FANTASY☆ADVENTURE   作:神爪 勇人

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このお話は、主人公達が『鉄の森‐アイゼンヴァルド‐』との戦いを終えた帰りに起きた話で、此処での第12話と第13話の間の話である。


第65話 祐一、村を喰う

 

「あー! もう‼」

 

ルーシィの絶叫が響く。

まぁ、無理も無い。

 

「ハッピー! アンタまだ迷ったでしょ!? 歩いても歩いてもマグノリアの街に着かないじゃないの‼ この方向音痴猫‼‼」

 

此処は、太古の地震によって無数の断層が走る、通称『蜘蛛の巣谷』。

此処に迷い込んで帰ってこられ無くなった奴が多いとか何とか。

 

「またって失礼しちゃうな、この間は迷わなかったよ。今回が初めてなんだ」

「初めてでも何でも迷ったには違いないじゃない・・・・・・」

「「「「「ハァ・・・・・・・・」」」」」

 

みんなの溜め息が重なる。

まぁ、この人数で歩いてい乍ら道に迷ってんだから無理も無いが。

今この場にいるのは、俺、ナツ、ハッピー、ルーシィ、グレイ、エルザ、ジジイの7人。

地方ギルド定例会の帰りだ。

 

「腹減ったなぁ・・・・・」

「言うな、余計腹減るだろうが」

「減ったもんは減ったんだよ!」

「だから減った減った言うんじゃねぇぇ‼」

 

こんな時にでも喧嘩とか、ナツとグレイは元気だな。

 

「確かに、減ったのぅ」

「ああ、腹減ってしょうがねぇよ」

 

ジジイに同意する俺。

ナツとグレイが「「だぁかぁらぁぁああっ‼」」と叫ぶ。

いや、だって減るもんは減るじゃん?

しゃあねぇよ、自然の摂理だよ。

 

「よせ」

 

エルザが制止の声を出すが、その鎧越しの腹からグウウゥゥゥゥゥゥゥゥという音が。

 

「!」

「今、グウゥゥゥって鳴ったぞ。グウゥゥゥって」

「鳴ってない、空耳だ」

「す、すげぇ言い訳だな、オイ」

「無理すんなってエルザ。飲まず食わずで、もう一晩明けてんだ。腹減って当然だろ?」

「私は減らない」

「オイオイ・・・・・・」

 

そんな意地張らんでもなぁ。

 

「うおぁぁああああああ!?」

「何騒いでんだよ、ハッピー」

「ナツ! アレ見て‼」

 

騒ぐハッピーに何事かと、ハッピーの目線の先・・・・崖下を覗き見る。

そこにいたのは、何とも色とりどりみどりの羽の生えた魚だった。

魚が空を飛んでいる。

何だ、アレ?

どっかで観たような気が・・・・・・・。

 

「幻の珍味、羽魚だ‼」

 

ああ、そうだ、確かギルドのリクエストボードに依頼書が張ってあったな。

捕獲1匹につき30000J。

魚一匹に結構値が張る。

 

「アレ滅茶苦茶美味しいんだ!」

 

ハッピーが涎を垂れ流しながら「美味っ美味っ美味っ美味っ‼」と、気が狂ったように叫び続ける。

ヤバい薬でもヤッてるみたいだぞ、オイ。

 

「幻の珍味・・・・・・」

「羽魚・・・・・・」

「美味そうだな・・・・・・」

 

ハッピーの解説を聞いて、グレイ、エルザ、ナツもゴクリと喉を鳴らす。

 

「でかしたハッピー、よく見つけたのう・・・・・・」

 

ジジイにいたっては泣いてるし。

 

「みんなお腹空きすぎです」

 

グウウゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・・・・

 

「お前もな、ルーシィ」

「はい・・・・・・・・」

 

グウウゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・・・・

 

「アンタもよ、祐一」

「うん、さっきからそう言ってる」

 

何でもいいから食いたい。

 

「よーし、釣るぞぉぉぉおおおおお‼」

「・・・・・って、どうやって釣るのよ?」

「祐一、釣竿出してくれ」

「あいよ」

 

俺は【換装】で釣竿を人数分取り出した。

こんな事もあろうかと、というやつだな。

みんなで崖から釣り糸を垂らすという、微妙に間抜けな絵面を晒しながら釣りを開始する。

 

「クッソー、コイツ等釣れそうで釣れねぇなぁ・・・・・・」

 

ナツがボヤく。

お前、普通の釣りでもあんま釣れないからな。

 

「オイラ、頑張るぞぉぉぉぉぉ‼」

「なんか、あんまり美味しそうに見えないんだけど・・・・・・」

「黙って釣れ、この際喰えればいい」

「そ、そんなに腹減り!?」

「ま、魚なんだし大丈夫だろ」

 

大抵焼けばどうにかなる。

 

「羽魚食べたいぞ! 美味しいぞぉぉぉぉ‼ 幻の珍味だぞぉぉぉおおおおお‼‼」

 

ハッピーはスゲェやる気だな。

 

「飽きてきました」

「意志弱っ!?」

「早過ぎだろ・・・・・・」

 

まだ5分も経ってねぇぞ。

 

「だって全然釣れないんだもん」

「お腹空いてるんでしょ? だったら頑張ろうよ。あきらめないで!」

 

ルーシィがとてもいい笑顔でハッピーを励ました。

 

「ルーシィの意地悪ぅぅぅうううううう‼」

「えー‼ 励ましたんですけどぉぉおおおおおおおおお!?」

 

ハッピーが泣いて逃げだした。

何やってんだか。

 

 

 

◆◆◆

 

 

それから30分後。

 

「難しいわね・・・・・・」

「結局1匹だけか」

 

ちなみに釣ったのは俺だ。

ナツが一瞬で丸焼きにした。

 

「ハッピー食えよ」

「でもオイラ1人だけじゃ・・・・・・」

「そんなのちょびっとずつ分けてくったら余計腹が減るわっ」

「遠慮するなー、食えっ食えっ」

「そうだな、ハッピーなら魚1匹で充分腹は膨れるだろうし」

「そう!? じゃあ頂きまーす‼」

 

目を輝かせながら魚を食らうハッピー。

みんなは腹をグゥグゥ言わせてる。

俺もだけど。

 

「こんな魚を美味しそうに食べられるなんて、アンタ本当に幸せね・・・・・・」

「不味ぅぅぅうううううううううううううう!?!?!?」

「不味いんかいっ‼‼」

 

まぁ、珍味だしな。

もしかしたら特殊な調理法が必要なのかもしれん。

特殊調理食材的な。

 

 

◆◆◆

 

 

羽魚が食材にならないと思い、俺達は諦めて先へ進む。

今は荒野の様な所を進んでいた。

 

「それにしても・・・・・・」

「腹が・・・・・・・」

「減ったのう・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「どうしたの、祐一?」

「岩とか食えねぇかなぁ・・・・・・・・?」

「いや無理無理無理無理ッ!?」

 

岩に手を伸ばしかけた所をルーシィに慌てて止められる。

ハッ!? 危うく食うとこだったぜ‼

そして空腹のまま歩き続けていると。

 

「村だ‼」

「家だ‼」

 

村を見つけた。

 

「だったらたぶん!」

「ああ‼」

「食いもんだぁぁぁぁああああああああああ‼‼‼」

 

本能の赴くまま、俺達は一心不乱に突撃する。

はしたない?

空腹の前では、些細なプライドなんざゴミだ!

 

「っ?」

 

だが、村の中心部辺りに辿り着いたとき、違和感を感じた。

 

「誰もいねぇぞ」

「何か、静かな村ね・・・・・・」

「昼寝でもしてんじゃねぇのか?」

「村人全員がか?」

 

にしては、気配すら感じないんだが・・・・・・・。

 

「おーい! 誰かいねぇかー!?」

「お腹減り減りですぅ! 誰か食べ物くださーい‼」

「そこの腹減り猫、露骨過ぎだから!」

「食い物寄越さねぇと村事食いつぶすぞー‼」

「脅すな‼」

 

だって、腹減ったもんよー。

しかし、どれだけ叫んでも、俺達の声が木霊するだけだった。

 

「ホントに昼寝か?」

「さもなきゃ、村中酔っぱらって寝とるかのう?」

「それはフェアリーテイルですから・・・・・・」

「ハッハァアッ! そうとも言うのう‼」

 

ま、確かに大勢酔いつぶれて昼間から寝てる時あるけどな。

 

「えーいメンドクセェ! 力づくでも何か食ってやる‼」

「おい、そりゃちょっとした強盗だろう!?」

「って、お前もその気だろうがッ‼」

 

ナツとグレイが走り出し、どっかの家に突撃しに行った。

・・・・・・気持ちは分からんでもないが、犯罪は勘弁してくれよ。

 

「ま、俺達も行くがな」

「いや、私達はナツとグレイを止めに行くだけだから」

「でも、食い物を訳に貰いにも行くんだろ?」

「そりゃ、まぁ・・・・・・」

 

物乞いみたいな真似だが、背に腹は代えられんのだよ。

 

「おーい、誰かいねぇか!? 何か食わせてくれ頼む‼」

 

ナツが家の扉をドンドン煩く叩くが、中からの応答が無い。

ドアノブに手を伸ばす。

回す。

開いた。

鍵はかかって無い様だ。

 

「やっぱ誰もいねぇな」

「兎に角食いもんだ!」

 

テーブルの上に、パンと湯気だったスープが置いてある。

ん?

 

「よっしゃまだ食える!」

 

ナツがパンに手を取り、匂いを嗅いだ。

 

「いただきまー・・・・・」

「待て」

「・・・・・何だよ!?」

 

食べようとするが、エルザが止めた。

いや、疑問を持てよナツ。

 

「様子がおかしい」

「ああ、ついさっきまで飯食ってたみたいだ」

「スープに湯気立ってるしな」

 

エルザの言葉に、グレイと俺が同意する。

 

「この家の連中、何処に消えたんだ?」

「知るかよ。取りあえず食おうぜハッピー!」

「あい!」

「待て‼」

「は、はいっ!?」

 

エルザが凄みを効かせて、ナツはパンを手放した。

 

「先に村に様子を調べる必要がある。今まで我慢してたんだ、もう少し我慢―――」

 

グウウゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・・・

 

「エルザ、お腹鳴り過ぎ・・・・・・」

「説得力0じゃな」

「ナツ達はキノコか何かを探して来い。村の食べ物には触るな! 私と祐一とマスターは、その間に村の中を調べる」

「スルーする気だな・・・・・・」

 

まぁ、腹減り過ぎてツッコむのも面倒だからどうでもいいが。

ナツは「あーあ、分かったよ。行くぞハッピー」とハッピーを連れて村の外を探しに行った。

 

「何故キノコ?」

「どっか生えてると思ったんじゃねぇか?」

 

まぁ、空飛ぶ魚よりかは見つけられそうな気もするが。

 

 

◆◆◆

 

 

俺とエルザとジジイは、別れて村の中を探す。

何か手掛かりとか無いモノか?

 

「・・・・・・・特に変わった様子は無いな」

 

かと言って、ゴーストタウンって感じもしないしな。

人がいた様子はあるし。

特に何も見つからず、俺は村の中心部に向かった。

 

「どうだった?」

「なーんもねぇよ」

「こっちもじゃ、誰もおらん」

 

エルザ、ジジイと合流する。

2人も成果無しか。

 

「この村は廃村じゃ」

「というよりは、つい最近まで人が暮らしていた形跡がありました」

「最近っつーか、ホンの10数分前くらいだな。さっきの家にあったスープからは湯気が出てたし、鍋に火をかけてた家もあったぜ」

 

まるで突然消えたみたいだな。

 

「ん?」

 

エルザは足元を見た。

何だ?

 

「・・・・・・何か妙な溝があるな」

 

眼でその細い溝を追ってみると、ずっと村の奥まで続いていた。

 

「単なる石の隙間じゃありませんね。明らかに意図的に掘られている」

 

線を辿って進んでみる。

 

「此処には別の線があるな」

 

線が十字になっていた。

 

「何だ?」

 

何か、呻き声の様なものが聴こえてくる。

そして、地に掘られている溝が赤く輝き出す。

 

「エルザ!」

 

あ、ナツ達が戻って来た。

てか、ハッピー、お前何で頭にキノコ生やしてんだ?

 

「気を付けろハッピー!」

「あい」

 

まぁ、今何か非常事態っぽいからなぁ、話は後だ。

 

「ええええ!?」

 

ルーシィの驚愕の声が聴こえて目を向けると、建物が赤く光り出し、その形を変えていく。

 

「何だこりゃ!?」

「どういうこと!?」

「オイラ家が動くとこ初めて見たよ!」

「何でそこがツボ!?」

「これは・・・・・・」

「建物だけじゃねぇな。地面も蠢いてやがる」

 

まるで生き物みたいに。

 

「やるぜ、じいさん」

 

グレイはやる気なのか、身体から冷気を発しており、いつでも魔法を発動出来る状態にしている。

だが「待てぃ‼」とジジイが待ったをかけた。

 

「な、何でだよ!?」

「高い所へ登るんじゃ。確かめたい事がある」

「みんな来い、離れるなよ」

 

ジジイとエルザに付いて行く形で、俺達は村の崖上まで登った。

そして村を見下ろす。

 

「うわー」

「訳分かんねぇぞ、コレ!?」

 

街の建造物が全て魔物に変化しだした。

 

「マスター、アレは魔法陣では?」

 

エルザの言葉に、視線を集中させる。

確かに、村の地に巨大な魔法陣が描かれている。

アレは、さっきの溝か?

 

「ああ、ワシたちが見つけたあの溝は、魔法陣の一部じゃ」

「やっぱりか」

「そしてこの魔法陣は、かつて禁止された封印魔法・・・・アライブを発動させるためのモノじゃ」

「アライブ?」

 

ジジイは「アレを視ぃ」と言い、俺達は魔物に目をやる。

 

「一目瞭然、本来生命の無いモノを生物化して、動かす魔法じゃ。村の者はその禁断の魔法を発動させ、逆に化け物たちの餌食となった」

「でも、どうしてそんなに危ない事を?」

「ここは・・・・・闇ギルドの村だ」

 

ルーシィの疑問に、エルザが答えた。

 

「何!?」

「先程、ある家の納屋を調べていたら、魔法に使用する道具を幾つも見つけた。いずれも、まともな魔法のものでは無かった」

「闇ギルドのことじゃ、どうせ良からぬ企みをして、そのせいで自滅したのじゃろう」

「良くある話だな」

「じゃがっ‼」

「あ?」

「これぞ不幸中の幸い」

「じっちゃん、何だよソレ?」

「奴等は生き物だと言うた筈じゃ」

「・・・・・・おい」

 

まさかとは思うが・・・・・・・。

 

「大抵の生き物は・・・・・・食える‼」

「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

まぁ、ルーシィの驚愕は当然のリアクションだ。

ナツとグレイは黒い笑顔を浮かべているが。

 

――――グウウゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・・・

 

と、俺達の腹の虫が泣いた。

 

「よっしゃあ食うかああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼‼」

「うわぁいご飯の時間だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼‼」

「この際、味がどうのなんて言ってられねぇなァッ‼‼」

 

猛るナツとハッピーとグレイだが、エルザが我先に「フッ‼」と勢いよく崖から跳び下りた。

 

「エルザそんなに腹減り!?」

「飯だ飯飯‼‼」

「ちょっ、ちょとぉぉぉぉぉぉぉ!?」

「ワシの分も頼んだぞぉぉぉ‼」

 

ふむ。

 

「んじゃ、俺も行くわ」

「祐一まで腹減り!?」

「おうよ」

 

食わなきゃやってられん。

俺は跳び下りて、適当な魔物に狙いを定める。

取りあえず焼くか。

 

「火竜の咆哮ッ‼‼」

 

ナツの魔法で魔物を火炙りにして焼き殺す。

大抵の食いもんは火ぃ通しゃどうにでもなるだろう。

 

「後は食いやすいように切り刻んで‼」

 

換装で剣を出し、魔物を切り刻む。

一口大の大きさに切り分ける。

・・・・・・・しかし、コレは何なんだろうな?

肉なのか?

 

「・・・・・・まぁ、喰えばわかるか」

 

バクリと一口で食べる。

モグモグモグ・・・・・・・・。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「「「「不っ味うううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?!?!?」」」」

 

俺とナツとルーシィとグレイが同時に食べて同時に叫んだ様だ。

何だコレ!?

ゲロま不味すぎだろ!?

 

「何だアレ!? じっちゃん、あんなの食えねぇぞ!?」

「不味いにも程があるぞ!?」

「ああ、食べられたモノじゃないな」

「あたしに食べさせてから言わないでください!?」

「ルーシィ、エルザに喰わされたんか・・・・・・」

 

鬼だな、エルザ。

ああ、今更か。

 

「うぉあああぁぁぁぁぁぁ!?」

 

ドガァンッ‼と、後で破砕音が。

ハッピーが岩壁に激突していた。

何やってんだアイツは?

 

「あ」

「お前キノコ取れたぞ」

「そんなことより、どうして誰も止めてくれなかったんだよぉ‼ 酷いよナツどうして!?」

「ハァ?」

「遊んでたんじゃねぇのか?」

 

あ、ハッピーが白くなった。

・・・・・・まぁ、どうでもいいか。

 

「しかし参ったな、こうマズくては幾ら空腹でも・・・・・・」

「元々化け物食おうってんだからなぁ」

「あー、クソぅ・・・・・喰えねぇって分かったら本気で腹減って来た」

「調理法が特殊とか?」

「いや、流石にどんな調理法を使っても無理だろ・・・・・・」

 

それもそうか。

元々が家とかだもんなぁ、この魔物。

 

「うわぁぁぁぁあああああああ!?」

 

ハッピーの悲鳴。

どうやら魔物がまた現れた様だ。

 

「不味い奴等めぇ・・・・・・」

「グレイ、ソレどっちの意味だ? 味か? 状況か?」

「どっちもだよ!」

 

囲まれてるもんな、空腹状態で。

 

「腹が立つ」

「腹が減ってるからな」

「・・・・・・・・・・・・」

「分かったよ悪かったよ、睨むなよエルザ」

 

腹減って気が立っているようだ。

いや、いつも睨んできてるか。

 

「ま、纏めてぶっ倒すか!」

 

みんな其々魔物の討伐に当たる。

 

「多重影分身の術‼」

 

からの~

 

「「「「螺旋多連丸‼‼」」」」

 

無数に分身した俺の無数の螺旋丸が魔物を吹っ飛ばす。

 

「キリがねぇな」

 

数多過ぎだろ。

 

「こ、今度は何!?」

 

辺りが紫色に輝き出した。

いや、魔法陣は赤く輝いている。

いや、赤だけじゃない。

黄色や茶色にも輝いている。

多重魔法陣か?

 

「コレは・・・・・・・」

 

魔物が地面に吸い込まれたと思ったら、今度は俺達が立っている崖が崩れ始める。

 

「逃げろ‼」

 

エルザが叫ぶが、時既に遅く、俺達は地へと落下した。

 

 

◆◆◆

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・」

「ナツ、溜息デケェよ」

「だって、腹減ったんだもんよ・・・・・・マジで」

「オイラもう歩けないよ・・・・・・」

「だから自慢げに羽を使うな羽を!」

「何か訳わかんない・・・・・・」

「マスター」

「あん?」

「先程の説明では納得いきません」

 

先程。

それは魔物に異変が生じ、俺達が崖から落ちた時の事だ。

 

 

◆◆◆

 

 

「お前ら、何やってたんだよ?」

「魔法陣を作ったら、化け物が現れて・・・・・みんな、奴等に【接収‐テイクオーバー‐】されちまって・・・・・・」

「ではお前達は、あの化け物の中に?」

「ゲェ! あたしちょっと食べちゃった!?」

 

あの魔物の正体は、人間だった。

今俺達は、大勢の人間・・・・・この村の村人らしき連中と話している。

さっきの異変は、魔物が人間の姿に戻ったモノだったのだ。

村の姿も、無くなっている。

まぁ、村全体が魔物になってたからな。

 

「余所者のアンタたちが村に入って来て、魔法陣が刺激されて動いたんだ」

「もうあの魔法陣が動く事は無い」

「「「「「え?」」」」」

 

ジジイの言葉に、村人・・・・・いや、闇ギルドの連中か。

そいつらは目を丸くした。

 

「何でだよ、じっちゃん?」

 

みんなの疑問を、ナツがジジイに問う。

 

「細かい事はどうでもよろしい!」

 

だが、如何やら話す気は無いらしい。

 

「兎に角、テイクオーバーが解けただけでもありがたいと思う事じゃ。コレに懲り、二度と妙な真似をせんと誓うなら、評議会への報告は無しにしてやる」

 

ジジイは「どうじゃ!?」と闇ギルドに問うた。

連中は「あんなおっかねぇ目に遭うのはもう御免だ!」「すみません」「もう二度としません」と反省し、無事に事件?は解決した。

 

 

◆◆◆

 

 

それがさっきまでの出来事だ。

 

「化け物がやられたことで、魔法陣のスイッチが入り、全てを消去しようとした。でもマスターは・・・・・・」

 

崖から落ちた俺達を助け、闇ギルド達の【接収‐テイクオーバー‐】を解き、そして魔法陣そのものを消滅させた。

エルザが「そうですね?」と尋ねるが、ジジイは「さってのー?」と惚ける。

次にエルザがジジイから俺に視線を向けた。

 

「そういえば、祐一?」

「あ?」

「お前がその右手を使えば楽に解けたんじゃないか?」

「・・・・・・料理に右手でぶん殴る訳ねぇだろ」

 

写輪眼も使わなかったから、アイツ等が魔物じゃ無くて人間なんて気づくかっつーの。

 

「ま、何でも良いんじゃねぇの、それは?」

「ん?」

「そうじゃのう、祐一の言う通りじゃわい」

「【接収‐テイクオーバー‐】とか闇ギルドとかどうでもいいんだよ」

 

だって、現状は何も変わってない。

 

「「「「「「腹減ったぁぁぁぁあああああああああああああああ‼‼‼」」」」」」

 

この空腹問題は何も解決してねぇんだからな!

 

 

 

.




グルメ細胞会得前の話だからなぁ・・・・。

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