。

 

「可能な限りお互いのフォローを忘れるな! 一人が危機に陥れば、そこを突け込まれるぞ!」

 

大群の一部を一掃した直後、イビトは周囲の魔獣を蹴散らしながら護衛側、殲滅側関係なく、誰かが危機に陥らないようにフォローし合うように呼び掛ける。

 

……さっきのフォローはお手本のつもりだったのでしょうか?

周りは敵だらけで、一瞬の気の緩みや余所見を許したらそれが命取りになるようなこの状況下でイビトはあそこまでのフォローをしてみせてくれました。

 

私達護衛側は卍の字の陣形によって側面と背後は同じ陣形の仲間が見てくれるので自分は正面だけを気にしていれば良い環境ですが。

対照的に殲滅側は自分の周囲全体に気を配らないといけない環境にも関わらず、イビトは難なく仲間のフォローと殲滅を両立しました。

しかも人数上の関係で誰ともリンクを結んでいないというのに。

 

《実技テスト》の時といい、彼は一体どれだけの力を秘めているというの………?

 

「ゼオラ、魔法で援護してくれ!」

「『アマダスシールド』もお願い!」

「了解しましたわ!」

 

―――と、今はそんなことを気にしている場合じゃありませんわ!

子息の安全を確保する為に一刻も早くこの戦いを終わらせませんと!

 

気を締め直して私は二重詠唱を開始し、何時も通りの速度で詠唱を完了させ、『スパークアロー』でガイウスを援護。

次に『アマダスシールド』で護衛組と子息に一度だけの絶対防御の恩恵を与える。

これでどんな攻撃も一度だけ完全に無効に出来ますわ。

ですが、どんな攻撃でもというのは例え掠り傷程度のダメージしか与えない攻撃でも発動してしまうで、極力対処し切れない攻撃以外は避けるかいなすしかありません。

 

「「「ピッピッ!」」」」

 

――〝こういう風に〟!

 

タイミングを計ったかのように三体のラフレフラ・ベビーが黒い種を飛ばして来たので私は左腕の魔導籠手にCPを送り、

 

「『ロッソ・イージス』!!」

 

魔導籠手の水晶から赤い円状の盾を出現させ、その盾で黒い種を弾く。

この盾も帯と同じように魔力を帯いて、物理的攻撃のみならず魔法攻撃も防ぐことが出来る強固なですわ。

 

「はぁ!」

 

そしてすかさず右腕の水晶から魔力の帯を出し、〝盾を通り抜けて〟三体のラフレフラ・ベビーを纏めてバターのようにスライスする。

一応説明しておきますと私の魔導同士は〝お互いの力に干渉し合わないように細工して〟おりまして、水晶から出た魔力を帯びた物は通り抜け、それ以外の物は通さないようにしているのです。

 

「アリサ、俺が小さい方を片付ける! お前はデカイ方を!」

「えぇ、分かったわ!」

 

右側面の方へに目を向けるとイビトがアリサを援護しており、銃弾の雨で牽制しつつ、舞いを彷彿とさせそうな動きですれ違い際に敵を切り裂き、アリサの正面に居るラフレフラ・ベビー達を一掃する。

 

「喰らいなさい、『フランベルジュ』!」

 

自分を狙う敵が激減したところでアリサは炎を纏った矢をラフレフラDに放つ。

矢は茎のど真ん中に命中し、植物だからか刺さった箇所から炎が爆発的に燃え広がり、瞬く間にラフレフラCは全身を燃や尽くされ、セピスへと朽ち果てる。

 

「エレカ、聞こえるか! 俺が隙を作る!」

「はい! お願いします!」

 

続いて左側面の方からガイウスとエレカの声が聞こえ、今度はそちらに眼を向けると。

 

「三連続の『ゲイル・スティング』!!」

 

ガイウスが前、左斜め、右斜めに突きを放ち、射線上に立つラフレフラEとラフレフラ・ベビー達を射抜く。

ですがどれもこれも傷の深さが少し足りないのようで、倒すまでには至りませんでした。

 

と、次の瞬間。

何処からか、数本のナイフが追い討ちの如くラフレフラ・ベビー達に刺さり、それが止めとなってセピスへと成る。

ナイフを喰らわなかった他の魔獣達は攻撃が何処から飛んできたのか分からず、キョロキョロし始め。

その隙を突いて、また何処からかナイフが飛び、次々とラフレフラ・ベビーを仕留めていく。

やがて最後にはラフレフラEの急所全てにナイフが刺さり、他の仲間と同様にセピスへと朽ち果てた。

 

《実技テスト》の時も思いましたが、前に比べて随分頼りになりましたわねエレカは。

例のミスディレクションの応用でしょうか。

見事な三弾突きを放ち、敵に注意を己に引かせたガイウスに敵の視線を半強制的に固定させて自分の存在を極限に薄くし、それによりあたかも何もないところから攻撃が飛んでくるように錯覚させる。

 

奇襲及び混乱を兼ね備えた戦術、敵にしたら恐ろしいですが味方だと頼りになりますわね。

少々トリッキーですが上手く活用すれば大きな助けになるかもしれませんわ……!

 

「うぉ! 何処からかナイフが!?」

「このナイフはエレカ! 何処に居るのか分からぬが、良い援護だ!」

「そうだな。敵の数もあともうちょっとだし、一気に決めようぜラウラ!」

「うむ! では行くぞぉ! 『洸刃乱舞』!!」

「『トライデントバスター』!!」

 

後方からトモユキとラウラが聞こえたかと思うと、ゴゥ!!と轟音が耳に響く。

恐らく、いえ言うまでもなく、二人が大技をブッパしてのでしょう。

こちらからでも焼け焦げた匂いがしまいますもの。

 

まぁそれはともかく、ひぃ、ふう、みぃ………敵はラフレフラ・ベビーが六体だけ。

最初に比べて敵の数も激減しましたし、このまま全滅させるのも良し。

もしくは子息を連れて安全な場所まで逃げるのも良しですわ。

 

当初の予定から大きくズレましたけど必須項目の依頼も完了しましたし、どちらを選んでも私達の勝―――

 

 

ドスンッ!!!

 

 

―――そんな音と共に地面が揺らぐのを感じました。

一瞬、何事だと私達は思わず硬直しますが、そう経たない内に再び地響きが起こる。

そして断続的に地響きが起こり始め、私達はその地響きは自然発生したものではなく、それを起こす程の〝何か〟が居るということに気付く。

 

ドスン!! ドスン!! と、ゆっくりとゆっくりと地響きを起こしている〝何か〟がこちらに近付いて来るのが分かります。

 

「ね、ねぇこれって……」

「前にも似たようなことがありましたわね………」

「コイツはぁもしかしなくても……」

「そうなのだろうな………」

 

アリサ、私、トモユキ、ラウラと揃ってデジャヴを感じる。

具体的に言えば、前の実習で『ルナリア自然公園』の主が乱入してきた時のことを。

 

すると地響きがある程度近付いて来ると………。

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

私達は眼を疑いました。

50アージュ先の樹々の上にぬぅ、と巨大な花が見えたのです。

此処等の森の樹々の高さは大体10アージュ前後。

つまりこちらへ近付いてくる〝何か〟はそれ等よりも高い存在だということです……!

 

地響きがこちらに近付くにつれ、揺れも音も次第に大きく且つ強くなっていき、今では起こる度に身体が傾きそうになるぐらいものになる。

 

――――そしてすぐそこの樹々のところまで辿り着いた〝それ〟は遂に姿を現す。

 

 

直径5アージュの面積を持った茎、その茎の天辺に咲く巨大で禍々しい閉じた花、岩のように太い枝、ギザギザや鎌のように鋭い形をした葉っぱ、更にその中で何より印象的なのは茎の中央に在る眼と口しか無い顔。

その姿はまさしく大樹を彷彿とさせる全長15アージュもある植物の化け物だった。

 

「な、に、あれ………」

 

余りの大きさに圧倒され、後退りするアリサ。

……無理もありません。何せ相手は『グルノージャ』の3倍以上の大きさを誇っているのですから。

 

「デケェ……!」

「なんという大きさだ……!」

「……まさしく樹の化け物だな」

「こんな所に居るとはな……『ラフレフラ・キング』!」

「知っているんですか、イビトさん!?」

 

『あぁ』とイビトは淡々と答える

一人だけ〝あれ〟のことを知っており、皆の視線がイビトに傾く。

 

「名前の通りラフレフラの王だ。ラフレフラの中で最も強く長生きした個体があの姿に成ると言われている。普段なら森の奥深くに居るんだが……」

「それがどうして此処に?」

「多分、仲間が殺られたのを感じ取って駆け付けたんじゃないか? アイツ等倒したら変な匂いが出たし……」

「恐らくそうだろう。ラフレフラは自分が死ぬ瞬間に仲間を呼び込む花粉を出すという話だ」

 

成る程、だから最初の2体を倒したら他のラフレフラ達がやって来たと。

そして丁度近くに居た〝あれ〟も花粉に誘われて来たという訳ですか。

はぁ……なんと言いますか、間の悪いこと極まりないですわ。

 

樹の化け物の正体が知り、私達は視線をキングに戻すとアリサが問い掛けます。

 

「で、どうするの? やっぱり戦うしかないのかしら、〝あれ〟と」

「来た道を塞がれた以上、そうするしかなかろう。それに……相手が私達を見逃してくれるとは思えん」

 

ジロリとラウラが樹の化け物を見上げながら睨む。

一方であちらは観察しているのでしょうか? ジィーとこちらを無機質に見詰めている。

顔は無表情のままですが、その何を考えているのか分からない様子に不気味さを覚えました。

しかし、こちらに敵意を抱いているのは確かで。

あの巨体から漂う威圧感と共に殺気が混じっているのを感じ、背筋に寒気が走る。

 

するとキングはドシン!と一歩前へ動き出す!

 

「来るぞ!」

 

トモユキの掛け声と共に私達は構える。

実力は未知ですが、強いのは明らか!

苦戦は免れまないと思いますが生き残る為にも男爵夫婦の子息を守る為にも何としてでもあの怪物を倒さなくては!

 

「待て!」

 

―――ですがその瞬間。

突然イビトが片手を上げて私達を制止させました。

 

「お前達は自分の身とその子の身を守ることだけ専念しろ。アイツは俺が殺る!」

「ひ、一人ですか!?」

「そんな、無茶ですわ!」

「あの化け物は今まで戦ってきた魔獣とは訳が違う! 下手に攻撃すれば殺られるぞ!」

「だったら尚更、皆で戦った方が―――」

 

『良いわ!』とアリサが言い切る前にイビトは地面を力強く踏み蹴って空高く飛び立つ。

その行動に釣られて私達が上を見上げるとラフレフラ・キングが口からバスケットボール並みの大きさの黒い種をマシンガンのように発射しました。

雨の如く降り注ぐ黒い種にイビトは真下に居る私達の身を案じているのでしょうか、自分には当たらない種も例外なく水の剣で一つずつ両断していく。

 

「ッ! 何ぃ!?」

 

種が切り裂かれた直後、イビトと私達は眼を見開く。

なんと切り裂いた種から更に小さな種が大量にバラ撒かれ、当初の倍以上の数が地上に居る私達に降り注ぐ。

 

「『ロッソ・イージス』!!」

 

私は咄嗟に魔力を帯びた盾を作り、種から皆を守る。

ですが、種の一つ一つのダメージが大したものでは無くてもそれが数十、数百となると大きなダメージになります。

なので最初は余裕で防いでいましたがダメージが蓄積していき、次第に盾にヒビが入り、そしてそのヒビは少しずつ大きくなっていく。

CPを送って盾の修復を行いますがそれを上回る圧倒的な数が降り注ぎ、修復が追い付きません!

 

すると恐れていたことが起こる。

盾の一部が破損し、そこから黒い種が盾の後ろへ侵入しました!

 

「ぐぅ!」

「きゃあ!」

 

侵入した種はガイウスとアリサを襲いますが事前に施しておいた『アダマス・ガード』の恩恵が働き、種を弾かれました。

しかし、『アダマス・ガード』の恩恵は一度切りなので二度目は防げないので私は急いで盾に送るCPをもっと増やし、破損した部分を塞ぐように修復する。

 

でもそれを黙って見過ごす程、敵は愚かではありません。

完全に修復される前にラフレフラ・キングは再度黒いを発射しようとしました。

 

「させるかっ!」

 

そうはさせまいとイビトは種が発射される前に左腕に装備した『アームド・バンカー』の両側面からポン!と音を立てて灰色の弾を二つ射出する。

弾はキングの口元に命中し、当たった瞬間。

二つの火柱が立ち上がり、キングの顔に爆風と硝煙が吹き広がった。

 

イビトが飛ばした弾は手榴弾のような物でしたのね。

着弾と共に爆発する武器など、聞いたことありませんがあれも彼が作ったのでしょうか?

 

「むっ!」

 

そう思った瞬間、煙で覆われた顔から黒い種が2,3個だけ飛び出す。

イビトはそれを難なく切り伏せて、種の中の種が私達の方へ行かないようにしましたが。

直後に六本の岩のように太い枝がイビトに伸びる。

 

1,2本目は同時に切り落とされ、3,4本目は跳び箱を飛び越えるような要領でいなし、5,6本目は一つずつ縦に切り落としました。

この攻撃も容易く対処してみせたイビト。

しかし、私達とキングの間に真っ直ぐと並び射線を塞いでいましたが、3,4本目の枝を対処した際に少し横にズレてしまい、射線が通ってしまいました。

そしてイビトという壁が無くなったことで煙の向こう側から数十個の種を撃ち出す。

 

「しまった!!」

 

自分が射線から逸れてしまったことで黒い種が自分の横を通り過ぎるのを許してしまうイビト。

種はそのまま私達の所へ一直線に飛んでくる。

 

数は少ないですがあの大きな種の威力は見掛け通りの重量なら小さな種とは比べものにならないくらい高い筈!

今修復がまだ終えていない盾で防ごうとしても一発目は耐えても二発目は耐えられませんわ。

このままでは三発目以降は全て当たってしまう! どうすれば………!

 

「ゼオラ! 盾を消せ!!」

「ッ!」

 

後ろの方からトモユキの指示が聞こえた瞬間、私はそれに即座に反応して盾を消す。

 

「『トライデントバスター』!!」

 

直後、頭上に馬鹿デカイ光線が迸り、あともう少しで眼前まで迫っていた黒い種を全て焼き尽くす。

更に光線はそのままラフレフラ・キングの元まで飛び、顔に大きな風穴を開ける。

 

「おっしゃ! これでどう―――」

 

『どうだ!』と言い切る前にトモユキは口を止めてしまう。

何故なら風穴を出来た顔がみるみると塞がっていき、たった数秒で顔は元の状態へと戻りました。

 

「な、なんと!」

「ちょっと! 何よあれ!?」

「魔法なしで回復しやがった……だと!」

「そういえば聞いてことがありますわ………」

「知っているのかゼオラ?」

「ええ、大型の魔獣の中ではどんな傷を負っても瞬時に治してしまう魔獣が居ると」

「そ、そんなどう倒せば………」

「―――簡単だ。再生が出来ない程に身体をバラバラにすれば良い!」

 

と着地と共にイビトがそう告げる。

確かに身体をバラバラにされれば、どんな魔獣も生きられませんが………。

全長15アージュもあるあんな巨大な生物、一体どうやって両断出来るのかしら?

あれと同じくらいの剣が在ったら話は別でしょうけどーーー。

 

「でもどうやって……!?」

「問題ない。それは俺に任せろっ!!」

「ま、待ちなさいイビト!」

 

こちらの制止を聞かず。

言い出した自分が引き受けると、何の策も言わずにイビトはキングの元へ駆け出した。

当然相手は突撃してくる敵など許さず、黒い種と伸びる枝で迎撃する。

 

一斉に降り注ぐ敵の攻撃をイビトは足を止めることなく掻い潜り、そして一本の枝の上に飛び移るとそれを伝って茎のところまで走り昇ろうとする。

そこでも敵の攻撃が降り注ぐが、他の枝に乗り移りながらかわし続けると共に茎の方へとどんどん近付く。

やがてイビトは茎のところまで辿り着くとまた空高く跳躍し、茎の天辺に在る禍々しい花の頭上まで飛ぶ。

 

 

―――その時、〝閉じていた花が突如として開き〟、花の中では黒紫色のエネルギー体が蓄えられていた。

次の瞬間、そのエネルギー体が光線として照射され、間近に居たイビトを呑み込んだ。

 

「い……イビトさん!!!」

「イビトォ!!」

 

その光景を目の当たりにしてエレカとトモユキが彼の名を叫ぶ。

私も含めてそれ以外は声を出すことも出来ず、呆然と眺めるだけでした。

 

あの光線、トモユキがさっき放った光線よりも更に馬鹿デカイ………。

見た所、熱量も持っているようですし、大きさから見ても威力は『トライデントバスター』以上なのは確か。

………駄目ですわ。あんなのを喰らってしまってはイビトは―――

 

「!?」

 

絶望して掛けた、その時でした。

光線が急に拡散し始め、一本に纏まらなくなりました。

拡散している地点は〝イビトが居た場所〟。

 

―――もしや!

 

そう思った瞬間、拡散している地点から光線が弾け。

弾けた光線の中からイビトの姿が見えました。

 

信じられませんが彼は………右手を前に出して光線を受け止めているのです。

たったそれだけであの巨大な光線を玩具の水鉄砲みたいに!

ーーーそして彼はその手を握り締め、光線はガラス細工のように消し飛んだ。

 

『――――』

 

その光景に敵味方問わず、言葉を失う。

………無理もないと思います。

何せ、あの巨大な光線を片手だけで握り潰されたのですから。

 

私達がそう呆けているとイビトの左腕に付けられた『アームド・バンカー』の前部分が展開し、金色に輝く四つの爪へと変形する。

 

「『爪痕(アスクラッチ)』!」

 

そしてイビトはおもむろにその左腕を振り下げる。

直後にズドン!と大砲でも撃ち込まれたような音が響いたかと思うとラフレフラ・キングが縦に四つに引き裂かれていた。

文字通りキングはバラバラにされて絶命し、大量のセピスに成れ果てる。

せっかくの助っ人もやられてしまい、戦意を失ってしまったラフレフラ・ベビー達は一目散に何処かへ消えて行った

それを傍目に空から無数のセピスが降り注ぐ幻想的な光景に私達は思わず見とれてしまう。

 

「全員怪我は無いか?」

 

上空から戻ってきたイビトが着地と共に私達の怪我の安否を尋ねる。

呆けていた私達でしたがすぐに我を取り戻して大丈夫だと答えます。

 

「そうか。子供の方は?」

 

覗き込むように卍の字の陣形の中に居る男爵夫婦の子息の様子を窺う。

 

「君、怪我は無いわよね?」

「怖かったでしょう。もう安心して良いですわ」

 

危険が無くなってようやくお話が出来る状況になったのでアリサと私は子息と同じ目線になるように姿勢を低くして話掛ける。

ですが子息は何が起こったのか分からない様子で、そのつぶらな瞳で何処かを眺めていました。

 

「……………ぅ」

「「「「「「「?」」」」」」」

 

するとその小さな口から聞き取れない声で何かを呟き、 私達が眼を丸くした次の瞬間ーーーーー

 

「うわぁああああああああああああああああああああああああああんっ!!!」

 

鼓膜が破裂してしまいそうな大きな泣き声が森中に響き渡るのでした。




~~皆に質問コーナー~~

このコーナーはある人物を対象にクラスメイトがその人物にどういうイメージ又はどう思っているのか?
前回とは逆パターンのコーナーでーす。
さて、今回のターゲットは前回に引き続きトモユキ!

Q1.リィン
A.掴み所のない奴だけどクラスのムードメーカー。けど盾にされるのは勘弁な!

Q2.アリサ
A.不埒でいつもちょっかい掛けて来るけど、何だが憎めないのよね。えっ……何トモユキ? そんなにストライプが好きなら靴下もお揃いにした方が良いですって!? こ、こここここここここここの変態ッ!!! 『フランベルジュ』!!

Q3.エリオット
A.トモユキってやる事は派手だけどちゃんと周りを見てるからリィンとは違った意味で頼りになるんだよねー。あれ? トモユキ………何で黒焦げで矢が刺さっているリィンを背負ってるの?

Q4.ラウラ
A.不埒で型破りだが同じ大剣使いとして眼の張る所がある。……何? たまには白じゃなく他の色も着てみなさい? ――――『洸刃乱舞』ッ!!!

Q5.ガイウス
A.少し変わっているが一緒の班になってから色んなこと教えてくれる良いクラスメイト。確かこの前教えて貰ったのは『私は! スケール1の○○○○○と!』だったか?

Q6.エマ
A.少し不埒な人ですけど、クラスを賑やかにするに欠かせない人です。……へっ? その眼鏡、度が入っていないのにどうして着けているのかって? そ、それは………ふぁ、ファッションですよ! ファッション!

Q7.ユーシス
A.ふざけた奴だが腕は確かだと言っておこう。………何? 俺が委員長に優しいのは彼女が俺の母上に似ているからじゃないのかだと? ―――そこに直れトモユキッ!!

Q8.マキアス
A.破廉恥極まりない奴だが副委員長としてしっかり注意するつもりだ。時々、父さんの名前が出てくるんだが面識があるのか?

Q9.フィー
A.スケベだけどオヤツくれるからOKー。あの飄々した所は団長に似てるかも。

Q10.ルーティー
A.女の敵! ……そういう所が無かったらカッコイイのに。

Q11.エレカ
A.エッチな所がなければ良い人。ふぇ? 転けてパンツ見られるのが恥ずかしいならパンツ履かなきゃ良いって………そっちの方が余計恥ずかしいです!!!

Q12.イビト
A.普段の行動や言動もあれだがリィンやラウラ以上に見込みがあるかもしれん、何故だが分からんが。気のせいか、アイツから妙に親近感を抱かれているような気がする。

Q13.ゼオラ
A.不埒千万な殿方ですが、まぁ良い所もありますわね。……はいぃ? そのフォーサイドアップは無理があるんじゃないですって? ―――言わないでくださいまし………。

Q14.サラ
A.クラス一の問題児ね、間違いなく。……月に何度も始末書を書かなきゃいけない身にもなってほしいわ。

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