「ドラゴンを見たことがあるって奴が、この街の近くに来てる」
「ん?」
ナツに話しかけるそんなグレイの声が、俺の耳に届いた。
ウェンディにも聴こえたのか、反応を見せる。
ナツがそのドラゴンはイグニールかどうか聞くが、そこまではグレイも判らないようだ。
「お前、ドラゴンを見たって奴に会ったのか?」
「いや、街で噂を聞いたんだ。ダフネって奴が、ドラゴンの事を得意げに話してるんだと。ただ見ただけじゃ無く、最近、会ったとも言っているらしい」
「ホントか? 本当なんだな!?」
「確かめる価値はあるだろ?」
ナツの横にいるハッピーが、ダフネの居場所を聞く。
「西の荒れ地にある『ライズ』って宿だ」
「よっしゃあ、行くぞハッピー!」
「あいさー‼」
早速行こうとするナツに、ウェンディも「私も行きます!」と付いて行こうとする。
「そのドラゴン、グランディーネかもしれないから」
「じゃあ行ってみるか。お前も来るか、ガジル?」
「行かねーよ。どうせガセネタだろ」
「そんなの分かんねーだろ!」
「そう言って飛び出して、今まで何度ガセに踊らされてきた? ドラゴンの話ってのはな、人を惹きつける。だから利用される。ちったぁ学習しろ」
「お前だって会いたいだろ!? メタリカーナに‼」
「会ってどうしようってんだ? 突然消えちまう勝手な奴なんざ、俺はどうでもいいね!」
とか何とか言ってるけど、本当は会いたいんだろーね。
けどまぁ、今回はガジルが正しい。
実際ガセだし。
イグニール達を見かける事なんて無いだろう。
見かけられるはずが無い。
けど、それ言う訳にもいかないしなぁ・・・・・まぁ、適当に見守るかね。
ナツはウェンディとシャルルも連れて、ダフネとかいう奴を探しに、ギルドを飛び出していった。
そんなナツ達を見送ったグレイに、俺は近づいて声をかける。
「・・・・・何かあったのか?」
「ん?」
「いや、何かお前の様子がおかしく見えたからな」
「・・・・・・気のせいだろ」
俺と目を合わせずに、グレイはカウンターの方へと去って行った。
・・・・・マジで何かあったのか?
「・・・・で、クリス、どうするの? ウェンディ行っちゃったけど」
「クリスだけでも私達と仕事する?」
「うーん・・・・・・」
ルーシィとレビィの言葉に、少しばかり悩んでから、クリスは頭を振る。
「止めておきます。何か抜け駆けみたいですし・・・・・・」
「気にしすぎだと思うけど・・・・・・」
別にウェンディは抜け駆けとか考えないと思うけどな。
「・・・・・・・・・?」
ふと、俺は窓からギルドの外を視る。
何か今、妙な気配を感じたような・・・・・・?
「・・・・・・行ってみるか」
どうせ暇だし。
見聞色の覇気や野性等で感じ取った奇妙な気配を追って、俺はギルドを出た。
◆◆◆
「あ?」
商店街の通りを歩いて気配を追っていると、見知った魔力の高まりを感じ取る。
コレは、エルザか?
「戦ってんのか?」
こんな街中で?
いや、バトル・オブ・フェアリーテイルとかやらかしたから今更か。
兎に角気配を追ってみる。
この先は、路地裏だ。
視ると、エルザが何者かと戦っていた。
エルザが2本の剣を換装で取り出し、襲撃者の剣を破壊する。
「エルザ!」
「祐一か!?」
問題無さそうだが、一応駆けつけておく。
「で、誰だアレは?」
「私も知らん。いきなり襲い掛かって来てな」
上空へと宙返りで跳んだ襲撃者。
フード付きのマントを深くかぶっており、襲撃者の出で立ちは分からない。
だが、その襲撃者は宙で身を捻り体勢を立て直しながら、魔法を使ってきた。
その魔法は、
「【換装】!?」
エルザと同じ魔法。
【換装】自体は、そこまで珍しい魔法では無い。
だからエルザの様に2本の剣を【換装】で取り出したとしても別におかしくは無いのだが、気配が如何にも奇妙だ。
襲撃者は再び襲い掛かって来る。
「螺旋丸ッ‼」
だが、俺の螺旋丸を受けて襲撃者は容易く吹き飛ぶ。
そして、
「ァア?」
吹っ飛んだ先へと進むと、襲撃者の姿は消えていた。
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