エーテリオンが放たれ塔が崩れて、石で造られた楽園の塔が水晶の塔に変わった。
この水晶がエーテリオンを吸収したのだ。
上でナツとジェラールの魔力がぶつかっている。
既に戦闘中か。
もうこれ以上のイレギュラーは無いと思うが、一応急いで行っとくか。
◆◆◆
「――――――【七星剣‐グランシャリオ‐】‼‼」
7つの光柱が天から降り注ぎ、塔へと落ちる。
隕石にも相当する破壊力を持った魔法。
元はRAVEでジークハルトが使ってた魔法だがな、まぁ、前作からのサービスみたいなもんだろうが。
ようやく戦場に辿り着いた。
ナツが倒れている。
「おーい、死んでるか、ナツ?」
倒れているナツの元へ向かう俺に、ジェラールは手出しする様子は無い。
「手ぇ出す気無しか。随分余裕だな?」
「上田祐一か・・・・・死んだと思ったんだが、結構しぶといな」
「俺の数少ない取り柄だからな」
「ククク・・・・転生者というのは、どいつもこいつも軽口が得意なようだ」
「ああ?」
コイツ、転生者の存在を知ってんのか?
ジャック・ザ・リッパーを寄越した事から可能性はあるとは思ったが、誰が教えた?
ジャック・ザ・リッパーは常時『狂化』の状態で、意思の疎通は不可能、会話も出来ない。
ジャック・ザ・リッパーではない、他の誰かか?
「ジャック・ザ・リッパーをお前に寄越した奴から聞いたのか?」
「んー・・・・当たらずとも遠からずだな」
「ん?」
「よーく俺の気配を探ってみろよ」
言われて、俺はジェラールの気配を強く観察し、感じ取る。
「! お前、まさか・・・・・・!?」
「クククク・・・・そうだ!」
大袈裟に笑うジェラールから感じる気配。
コイツのこの気配、間違いない。
「・・・・・・・転生者」
「ああ、憑依転生ってやつだよ」
憑依転生・・・・・原作キャラの身体を乗っ取り転生する。
コイツはその転生者か。
「まぁ、実際はちょいと違うんだがな」
「あん?」
「いや、これ以上話してやる義理はないか」
まぁ、後は【解析‐アナリシス‐】で調べるしかないか。
「ナツ・ドラグニルと遊ぶのにも飽きて来たし、次はお前の相手をするとしよう」
ジェラールの魔力が大きく膨れ上がる。
流石は聖十大魔道の一角、その魔力量は伊達ではない。
俺が戦闘態勢を整えたその時、俺の足が掴まれた。
「ナツ?」
目をやると、ナツが俺の右足首を掴んでいた。
既に気絶寸前な癖して、俺の足首を掴む力は相当なモノだ。
「・・・・・・俺が、やる」
フラフラしながら立ち上がり、ナツはそう言った。
「アイツは・・・・・俺が、やる‼」
声は力強いが、その足はガクガクで、KO寸前のボクサー同然である。
「無理してねぇで寝てろよ、俺がやってやっから」
「ふざけんな・・・俺がやるんだよ!」
・・・・・・・まぁ、昔っから言い出したら効かない奴だしな。
俺は嘆息し、その場に座る。
「言っとくが、負けそうになったら乱入するからな」
「おう‼」
俺はナツが戦ってる間、奴を観察して情報を集めるとしようか。
「おいおい正気か!? ナツ・ドラグニル程度の奴が俺を倒せると思ってるのか?」
心底愉快そうに嘲笑の笑みを浮かべるジェラールに、
「案外勝てるかもしれねぇぞ」
俺は不敵に笑って言ってやった。
ジェラールはバカにするように肩を竦めているが、まぁ、そうだろうな。
原作を知っているなら、キャラの情報も把握してるもんだ。
情報を知っていれば勝率は高い。
勝つこともそう難しくは無いだろう。
だが、ナツ・ドラグニルはこの世界の主人公だ。
主人公力を持つ奴は、時に此方の予想を超えて来るものだ。
まぁ、それも絶対なものでは無いが、やってみる価値はあるだろう。
「勝って来いよ、ナツ」
ナツは駆け出し、ジェラールに襲い掛かった。
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