第42話 休日
「もう無理、もう休む、てか休ませろ」
ナツ達がやらかした不祥事の処理、評議院の使いっパシリ。
そして数日掛かりで仕事を片付けて戻った矢先、ギルド復興の仕事に駆り出される。
仕事仕事仕事・・・俺はいったい何時からこんな仕事人間になったんだ?
「お疲れ様」
労いの言葉と共に、カウンターの席で突っ伏してる俺にミラが酒を出してくれた。
「おー・・・・サンキュー・・・・・・」
「・・・本当にお疲れみたいね・・・・・・・」
突っ伏しながら顔だけ横に向け、器用に酒を飲む俺の姿にミラが苦笑した。
「実際疲れてるからな」
ここんとこハードスケジュールだ。
あっちこっち飛び回って闇ギルド討伐、危険モンスターの駆逐、評議院の使いっパシリをさせられていたのだから。
罰則とはいえ、これでタダ働きなんだからワリに合わなさすぎだ。
まぁ、かといって色々やらかしたナツ達に行かせたら、更にモノが壊れたりするから任せる訳にはいかないのだが。
もう、ホントどうにかなんねーかなぁ・・・・・・。
「それなら、しばらく休んだらどうかしら?」
「休むって言ってもな」
散々S級クエストで稼いでたから金には困っていない。
だから無理にクエストをやる必要は無いが、まだギルドの復興という仕事が残っている。
「俺が休む訳にもいかねぇんじゃねぇか?」
色々出来るせいか、色んな事をやらされる。
大変ではあるが、俺がやる方が早く終わるのも事実だ。
だから簡単に休む訳にはいかない。
少しサボるくらいなら兎も角な。
「別に少しくらい大丈夫よ。もう建物の基礎は出来上がってるんだから」
地面を掘ったり床に水道管等を通したり、コンクリを作って練って固めたり、木や鉄で柱を作ったり埋めたりして、建物の骨格は既に出来上がっている。
後は壁とか部屋の内装とかだが、コレは確かに俺でも時間が掛かりそうだ。
「でも材料買ってくるより俺が作った方が安く済むだろ?」
「大丈夫よ、祐一がいない分はラキに作ってもらうから!」
とてもいい笑顔で言ってくれるが、本人のいないところで決めてしまっていいのだろうか?
『木の造形魔法‐ウッドメイク‐』の使い手で、俺同様にギルド復興に大きく貢献している女魔導士。
なんせここにある大半の木材は俺とラキで造ったモノだからな。
アイツが過労死するんじゃないか?
「他にもギルドのみんながいるんだから、偶には1人で羽を伸ばしてきてもいいと思う」
天使の様な微笑みでそんなこと言われたら行くしかねぇだろ。
此処に天使がいるぜ。
いや、悪魔だけど。
悪魔の力を使う魔導士だけど!
昔は確かにヤンチャだったけどっ‼
「んじゃあ、ま、お言葉に甘えて・・・・・・」
偶には休暇といきますかね・・・・・・・。
◆◆◆
という訳で、やって来ましたアカネビーチ。
ここのホテルの割引券を商店街で貰っていたから、丁度良かったぜ。
もっとも、1人で泳ぐ気にもなれず、地下のカジノで遊びまくっているのだが。
「ファイブ・オブ・ア・カインド」
2枚カードを捨てて、2枚渡されたカードを合わせて手札を出した。
手札はJOKER1枚とAが4枚。
続いてダブルアップ。
ダブルアップダブルアップダブルアップダブルアップ・・・・・・
えーと、100Jベットして配当100倍で10000J。
10000Jダブルアップで256倍だから・・・・・・・・・
「2560000Jだな」
ワアァァァァーーーーー‼と周りから歓声が上がり、ディーラーの表情が曇ってた。
そろそろ上がるかねぇ、結構長い間遊んでたし。
換金所でチップを換金してもらお。
全部で幾らだっけか・・・・・・。
「結構儲かったなぁ」
合計、50000000J。
働かなくてもコレだけ儲けられるんなら、俺もう働かなくても良いんじゃないだろうか?
まぁ、働かずにいたら頭が腐りそうだから働くけどな。
何か換金所の去り際に、受付の人に「もう来ないでください」とか呟かれた気がするが、コレ出禁になったりしないよな?
コレからどうすっかなぁ・・・もういい時間だし、飯にでも行くか。
「あれ、祐一じゃねぇか」
金が入ったスーツケースを持ってカジノを歩いていたら、そこにはスロットを回していたグレイの姿が。
「グレイじゃねぇか。何でこんなとこにいるんだ?」
「ロキから此処のホテルのチケットを貰ってな」
ナツ、ルーシィ、ハッピー、エルザも一緒らしい。
・・・・・・・あ、思い出した。
もう楽園の塔編に入ったのか!
「・・・・・・・・ハァ」
「何で急に溜め息吐いてんだよ?」
「いや、結局休めねぇんだと思ってな」
「?」
「いや、こっちの話だ」
もうこの後に起こる出来事は分かってる。
結局休暇にはならなさそうだな。
あー、ヤダヤダ超ダリィ・・・・・・。
俺が深い深い溜め息を吐いていると、不意に後ろから「祐一様」と声を掛けられた。
「ん?」と俺が振り向き、グレイが俺の後ろを見やると、
「ジュビア、来ちゃいました♡」
そこにいた元ファントムの魔導士に、思わず吹き出した。
そうだった、ジュビアがここに来てるんだった。
取りあえずスロット台の前で屯する訳にもいかず、俺とグレイはジュビアを連れてBARエリアに移動する。
適当に酒を注文して、俺達は席に着いた。
「聞いたよ、ファントムは解散したんだって?」
「はい・・・・・」
グレイの切り出しから、会話が始まる。
まぁ、会話というか、何を言いたいのかは手に取るように分かる。
それは俺が原作を知っているからというのも理由だが、それ以上にその首からぶら下げている自己主張の激しいネックレスを視れば一目瞭然だ。
「ジュビアはフリーの魔導士になったのです」
「で、フェアリーテイルに入りたいと?」
俺の問いに、「ジュビア入りたい」と懇願する。
そんなジュビアに、グレイは少しばかり難色を示した。
「あんな事の後だからなぁ・・・マスターがなんて言うか・・・・・・」
「別に良いんじゃねぇか」
「ほ、本当ですかっ!?」
「ああ。俺が許す」
「いや、お前に決定権は無いだろ・・・・・」
キッパリ言いきったら、グレイに呆れられた。
きっと大丈夫だろう。
原作通り以上に、昔っからギルドを視て来た俺には原作知識が無くてもそれが大丈夫と分かる。
身よりの無い奴が集まるのは昔っからだ。
俺もその口だしな。
「まぁ、ジジイの説得は俺がやるから、良いだろ?」
「そりゃあ、俺は別に良いと思うけどよぉ。元ファントムに良い顔しない奴もいると思うぜ」
「その辺はアレだ」
「何だよ?」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・なんとかなるって」
「考え無しかよ‼」
大丈夫! 皆も分かってくれるさ。
きっと。
たぶん。
・・・・・・いやー、分かってくれるといいなぁ・・・・・・・・・・・。
「おっと」
ブンッ‼と、唐突に背後から大きな腕が振るわれ、俺は椅子に座ったままの状態で身体を捻り、その腕を手で掴み取った。
「ぬ!?」
ガッチリと掴まれたその腕は振りほどけず、襲撃者は動きを止めた。
「なんだテメェ?」
椅子から立ち上がるグレイとジュビアは、その襲撃者の大男を睨み付け、いつでも動けるように身構える。
大男は俺とグレイを一瞥し、その口を開いた。
「ウエダ ユウイチと、グレイ・フルバスターだな。エルザは何処に居る?」
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