「はい、終了~っと・・・・・・・」
パンパンッと手を叩いて、足下に倒れた奴等を一瞥する。
いかにも僕達犯罪者でーすといわんばかりの風貌をした奴等が、床を転がっていた。
最近色々と目立ってきた闇ギルドの魔導士達だが、彼らは既に虫の息で瀕死の状態だ。
まぁ、俺がぶっ飛ばしたからだが。
ファントムの件以外にも、フェアリーテイルが今までやらかした不祥事の罰則を受けており、それが今のこの惨状だ。
本来は闇ギルドといえどもギルド間の抗争は禁じられているのだが、それでも綺麗事だけで世界が回る筈も無く、それなりに危険な闇ギルドを壊滅させるのを、評議院から命じられている。
流石にこの大陸の最大の勢力を誇る闇ギルド・・・バラム同盟までは手出ししていないのだが。
・・・・・まぁ、拠点が分からないというのも理由だが。
まぁ、そんなこんなで評議院からの依頼を熟した俺は、捕縛と報告を連れて来たルーンナイトに任せて、闇ギルドのホームを後にした。
◆◆◆
「・・・・・ようやく形らしくなってきたな」
仕事から帰った後、ギルドを改築している状況を見て、俺は取り敢えず形にはなってるカウンターで酒を飲みながら言った。
まだ家として完成はしてないが、骨格は出来上がっている。
「みんなー!! 今日から仕事の受注を再開するわよー、仮設の受付カウンターだけど、ガンガン仕事やろーね!!」
なんて、俺とカウンターを挟んで向かい側にいるミラが言って、その言葉にギルドの皆は「うおぉぉぉぉぉおおっ!!」「仕事だ仕事ー!!」と言って、リクエストボードに群がっていった。
「何あれぇ、普段はお酒呑んでダラダラしてるだけなのにぃ」
「ま、全く仕事やってないと無性にやりたくなるんだろ」
「あはは」
ナブに至ってはリクエストボードに張り付いても仕事をしているところをろくに見たことなかったような気がするが・・・・・・。
「そういや、ロキいないのかなぁ・・・・・」
キョロキョロと辺りを見回すルーシィが、そう呟いた。
「あーあ・・・ルーシィもとうとうロキの魔手に掛かっちゃったのね」
「違います‼」
「なんか鍵見つけてくれたみたいで・・・一言お礼したいなって・・・・・・・・」
「鍵落したのか?」
「うん。ファントムに捕まった時に落としちゃったみたいで・・・・・・」
「星霊に怒られなかった? 鍵落しちゃって」
ミラ聞くと、ルーシィは「はは・・・」と乾いた笑みを浮かべる。
「そりゃあ・・・もう・・・怒られるなんて騒ぎじゃなかったデスヨ・・・・・・」
どうやら相当酷い折檻だったらしい。
「思い出しただけでお尻が痛く・・・・・・」
「あらら」
「何だ、ケツ穴に挿れられたのか?」
「違うっ‼」
ガーッ‼とルーシィがツッコミを入れた瞬間、何故かテーブルが回転しながらカウンターの方へ飛んできたので、
「おっと」
片手でそれを受け止めて見せた。
急な出来事に「何だ?」と、皆は視線をテーブルが飛んできた方向へ向ける。
「もう一度言ってみろ!!」
そこには、怒りの形相をしたエルザと、
「この際だ、ハッキリ言ってやるよ。弱ぇ奴はこのギルドに必要ねぇ」
このフェアリーテイルのS級魔導士の1人、ラクサスがいた。
アイツ、帰って来てたのか。
「ファントムごときに舐められやがって・・・恥ずかしくて外も歩けねーよ」
帰ってくるなり好き放題言うラクサスに嫌悪の目を向ける皆だったが、ラクサスは異にも介さず、
「オメェだよ、オメェ」
レビィ達を指差し、
「元はと言えぁオメェらがガジルって野郎にやられたんだっけか? つーかオメェら名前知らねぇや、誰だよ?」
ゲラゲラと嘲笑を浮かべるラクサスに、レビィ達は何も言い返せずに唇を噛んだ。
「ま、その辺にしとけよラクサス」
言い過ぎだ。
レビィ達の前に立った俺は、思わず反抗期のガキを見るかのような呆れた目をしてしまう。
「もう戦いは終わったんだ、誰のせいとかそういう話じゃねーんだよ。つーか、戦闘に参加しなかったお前が、どうこう言える立場かよ?」
「ああ? 参加しねぇのは当然だろ、俺には関係ねぇことだ。ま・・・俺がいたらこんな不様な目には合わなかったがな」
「口じゃ何とでも言えるよなぁ」
俺がそう言った瞬間、
「・・・・・・あ゙ぁ゙? 試してやろうかぁ?」
「あーん? 試さして欲しいのかぁ?」
バチバチと、互いに凄まじい魔力を身体から発し、辺りに重い威圧がかかる。
だが、そんな緊張感高まる俺とラクサスの間に、
「ラクサス、テメェ!!!!」
何故かナツが乱入してきて、ラクサスに殴りかかっていった。
「ふんっ」
そんなナツを鼻で笑い、ラクサスは余裕でナツの拳を、身体を雷に変えて避けてみせた。
「ラクサスっ!! 俺と勝負しろぉぉぉぉぉ!! こんの薄情モンがぁぁぁぁあっ!!」
「ははははははははははっ! 俺を捕らえられねぇ奴が、なんの勝負になる!?」
突っ掛かってくるナツなんて意にも介さずに、
「俺がギルドを継いだら弱ぇモンは全て削除する!! そして歯向かう奴も全てだ!! 最強のギルドを作る!! 誰にもなめられねぇ、史上最強のギルドをなぁっ!!!!」
そう高笑いしながら、ラクサスは去っていった。
◆◆◆
ラクサス・ドレアー
フェアリーテイル最強候補の一角にして、ギルドマスター・・・マカロフ・ドレアーの孫。
孫だからという理由は絶対ではないが、それでも偉大な魔導士の血を引くという事は、その孫であるラクサスもまた高い資質を持った魔導士で、実力は本物だ。
実際最強候補の1人だしな。
だから現マスターであるジジイが引退したら、次期マスターがラクサスになる可能性は充分ある。
あくまで可能性だが。
「もし、アクノロギアを天狼島で退けたら、どうなんのかねぇ・・・・・」
月夜を見上げて、想像する。
・・・・・・・うん、ジジイが引退しそうにねぇな。
7年後はジジイ達が消えたから、代理でマカオがマスターやってたが、それも直ぐ戻ったし。
当分ジジイがマスターを続けるだろうな。
「あ、祐一」
「あん?」
ボケーっと空を見上げて散歩していると、後ろから声を掛けられる。
振り向いた先に居たのは、何やら書類を抱えたミラだった。
「おう、どうしたこんな時間に?」
「祐一こそこんな遅くになにやってるの?」
「ちょっと散歩。ミラは?」
「ちょっとマスターに報告が有って、探してるの」
「なんかあったのか?」
「うん、ちょっとね・・・・・・」
ミラが苦笑する。
なんだ?
「んー・・・ジジイの気配は・・・・・・・・ギルド(建設中)の方だな。こんな時間にジジイも何やってやがんだ」
「そんなとこにいたのね」
「報告って、緊急のモノか?」
「ううん、大したことじゃ・・・・・・やっぱり大した事かも?」
「どっちだよ・・・・・・・」
「緊急じゃないけど急ぎの要件ね」
ギルドへ歩くミラの横に並び、彼女が抱えている書類を覗き見る。
そこには、エルザ達が仕事先で街を半壊させたとの文字が・・・・・・。
「アイツ等・・・・一々何か壊さねぇと気が済まねぇのか」
「あははは・・・・・・」
こりゃまたジジイの心労が増えるな。
「あ、祐一もこの件に無関係じゃないわよ」
「あ? どういう事よ?」
「評議院からこの件の罰則として、闇ギルドの壊滅と危険生物討伐の依頼が来てるから」
「ただのとばっちりじゃねぇかっ!?」
仕事から帰って来たその日の内に仕事が舞い込んで来て、デカい溜息が零れる。
ミラが「頑張ってね」と肩を叩いて言ってくれるが、頑張れねぇよ。
あー、メンドクセェ。
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