FANTASY☆ADVENTURE   作:神爪 勇人

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第66話 LOVE&LUCKY

 

ある日の早朝のマグノリア。

街の外側に位置する大きな一軒家。

其処が俺のマイホームだ。

 

「最近思う訳よ」

「何がでございましょう?」

 

居間で椅子に座り、お茶を啜る。

飲んでるのは紅茶だ。

俺が話しかけているこのメイドが淹れてくれたものだ。

名は、バルゴ。

エバルー公爵から奪っt―――いや、拝借した星霊の鍵で新たに契約し、俺の星霊となったのだ。

だいたい家事を任せており、こうやってお茶も入れてくれるのだ。

だがしかし、

 

「お前全然出番無くね?」

「それは・・・・御主人様が家にいる時しか私を呼び出さないからなのではないでしょうか?」

「ま、そうなんだけどよ」

 

基本戦闘は俺1人で事足りるし、【土潜り‐ダイバー‐】の魔法も使える。

あまり戦闘で呼び出す機会が無いんだよなぁ・・・・・・。

 

「ま、別にいいか」

 

家事やってくれるから楽だし。

 

「お仕置きですか?」

「いや、どっちかっつーと褒めてんだよ」

「お仕置きですね」

「バルゴさーん、俺の話し聞いて」

 

もうちょっとお仕置き以外のコミュニケーションが取れないモノか・・・・・・。

 

 

◆◆◆

 

 

昼過ぎにギルドにやってきて、あっという間に夕方。

今日も何もしていない。

ずっとダラダラしていた。

いいのか、こんなんで。

 

「良いんだから良いんだろうね」

「何言ってんだお前?」

「いや、暇だなーって思ってよ」

「暇なら仕事にでも行けばいいじゃねぇか」

「そーいう気分じゃねぇ」

「何だそりゃ」

「別に直ぐに仕事に行かなきゃならねぇほど生活切羽詰まってねぇし」

「ルーシィが聞いたら何て言うかな・・・・・・」

 

定位置のカウンターで酒を仰ぐ俺に苦笑するグレイ。

相変わらず半裸だ。

さっきまで服着てた筈なのにな。

 

「しかし、今日は妙に静かだな」

「ま、俺等しかいないからな」

「偶にはこういう日も良いモノね。ちょっと寂しいけど」

 

グレイの言葉に、周りを見渡す。

今ギルドにいるのは俺、グレイ、ミラ、ジュビア、エルフマン、ナツ、ハッピー、ルーシィ、レッドの7人と2匹だけ。

 

「今日は皆どうしたんだろうな?」

 

カウンターテーブルの上に座って、ミラが作ったマフィンを頬張りながら、レッドが首を傾げる。

 

「確か、マカオとワカバがどっちが今週多く稼げるか勝負する為に仕事に行って、カナは二日酔い、レビィは新作の本が出たとかで読みふけってるだろうし、ガジルはギターを新調しに行って、ジジイは近隣のギルドマスターと飲み会に出かけて、後は仕事とか家で寝たりとかしてんだろ」

「みんなホント、ブレねぇな」

「お前もな」

「そうか?」

 

ハッピーがいつも魚食ってるみたいに、コイツも何か甘いモノ食ってるしな。

 

「やっとナツが働く気になってくれたぁぁぁぁぁ‼」

 

何か急にルーシィが泣き叫んだ。

いや、ちょくちょく働いてるぞ、ナツは。

つか、別に仕事は1人で行ってもいいんだぞ。

 

 

◆◆◆

 

 

「で?」

 

夜。

俺は今、ルーシィが借りてる家の前にまで来ていた。

1人ではない、もう1人と1匹いる。

1匹は言うまでも無くレッドだ。

そしてもう1人というのは、

 

「此処までする必要あんのかよ、グレイ?」

「用心に越したことはねぇだろ」

「そうだけどよぉ・・・・・」

「俺等完全に不審者だぞ」

 

物陰に隠れて周囲を窺う俺とレッドは不審者に見えないことも無い。

だが、物陰からパンツ一丁で周囲を窺うグレイは不審者にしか見えない。

ただの変態だ。

 

「いくら誰かに見られてたっつってもよ」

「ストーカーかもしれねぇだろ」

「そうだけどよ。ルーシィだって魔導士なんだし、そこらの奴に狙われた程度で如何にかなるとは思えんが・・・・・・」

 

何だかんだで強敵を倒してきたりしてんだし。

 

「そこらの奴等じゃねぇかもしれねーだろ」

「そこらの奴じゃないなら、ヘタしたらフェアリーテイル全員敵に回す事くらいは承知してると思うんだがな・・・・・・」

 

良くも悪くも、フェアリーテイルは名が売れてる。

ファントムみたいにある程度の戦力を保有してる組織でもない限り、そのギルドに喧嘩を売るような真似は出来ない。

それに、そこらの奴じゃないなら気配で察知できるしな。

少なくとも、そう大きな脅威が街にいる感じはしない。

それにルーシィには、勝手に扉を開けて出る星霊のロキがいる。

ルーシィ何かヤバい事が起きたら、アイツが勝手に飛んで来るだろ。

だから俺はそこまでの心配はしていないのだが、グレイは結構心配なようだ。

 

「おい、隠れろ!?」

「あ?」

 

グレイに引っ張られて、家の前にある物置の影に隠れる。

何だ?

覗き見ると、ナツとハッピーがやって来た。

何か辺りを警戒している。

・・・・・やってる事はグレイと同じだった。

コイツ等もか。

あ、ルーシィが帰って来た。

何やら落ち込んでいる様子だ。

グレイが顔を出して覗くと、ナツとハッピーがこっちに気づいた。

グレイはシッシッと手を払う。

 

「隊長! 不審物を発見!」

「そこかぁっ!?」

 

ナツが跳びかかってくる。

俺とレッドはその攻撃をひょいと避けたが、グレイはナツに踏み潰された。

蛙が潰れたような声を上げるグレイ。

 

「いってーなテメェ‼」

「何やってんだテメェら?」

「グレイ! それに祐一とレッド!?」

「ルーシィを付けてたの、グレイ達だったんだ!?」

「ちげーよ」

 

濡れ衣もいいとこだ。

 

「妙な奴がルーシィに付き纏ってるって聞いたら、ほっとけないだろうが!」

「で、俺とレッドはそんなグレイに引っ張られて、ルーシィの様子を見に来たって訳だ」

「どぇきてるぅ~」

「どういうツッコミだそりゃ!?」

「元々気に入らねぇと思ってたけど、見損なったぞグレイ」

「なんだとぉ!?」

「半裸が趣味な上に、女の子を付け回すなんて、アララ、コレはどうみても変t―――」

 

―――――ゴツッ‼‼

 

あ、ハッピーがグレイに殴り飛ばされた。

 

「そこまで言われちゃ黙ってられねぇ‼」

「俺はそこまで言ってねーぞ」

「うるせぇっ! この炎無駄遣い野郎‼」

「かかって来いや! 氷ヒエヒエ野郎‼」

 

そしてバトルが始まった。

 

「ガキかお前ら・・・・・・」

「人ん家の前で喧嘩しないでよぉぉぉおおおお‼」

 

だが、ルーシィの叫びが馬鹿2人に届く事は無い。

 

「はぁ・・・・・」

 

疲れたように溜め息を吐くルーシィだが、その顔は笑っていた。

 

「フフ・・・・」

「何かあったのか?」

「え?」

「いや、何か塞ぎ込んでた様に見えたからな」

「うん・・・・・ちょっとね」

 

ギルドを出て、此処に帰って来るまでの間に何かあったようだ。

 

「ま、何があったのか知らねぇけどよぉ。ナツもグレイもあんなんだが、アレでも心配してんだ。悩みがあるなら言ってみるといい」

「うん。けど、大丈夫」

「そうか?」

「うん」

 

まぁ、本人が大丈夫というんなら、あまり周りが五月蠅く言う事は無いか。

 

「祐一は心配してくれたりはしないの?」

「あ? 俺?」

「うん」

「あまり」

「うわ、ヒド。なんか冷たくない?」

「いやー、ルーシィだって今までワリと強敵を倒してきたんだし、そこらのストーカー程度なら自力で倒せるだろ」

「そうかもしれないけどさー、もうちょっと心配してくれてもいいんじゃない?

「そうか。じゃあ、心配することにしよう」

「・・・・・・・ハァ」

 

アレ、何か溜め息を吐かれた。

何が不満だったのだろうか?

解せぬ。

 

 

◆◆◆

 

 

翌日。

俺達は仕事に行くことになった。

メンバーは俺、レッド、ナツ、ハッピー、ルーシィ、グレイ、エルザだ。

 

「何の仕事に行くんだ?」

「決めてねぇ!」

「いや決めとけよ」

 

まぁ、でもこの人数だから、わりかし報酬の良いモノじゃねぇとな。

 

「これなんてどうだ?」

 

グレイがリクエストボードに貼られてた依頼書を持ってきた。

 

「脱獄囚ベルベノの捕獲」

「ベルベノって、あのギルド狩りのベルベノか?」

「居場所見つかったんだ」

「うおー! スッゲー魔法使うって奴だ‼ 燃えるぞ‼」

「報酬は200万Jか」

「ってことは1人・・・・・285714.28571・・・・・・」

「割り切れないね」

「ま、その辺は働きに応じて振り分けるか」

「少なくとも20万以上は手に入れる。家賃が払えるな、ルーシィ」

「うん。約3か月分・・・・頑張るよ!」

 

別に俺はそこまで稼ぐ理由無いからな。

テキトーに流すか。

 

「おい、アカリファの話し聞いたか?」

「商業ギルドが武装集団に占拠されたって話だろ? おっかないねぇ」

 

相も変わらず酒を飲んでる、マカオとワカバのそんな話が聴こえて来る。

 

「アカリファ・・・・・」

「あ?」

 

ルーシィが呟く。

何だ?

 

「いや、その武装集団って【裸の包帯男‐ネイキッドマミー‐】・・・闇ギルドだってよ」

「マジかよ!? じゃあ軍隊じゃ手に負えねぇじゃねーか‼」

「最近、また闇ギルド絡みの事件が増えてるらしいのね」

「”物騒”だなぁ・・・・・」

「”武装”集団だけにか? つまんねー」

「誰もんな事言ってねーだろ!?」

「あらあら」

 

マカオとワカバとミラのそんな会話が聴こえてくる。

 

「・・・・・・・・・・」

「ルーシィ?」

 

何やら思いつめた様子で、拳を強く握っている。

眼を閉じ、何かを決意したように見開いた。

そしてマカオとワカバ達に詰め寄る。

 

「アカリファって何処!?」

 

アカリファとやらの場所を聞き出したルーシィは、すぐさまギルドを飛び出していった。

 

「何やってんだアイツは」

 

家賃はどうした家賃は。

 

「ルーシィどうしたんだ?」

「行くぞレッド」

「え?」

 

返事を待たず、俺はルーシィを追いかけた。

 

 

◆◆◆

 

 

「おーいルーシィ・・・・・ん?」

 

つい先ほどまでそこにいたルーシィの姿が見えず、ナツはキョロキョロしだす。

 

「・・・・・いないね。どこ行ったんだろ?」

「ルーシィ?」

 

首を傾げるハッピーとエルザ。

 

「おい、祐一とレッドもいないぞ」

「何?」

 

そして更には祐一とレッドまでいなくなり、みんなはルーシィ達を探し始めた。

 

 

◆◆◆

 

 

ギルドを飛び出したルーシィの姿が見えた。

ま、俺の足の方が速いから当然か。

レッドも俺に並走する形で付いてきている。

取りあえず来てくれたようだ。

 

「アカリファまで行けばいいのか?」

「祐一!? レッドも‼」

 

奔るルーシィに追いついて、横に並ぶ。

 

「レッド、ルーシィを運んでやれ」

「分かった!」

 

レッドはその背中から【翼‐エーラ‐】を出し、ルーシィを抱えて空を飛ぶ。

俺も【舞空術】で続いて飛んだ。

 

「え、ちょっと!?」

「飛んで行った方が速い。何か良く分からんが、急いでるんだろう?」

「俺の【翼‐エーラ‐】なら直ぐだぞ」

「祐一、レッド・・・・・・うん、お願い!」

「あいよ」

 

アカリファ・・・・・確か、こっから西だったな。

俺達は、アカリファへ急行した。

 

 

◆◆◆

 

 

アカリファの街。

商業ギルド『LOVE&LUCKY』。

そのギルドの前には、軍隊や一般の人が集まって騒いでいる。

さっきのマカオ達の話から推測するに、ギルドの職員たちが人質に取られているのだろう。

そして、どうやらルーシィの親父さんも捕まっているらしい。

・・・・・・アレ、捕まってたんだっけ?

長編とは関係ない話だから、あんま憶えてねぇな。

 

「なんとかしなくちゃ・・・・・」

「人が多くて進めないぞ」

「軍隊に話し付けて来ても良いが、人質取られてんなら正面から行くのはマズいな」

 

上から飛んでも目立つし。

 

「下から行くか」

「下?」

「そ」

 

俺は鍵を取り出した。

 

「開け、処女宮の扉・・・・バルゴ‼」

「え!?」

 

魔法陣が出現し、そのゲートからバルゴが飛び出してきた。

 

「御主人様、お仕置きですか?」

「違ぇから」

 

呼び出す度にこのやり取りか。

 

「向こうの建物の下を通りたい。穴を掘ってくれるか?」

「承知しました」

 

言って、バルゴは地面に潜って行った。

俺1人なら【土潜り‐ダイバー‐】の魔法で行けるが、流石にルーシィは連れて行けないしな。

 

「今のって、星霊? バルゴって言った?」

「ああ・・・・・・アレ、言ってなかったか?」

「バルゴって確か、エバルー公爵のとこにいた・・・・・・何か随分姿が違くなかった!?」

 

俺はエバルー公爵んとこで鍵を入手した事と、契約の経緯を説明した。

それを聞いたルーシィはジトッと俺を視る。

 

「アンタ、それって殆ど泥棒じゃないの・・・・・・」

「いやいや、モノのついでだぜ」

 

元々本を盗むために侵入したんだしな。

 

「御主人様」

「おう、戻った・・・・・か?」

 

首だけ地面から出した状態で話しかけてくるバルゴ。

生首に見えんぞ。

 

「なんとか建物の中へ開通できそうです」

「サンキュー、バルゴ」

「お仕置きですか?」

「感謝してんだよ」

「お仕置きですね?」

「・・・・・・・してほしいのか?」

「是非、お願いします」

「そうか。分かった」

 

取りあえず鞭でしばけばいいのか?

 

「こんな時に遊ばないでよ!?」

 

別に遊んではいないんだがな。

 

「しかし、中には大勢の魔導士がいます。我々だけで大丈夫でしょうか?」

「大丈夫だろ。なぁ、レッド?」

「おう!」

「やるしかないの‼」

 

ルーシィとレッドもやる気は充分。

S級魔導士でもいない限りは大丈夫だ。

 

「行くぜ」

 

俺達は、バルゴが掘った穴の中を通って行く。

 

 

◆◆◆

 

 

「開け! 金牛宮の扉・・・・・タウロス‼」

「火竜の翼撃‼」

 

建物の床に穴を空けて飛び出した俺達は、職員に発砲された魔法弾を落とす。

 

「MOOOOOOOOッ‼ 女性に手を挙げるのは許さーん‼‼」

「手っつーか、銃弾撃ち込んでたけどな」

 

相変わらず女が絡むと息巻くな、『乳友‐とも‐』よ。

 

「牛!? 何で牛が‼」

「いや、星霊だ‼」

「コイツ等、どっから湧いて出てきやがった!?」

 

しかし、こいつら殆ど猿顔ばっかだな。

闇ギルドじゃなく動物園にでも就職した方がいいんじゃないだろうか?

 

「そこまでよ!」

 

ルーシィが駆け付けた正義の味方よろしく、ビシィッ‼と指を強盗犯に突き付けた。

 

「テメェら、正規ギルドの魔導士か!?」

「『妖精の尻尾‐‐フェアリーテイル』だ‼」

「大人しくしないと痛い目みるよ! 開け! 巨蟹宮の扉・・・・キャンサー‼」

「『戦闘形態‐バトルフォーム‐』‼」

 

ルーシィが呼び出したキャンサーが強盗犯達を切り裂いていく。

何故か髪を刈っているが。

レッドも身体を大きくする戦闘形態を取り、2足歩行となり敵を殴り飛ばす。

 

「サジタリウス‼」

「アイスメイク『槍騎兵‐ランス‐』‼」

 

今度はサジタリウスを呼び出し、無数の矢の雨で敵を射抜く。

それに合わせる様に、俺も氷の槍を飛ばして敵を殲滅しに掛かる。

 

「テメェら分かってんのか!? こっちには人質が・・・・・・」

「人質とは、此方の方達でしょうか?」

 

強盗犯が視線を向けると、そこにはバルゴが人質を解放しているバルゴの姿が。

 

「メイド!?」

「お仕置きします‼」

 

バルゴが身に付けているその手枷を振り回し、強盗犯を薙ぎ払っていく。

敵も後はリーダーっぽいハゲ1人。

 

「とどめっ‼」

「行くぞルーシィ、合わせろ!」

「OK‼」

 

俺とルーシィは駆けだして、強盗犯リーダーにトドメを刺す。

 

「ダイナミックエントリー‼」

「ルーシィキィィィィイイイイイック‼」

 

俺とルーシィの蹴りが強盗犯の顎を打ち、強盗犯は吹っ飛んだ。

いや、最後は合わせようぜ・・・・・・。

 

「やれば出来るじゃん、あたし!」

「ああ。よくやったな」

 

ま、相手が大したことなかったというのもあるが。

闇ギルドと言っても、そこまで大規模な組織ではなかったみたいだしな。

 

「お父さん!」

 

ルーシィは解放されて喜んでいる職員や客たちを見渡す。

だが、目的の人物が見当たらないのか、キョロキョロしていた。

 

「ありがとう君達!」

「助かったよ!」

 

ワラワラと助けられて人達が押し寄せてくる。

口々に礼を言われるが、ルーシィとしてはそれどころでは無く、早く父親を見つけたいようだが、まだ見つかっていないようだ。

 

「ルーシィ、此処は俺等がやっとくから、お前は親父さん探しに行きな」

「うん。オレと祐一が軍の人達に説明もしとくからさ」

「・・・・・・ありがとう、2人共!」

 

言ってルーシィは人の壁を抜けて、親父さんを探しに行った。

 

「凄いね魔法!」

「私達からも礼を言わせてもらいます」

 

さて、この人達の相手をしないとなー・・・・・・。

 

 

◆◆◆

 

 

「隊長! 何人か逃亡しました!」

「突入ぅぅぅううう‼」

 

どうやら【裸の包帯男‐ネイキッドマミー‐】の連中の一部が逃げ出したようだ。

ま、そっちは軍や評議院に任せよう。

流石にそこまでは仕事でもないのに面倒見切れん。

 

「そろそろ行くか、レッド」

「おう・・・・・オレ、もう疲れた・・・・・・・」

「戦闘よりも人の相手の方が疲れるってのも、何かアレだな・・・・・・・」

 

色々とおかしい。

 

「おーいルーシィ‼ 無事かぁぁぁあああああっ!?」

「五月蠅い奴等がようやく来たか」

 

ナツ達が此処まで追って来たようだ。

そろそろ戻ろう。

 

「君は、ルーシィの友達なのかね?」

 

ナツ達の方へ歩を進めていると、後ろから声を掛けられた。

振り返って声の主を視る。

ルーシィの父親・・・・ジュード・ハートフィリアだ。

彼の視線は、俺の右手の甲にある赤い紋様に向けられていた。

ギルドの紋様だ。

ルーシィが付けている同じ紋様を見て、判断したらしい。

ジュード・ハートフィリアの問いかけに、頷く。

 

「ああ、友達だ。友達で、同僚で・・・・・・仲間だ」

「・・・・・・そうか」

 

俺の顔を見て、奥にいるルーシィを見て、どこか遠くを見る目をするジュード。

 

「娘と・・・・・・ルーシィと、これからも仲良くしてやってくれ」

 

彼は再び俺を見て、軽く頭を下げた。

それはもしかしたら、彼が初めて行った父親としての行動なのかもしれない。

まぁ、彼とルーシィの過去を詳しく知らない身としては、判断出来ないが。

その懇願に対する言葉は、考えるまでも無い。

レッドと顔を見合わせ、俺達は言った。

 

「ああ。当然だ」

「オレ達、仲間だからな!」

 

誰かに言われるまでも無い。

そんな俺達の言葉に満足したのかどうかは分からないが、彼は微笑を浮かべた。

俺達は彼に背を向け、仲間の元へ駆け寄る。

 

「あ、祐一! お前等も急にいなくなりやがって‼」

「悪かったって。急いでたんだよ」

「何があったんだよ!?」

「何がって・・・・・・」

 

詰め寄るナツとグレイの言葉に、ルーシィをチラッと見る。

 

「ルーシィは何でもねぇっつーけど、何でもねぇ訳ねぇだろ‼」

「ま、本人が何でもねぇっつーなら、何でもねぇんじゃねぇか」

「何だそりゃ!?」

「それより、早く仕事に行こうぜ!」

「何言ってるの、キャンセルしちゃったよ」

「マジか」

 

ま、俺は別に困らねぇが。

 

「どーすんだ、ルーシィ?」

「うーん・・・・・どうしよっか?」

「聞いてんの俺なんだがな・・・・・・」

 

 

.


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