FANTASY☆ADVENTURE   作:神爪 勇人

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第62話 上田祐一VS・・・・に、なったりはしなかった

 

「ラクサス‼」

 

カルディア大聖堂に突撃した俺は、

 

「雷竜の咆哮ォォォォォォォォォッ‼」

「火竜の咆哮ッ‼」

「鉄竜の咆哮ッ‼」

「天輪・繚乱の剣ッ‼」

 

本気のラクサスと戦うナツ、ガジル、エルザの姿を視て・・・・・何か完全に出遅れた感じがした。

 

「おいぃっ! 何でお前らが戦ってんだよ‼ 俺がやるっつろーがっ‼‼」

「「うるせぇ黙ってろッ‼」」

「あ”あ”ん!?」

 

ダブルドラゴンが叫ぶ。

 

「おいエルザ‼」

「邪魔だ、向こうに行ってろ」

 

エルザは視線すらこっちに寄越さない。

 

「・・・・・・おい、ラクサス?」

「消えされェェェェェェェェェェェェェェェッ‼」

 

え、無視? コイツから俺に喧嘩吹っ掛けといて無視ですか?

え、何コレ、何のイジメ?

え、泣いていいの俺?

泣けばいいの俺?

 

「よーし、分かった」

 

そんなに俺をハブりたいのなら、目にモノ見せてやろうじゃないか。

 

「六道仙人モード!」

 

からの~

 

「尾獣玉ァッ‼」

 

両の掌を前方に翳し、その掌にチャクラを圧縮。

その大きな黒いエネルギーの塊を、戦ってる4人目掛けてぶっ飛ばす。

ギョッとする4人だが、もう遅い。

 

――――――カルディア大聖堂が、消し飛んだ。

 

 

◆◆◆

 

 

「・・・・・・それで?」

 

目の前に座する老人たちは揃って重い溜め息を吐いた。

そして一番偉い立場にいる老人が、頭を押さえて俺を高い席から見下ろす。

 

「マグノリアのカルディア大聖堂消滅の件・・・・・何か弁明はあるかね?」

「僕は悪くない」

 

俺が今いるのは、魔法評議院フィオーレ支部。

そこで魔導裁判に掛けられていた。

 

「その他にも、マグノリアでの破壊行為が目撃されているのだが?」

「僕は悪くない」

 

俺がカルディア大聖堂ごと全員ぶっ飛ばして、俺は即刻評議院に連行された。

ナツ達はたぶん今頃病院だろうな。

ラクサスはジジイに説教されているだろう。

 

「・・・・・・それで何で俺が裁判に掛けられてんだよ、納得いかねぇんだけど?」

「だからカルディア大聖堂を消滅させた件だと言っておるだろうがッ‼」

 

ダンッ‼と、評議院の1人が机を叩く。

 

「まったく、新生評議院を発足させる前にこんな事件を起こすとは・・・・・」

 

評議院の皆は頭を抱えていた。

まぁ、新生評議院の議員もまだ決まっておらず、一時的に前メンバーが呼び戻されたのだから無理も無いが。

 

「まぁ、あんま考え込むと禿げるぞ?」

「誰のせいだと思っている!?」

「誰のせいなんだ?」

「お前だ上田祐一ッ‼」

「えー」

「何でそんな『その回答は無いわ』と言わんばかりの顔が出来る!?」

「俺のせいだとでも?」

「当たり前じゃろう!?」

「僕は悪くない」

「「「「お前が悪いわぁぁぁぁぁぁぁッ‼」」」」

 

いや、俺は喧嘩を止める為に動いたから。

神鳴殿だって止めたから。

俺は悪くないから。

僕は悪くない。

 

「あー、もう、いいだろーがどうでも。どうせこの後お前ら評議院の雑用押し付けられて解散だろ? もういいんだよ、そういうの分かり切ってるから。この裁判も茶番みたいなもんじゃねーか、取りあえずやっときますみたいな感じじゃねーか。もう賞金首とか闇ギルドとか適当に狩っとくから帰らせろよ解放しろよ俺この後ファンタジアの準備しなきゃなんねーんだからよー。ホント空気読めよこの年寄り共、俺はお前らみたいに隠居してねぇんだよ、忙しいんだよ、働いてんだよ、街を救った英雄に何だこの仕打ちは。俺を掴まえたことは見逃してやるから反省しろよお前ら」

「「「「「何でお前が上から目線なんだよォッ!?」」」」」

 

日を2日跨いで裁判が続き、結局いつもの如く、評議院の使いっパシリをやらされることで話が付いた。

裁判後、ヤジマさんのファミレスで飯食いながらトークに興じ、俺はマグノリアへと帰った。

 

 

◆◆◆

 

 

「ヤベェ、完全に遅れた」

 

マグノリアに戻って来てみれば、もう夜だ。

ファンタジアも始まってしまってる。

もう客側に回ってやろうか。

 

「あ」

「あ?」

 

街路を歩いていたら、街を去ろうとしているラクサスと出くわした。

 

「祐一か」

「何だ、泣いてんのお前?」

「泣いてねーよ」

「目、潤んでるぞ」

「うるせー」

 

フンと鼻を鳴らして、ラクサスは去ろうとする。

そんな仲間に、

 

「またな、ラクサス」

 

握り拳に人差し指と親指を立てて、手の甲を晒す。

 

「結局今回も暴れられなかったからな。次はお前とタイマンでやってやるよ」

「ナツ達ごと俺をぶっ飛ばしといて何言ってんだ・・・・・・」

「あんなの戦った内に入らねーよ」

「そうかよ。まぁ、俺もあれで負けたなんて思いたくねーしな」

「精々次会う時まで強くなってろよー」

「抜かせ」

 

言って、ラクサスは歩き出す。

俺はラクサスの姿が見えなくなるまで、手を挙げたままだ。

いつか昔、何処かの誰かが始めた事で、ギルドに定着したこのポーズ。

 

たとえ姿が見えなくとも

たとえ遠く離れていようと

俺は、俺達はいつでもお前を見てる

お前をずっと・・・・見守っている

 

 

.




最初は戦わせる予定だったけど、瞬殺しか頭に浮かばなかった。
ダメだな、なんか・・・・・・

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