クリス・マッケンジーの身体を、無色透明のオーラが包み、切り揃えられた黒髪が逆立つ。
そのオーラを纏い、クリスの戦闘力が段違いに上昇する。
上昇した力を持って、クリスは立ち塞がる黒い騎士相手に殴り掛かる。
黒騎士は繰り出される打撃を全て見切り紙一重で回避し、反撃に出て剣を振るう。
暴風の様に振られるその黒い剣を、クリスもまた完全に見切り、避けて見せた。
一向に当たる気配を見せない様に、黒騎士は大きく後退しクリスから距離を取る。
そしてその剣から膨大な魔力が発せられ、黒い魔力が周囲に迸る。
それに危機感を感じ取ったクリスは、右手の5指に、5本の鎖を具現化させた。
「【束縛する中指の鎖‐チェーンジェイル‐】‼」
クリスの中指に装備された鎖が伸びて、黒騎士に巻き付く。
巻き付いた瞬間、黒騎士が構える剣から発せられていた魔力が突然止んだ。
剣だけではない、その身体からも魔力が発せられなくなり、黒騎士の纏っている鎧が消える。
鎧の下が露わになり、クリスは少しばかり驚く。
アレだけの剣圧を発していたからてっきり男かと思ったのだが、鎧の下に来ていた黒いドレスと、その顔と身体は女のモノだった。
黒騎士は身体能力だけで鎖を引き千切ろうとするが、鎖はギリギリと軋みを上げるだけで壊れる様子は無い。
仕留めるのなら今。
足下に落ちているエルザの剣を拾い、クリスは黒騎士にトドメを刺そうと疾走する。
だが、その走る足を止める事になった。
再び森林の奥から黒い短刀が飛来し、足下に突き刺さる。
それだけではない。
森林の奥から、幾つもの異形のモノが群がって来る。
その姿はヒトデに似ているが、サイズが違う。
成人男性程の大きさのソレは、モンスターと呼ぶに相応しい姿だ。
ヒトデ型モンスターがワラワラと森から出てきたのだ。
右手は鎖を巻いてる黒騎士と繋がっている為動かせず、鎖を解けばまた黒騎士を自由にしてしまう。
この鎖を解く訳にはいかない。
解けばまた、あの膨大な魔力が発せられてしまう。
それを止め乍らヒトデを倒すには、残った左手でやるしかない。
左手に握るエルザの剣でヒトデを迎撃しようとするが、飛来する短刀がそれを邪魔をする。
飛んで来る短刀を剣で弾き落とす。
ヒトデの進軍に対抗する余裕はない。
他の皆も地に倒れ伏していて、戦えるのはクリスしかいない。
だから自分がどうにかするしかないと思っていたが―――――――――
「―――――・・・・・どういう状況だ?」
突然この場に現れて、周囲の状況を探る上田祐一達。
固有結界に閉じ込められていた転生者達が出てきた事で、戦える者が増えた。
.