FANTASY☆ADVENTURE   作:神爪 勇人

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第36話 決着!

 

 

 

俺の右拳が篤の左頬に当たり、篤の左拳が俺の右頬にぶち当たった。

瞬間、轟ッ‼と、鮫島篤の身体が吹っ飛ぶ。

床を抉り、壁にぶち当たり、突き破って、外へと飛んでいった。

俺は、吹っ飛んでない。

殴られた右頬に手をやる。

頬肉がゴッソリと消失していた。

鮫島篤の、グルメ細胞の悪魔と化した手が、俺に触れた右頬を喰らったのだ。

肉には触れたが、骨までは捉えていない。

紙一重で、俺の拳の方が刺さったようだ。

 

 

祐一「て、死んでねぇよな、アイツ・・・・」

 

 

これで死んだりしたら俺の後味が悪いぞ。

鮫島篤が吹っ飛んだ方へ駆け寄り、もはや壊れまくって原形を留めていない部屋の壁の外を見る。

壁の外、その下へと視線を移す。

如何やら鮫島篤は、下にある砲台に倒れていた。

跳び下りて、下へ移動する。

鮫島篤が倒れている、大きな大砲の砲身に着地した。

 

 

祐一「よぉ、生きてるか?」

 

篤「ハッ・・・勝手に、殺して・・んじゃ、ねぇ・・よ・・・・・」

 

 

掠れた声で返答する鮫島篤。

グルメ細胞の悪魔はもう完全に成りを潜めており、その姿は元の状態だ。

身体の至る所が傷だらけ。

流石にもう戦えんだろ。

 

 

祐一「まさか、まだ戦るってんじゃねーだろーなぁ?」

 

篤「当然・・・・って言いてぇ、とこだがよ、流石に・・・動けねえぜ・・・・」

 

 

だよな。

そんな状態でも戦えるとかほざかれたら、もうどうしようと思ったぜ。

 

 

篤「つーか、それ以前の・・・問題、だしな・・・・」

 

祐一「あん?」

 

 

どういう意味だ?と聞くよりも先に、変化が起きた。

ビシッと、何かがひび割れる音が聴こえて来た。

その音の発信源は、鮫島篤の身体だった。

顔部分にヒビが出来、同じように腕などにも出来ている。

 

 

祐一「何が起きてやがる?」

 

篤「ハハ・・副作用、ってやつ・・だ・・・・」

 

祐一「・・・・グルメ細胞の悪魔か」

 

篤「そう、だ・・・」

 

 

そういや、リスクがあるとか言ってやがったな。

 

 

篤「『自食作用‐オートファジー‐』って、知ってるか・・・?」

 

祐一「ああ」

 

 

『自食作用‐オートファジー‐』

栄養飢餓状態に陥った生物が、自らの細胞内のたんぱく質をアミノ酸に分解し、一時的にエネルギーを得る仕組みである。

 

旨いモノを食えば食うほどパワーが増すグルメ細胞が、自らを食す。

自らを食らう事で、エネルギーを急激にフル回復するのだ。

だが、それは一時的なモノ。

その状態を長く続けば、自分で自分の細胞を食らい尽し、死に至る。

 

 

篤「俺のグルメ細胞の悪魔・・・アレの全身化はな、それと同じなんだよ・・・・」

 

祐一「何?」

 

篤「全てを食らい尽す、俺のグルメ細胞の悪魔・・・アレの全身化は、俺自身をも食らう。使ったら最後、喰い殺されるだけだ・・・」

 

祐一「・・・・・そうか」

 

篤「なんだ、結構アッサリだな・・・・」

 

祐一「お前を殺したみてぇで後味悪ぃが、自分の能力で自分が死ぬんなら、お前の自業自得だ。俺の知ったこっちゃねーよ」

 

篤「ハッ、違ぇねぇ・・・・」

 

 

死に掛けのクセに、気持ちよく笑う鮫島篤。

ヒビが音を発てながら広がっていき、身体の所々が欠けてきている。

 

 

祐一「助けて欲しいんなら助けてやろうか・・・?」

 

篤「ハッ。余計な事、してくれんなよ・・・・」

 

祐一「いいのか?」

 

篤「ああ・・・満足だぜ・・・・・」

 

祐一「死ぬのにか?」

 

篤「ああ・・・・つか、分からねぇなぁ・・・・」

 

祐一「?」

 

篤「テメェのやりたい事やって死ねるんだぜ? 本望だろーが・・・・」

 

 

やりたい事やって、死ぬか・・・・。

 

 

篤「お前だって、そうだろ・・・・」

 

祐一「俺が?」

 

篤「そうじゃなきゃ、神様転生なんてもん・・・やろうなんざ、思わねぇだろ・・・・大人しく自分の死を、受け入れてりゃ良かったんだ・・・・お前がどんな理由で死んだのかは、知らねぇけどな・・・・」

 

祐一「・・・・・・・お前は」

 

篤「・・あ・・・?」

 

祐一「お前は、何かやりたい事があったから、転生したのか?」

 

篤「当然だろ・・・まぁ、んな大した理由なんざ、ねぇけどな・・・・」

 

祐一「そうかい」

 

 

まるで身体が灰になっていくように、サラサラと鮫島篤が朽ちていく。

もう死が間近だ。

 

 

篤「・・・じゃあな、上田祐一・・・・最後は、楽しめたぜ・・・・・・」

 

祐一「俺はもう二度と御免だがな」

 

篤「言いやがる、な・・・・・」

 

 

力が入らないボロボロの朽ちかけた腕をゆっくりと上げて、鮫島篤は崩れかけた手で拳を握る。

 

 

篤「我が生涯に、一片の悔い無し・・・・ってな・・・――――――――」

 

 

バキィッと、腕が捥げる。

捥げた腕が落ちて、音を発てて崩れ散った。

その肉体も風に吹かれて灰になり、飛んでいく。

鮫島篤という男の肉体は、完全にこの場から消滅した。

 

 

祐一「・・・・・・・・あ?」

 

 

鮫島篤が消えたのを見届け終えたその時、灰になった鮫島篤の肉体から、何かが出て来た。

それを手に取ってみる。

 

 

祐一「宝石・・・じゃねぇよな・・・・」

 

 

よく分からないが、ビー玉程度の大きさの宝石のようなモノが、鮫島篤の肉体だったモノから出て来たのだ。

何だコレ・・・・?

 

 

祐一「うおっ!?」

 

 

疑問が頭を過るが、思考を中断する。

突然の爆音と共に、足を震わせる程の振動が起きた。

この建物が揺れて・・・いや、轟音と共に、約半分が崩れていく。

こっちとは反対側だ。

良かった、崩れたのがこっちだったら面倒だったぞ。

この魔力は、ナツか・・・どうやらガジルを倒したようだ。

 

 

祐一「後はジョゼだけか・・・・」

 

 

エルザが戦っているようだが、まぁ、大丈夫だろ。

ジジイの気配が、もう直ぐそこまで来ている。

 

 

祐一「あー・・・流石に疲れたな」

 

 

どっかりと、突っ立ている砲身に腰かける。

俺のノルマ(転生者)は倒したんだ。

後は、仲間・・・家族に任せるかね。

 

 

 

 

.


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