FANTASY☆ADVENTURE   作:神爪 勇人

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第49話 ジャック・ザ・リッパー

「おお祐一よ、死んでしまうとは情けない‼」

 

そんな声に、俺は目を覚ます。

 

「いや、何処の王様だアンタ・・・・・・」

「思ったより早い目覚めだったね」

 

辺りは何もない白い空間。

存在するのは、俺と、俺の目の前にいる、俺を転生させた女神だけだ。

 

「つか、ちょっと待て。俺が此処に居るって事は・・・・・・・」

「ああ、流石に3度目だと理解も早いね。そう、君はまた死んだのさ。まぁ、前回は仮死状態だったけどね」

 

死に過ぎじゃね、俺?

特に最近。

ファントム戦でも一回心臓止まったしな。

 

「今回は普通に死んだんだけど・・・・・・」

「ちょっと待て、俺は何で死んだんだ?」

 

背中に千本桜景厳の花弁が一枚刺さったのは見た。

だが、俺はそもそも威装・須佐能乎と六道仙人モードの衣で身体を守っていたはずだし、あんな花弁一枚に貫通させられるとも思えん。

仮に貫通したとしてもだ、薄い刃一枚で背中を刺されただけで死ぬとは思えん。

別に心臓を貫かれた訳でもないし、仮に貫かれても、俺には幾つかの回復再生能力がある。

早々死ぬことなんざ無いはずだ。

俺の言葉に女神は「あー」と、何とも言えない顔をした。

 

「何だよ?」

「いや、ねぇ・・・・君のそのチート能力も、奴の能力の前には何の意味も無かったなぁと思ってね」

「・・・・・・何の能力なんだよ?」

「まぁ、その説明の前に、君を殺した奴について話そう」

 

一旦間を区切って、女神は解説する。

 

「もう察しているだろうけど、君を殺したアイツは、以前に私が言った殺して欲しい奴だ」

 

だろうな。

それは直ぐに分かったぜ。

 

「奴は、とある神が転生者達を殺すために送り込んだ刺客でね。死ぬまで転生者を殺しに来る、何とも厄介な奴なのさ」

 

厄介で済ませられそうにないけどな。

 

「奴も転生者なのか?」

「そうだとも言えるし、違うとも言える」

 

ハッキリしないな。

 

「奴は君みたいに死んで別世界へ転生したんじゃなくて、色々改造されて生み出された存在だからね」

「改造?」

「そう。奴の正体・・・・・君も名前くらいは知ってるだろう」

 

女神は、その名を口にする。

 

「―――――――ジャック・ザ・リッパー」

「切り裂きジャック!?」

 

昔、ロンドンで殺人を犯した凶悪犯。

名探偵コナンの映画でも出て来たな。

 

「ジャック・ザ・リッパー・・・・・1888年8月31日から11月9日の約2ヶ月間にロンドンのイースト・エンド、ホワイトチャペルで少なくとも売春婦5人をバラバラにしたが、犯人の逮捕には至らなかったという巨悪犯。署名入りの犯行予告を新聞社に送りつけるなど、劇場型犯罪の元祖。当時の定義づけによる精神病患者から王室関係者まで、その正体については現在まで繰り返し論議がなされているが、1世紀以上経った現在も犯人は不明。切り裂きジャックは売春婦を殺人の対象に選んだ。犯行は常に公共の場もしくはそれに近い場所で行われ、被害者はメスのような鋭利な刃物で喉を掻き切られ、その後、特定の臓器を摘出されるなどした。そのような事実から解剖学的知識があるとされ、ジャックの職業は医師だという説が有力視されている。ただ、このような事件が起きていた間に、被害者の女性たちが警戒心もなく犯人を迎え入れていた形跡があることから、実は女性による犯行とする説もあった。また、犯行は1年以上続いたという説もある。「ジャック」とはこの場合特定の人物の名前を示すわけではなく、日本でいう「名無しの権兵衛」のように英語圏で呼び方の定まっていない男性を指す名前である」

 

長々とした説明をどーも。

 

「現実の彼、もしくは彼女のジャック・ザ・リッパーは今でも謎が多い。けどまぁ、それは割とどうでもいい」

「どうでもいいのかよ」

「ああ、このジャック・ザ・リッパーが本物かどうかも含めてね。重要なのは、コイツの能力と、コイツが君を殺そうとしている事さ」

 

まぁ、そりゃそうだわな。

 

「まず、奴の『特典』から話そう。奴の特典は『全斬魄刀』『超人的な身体能力』『魔法無効化』『斬拳走鬼』『直死の魔眼』『解析‐アナリシス‐』『虚化』『瞬閧』の8つだ」

「何とも贅沢な・・・・・・」

 

言って女神は、何も無い宙に文字を浮かび上がらせる。

特典の解説の様だ。

 

『全斬魄刀』

全ての斬魄刀を使える。

『超人的な身体能力』

説明不要。

『魔法無効化』

全ての魔法を無効化する。

『斬拳走鬼』

剣術・格闘術・歩法・鬼道のスキルを身に付ける。

『直死の魔眼』

そこに存在さえしていれば、神様さえも殺すことが出来る瞳。

『解析‐アナリシス‐』

対象を観察し、情報を得る能力。

『虚化』

ホロウ化する能力。

『瞬閧』

白打と鬼道を練り合わせた高位戦闘術。

 

やっぱ斬魄刀を使える能力があるんだな。

 

「・・・・・・ああ、そうか」

 

何で俺がアッサリと死んだのか分かったわ。

 

「気づいたようだね。そう、君がモブの雑魚キャラみたいにアッサリ死んだのは、ジャック・ザ・リッパーの【直死の魔眼】の力だよ」

 

死を視る魔眼。

元は月姫や空の境界といった作品に出て来る能力だ。

そこに存在してさえいれば、神様すら殺すことが出来る。

威装・須佐能乎や六道仙人の衣を簡単に突破し、俺を花弁の一突きで殺せたのは、死の点を突いたからか。

俺には、死の線や死の点は見えないからな、全く気付かなかったぞ。

 

「しかも【魔法無効化‐マジックキャンセル‐】って・・・・・・もしかして最初の攻撃が全く効いていなかったのって、斬魄刀で捌いたとかじゃなくて、単に効いて無かっただけか!」

「君が使たのって、雷炎竜の咆哮、風遁螺旋手裏剣、100連ナイフネイルガン、かめはめ波、ボイスミサイル、ポイズンマシンガンだったっけ。魔法無効化といっても、魔力だけでなく気も無効化してるみたいだし、もしかしたら気力や魔力等のエネルギーから発生した術技全般を無効化するのかもね」

「マジか・・・・・・・」

 

少なくとも、遠距離攻撃に関しては、ほぼ100%無効化されるな。

確か原作でも本人に対する攻撃に関しては殆ど無効化されてたな。

空間に作用する幻術とかまでは無効化出来ないみたいだが、そんなもんは能力者の力量次第だろうし、楽観は出来ない。

まぁ、それでも有効的な攻撃手段が物理攻撃なのは確かか。

 

「更に【解析‐アナリシス‐】で君の情報を読み取って、君の特徴や弱点まで見切ったみたいだからね。使う術技まで御見通しなんだろうさ」

「・・・・・・・特徴? 弱点って?」

「自覚無かったか。まぁ、自分の弱点を正確に把握してる奴なんて少数か」

 

俺の弱点・・・・・・・・。

 

「・・・・・・【完成‐ジ・エンド‐】でコピーしまくって、能力や術技を使い分けられていない? 振り回されてる的な?」

「それくらいの自覚はあるようだね。まぁ、弱点の1つではある」

 

そりゃあ、まぁ、ギルドに入って少しした後ギルダーツとバトってボコボコにされて、能力のこと指摘されたもんなぁ。

 

「・・・・・て、1つ?」

「そう、君が口にした『能力に振り回される』ってのは、あくまで弱点の1つだよ」

「他にもあるってのか・・・・・・」

 

ちょっと考えてみよう。

 

「・・・・・・・・・・・・・女好き?」

「・・・・・・それは弱点というか特徴じゃないか? 別に女性が人質に取られたから手も足も出せないとか、女性相手は戦えないとかって訳じゃないだろ?」

「楽して生きたい?」

「それは弱点じゃなくて、君のダメな性格ってだけだろう。ホント、ダメ人間だな君は」

 

否定出来ないがヒデェ言われようだぜ。

 

「君は、自分の戦い方に特徴がある事に気が付いているかい?」

「自分の戦い方? 癖ってことか?」

「そんな所だ」

 

俺の戦い方に、癖?

 

「・・・・・・・相手の能力を【完成‐ジ・エンド‐】でコピーして、相殺ないし上回る攻撃を繰り出す、か?」

「確かにそれも特徴だけど、それは君のというより、コピー系の能力者ほぼ全員に言えることだね。まぁ、能力者によっては相手と同じ力は敢えて使わないなんて奴もいるけど」

 

それもそうか。

はたけカカシ然り、ブレイド然り、アークライト然り、黄瀬涼太然り、メタモン然り、めだか然り・・・・・・・何か1人戦闘キャラじゃない奴が混じってるが、気にしないでおこう。

1人ってか、1匹人型ですらない奴いるし。

 

「君が今まで戦ってきた相手を思い出してみなよ。ああ、ナツ・ドラグニルとかの仲間内の喧嘩は除いてね」

 

今まで戦ってきた相手。

ルーチェ・クライン。

孫悟空。

エリザベス・マスタング。

ガジル・レッドフォックス。

ジュビア・ロクサー。

アリア・・・・・は、途中でエルザに交代したから除くか。

鮫島篤。

そして、ジャック・ザ・リッパー。

主に戦った敵だ。

内2人が原作キャラ・・・ファントム戦で戦った奴等。

後は全員転生者だ。

 

「じゃあ、其々の戦いを思い出してみな」

 

女神に言われた通り、かつての戦闘を振り返る。

まずはルーチェ・クライン戦。

能力【一方通行‐アクセラレータ‐】で、特攻して来た俺の攻撃をベクトル操作の反射で跳ね返そうとしたが、俺の能力【幻想殺し‐イマジン・ブレイカー‐】の一撃に沈んだ。

 

「この頃、君はまだ転生したばかりだったね。だから使える力の選択には限りがあったし、相手の能力を知らない状況での戦闘なら、そう悪い選択では無かった」

 

写輪眼で相手の動きを見切り、何か能力を使っても幻想殺しで打ち消す。

ステータスMAXの身体能力で、力任せだけでイケるからな。

 

「まぁ、ルーチェ・クラインが自分の【一方通行‐アクセラレータ‐】の力を過信していたってのもあるけどね。まさか【幻想殺し‐イマジン・ブレイカー‐】なんて限定的な状況でしか力を発揮しない能力を特典に使ってるなんて思わなかったんだろう。その辺は君の運が良かったんだろうね」

 

ほっとけよ。

2人目は、孫悟空。

特典は1つだけ、『孫悟空になる』というモノで、記憶を除けば孫悟空そのものだ。

性格も、能力も。

写輪眼で攻撃を見切っての肉弾戦。

攻撃を避ける事は容易かったが、螺旋丸の攻撃が大して効いて無かったな。

かめはめ波で反撃されたし。

勝負の結果も、まともに戦えば時間が掛かるから、写輪眼の幻術で眠らせて戦いを終わらせたのだ。

まともな攻撃でダメージが通るとも思えなかったし、特殊な攻撃の方が通りやすいと思ったからな。

原作でも格闘技や気功術よりも、超能力的な力の方が効きやすかった記憶があるし。

まぁ、何度もやったり時間を掛けたりすれば攻略される恐れが高いから、一度で決めれるようにしたが。

 

「そうだねぇ、この勝負も君の勝ちだった。けど、幻術でただ眠らせただけで、まともに戦ったのは最初だけ。あのまま闘ってたらどうなっていただろうね?」

 

・・・・・・・・・・・・。

 

「まぁ、いいさ。次はエリザベス・マスタングだったね」

 

そうだ、ガルナ島で戦ったエリザベス・マスタング。

彼女はハガレンが好きで、衣装もアメトリス軍の軍服だったな。

能力もハガレンだったし。

瞬間錬成、ホムンクルスの能力、ロイの炎の錬金術等々、結構なチート能力を持った奴だ。

人の事は言えんが・・・・・・。

確か、何やっても拮抗して戦いが長引きそうだったから、途中で切り上げたんだっけか。

 

「ルーチェ・クラインと孫悟空もチートだけど、ルーチェ・クラインのチート能力なんて【一方通行‐アクセラレータ‐】くらいだろう、異性相手なら【無垢なる美貌‐イノセント・チャーム‐】もチートだけどね。孫悟空は能力がチートというか、戦闘力がインフレを起こすからね。それでもやれる事は原作の彼と大差無いけど」

 

そうだな。

言われてみれば、能力を複数操る転生者との戦闘はエリザベス・マスタングが初ってことになるのか?

 

「そう。そしてこの戦闘も孫悟空同様、最後まで戦る事は無かった」

 

・・・・・・・・・・。

 

「次はガジル・レッドフォックスだね」

 

ファントム戦初だな。

その相手が、ガジル・レッドフォックス。

結果は俺の圧勝。

まぁ、どんな魔法使うのかは知ってるし、滅竜魔導士ならその属性を吸収出来るから、そいつの滅竜魔法を【完成‐ジ・エンド‐】すればそう簡単に負ける事は無いしな。

 

「次、ジュビア・ロクサー」

 

ジュビアに関しては語る事が何もないな。

俺の特典【魅惑の究極美貌-アルティメット・チャーム‐】で魅了し、修了。

滅多に使わなくなったがな、この能力。

 

「ホント驚くほどゲスな能力だよね。君18禁の作品にでも出た方が良かったんじゃないかい?」

 

偶にそう思う。

 

「次は鮫島篤。コイツは君にとって、かなり印象深いんじゃないかい?」

 

そうだな。

なんせ、仲間内の喧嘩や試合を除けば、初の完全敗北だからな。

相手の攻撃を【完成‐ジ・エンド‐】で返してたが、グルメ細胞の悪魔の力によって無効化、隙が出来て大ダメージを受けた。

相手の攻撃を避け、隙を突いて攻撃するも、肉を切らせて骨を断つ戦い方で無理やり俺に攻撃を当てて来た。

脳が揺れて意識が薄れ、動きが止まった瞬間連続攻撃が叩き込まれて、そのまま俺は敗北した。

 

「そう、君が以前此処に来たのがその時だ」

 

その時に、この女神に痛覚を遮断されたんだったな。

二度目の戦闘は、戦闘前に準備を整えて戦いに挑んだ。

あの時に出来た最強の形態で挑んだのだ。

相手が動く前に先制し、多重影分身の物量で攻め、グルメ細胞の悪魔の動きを封じ、神威で完全に無防備になっている背中へ攻撃を当てた。

それで倒せたかと思ったが、そんな簡単に行くことも無く、鮫島篤は全身をグルメ細胞の悪魔に変える。

あの状態になった鮫島篤には、【幻想殺し‐イマジン・ブレイカー‐】しか通用せず、影分身の物量で攻め抜いたのだ。

倒したは倒したが、最後は能力の副作用で自滅した。

まぁ、それでも勝ちは勝ちだがな、俺の。

1勝1敗だけども。

 

「そうだね、確かに君の勝ちだ。鮫島篤は死に、生き残ったのは君なんだから」

 

そして最後は、ジャック・ザ・リッパー。

多重影分身での攻撃が全く効かず、俺の攻撃も双魚理で返され、【無限の剣製‐アンリミテッド・ブレイド・ワークス‐】でコピーした千本桜も天鎖斬月で切り払われ、千本桜景厳に対して同じ千本桜景厳の物量で攻め込もうとして、背後から死の点を突かれて死んだ。

 

「此処までが、君の今までの戦いの全てだ」

「・・・・・・で、俺の癖ってなんだよ?」

「まだ分からないのかい? 仕方ない奴だ・・・・・・」

 

やれやれと女神は肩を竦める。

ちょっとイラッとくる。

 

「それじゃあ、『教えて! アモル先生‼』のコーナーを始めるぜ」

 

言って、女神は何処からか取り出した眼鏡を装備して、クイッとした。

てか、この女神の名前アモルっていうのか、初めて知ったわ。

 

「まぁ、分かりやすく説明する為に、まず君の戦闘結果を2つに分けようか」

「2つ?」

「勝ったか、負けと引き分けか、だ」

 

つまり、ルーチェ戦・悟空戦・ガジル戦・ジュビア戦が勝ち。

後のエリザ戦・篤戦・ジャック戦が負けと引き分けって事か。

 

「まず君が、何故この4人に勝てたのかだ」

 

ルーチェは【幻想殺し‐イマジン・ブレイカー‐】で一発KO。

悟空は幻術で眠らせた。

ガジルは鉄の滅竜魔法をコピーして無効化。

ジュビアは魅了で戦わずKO。

結果だけ見ればこうだな。

 

「最初の一戦、ルーチェとの戦いは、ハッキリ言えばまぐれだ」

「エライはっきり言いやがるな」

「だってそうだろ? お互いにどんな力を持っているのか分からない。だから君は写輪眼と幻想殺しで対処しようと、ルーチェはベクトル操作で反射しようとしたんだから。それは決して間違った選択じゃあないけど、その結果、とあるシリーズの原作のように、上条当麻が一方通行を殴り倒したように、KOした」

 

・・・・・・確かにそうだな。

俺のステータスMAXの腕力と、肉体は大して強くないルーチェが防御もせずに拳を受けて、簡単に倒した。

 

「そして後の3戦は、君が情報を持っているから勝てたんだ」

「情報・・・・・・」

 

孫悟空、ガジル・レッドフォックス、ジュビア・ロクサー。

原作キャラの情報は持ってて当然だが、孫悟空も転生者とはいえ、特典が孫悟空になるだから、原作キャラそのままと言っても過言ではないな。

 

「君は原作キャラの情報を持っていたから、その3人には簡単に勝てた。ガジル・レッドフォックスは彼の魔法を【完成‐ジ・エンド‐】させれば、彼の魔法は完全に防げる。ジュビア・ロクサーは女性だから君の魅了の特典で簡単に落とせた。仮に魅了しなくても、あの時点で君は鮫島篤から覇気を【完成‐ジ・エンド‐】させていたんだから、彼女の身体に攻撃を当てて倒す事は容易かっただろう。孫悟空もそうだ。純粋な格闘戦なら相当強いだろうけど、ギニューと身体をチェンジされたり、ブウに飴玉にされたりしただろう。飴玉の時はベジットで、飴玉状態でも圧勝だったけど、結構簡単に特殊な攻撃はくらうんだ。まぁ、特殊な攻撃というのは分かりづらいし見破りづらいモノがあるから、コレは孫悟空に限った事じゃないかもだけどね。それでもあの世界観のキャラでは、特殊な攻撃はまず当たる。後に自力だったり仲間に助けられたりで、攻略はされるけど」

 

もう悟空が誰と戦ったかなんて、Z入ってからの奴しか覚えてないけどな、俺。

ヤムチャ、天津飯、ピッコロ、ベジータ、フリーザ、セル、ブウくらいしかポッと浮かんでこないぜ。

ま、とにかく俺がこの3人に勝ったのは事前情報が有ったからというのは間違いじゃない。

孫悟空も、事前に【孫悟空になる特典】だと聞いていたし、悟空がどんな能力や技を持っているかは大体把握してるしな。

 

「後は、エリザベス・マスタング、鮫島篤、ジャック・ザ・リッパーだ」

 

エリザは引き分け、篤は1勝1敗、ジャックは敗北。

全員が転生者だ。

 

「君の戦い方には特徴がある。それはコピー系能力者の特徴でもある、相手の攻撃を同じ能力で相殺する事が多い、だ」

 

エリザベス・マスタングの能力は、彼女と同じ能力を展開させることで彼女の動きを封じたが、それは同時に自分の動きも止める事になった。

お互いに攻めきれず、決め手が無かったからな。

攻撃も防御も見切りもスピードも回復も、何でも出来るもの。

原作通りの攻略は、自分にも対応されるから、簡単に動くことが出来なかった。

 

「そうだね、エリザベス・マスタングとの戦いが正にそれだ。最後まで戦えばどちらかが死んだかもしれないけど、コレは君にも彼女にも戦う理由が特に無かったから、簡単に終わらせることが出来たけど、あのまま闘っていたらどうなっただろうね?」

 

エリザの賢者の石のエネルギーがどの程度あるのかによるな。

先にエネルギーが尽きた奴が敗北すると思う。

 

「鮫島篤。彼との戦いに負けた最大の理由は、グルメ細胞の悪魔に有効的な攻撃手段が【幻想殺し‐イマジン・ブレイカー‐】しか無かった。まぁ、コレは手札によるモノだから仕方がない。そして大した問題じゃない」

「そうなのか?」

「重要なのは、君がジャック・ザ・リッパーに負けた方だからね」

 

まぁ、アイツに殺された訳だからな。

 

「そして、君が敗北した理由も此処にある」

「あん?」

「君の癖の話だよ。エリザベス・マスタングとの戦いは引き分けだったけど、君はこの2人に負けただろ」

「まぁ、うん・・・・・・・」

「確かに、相手と同じ技、能力を使っていれば、負ける事はあまり無い。能力にもよるけど、大抵はエリザベス・マスタングとの戦いの様に、拮抗状態に持っていき、負けない状況に持ってはイケるだろう。勝つことも出来ないけどね。いや、能力を完全なモノに昇華させ、完成させる【完成‐ジ・エンド‐】なら、勝つ可能性の方が高いだろう」

 

まぁ、相手が自分の能力を十全に扱えていれば判らないがな。

 

「だが、ジャック・ザ・リッパーには敗北した。まぁ、君が相手の能力をコピーしたのが【斬魄刀】位だからというのも理由だが、それ以上に相手の情報を持っていないというのが理由だろうね」

 

事前に相手が【直死の魔眼】を持っていると知っていれば、少なくともあんな簡単には死ななかっただろう。

 

「まぁ、それは良い訳なんだけどね」

「あん?」

「だってそうだろ? 戦う相手の事前情報を持っている方が、本来なら稀だと思うけど?」

「・・・・・・・・・・・まぁ、確かに」

 

鮫島篤に至っては、特典の内容を聞いても負けたしな。

 

「手札が無い、情報が無い戦いなんて寧ろ当たり前だろう。君が負けた理由ではあるが、だからそれはあまり大した問題じゃない」

「・・・・・・結局俺の癖って何なんだよ? 相手の力をコピーするだけじゃないんだろ?」

「君が鮫島篤とジャック・ザ・リッパーに繰り出した攻撃を思い出すといい」

 

相手の攻撃をコピーで相殺する以外での攻撃・・・・・・・。

 

「・・・・・・影分身?」

「そう。影分身での物量で攻めるのが、癖の1つだ。けどまぁ、それならナルトもやってるから、そこまでダメな事じゃない。数で攻めるなんて基本だしね」

 

じゃあ他の攻撃か・・・・・・?

うーん・・・・・・・・・?

 

「君、情報の無い初戦の相手には、相手と同じ攻撃を返す以外だと遠距離攻撃を繰り出すって気づいてるかい?」

「・・・・・・・・言われてみれば、そう、か?」

 

確か鮫島篤相手に最初に出した手は・・・・・・ナイフだ。

これはコピーだな・・・・・いや、攻撃する前に相手の特典情報は聞いたから、情報無しって訳じゃないか。

あ、でも2戦目の序盤は遠距離攻撃が多かったか。

ジャック・ザ・リッパー戦は、相手がどんな手を使ってくるのか分からなかったから、遠距離攻撃で様子を見たのは確かだが。

 

「後、影分身を先行させて、自分は一番後ろで様子を見るというのも癖だ」

「そりゃまぁ・・・・・・そうだが」

 

けどそれって・・・・・・。

 

「ああ、別に悪い事じゃないよ。どんな力を使ってくるか分からない相手に、離れて攻撃して様子を見るのも、分身体を先行させて様子を見るのも、基本と言えば基本だ。けれど、君のその行動が癖になっているから、ジャック・ザ・リッパーの【解析‐アナリシス‐】で見抜かれたのさ。それだけじゃない、自分のコピーを生み出す影分身なら、死の線や死の点も本体と同じ。それは威装・須佐能乎と六道仙人の衣も同じだ。分身体で君の線と点を把握して、無数の分身体の中で一番後ろにいるオリジナルの君の後ろに花弁の刃を潜ませて、一撃で静かに点を刺す。それで君は、簡単に殺されたのさ」

「・・・・・・・・・」

 

グゥの音も出ない。

言われてみれば1パターンな気がするな、影分身で攻めるのも。

 

「だが、次はそうじゃないだろ?」

「ん?」

「だってこれで君は、敵の情報を得たんだぜ? 勝つ見込みはあるだろ?」

 

まぁ、俺もコレでジャック・ザ・リッパーの能力が使える訳だからな。

少なくとも簡単には負けんだろ。

 

「じゃあ、講義も終わった事だし、さっさと倒して来いよ」

「・・・・・・・いや、どうやって?」

 

何か長々と抗議されたけど、俺死んだんだよな?

 

「え、生き返らせたりしてくれんの?」

「普通はそんなことしないんだけどね。転生先で死ぬのは、君の自己責任さ。今回は運が良い」

「運?」

「相手があの刺客だからという理由と、生き返らせる手段を君が持ってるからさ」

 

そんなもん、持ってたっけ、俺?

死の点を突かれたのなら、再生能力も意味を成さないはずだが。

 

「鮫島篤を倒した時に拾ったモノがあるだろう」

「・・・・・・・ああ、このビー玉みたいな宝石か?」

 

ポケットから取り出す。

ずっと入れてたけど、何なんだコレ?

 

「それはね、君達転生者の核とも言うべきモノさ」

「・・・・・・・・・えーと、まどマギに出て来るアレみたいな?」

「いや、別に魔女化したりなんて事は無いから安心したまえ」

 

それならいいが。

 

「それには命を吹き込む力があってね。他にも力があるんだが、今はそれはいい。その説明はジャック・ザ・リッパーを倒した後にでも説明してあげるよ」

「この宝石で、死んだ俺達を転生者にしたって事か」

「まぁ、そういうことだね」

 

手に持つ宝石が、大きく光り出した。

光が視界を覆い尽くし、俺の意識がぼやけてくる。

 

「最後に教えておくよ。ジャック・ザ・リッパーはさっき言った神様特典以外に、彼が使える固有の能力がある。その内容までは分からないけど、特典だけを注意していれば良いって訳じゃないからね。気を付けるんだよ」

 

―――――――そして、俺の意識が再び途切れた。

 

 

.


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