第68話 連合結成!
ハルジオンの一角に、最近オープンしたレストラン。
『8isLand』。
エイトアイランドと読むらしい。
「いらっしゃいませー、ご注文はお決まりですか?」
そんな声を出すウェイトレス姿のルーシィを一瞥し、俺は自分の仕事に戻る。
俺の仕事は料理だ。
このレストランは、シェフが魔法料理を作っているのだが、魔法料理を作れるコックが不足しているとのことで、俺がシェフの魔法料理を【完成‐ジ・エンド‐】させて厨房を手伝っているのだ。
「ユウイチ君、蒼天ミートソースとホーリーソーダと獣人カレー、それとルビーパフェだ」
「あいよー」
シェフから客のオーダーを受け取って調理を始める。
ちなみにこのレストランの店長であり、シェフでもあるのがこのヤジマさんだ。
元評議院で、俺も若い頃から大変世話になっているご老人で、ジジイの友人。
まぁ、世話になってた理由はもっぱらギルドがやらかした不祥事だが。
「ほい、蒼天ミートソースとホーリーソーダと獣人カレーとルビーパフェ、おまち」
しかしこの魔法料理ってのも意外と便利だな。
食べた人に色々な効果のある特殊状態を付与出来るんだから。
まぁ、ギルドでは出す訳にはいかないか、この店の客を取りかねないし。
そんな事を考えながら、俺は追加の料理を作り始める。
◆◆◆
そして夕暮れ時の閉店時間。
「いやぁ、お疲れさま。スっかし最近の若い子は働きモンだねぇ、またいつでも来なさいよ」
「はい、今日は勉強になりました」
「エルザ、気に入ってるんだ、その服・・・・・・」
もう仕事が終わったにも関わらず、まだ着てるものな、制服。
流石に慣れない仕事だったからグレイは疲れた様子で、ナツは満腹の様だ。
店のモン食い過ぎだコイツは。
賄いでもねぇのにタラフク食いやがって、ヤジマさんじゃなかったら即刻クビにされてんぞ。
「ところでヤジマさん、評議会の方はどうなりました?」
「ん~、ワスはもう引退スたからねぇ・・・・・・」
エルザとヤジマさんの会話に、ナツとグレイは「「評議会!?」」と驚いた。
知らなかったんかい。
「確か、ジェラールとウルティアの裏切りで評議会は解体。今は新生魔法評議会を立ち上げるべく、各方面に根回し中だったか」
以前俺がカルディア大聖堂をぶっ壊した時に集ったのは、あくまでもメンバーが揃ってない為の臨時の集いだったしな。
「君達にも本当に迷惑をかけたね、申ス訳ないよ」
「いえ・・・・・・ヤジマさんは最後までエーテリオン投下に反対されていたと聞きました。行動を恥じて引退など・・・・・・・」
「ワスには政治は向かんよ。やはり、料理人の方が楽スいわい!」
何も無い所でフライパンに乗ってる食材を炒めている。
火を使わなくても魔法で調理できるのは便利だよな。
「ところで、ナツ君、グレイ君」
ヤジマさんに声を掛けられ、2人はビクッとする。
ビビり過ぎだろ。
「これから評議院は新スくなる。ワスはもういない。フェアリーテイルを弁護スる者はいなくなる。その事を! よーく考えて行動スなさい‼」
「行動スます‼」
凄みを効かせるヤジマさんに、ナツとグレイは必死に頷き、ヤジマさんは満足そうに笑った。
◆◆◆
翌日の昼過ぎ。
「何ですか、コレ?」
ルーシィを始めとしたギルドのみんなが見上げるのは、空中に描かれた光の線だった。
光ペンというマジックアイテムを使ったモノだ。
「闇ギルドの組織図を描いてみたの」
「あ・・・・描いたの、オレ」
「改めてみると凄い数だな」
「どうしてまた?」
ミラの返答にリーダスが口を挟むが、エルザとルーシィに軽くスルーされた。
リーダスよ・・・・・・。
「近頃、動きが活性化してるみたいだからね。ギルド同士の連携を強固にしないといけないのよ」
「はぁ・・・・・・」
ルーシィは良く分かって無い感じだな。
「この大きい括りはなんだよ?」
「闇ギルドの最大勢力『バラム同盟』だ」
バラム同盟とは。
『六魔将軍‐オラシオンセイス‐』
『悪魔の心臓‐グリモアハート‐』
『冥府の門‐タルタロス‐』
この3つの闇ギルドから構成される、闇の最大勢力。
其々が幾つかの直属ギルドを持ち、闇の世界を動かしている。
ついでに言うと、バラム同盟とは無関係で独立している闇ギルドも存在している。
「あれ!? アイゼンヴァルトって・・・・・・」
「そうだ。あのエリゴールがいたギルドだ」
「あれはオラシオンセイスってギルドの傘下だったのか」
俺は特に戦ってない相手だったっけ?
「憶えのある名前が多いな」
「正規ギルドだった奴もあんじゃねぇか?」
ま、正規から闇に墜ちる事も間々あるからな。
「雷神衆が潰した『屍人の魂‐グールスピリット‐』もそうね」
「ジュビアもガジル君も、ファントム時代に幾つか潰したギルドが、全部オラシオンセイスの傘下でした」
「笑顔で言うな笑顔で・・・・・・」
呑気なことを言う俺等だったが、ルーシィは「うわ~どうしよう、怒ってなきゃいいけど」と震えていた。
それをワカバとマカオが笑い飛ばす。
「大丈夫だって、気にするこたぁねぇさ。コイツ等噂じゃ、たった6人しかいねぇらしいぜ」
「どんだけ小せぇギルドだっての」
「いや、逆だろ」
「ああ?」
「たった6人で、最大勢力の一角を担っている、だ」
少数精鋭という奴だろう。
「そのオラシオンセイスじゃがな・・・・・・ワシらが討つ事になった‼」
あ、ジジイが帰って来た。
ジジイの発言によって驚愕で硬直する皆だったが、ミラの「あ、お帰りなさいマスター」というあまりにもマイペースな言葉に、みんなズッコケた。
「定例会、いかがでした?」
「違うでしょ‼」
ルーシィのツッコミも様になって来たなぁ・・・・・・。
「マスター、一体どういう事ですか?」
「先日の定例会で、何やらオラシオンセイスが動きをみせてる事が議題に上がった。無視は出来んという事になり、何処かのギルドが奴等を叩くことになったのじゃ」
「またビンボークジ引いたな、じーさん」
「フェアリーテイルがその役目を?」
「いや・・・・・・今回ばかりは敵が強大過ぎる。ワシらだけで戦をしては、後々バラム同盟に此処だけが狙われることになる。そこでじゃ・・・・・・我々は連合を組むことになった!」
「「「「「連合ッ!!?」」」」」
『妖精の尻尾‐フェアリーテイル‐』
『青い天馬‐ブルーペガサス‐』
『蛇姫の鱗‐ラミアスケイル‐』
『四つ首の猟犬‐クワトロケルベロス‐』
『化猫の宿‐ケットシェルター‐』
「5つのギルドが各々メンバーを選出し、力を合わせて奴等を討つ‼」
「俺達だけで充分だろ‼ てか、俺1人で充分だ‼」
「馬鹿者! マスターは後後の事を考えてだな・・・・・・」
ナツの奴、話し聞いて無かったな。
「てか、ちょっと待ってよ・・・・・相手はたった6人なんでしょ? 何者なのよ、そいつら・・・・・・」
ま、普通に考えたら過剰戦力だがな。
それ程の相手という事だ。
「で、ジジイ、メンバーの選出は決めてんのか?」
「すでに考えてある」
確か原作だと、連合は4つでクワトロケルベロスは入ってなかったはずなんだがな。
何かしらの変更があったのか?
「フェアリーテイルから選出するのは5人じゃ。まず1人目は・・・・祐一、お前がフェアリーテイル代表じゃ、皆の指揮を取れ」
「あいよ」
「続いて、エルザ。お主が補佐じゃ」
「分かりました」
ま、聖十にS級魔導士の俺らが参加するのは妥当だろう。
「それから、ナツ、グレイ、お主らにも行ってもらう」
「おう!」
「へっ! 燃えてきたぞ‼」
「そして最後に・・・・・ルーシィ、お主じゃ」
「・・・・・・・・・・・・・・え?」
ルーシィが間の抜けた声を出す。
うん、まぁ、言いたい事は分からんでもない。
これで5人か、原作通りだな。
ま、オマケでハッピーが付くから正確には5人と1匹だが。
「レッドはどうする、付いて来るか?」
「止めとくよ、何かヤベェ相手みたいだし」
ま、それが吉だな。
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