「ふむ・・・・【換装】を使う者か」
「ああ」
俺とエルザはギルドに戻り、先程の襲撃者についてジジイに報告した。
事が事だけに、ギルドのみんなを集めて話を聴いてもらう。
「無論、【換装】を使いこなす者は他にもいる。だが、私が気になるのはあの襲撃者から感じた臭いだ」
エルザの言葉に、ルーシィが「臭いって?」と説明を求める。
「獣の臭い・・・・とでも呼ぶべきか。人の息遣いを感じなかった」
「俺も同意だ。感じた気配が獣のそれだったからな」
「また妙な連中が動き出してるのかも知んねーぞ」
エルフマンの言葉にジジイは頷く。
「ならば、いずれ姿を見せる。焦らぬ事じゃ」
「では、このままで良いと?」
「警戒は必要じゃが、気にする事もあるまい。相手がお前との対決を望むのなら、いずれまた現れる」
「はい」
「あたしも気を付けとく、エルザ。グレイ、ナツにも―――――」
ルーシィがこの件をナツにも伝えておいた方が良いとグレイに言おうとするが、グレイの姿が見当たらない。
「――――あれ、グレイは?」
「グレイさんなら、さっき出て行くのを見ましたよ」
目撃したクリスに「仕事か?」と問うが、クリスは頭を振った。
さっきの様子といい、
「なーんか、面倒な事が起きてるみたいだな」
◆◆◆
「遅い‼」
エルザが苛立たし気に声を荒げる。
気持ちは分からんでもない。
ナツ達が出て行ったのは昼過ぎだが、もうとっくに日が暮れている。
良い子はお家に帰る時間どころじゃない、もうお寝むの時間帯だ。
「ナツは何をやっているんだ!? もうとっくに帰ってきていい時間だぞ‼」
「ドラゴンの話を聴くだけだもんね。確かに遅すぎるかも」
ルーシィも若干心配げだ。
「少し落ち着いたらどうだ、エルザ」
「ちょっと時間が掛かってるだけかもしれねぇだろ」
「ううん、ウェンディも一緒なのにこんなに遅くなるのはおかしいわ」
マカオとワカバの言葉を、ミラが否定する。
「ナツらしくねぇし、小せぇ娘を夜中まで連れ回すのは漢のするこっちゃねぇ」
「漢関係あるか?」
相変わらず雑に使う言葉だ。
「昼間、私を襲撃した者の事も気になる。もしやナツ達も・・・・・・」
「グレイの事も気になるしな」
「グレイにも何かあったと?」
「ま、ちょっと様子がおかしかったからな」
妙に表情が硬かったし。
「それこそ気にし過ぎじゃねぇのか?」
「直接家に帰ったのかも知んねぇだろ」
「さっき念のために見てきたけどいなかったんだよ」
「お前の眼で探せねぇのか?」
「白眼で街中を調べた。少なくともナツもウェンディもグレイも、街にはいない」
グレイもナツ達と一緒にいると見るべきか?
「探しに行くか?」
「そうだな。ルーシィ、来てくれ」
「OK!」
「なら、ジュビアも一緒に!」「俺も付いて行こう!」と、ジュビアとエルフマンが名乗りを上げるが、俺は待ったをかけた。
「お前達は待機だ。敵が判明してない以上、ホームを手薄にしない方が良い」
「むぅ・・・・漢たるもの、家を空ける訳にはいかねぇか」
だから漢関係ねーだろ。
「気を付けてね。祐一、エルザ、ルーシィ」
「おう」
「ああ」
「はい!」
ミラ達に見送られる俺達は、ナツ達が居る筈の西の荒野を目指し走りだす。
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