蹴りが見事に決まり、襲撃者が吹っ飛ぶ。
しかし、直ぐに上体を翻して体勢を整え、着地した。
流石に頑丈だな、大して効いてはいないようだ。
ユウイチ「よ。大丈夫かよ?」
後ろにいるレビィ達を見やる。
レビィ「う、うん、大丈夫・・・」
よく見ると、三人共ボロボロだ。
暗くてよく見えないが、特にジェットとドロイの怪我が酷い。
レビィを庇ったのだろう。
彼女に惚れてるこの二人なら、それくらいの事はやってのける。
ユウイチ「ジェットとドロイ・・・は、気絶してんのか?」
レビィ「・・・・うん・・・・・」
更に目を凝らしてみてみれば、二人は白目を剥いていた。
俺が駆け付けるまで、かなり無理して戦ったようだな。
ユウイチ「レビィ、ジェットとドロイを見といてやれ。流石に二人を運ぶのは無理だろ?」
一人くらいなら肩貸したり引き摺ったり出来るかもだが。
レビィ「ユウイチは? どうするの・・・?」
ユウイチ「決まってんだろ?」
ホレ、と、俺は手を上げた。
首を傾げるレビィに、俺は手ぇ出せと視線で語る。
頭に疑問符を出しながら手を出すレビィに、俺はパンッと良い音を出したタッチをした。
ユウイチ「交代だ、こっからは俺がやってやるよ」
後ろ手に手を振りながら、俺は襲撃者の方へ歩み寄る。
月明かりに照らされて、襲撃者の姿がハッキリと俺の視界に映った。
やはり、鉄のガジルだ。
ガジル「よお、もういいのかよ?」
ユウイチ「なんだ、態々待ってくれたのか?」
ガジル「ギヒッ。そいつ等相手じゃあまりにも退屈でよぉ・・・お前なら楽しませてくれそうだからなぁ『妖精皇帝‐フェアリーカイザー‐』さんよぉ!」
コイツはホントにバトル脳だな。
戦う事にしか頭に無いらしい。
ファントムを抜けても抜けなくてもその辺は変わらない気がするぜ。
ユウイチ「俺が誰だか知った上で喧嘩吹っ掛けるってんなら、相応の覚悟は出来てんだろうな?」
ガジル「ギヒヒ、妖精のケツの皇帝・・・どれほどのもんか、楽しませろよ屑」
ユウイチ「上等!」
互いに相手へ突っ込み、拳を放つ。
互いの拳がぶつかり合い、身体ごと弾けた。
一旦後方へ跳び距離と取る。
・・・コイツ、鉄だけあって固いな。
俺は目を写輪眼に変化させてガジルを見やる。
ガジルは既に次の攻撃モーションに入っていた。
ガジル「鉄竜の咆哮‼」
息を大きく吸い込んで、ガジルは竜のブレスを吐き出した。
そのブレスは鉄。
鉄の刃が混じったエネルギーの波動が迫り来る。
俺はソレを特に抵抗することなく、我が身で受け止めた。
別に避けられなかった訳じゃない。
避ける必要が無いのだ。
ブレスを受けた俺は、その鉄のブレスを吸い込んで、食らう。
ユウイチ「御馳走様」
ガジルの魔法は元々知ってたし、後は少しでも視認できれば完全にコピー出来る。
既にコピーしていた『鉄の滅竜魔法』。
この魔法の御かげで、俺には鉄は一切効かない。
それはつまり、ガジルの魔法は俺には一切通用しないという事だ。
ガジル「テメェ、俺の魔法を・・・」
ユウイチ「ああ、コピーさせて貰ったぜ。これでお前の魔法は効かねぇな」
ガジル「なるほどな、妖精の皇帝には魔法が効かねぇってのはこういう意味か」
『完成‐ジ・エンド‐』で相手の能力を完全に完成させて、相手以上の力で相手と同じ魔法で返す。
これで相手の魔法を相殺や打ち消すどころか、此方が相手の魔法を上回って呑み込んでしまう。
他にも、写輪眼で相手の魔法を見切ったり、幻想殺しで打ち消したりと、俺には大抵の魔法は通じない。
ガジル「なら話は簡単だ」
言って、ガジルは再びこちらに突っ込んでくる。
ガジル「ただブン殴りゃいいだけだろーがぁっ‼」
拳を放った。
それを、身を捻って避ける。
続けて、ガジルは蹴りを入れてくる。
それを避け、更に攻撃を放ってきて、更に避ける。
それを何度も繰り返して、いい加減痺れを切らし、ガジルは腕を剣に変化させて俺の顔面目掛けて突き刺してきた。
・・・それは悪手だぜぃ。
ガキィッ‼と、突き出された剣を歯で受け止める。
ググッとガジルが腕を動かそうとするが、俺が顎の力で噛み止めていてピクリとも動かせない。
俺はニヤリとしながら、その剣をバキンッ‼と噛み砕いた。
ガジル「ギアアアアァァァァァァァァッ!?」
剣を・・・いや、剣に変化した拳を砕かれて、ガジルは悲鳴を上げた。
砕かれた拳にはヒビが入っており、出血している。
骨ごとイッたかもしれんな。
鉄の滅竜魔法を得た俺に、鉄の剣なんか向けるからだ。
ユウイチ「さて、終わらせるか」
地面にのた打ち回っているガジルに歩を進める。
どーすっかなぁ・・・殺す気は特にないが、捕縛しとくか?
かなり原作ブレイクな気がするがまぁ、今更だ。
取りあえず、写輪眼で幻術に掛けるか・・・・
「―――――フライングフォーク‼」
ユウイチ「!?」
突然飛来してきたエネルギーを、一歩後退することで回避した。
何だいったい・・・?
「ジェットボイス‼」
凄まじい速度で赤い何かが接近して俺の横を通過し、ガジルに接触した。
それは、人だった。
後ろ姿しか見えないが、そいつは赤い短髪の男だ。
黒い革ジャンの下に赤いTシャツ、紺のダメージジーパン。
顔は見えない。
そいつはガジルを抱えると、再び凄まじいスピードを出して、何処かへ去って行ってしまった。
・・・・ありゃ、音速は出てるな。
全く見慣れないキャラクター。
おそらく、俺と同じ転生者だ。
殆ど一瞬の接触だったが、間違いないだろう。
ファントムにいる転生者か・・・・。
アイツとぶつかる事になりそうだな。
俺は直ぐ近くに迫る未来に溜息を吐きながら、怪我をしているレビィ達をマグノリア病院へ連れて行くことにした。
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