「エルザは何処だ?」
ターバンの様に布を頭に巻き、顎に鉄製の防具の様なモノを張り付けている大男が、俺達を見下ろしながらそう言った。
つか、ホントデケェな。
俺よりも頭3つ、4つ位上だぞ。
「何処だ?」
「誰なんだテメェ・・・・・」
「つか、無視してんなよ」
腕を掴まれてるのにも関わらず、不遜な態度で問いを繰り返す大男。
どうやら相当神経が太いようだ。
確かエルザの昔の仲間の・・・・・シモンだったか、コイツ。
ドリルとか使うんだろうか?
いや、中の人的にはナツなんだろうが。
まぁ、どうでもいいことだが。
「グレイ、ジュビア、お前らエルザのとこに行け。コイツの相手は俺がやる」
シモンの言葉から、エルザが目的というのは察せられる。
直ぐに理解した2人はエルザの元へ向かおうと足を動かそうとするのと同時に、「ん?」とシモンは首を傾げた。
「もう見つかっただと? ほう・・・そうか」
頭に指を付けて何者かと話している。
この動作は知っている。
フェアリーテイルでもウォーレンが使っている魔法『念話‐テレパシー‐』だ。
仲間と会話しているのだ。
「じゃあ・・・片付けていいんだな?」
シモンがジロリと俺をにらんだ瞬間、景色が暗転する。
カジノ内が突然暗闇に包まれた。
「え!?」
「な・・・なんだコレは!!?」
ジュビアとグレイの驚愕の声が聴こえた。
停電、ではない。
コレは魔法だ。
「闇の系譜の魔法――――闇刹那」
瞬間、俺が掴んでいるはずの腕が、スッと消えた。
「なに?」
振り払われたのではない、急に消えたのだ。
何が起きた?
つか、何で見えない?
鮫島篤が持つ『超五感』を得た俺の目は、電磁波すら視界に捉える。
暗闇だって問題無く見渡せる。
にも拘らず見えない。
明かりがどうこうじゃなくて、魔法による力だからか?
「あ?」
徐々に視界が晴れる。
景色が明るくなってきた。
「!?」
「光が戻りました‼」
グレイとジュビアの姿がハッキリと見える。
だが、それだけだ。
「おい、アイツはどうした!?」
俺が掴んでいた筈だから聞いて来たのだろうが、グレイのその問いには答えられない。
「分からん。急に消えやがった」
「消えた?」
「ああ」
力づくで振り払ったのではなく、不意に消えたのだ。
どうやら他にも何かしらの魔法が使える様だな。
「ナツー‼ グレーイ‼」
「ルーシィも来たか」
2人を呼ぶ声が徐々に近づいて来て、見慣れた金髪が視界に入って来た。
「あ、グレイ! と、ユウイチと・・・・ファントムの!?」
俺等を見つけた瞬間、仲間を見つけた安堵の顔と、何でここに的な疑問の顔と、ありえない奴がいた驚愕の顔と、コロコロ変わるルーシィ百面相。
「説明は後だ。ナツとエルザは?」
「ナツは分かんない。エルザは・・・・・・」
「ナツはあっちに埋まってる。エルザは海だ」
グレイとルーシィの疑問に俺が答えた。
「分かるの?」
「エルザの気配と、俺等を襲った奴の気配を感じる。既に船で海の上だ」
「じゃあ、とっとと追わねぇとな」
「まず何処かから船を調達しねぇと・・・・・・」
俺だけなら飛んで行けるが、みんなはそういう訳にもいかねぇし。
「とにかく海へ出るぞ。港なんてねぇから船があるかどうか分からねぇが、海水浴場があんならゴムボートくらいあるだろ」
「ゴムボートで海渡る気かよ・・・・・・」
「仕方ねぇだろ、贅沢言ってられるか」
「って! ナツは!? 埋まってるんでしょ、掘り起こさないと!」
「大丈夫だろ」
「ほっときゃその内来るって」
「そんな薄情な・・・・・」
ルーシィが先行く俺とグレイを呼び止めるが、俺達は構わず外へ進む。
後ろからジュビアが付いて来て、ルーシィは少しためらった後結局付いて来た。
瞬間、カジノから1つの火柱が上がり、「痛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ‼‼」というナツの叫びが聴こえて来た。
そして「逃がすかあの四角野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ‼‼」と爆走し、俺等を追い越して行った。
「な? 大丈夫だったろ?」
「私の心配を返して欲しいわ・・・・・・・」
グッタリとするルーシィだが、そんな事で疲れてたら身が持たねぇぞ、この先。
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