塔の上を目指すナツを追って、俺は廊下を走っていた。
気配で上に居るのは分かるんだが、階段が何処か分からねぇんだが・・・・・・。
あ、そうだ、音で探ればいいじゃねぇか。
「エコーロケーション‼」
『反響定位』と呼ばれ、音や超音波を発し、その反響により周囲の状況を知ることが出来る。
鮫島篤から【完成‐ジ・エンド‐】した力の一つ。
これにより俺は、数十㎞先にある物体の距離や大きさまで細かく知る事が可能だ。
「・・・・・・・・・・・・コレは」
階段の位置を知ることが出来た。
塔の構造も把握出来た。
そして、俺の居る場所より少し上の階で、ナツが誰かと闘っている気配がする。
ウォーリー、ミリアーナだろう。
ハッピーもそこに居る様だ。
下からこっちへ向かってきているエルザ、グレイ、ルーシィ、ジュビア、シモン、ショウの気配。
そして、塔の最上階に居る気配・・・・・コレはジェラールだろう。
そして今、ジェラールが居る場所で、気配が更に増えた。
瞬間、もわもわもわっと、壁や天井の至る所に唇が浮かび上がって来た。
気持ち悪っ!
『ようこそ、みなさん。楽園の塔へ』
壁から浮かび上がった口が、そう喋った。
この声は・・・・・浪川大輔?
じゃねぇや、ジェラールだ。
ジェラールが、塔全体に聞こえるように話しているのだ。
『俺はジェラール、この塔の支配者だ。互いの駒は揃った。そろそろ始めようじゃないか・・・・・・楽園ゲームを』
こっちが勝っても何の旨味も無いゲームだけどな。
『ルールは簡単だ。俺はエルザを生贄とし、ゼレフ復活の儀を行いたい。すなわち、楽園への扉が開けば俺の勝ち。もしそれをお前達が阻止出来れば、そちらの勝ち。ただ・・・・それだけでは面白くないのでな、此方は4人の戦士を配置する』
「・・・・・・やっぱ、気のせいじゃねぇみてぇだな」
そう、ジェラール以外の気配が4つある。
内3つは、確かジェラールが雇ったのか配下にしたのか分からない闇ギルド、髑髏会の特別遊撃部隊『三羽鴉‐トリニティレイヴン‐』だったか。
問題なのは、後1つの気配。
何者だ、コイツ?
『そこを突破出来なければ、俺にはたどり着けん。つまりは、4体8のバトルロワイアル』
謎の人物と『三羽鴉‐トリニティレイヴン‐』で敵が4人。
俺、ナツ、グレイ、ルーシィ、エルザ、ジュビア、シモン、ショウで8人か。
・・・・・・・ハッピー、お前ジェラールに俺達の戦力としてカウントされてないようだぞ。
『最後の1つ、特別ルールの説明をしておこう。評議院が【衛星魔法陣‐サテライトスクエア‐】で、此処を攻撃してくる可能性がある。全てを消滅させる究極の破壊魔法【魔導精霊砲‐エーテリオン‐】だ』
・・・・・・流石にあの規模の攻撃は神威でも飛ばせないし、右手で防ぐのも無理だよなぁ。
『残り時間は不明。しかし【魔導精霊砲‐エーテリオン‐】の落ちる時、それは全員の死、勝者無きゲームオーバーを意味する。さぁ、楽しもう』
その言葉を最後に、壁や天井から生えていた幾つもの口は消え去った。
確か原作だと、ナツ、ハッピー、シモン、グレイ。
ルーシィとジュビア、ショウとエルザが其々『三羽鴉‐トリニティレイヴン‐』と戦うはず。
てことは、だ。
「俺は残りの1人とやるべきだよな」
しかし誰だ、この残りの1人?
転生者の気配じゃなさそうなんだが・・・・・・・。
「ま、行けば判るか」
何かとてつもなく嫌な予感がするが、四の五の言ってはいられねぇ。
1人増えた事で、既にイレギュラーは起きてるんだ。
行くしかない!
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