名前有った方が見やすい場合戻すかもしれませんが、取りあえずこの話から無しでやってみます。
「ナツ兄・・・こう?」
「いーや! もっとこうだっ‼」
ここはマグノリアのとある公園。
公園と言っても、普段は平日・休日に関係無しに利用者数は少なく、風に揺られたブランコが奏でる錆びれた鎖の音以外には何も音を出す物も人も存在しない寂しい公園だ。
しかし人気が無いだけであって、広さは申し分なくそこそこ広い。
むしろ人がいないから余計に広く見える。
現在、俺達はそこにいる。
別にジャングルジムやブランコで遊ぶ為に来たのではない。
ギルド立て直しを行い、その休憩の最中に待ちこまれた依頼の為にこの公園へやって来たのだ。
一人の依頼人に、魔法を教える為に。
「んー・・・・・・こう?」
「こうだ‼ こう‼」
そして今まさに、ナツが依頼人・・・・・ロメオに、拳の構えを教えている。
「こう?」
「そうだ! んで・・・こう‼」
ロメオの構えがナツ流の型にハマったところで、構えた拳を目の前に振り下ろして、見本を見せるナツ。
その場所にグレイの顔があったら、当人はもんどりうってぶっ倒れているところだろう。
「こ、こう?」
ナツの姿勢を真似し、拳を振り抜くロメオだが、
「違うな~・・・もっとこう、勢いをつけてだなー・・・・・・・」
ロメオの構えを再度チェックし、体重移動だの細かい説明をナツが補足しながら、再度拳を振るわせる。
何故こんな場所でこんなことをしているのかと言うと、きっかけはロメオの一言だった。
休憩中で昼食を終えてのんびりしていた俺達の元に彼がやってきて、『魔法を教えてほしい』と頼んできたのだ。
詳しい事情は聞かなかったが、目が真剣だったので急遽『魔法講座』を開くことにしたのだ。
『魔法を教えるなら広い場所がいい』とはエルザの提案で、場所は人の少ないこの公園に落ち着き、現在に至る。
「オイラもロメオに教えられるかな?」
公園に置かれている遊具の1つ、ジャングルジムでは、頂上にエルザ、少し低い場所に俺、俺の頭にレッド、中間地点にハッピー、地面に立ってジムに寄りかかるルーシィと、恒例メンバー5人がそれぞれの高さに陣取っていた。
「えっ?あんた魔法教えられるの?」
「猫には無理です」
「じゃあ何で言ったのよ!?」
「あい! なんとなく‼」
「あっそ・・・・・・」
毎度のやりとりをしつつ、俺達はナツとロメオのやりとりを見守っているが、あの様子だとどうもケガか何かしそうで、視ていてヒヤヒヤする。
つか、何で魔法を習得するために体動かしてんだ?
疑問に思うが、ナツの魔法を思い出して半分納得した。
ナツは自身の腕や脚に炎を灯して攻撃力を上げ、対象物を殴る蹴るして破壊する【滅竜魔法】の使い手だ。
殴ったりする時のフォームなんかも大事なんだろう。
・・・・・・多分。
俺が【完成‐ジ・エンド‐】で覚えて使えるようになった時はあまり意識していなかったが、もしかしたら結構重要なのかもしれない。
だが、あれで滅竜魔法を習得できるとはどうしても思えない。
肝心の炎はどこにいったんだ、炎は。
ロメオはマカオの息子だけあって、7年後の未来ではマカオの【紫炎‐パープルフレア‐】どころか、元幽鬼の【七色の炎‐レインボーファイア‐】の7つの炎の内幾つかが使えるようになっており、才能は結構あると思う。
とはいえ、殴るフォームを確認することによって滅竜魔法が修得出来るのであれば、今頃プロボクサーは皆ナツみたいな滅竜魔導士になっているだろう。
本当にそうだとしたら、滅竜魔導士のバーゲンセールだ。
竜王祭で苦戦はしなくて済みそうだがな。
「そーいや、魔法を覚えるのって、【能力系‐アビリティ‐】と【所有系‐ホルダー‐】のどっちが早ぇかな?」
唐突にジャングルジムの上から、誰にでもなく問いかける。
魔法には能力形と所有形の二つがあり、違いは何かと言えば、簡単に言えば『道具を必要とする魔法』か『道具が必要ない魔法』かだ。
道具を必要とする魔法が【所有系‐ホルダー‐】、必要ない魔法が【能力系‐アビリティ‐】、という区分になっている。
もし能力形より所有形が覚えやすいのだとしたら、ルーシィがロメオのコーチを努めたほうが良いのかもしれない。
「よくわからないが、その人物の資質によるのではないか?」
質問に答えたのはエルザだった。
「資質か。じゃあルーシィは所有形の資質ってことか?」
「んー・・・・わかんない、どうなんだろ?」
人によって資質が異なるのなら、ロメオの資質は所有形より能力形の可能性が高いだろう。
何せロメオの父、マカオは能力形魔導士なのだから。
新たな疑問に一同が首を傾げていると、いよいよナツが本題に入り始めた。
「よし。じゃあ次は炎について教えてやる!」
ナツの一言一言をロメオが真剣に聞いており、またナツも同じくらい真剣に喋っている。
顔は笑っているが。
「こういうのは口で説明するよりも体で覚えた方が早ぇっ‼」
「うんうん」
「というわけで、今からお前にイグニールから学んだ滅竜魔法を叩き込む‼」
「うんうん」
「よし、いくぞ!」
「うん!」
「火竜の――――」
「俺ちょっとナツ止めてくるわ」
一瞬の判断で俺はジャングルジムから飛び降り、着地することなくそのまま舞空術で飛行し、頬を膨らませたナツの前から、目が点になっているロメオの眼前に舞い降りる。
「――――――咆哮‼」
迫り来る紅蓮の奔流を、俺は右手の【幻想殺し‐イマジン・ブレイカー‐】で打ち消した。
◆◆◆
「何やってんのよアンタはぁぁぁぁぁぁああああああああああああっ‼‼」
ルーシィのツッコミが、公園どころか街中に届くんじゃないかと思うほどの勢いで響き渡った。
「オレはイグニールからこうやって教わったぞ!」
「だからって何でロメオがアンタの攻撃を真っ正面から受けなきゃならないのよ!? 絶対に無事じゃ済まないじゃない‼」
「根性でやるんだよっ‼」
「「出来るかぁぁぁっ!?」」
ルーシィとナツのやり取りは、最後にロメオのツッコミが加えられて終結。
本人に無理と断言されたナツは、ブスッと表情を曇らせた。
はたして、火竜の咆哮に真っ正面から立ち向かうほどの非魔導士の勇者が、ロメオの年代の子にいるだろうか?
いや、どの年代だろうが9割以上の人は逃げるだろう。
残りの1割未満は阿保か『勇者‐バカ‐』のどっちかだ。
魔法を覚える為に、わざわざ咆哮をもろに受ける酔狂な人間は少ない。
「じゃあ次は誰が教えんだ?」
ジャングルジムをひょいひょいとよじ登り、頂上であぐらをかいて一同を見下ろすナツ。
エルザが何か言いたそうだったが、諦めたようだ。
「そうね・・・・・・祐一がいいんじゃない?」
「ああ? 俺ぇ?」
名前を出されて思わず眉を寄せてしまう。
対照的に他のメンバーはルーシィの意見に同意している。
「そうだな、こういう時は祐一に任せるべきだろう」
「オレの魔法も祐一と練習して身に付けたモノだしな」
レッドの言う通り、エクシードの誰もが使う【翼‐エーラ‐】以外の魔法・・・【戦闘形態‐バトルフォーム‐】は、レッドと色々試しながら身に付けたモノだ。
まぁ、主に死ぬ前に居た頃の漫画とかを参考にしただけだがな。
「とはいえ、俺の魔法って殆ど【完成‐ジ・エンド‐】で即覚えしたモノばっかだしなぁ・・・」
「そういえば、その【完成‐ジ・エンド‐】って何なの?」
あー、そういやルーシィは知らないのか。
「簡単に言えば、他人の魔法とか技術を視て覚えるんだ。ナツの滅竜魔法とか、エルザの換装とかもコレで覚えた」
「反則じゃないそれ・・・・・・」
「反則上等。勝ちゃあいいんだよ勝ちゃあ」
「まぁ、でもその覚えた魔法教えたり、その【完成‐ジ・エンド‐】を教えたら?」
「【完成‐ジ・エンド‐】ねぇ・・・・・・」
【完成‐ジ・エンド‐】を教える、か・・・・・・。
コレ神様特典で得た力で、魔法じゃないからなぁ・・・・・・・。
神様特典で得たって事は、神様転生しなければならず、神様転生しなければならないという事は、それはつまり死ななければならないという事で・・・・・・。
チラッとロメオを視る。
「・・・・・・何、祐一兄?」
「ロメオ・・・・・お前、まだ生きたいよな?」
「オレ何されるの!?」
ロメオだけでなく、この場にいる全員が衝撃を受けた。
魔法を教える事が出来るかどうかと、修得経緯はあまり関係ない。
「その【完成‐ジ・エンド‐】って、そんなに危険な覚え方なの?」
「いや、覚え方が危険って訳じゃねぇんだが・・・・・・」
「どうやって覚えるの?」
「まず1回死ぬ」
「死ぬの!?」
「うん。1度死ぬのが大前提だ」
「どんな覚え方ぁっ!?」
「それにしても意外な事実だな・・・・・・」
「てことは、祐一って1度死んだって事?」
「ああ」
「・・・・・何で死んだのに生きてんの?」
「1度死んで、生き返る事が出来れば覚えれる可能性があるよ」
「それでも可能性なんだ・・・・・・」
「生き返られなかったら?」
「そのまま死ぬな」
「祐一よく生きてたね・・・・・・」
「しかも生き返った説明になってないし・・・・・・」
なんか、全員に引かれた。
「エルザはどうよ?」
取りあえず俺はエルザを押してみる。
スパルタだが、ナツがギルドに入った当初、ナツに色々教えていたからな。
教えるのは得意ではなかろうか?
「む・・・私か? しかし教え方はナツと大して変わんらないぞ」
「やっぱ無し、ロメオが全身スプラッタになりかねない」
「オレ本当に何されるの!?」
俺の頭に一瞬、宙を舞う数多の剣と、血の海に沈んでいるロメオの姿が浮かび上がった。
どうりでさっきナツに怒らなかったわけだ。
「だよなエルザ! やっぱ体で覚えた方が早ぇよな‼」
「そこ! 変な共通の話題で盛り上がるな!?」
ツッコミを入れるルーシィには悪いが、身体で覚えた方が早ぇと思うわ。
「ルーシィが教えればいーんじゃねぇか?」
「えっ、あたし?」
ナツの一言に、今さっきまでのツッコミの勢いはどこへやら。
ルーシィは急に閉口してしまった。
「だってよぉ、オレやエルザや祐一がロメオに教えたら一大事になるんだろ?」
正確にはロメオが一大事になる。
「だったらルーシィが教えればいいじゃねーか」
「うん。確かに」
ナツの言う通り、ハッピーとレッドを除いた4人の中で唯一安全な教え方が出来そうなのがルーシィだ。
【所有系‐ホルダー‐】の魔法、加えてルーシィの扱う【星霊魔法】なら、星霊の暴走(アクエリa――)などがない限りは比較的安全だろう。
もっとも、ナツの心情に『じゃあお前がやってみろ』という気持ちも無かったわけではないんだろうが。
「あい! ルーシィも星霊達も優しいしね!」
「案外一番安全かもしれんな」
「案外ってなによ・・・・・・でもアタシには無理よ」
「「うわぁー・・・・・・」」
否定するルーシィに、変な視線を向けるナツとハッピー。
「なんで引くの!? ていうか引くなら話を聞いてからにしてくれるかしら!?」
引かれた本人は馴れた様子で二人にツッコミを入れ、少し間を開けてから話始めた。
「聖霊魔法は契約した人以外が『門‐ゲート‐』の鍵を使うことはできないの。知ってるでしょ? たがら教えるのは無理なの」
「「うわぁー・・・・・・」」
「だからなんで引くのよ!?」
ナツとハッピーは変わらず引いてるが、俺とエルザとレッドは大体事情を察していた。
星霊魔法とは『主人‐オーナー‐』と星霊が契約を交わすことによって成立している魔法であって、契約されている星霊は、本来主人以外の人間が喚び出すことは出来ない。
主人が契約解除を申し出たり、死んでしまったとなればまたややこしくなるみたいだが、それ以上詳しいことは俺も知らない。
簡潔に言えば、ロメオはルーシィの魔法を使えないのだ。
星霊の鍵を手に入れれば可能なのだろうが。
「じゃあ、どうすんだ?」
ロメオも含め、全員で唸ることしばし。
ふと、俺の脳裏にもう一人の魔導士が浮かび上がった。
ズボンに上裸がトレードマークの、氷の造型魔導士。
「俺ちょっとギルド(建設中)に戻るわ」
ナツ達にそれだけ告げると、俺はグレイ・フルバスターを呼びにギルドへ戻っていった。
◆◆◆
そして公園にやってきたグレイ。
『なんでオレがこんなことしてんだ・・・?』
今更な疑問を真剣に考えていたグレイを、やっぱりジャングルジムから見守る暇人Sの俺等。
「上手くいけばいいんだけど・・・・・・・」
「グレイだから絶対何かやらかすよ。オイラ知ってるよ、お約束っていうんだよ」
「やらかしたらマズイだろ」
はたしてグレイはどんなハプニング、もとい、魔法講座を行うのだろうか。
今のところの俺のボケ予想では、ナツと同じように体で覚えろ、もしくは服を脱ぐだった。
後者に関しては難なくクリアしそうで恐ろしい。
グレイは基本的にはフェアリーテイル内では珍しく常識人だ。
脱ぎ癖を除けば。
だから、教える事の問題無く出来るんじゃないかと思う。
・・・・・まぁ、その脱ぎ癖が最大の欠点なのだが。
ハッピーの期待の視線とその他の不安な視線を背に受けながら、グレイはロメオに魔法を教え始めた。
「まぁいいか。んで、ロメオは造型魔法を覚えてぇのか?」
「うん」
「よしだったらマズはだな―――」
「・・・・・・お?」
グレイは意外にも、造型魔法のことを言葉で説明し始めた。
「なんだアイツ、言葉で魔法教えるのか?」
ナツはつまらなそうにしているが、エルザやルーシィは感心していた。
これならナツやエルザ達とは違って、ロメオがケガをする心配もないだろう。
少なくとも、脱衣というボケが見当たらない現時点では満点だ。
「――――とまぁ、理屈的は大体こんなもんだな」
「へぇ~!」
一通りの説明は終わったらしく、グレイが適当な感じで最後を締めくくるとロメオは目を輝かせていた。
難しい単語や専門用語なんかは出なかったのか、説明の最中にロメオの頭上にクエスチョンマークがつくことは一度もなかった。
グレイの話術は意外と凄いのかもしれない。
流石は、『意外と常識人』の称号を持つ男(俺命名)。
「結構いい感じじゃない」
ルーシィが感嘆の声をもらし、いよいよグレイが本題に入る。
「よし、言葉だけじゃ魔法は覚えらんねーからな。今から実際に魔法の修行をするぞ」
「うん!」
「じゃあ、まずは服を脱げ」
「へ?」
「「「「「「台無しだっ‼」」」」」」
俺達全員のツッコミが綺麗に重なり、ナツの手から石が、祐一の手から魔力弾が、エルザの両手から剣が同時に放たれた瞬間だった。
「途中までいい感じだったのに最後の最後で大暴落よ‼ 何がどうなったら脱衣に発展するの!?」
ルーシィの声が公園に響き渡る。
話術が上手いと一瞬でも思った自分がバカみたいだった。
「いや、オレは師匠からこう教わった」
「グレイの師匠って一体どんな人っ!?」
「雪山で」
「どんな人なのっ!?ウルってどんな人だったのっ!?」
あー、そういやウルとリオンと一緒に脱いでたな・・・・・・。
グレイの脱ぎ癖のルーツだ。
「あー、今更オレが聞くのもあれなんだがよ」
ルーシィのツッコミは軽く流しつつ、グレイがロメオに尋ねる。
「なんでマカオに教わらねーんだ?」
「・・・・・・・・」
その疑問は、俺達もずっと思っていたものだった。
マカオは今日クエストに行っているわけではなく、ギルド再建を頑張ってる。
今はギルド跡地で元気にワカバと飲んでいる。
一声かければすぐに教えてくれるだろう。
魔法を教わるならば自分に一番近い人、それこそ親などに教わったほうが早い。
能力形、所有形関係なく。
「・・・・・・・」
ロメオはしばらく黙っていたが、やがて口を開いてポツリポツリと語り始めた。
「・・・・・オレ、前に父ちゃんに迷惑かけちゃったから・・・・・・・・・」
エルザの頭上にだけ疑問符が浮かび上がったが、他の皆は納得した。
前に、とは、おそらくバルカンの件だろう。
マカオがハコベ山へクエストに行ったきり帰ってこなくなり、俺達が助けたアレだ。
そんなこともあったなぁ、ぐらいにしか俺達は思わなかったが、ロメオはまだ引きずってるようだ。
要するに、また魔法関連で父親に迷惑をかけたくなかったのか。
「オレ・・・・・・」
「くだらねぇなぁっ!」
ロメオが言葉を続けようとした時、ぶっきらぼうな声が響き渡った。
しかし、ナツやグレイの声ではない。
「おう、マカオ」
公園の入口から歩いて来たのは、まさしくマカオその人だった。
「祐一がグレイ連れて行って何してんのかと思えば・・・・・・」
「ああ、やっぱ付けてたのか」
「て、気づいてたのかよ」
「ああ。ま、どっかでマカオの出番があるような気がしたから、ほっといたんだが」
気づいてたんなら言えよ、とマカオがジト目で視て来るが、後をつけるんなら隠れずにそのまま来ればいい。
別にロメオに口止めはされてなかったし。
「お前まだそんな事引きずってたのかよ?」
わしゃわしゃわしゃとロメオの髪を掻き乱すマカオだが、ロメオの表情は晴れない。
「だって・・・・・」
「魔法なら、幾らでも教えてやるよ」
「え・・・・・?」
若干の置き去り感を感じた俺は、隣のルーシィにアイコンタクトで話しかける。
(俺ら邪魔っぽくね?)
伝わったらしく、ルーシィは頷くと、同じくアイコンタクトで返した。
(みたいね)
ルーシィと俺の間にエルザが顔を出し、無言でギルドの方面を示す。
(では、一足先に戻るか)
エルザのアイコンタクトに俺とルーシィが頷き、ハッピーとレッドが静かに手を上げた。
(あい!)
(おう!)
親子の時間に水を差すわけにもいくまい。
それに、魔法のこともマカオが教えてくれるだろう。
アイコンタクトでの話し合いの結果、俺達は一足先にギルドに戻ることにした。
睨み合うナツとグレイを、エルザの抑止力(眼力)で鎮火させ、みんなで静かに公園を後にした。
「・・・・・・・・・」
途中、何となく振り返ると、マカオに抱かれながらロメオが何か喋っているのが見えた。
ロメオの表情は、さっきのまでの曇りがない、満面の笑顔だった。
―――――――親父か・・・・・・・・・・
脳裏をよぎる、父親の姿。
俺が死ぬ前の―――この世界に来る前―――遠い日の記憶を思い出し、マカオとロメオの関係が少し羨ましく感じた。
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