FANTASY☆ADVENTURE   作:神爪 勇人

45 / 130
第35話 上田祐一VS鮫島篤 最終ラウンド‼

 

 

 

その男は戦うのが好きだった。

暴れるのが、でも間違いではないのかもしれない。

得物を使ったって良い。

ただお互いが全力でぶつかって、殴って殴られて暴れるのが好きだった。

その結果、たとえ命を落とす事になろうとしても、そんなものは些細なモノだった。

 

 

◆◆◆

 

 

 

祐一「・・・・・・・・・」

 

 

吹きすさぶ風が、部屋に充満する粉塵を振り払っていく。

壁も幾つも崩れてしまい、外の景色が良く見える。

だが、呑気に外の景色を視ている場合じゃない。

崩れた壁の瓦礫に埋もれている鮫島篤からは、視線を外さない。

やったか?という言葉を思わず言いそうになるが、何とか堪える。

言ったら復活しそうだからな。

だが、俺のそんな努力は無駄に終わる。

 

 

篤「いや・・・マジでヤバかったぜ・・・・」

 

 

ガラッと、自分の身体に乗っかっている瓦礫をどかし、ゆらりと立ち上がる鮫島篤。

効いてないのかと目を見張ったが、流石に無傷ではないようだ。

いや、既にボロボロで瀕死だろう。

何で立てるんだよ。

 

 

祐一「今ので倒れねぇとか、化けモンかお前・・・」

 

篤「あんなチート攻撃を浴びせまくった奴に言われたくねーよ」

 

 

結構全力だったんだがな。

まぁ、いい。

だったら攻撃を続けるまでだ。

残機85体の分身が左右に散る。

そして分身体の40人が、一斉に攻撃を仕掛けにいった。

 

 

「「「「「火竜の鉄拳‼」」」」」

 

「「「「「鉄竜剣‼」」」」」

 

「「「「「100連ネイルガン‼」」」」」

 

「「「「「ビートパンチ‼」」」」」

 

「「「「「ポイズンソード‼」」」」」

 

「「「「「髪パンチ‼」」」」」

 

 

40人の分身体による40モノ近接攻撃。

それらが鮫島篤に直撃し、

 

 

篤「うらぁぁぁぁああああああああああああああああっ‼‼」

 

 

薙ぎ払った。

攻撃した40人の分身体が吹っ飛ばされる。

分身体はボンッと音を発てて、煙となって消えていく。

 

 

祐一「おいおい、冗談だろ・・・・」

 

 

分身が吹っ飛ばされた、だけならそこまで驚かない。

俺が驚いたのは、奴の・・・鮫島篤のその身体だ。

奴の全身が、真っ黒に染まっていた。

 

 

祐一「お前のそれ、グルメ細胞の悪魔か・・・?」

 

篤「おうよ。グルメ細胞の悪魔を全身に取り込んだのさ」

 

祐一「んなことまで出来んのかよ・・・」

 

 

確か、原作だとアカシアのフルコースを食べないと無理なんじゃねぇのかよ。

いや、違うな。

 

 

祐一「何かしらのリスクがあんのか?」

 

篤「おお、さすがに分かるか」

 

祐一「簡単にそれが出来るんなら、ハナっからやりゃあいいだけだからな」

 

 

それをやらなかったって事は、何かしらの理由があるのだろう。

 

 

篤「まぁ、理由なんてどうでもいいじゃねぇか!」

 

 

パンッ‼と、右拳を左手の掌に打ち付け、ゴォッ‼と篤の闘気が膨れ上がる。

その獰猛な笑みを視る限り、やはりまだ戦いを続けるらしい。

 

 

祐一「やるしかねぇか!」

 

 

まだ分身体も45体残ってるし、まずこいつ等を前面に出して様子見だな。

今のアイツの身体は、あの黒いグルメ細胞の悪魔そのものだ。

つまり、俺は『幻想殺し‐イマジンブレイカー‐』でしか奴に触れられない。

攻撃手段も、右手による物理攻撃のみ。

奴の身体には、触れたらアウト。

グルメ細胞の悪魔は、食欲の塊。

特に鮫島篤の悪魔は、物質非物質問わずに、触れたモノ全てを喰らう性質を持つ。

異能の力を無効化する『幻想殺し‐イマジンブレイカー‐』でしか、触れられない。

それ以外の攻撃手段も無いしな。

何でも喰らわれて、吸収されてしまう。

だが、ただ突っ込ませても、先程の分身体のように消されてしまうだろう。

消えた分身体が得た体験は、オリジナルの俺の元に還元される。

その情報を考えて、俺は自分の状態と、分身体の状態を変える。

金剛の鎧と、威装・須佐能乎を解除した。

鮫島篤の悪魔の攻撃を、こっちは右手以外に防ぐ手段が無い。

だったら、こんな鎧はもう無意味だ。

だったら、避ける事に意識を向けた方が良い。

使うは3種類の魔眼。

右目を白眼、左目を万華鏡写輪眼、そして額に第3の眼で輪廻写輪眼を開く。

白眼で篤の状態を常に看破し、万華鏡写輪眼で動きを見切り、輪廻写輪眼で全ての分身体の視覚を共有する。

次は、六道仙人モード。

六道の力で、感知力を上げる。

その上に、飛翔の鎧を装備してスピードを底上げする。

準備完了。

これで奴の攻撃を全て避けて―――バンッ‼―――やる、ぜ?

 

 

祐一「何だ?」

 

 

何か今、妙な音が・・・・?

思わず、なんとなく、俺は視線を下に向けた。

何か違和感があったからだ。

視線を向けるその先、俺の身体。

俺の身体の腹部が、いや、胴体がゴッソリと何かに食い千切られて――――

 

 

祐一「ッ!?」

 

 

咄嗟に右に跳ぶ。

瞬間、先程まで俺が立っていた地点。

そのまま立っていたら、俺の胴体に直撃したであろう、鮫島篤の右拳が放たれていた。

何だ今のは、幻覚か?

視線を下に向ける。

俺の身体に異常は無い。

今俺の身体が、奴の悪魔に喰われた光景が見えたが・・・・・

 

 

祐一「まさか、アルティメットルーティーンか?」

 

篤「正解だ‼」

 

 

拳が飛んで来る。

その拳が俺の頭を食い千切る光景が頭に浮かぶが、そのイメージに囚われまいと、回避し切る。

 

アルティメットルーティーン。

 

それは究極のルーティンだ。

ルーティンというのは、決まりきった動作を意味するが、それは技が成功するイメージを固める為の動作。

動きの中で、その他の雑念をろ過し、成功するイメージのみを搾り取る。

技の成功率を上げるのがルーティン。

アルティメットルーティーンとは、その技が成功するという思い込みだ。

言霊というものがある。

常日頃口に出して、言っていることがいつか本当に起きるという、言葉の力だ。

ルーティンの持つイメージも、これと同じだ。

そう強く思い込むことで、それが現実となる。

俺が観たイメージは、鮫島篤の俺を喰らうイメージが、俺に伝染し、共有してしまったモノ。

そして、俺が攻撃を避けなければ、あのイメージが現実のものとなっただろう。

コイツ、まだこんな手を残してたのか。

 

 

祐一「これも神様特典で得たモノか?」

 

篤「いいや、コイツは自力で会得したのさ!」

 

祐一「無茶苦茶やりやがる‼」

 

 

分身体が攻撃に出て、鮫島篤の動きを制限する。

右手で攻撃し、鮫島篤の攻撃を避け、右手で防ぐ。

全身が真っ黒なせいで、どのくらいのダメージが奴に効いているのか、見た目じゃ判断出来ない。

これだけの人数で殴っているのだ、効いてないなんて事は無いと思うが・・・。

 

 

祐一「・・・・・・やっぱ無理か」

 

 

俺もアルティメットルーティーンを使おうと試みるが、発動出来る気がしない。

いや、『完成‐ジ・エンド‐』で覚えられないという訳じゃ無い。

習得はしたが、使えないのだ。

そもそもの問題として、俺には自分の技の成功率を上げるルーティン・・・一定の所作というモノを持っていない。

こればっかりは個人差があるし、鮫島篤のルーティンを真似ても、俺の技の成功率が上がる事は無い。

ルーティンが無くても使えるのだろうが、覚えたての俺に使えるか?

俺のイメージが元だから、覚えた能力を使えるかどうかは別の問題だしな。

 

 

祐一「四の五の言ってもいられんか‼」

 

 

俺も攻撃に参加する。

 

 

篤「レッグナイフ‼ レッグフォーク‼」

 

 

篤の攻撃が、分身体を次々と蹴散らしていく。

やはり奴のグルメ細胞の悪魔が厄介で、魔眼3種に六道仙人モードの状態でも、容易に攻撃を捌く事が出来ない。

分身体、残機37体。

 

 

「「「「「50連釘パンチ‼」」」」」

 

篤「ぐぅお・・・・!?」

 

 

分身体達の右拳での釘パンチで、篤の身体が押される。

 

 

篤「まだまだぁ‼ 100連ツイン釘パンチ‼‼」

 

 

篤の両手での釘パンチが、眼前の分身体を殴り飛ばす。

分身体、残機21体。

 

 

「「「「「50連ネイルガン‼」」」」」

 

篤「アアアアアアアアアアッ‼ レッグブーメラン‼‼ キャノンフォーク‼‼」

 

 

分身体の攻撃を受けて、鮫島篤の身体が揺らぐ。

だが、それに構わず、雄叫びと共に放った攻撃で分身体を消し飛ばす。

分身体、残機14体。

 

 

「「「「「100連フォーク釘パンチ‼‼」」」」」

 

篤「キャノンナイフ‼‼」

 

「「「「「50連ナイフネイルガン‼」」」」」

 

篤「ツインネイルガン‼‼」

 

 

鮫島篤の身体から血が噴き出す。

ようやく目に視えて、ダメージがハッキリと分かる。

もう相当重症のはずだ。

全身を悪魔化する直前でも、既に瀕死だったはずなのだから。

それでも鮫島篤は、まるでお構いなしに攻撃を受けながらも反撃し、確実に分身体を消していく。

分身体、残機5体。

 

 

篤「祐一ぃぃぃぃぃぃいいいいいっ‼‼」

 

祐一「しつこい奴‼‼」

 

 

もうどれが本体なのか、直感で容易に判別がつくのだろう。

他の分身体には目もくれず、真っ直ぐ俺の方へ向かってくる。

だが、分身体はまだ全滅した訳じゃねぇ。

残りの分身体が、鮫島篤を倒さんと特攻を仕掛けにいく。

 

 

「50連ネイルガン‼」

 

篤「レッグ釘キック‼」

 

 

分身体、残機4体。

 

 

「100連ナイフ釘パンチ‼」

 

篤「レッグ50連ナイフ‼」

 

 

分身体、残機3体。

 

 

「80連ナイフネイルガン‼」

 

「90連フォークネイルガン‼」

 

篤「ツインネイルガン‼」

 

 

分身体、残機1体。

 

 

「100連ネイルガン‼」

 

篤「キャノンナイフネイルガン‼」

 

 

分身体、残機0体。

これで分身体はもういない。

もう直ぐ目の前まで鮫島篤が迫る。

自分の手で沈めるしかない。

この一撃で決める。

 

 

篤「オオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォッ‼‼」

 

祐一「終わりだ! 鮫島篤ッ‼」

 

 

鮫島篤の左拳が眼前に迫る。

 

 

篤「100‼」

 

祐一「連‼」

 

祐一&篤「「ネイルガン‼‼‼」」

 

 

篤の左拳が俺の頬に、俺の右拳が篤の頬に直撃する。

 

 

.


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。